給与計算の効率化・高精度化に効く!具体的な方法や効率化できる業務・できない業務を解説
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目次
給与計算は従業員の生活と信頼関係に直結する重要な業務ですが、複雑なプロセスによって担当者に大きな負担がかかっているケースが多く見られます。
この記事では、給与計算の効率化をテーマに、基本的な業務の流れや具体的な効率化の方法、効率化のメリット・デメリットなどを解説します。
担当者の負担を軽減し、精度の高い給与計算業務を実現するために参考にしてみてください。
給与計算の基本的な流れとスケジュール
給与計算の効率化を考える前に、まずは基本的な業務の流れと、一般的なスケジュール感を理解しておきましょう。
給与計算は、主に以下の5つのステップで構成されます。
ステップ1:勤怠データの集計
従業員一人ひとりの労働時間に関する情報を正確に把握する、給与計算の土台となるステップです。
タイムカードやICカード、勤怠管理システムなどから、出退勤時刻、休憩時間、欠勤、遅刻、早退、有給休暇の取得日数といったデータを収集します。
収集したデータをもとに、労働時間、時間外労働(残業)時間、休日労働時間、深夜労働時間などを算出します。
打刻漏れや申請漏れがないか、残業申請や休暇申請の内容と実績が一致しているかなども、この段階で確認します。
ステップ2:総支給額の計算
集計した勤怠データと、従業員ごとに定められた雇用契約や給与規定に基づき、「総支給額」を計算します。
総支給額は、基本給、役職手当、資格手当、通勤手当、住宅手当といった固定的な手当と、時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当などの変動的な手当(割増賃金)を合算した金額です。
ステップ3:控除額の計算
総支給額から差し引かれる「控除額」を計算します。
控除には、法律で義務付けられている社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)、雇用保険料、所得税(源泉徴収税)、住民税(特別徴収)があります。
これらの計算には、標準報酬月額や扶養親族の数、各種保険料率など、多くの情報が必要となります。
その他、企業によっては、財形貯蓄の積立金、労働組合費、社宅の家賃などが控除される場合もあります。
ステップ4:差引支給額(手取り額)の計算
ステップ2で算出した「総支給額」から、ステップ3で算出した「控除額の合計」を差し引いて、最終的に従業員に支払われる金額である「差引支給額(手取り額)」を確定させます。
(差引支給額 = 総支給額 - 控除額合計)
ステップ5:給与明細書の作成・支払い・納付
確定した計算結果に基づき、従業員一人ひとりの給与明細書を作成します。
給与明細書には、総支給額、控除額、差引支給額の内訳を、法律で定められた項目に従って正確に記載する必要があります。
作成後、指定された給与支給日に、差引支給額を従業員の銀行口座へ振り込みます。
あわせて、控除した所得税、住民税、社会保険料などを、それぞれの納付期限までに国や自治体、年金事務所へ納付する手続きも行います。
【一般的なスケジュール感(例:月末締め、翌月25日払いの場合)】
月初(1日~5日頃):前月分の勤怠データ締め、集計、確認。
月上旬(5日~10日頃):総支給額、控除額の計算。
月中旬(10日~15日頃):差引支給額の確定、給与明細書の作成、計算結果のダブルチェック。
支給日前(20日頃まで):銀行への振込データ作成・依頼。
支給日(25日):従業員への給与支払い。
翌月10日まで:所得税・住民税の納付。
翌月末日まで:社会保険料の納付。
このように、給与計算業務は毎月タイトなスケジュールで、多くの作業を正確に行う必要があります。
給与計算を効率化するメリット・デメリット
煩雑な給与計算業務を効率化することは、企業に多くのメリットをもたらします。
一方で、効率化を進める上での注意点(デメリット)も存在します。
効率化のメリット
担当者の業務負担軽減:毎月の作業時間を大幅に削減し、担当者を時間のかかる定型業務から解放します。
残業時間の削減や、精神的なプレッシャーの軽減につながります。
コスト削減:担当者の人件費(特に残業代)や、紙の給与明細書を使用している場合の印刷・郵送コストなどを削減できます。
生産性の向上:担当者が空いた時間を、人事評価制度の運用や採用活動、従業員エンゲージメント向上施策といった、より付加価値の高いコア業務に振り分けることができます。
組織全体の生産性向上に貢献します。
ヒューマンエラーの削減と高精度化:手作業による計算ミスや入力ミスを減らし、給与計算の正確性を高めます。
高精度な給与計算は、従業員からの信頼を高め、労務トラブルのリスクを低減します。
法改正への迅速な対応:給与計算システムなどを活用することで、毎年のように行われる社会保険料率の改定や税制改正に、自動で対応できるようになります。
法令遵守の体制が強化されます。
効率化を進める上でのデメリット・注意点
導入コストの発生:給与計算ソフトや勤怠管理システムの導入には、初期費用や月額利用料といったコストがかかります。
アウトソーシングを利用する場合も、委託費用が必要です。
費用対効果を慎重に検討する必要があります。
システムへの依存とブラックボックス化:システムやアウトソーシングに頼りすぎると、計算プロセスがブラックボックス化し、社内にノウハウが蓄積されにくくなる可能性があります。
トラブル発生時に自社で対応できなくなるリスクもあります。
既存業務フローの変更と定着への労力:新しいツールやプロセスを導入する際には、既存の業務フローを変更し、担当者が新しいやり方に慣れるための時間と労力が必要です。
従業員への丁寧な説明と教育が不可欠です。
給与計算を効率化する方法・対象業務
給与計算業務を効率化するためには、いくつかの具体的な方法があります。
自社の状況に合わせて、これらの方法を組み合わせることが効果的です。
1. 勤怠管理システムの導入・連携
【概要】
ICカードやスマートフォンアプリ、PCへのログイン時点などをもとに従業員の出退勤時刻を自動で記録し、労働時間や残業時間を自動集計するシステムを導入します。
【自動化・効率化できる業務】
出退勤時刻の記録・管理
労働時間、残業時間、休日労働時間、深夜労働時間の自動集計
休暇申請・残業申請の電子化と承認フロー
有給休暇の残日数管理
打刻漏れなどのエラーチェック
手作業による勤怠データの集計・転記作業が不要になり、給与計算の最初のステップを大幅に効率化できます。
2. 給与計算ソフト・クラウドサービスの導入
【概要】
給与計算に特化したソフトウェアやクラウドサービスを導入します。
勤怠データや従業員情報を取り込むことで、総支給額や控除額、差引支給額を自動で計算し、給与明細書や振込データを作成します。
【自動化・効率化できる業務】
総支給額の計算(各種手当、割増賃金含む)
社会保険料、雇用保険料の計算
所得税(源泉徴収税額)の計算
差引支給額の計算
給与明細書の作成(Web明細発行機能付きも多い)
銀行振込データの作成(FBデータ作成)
法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)の作成
複雑な計算プロセスを自動化し、計算ミスを大幅に削減できます。
法改正にも自動で対応します。
3. アウトソーシング(外部委託)の活用
【概要】
給与計算業務そのものを、税理士や社会保険労務士、専門の代行会社といった外部のプロフェッショナルに委託する方法です。
勤怠データのチェックから、計算、明細書作成、振込、納税まで、一連の業務をすべて任せることも可能です。
【自動化・効率化できる業務】
上記1、2で挙げたほぼ全ての業務
社会保険・労働保険の手続き代行(社労士の場合)
年末調整業務の代行
従業員からの問い合わせ対応
社内に専門知識やリソースがなくても、高精度で効率的な給与計算を実現できます。
4. 業務フローの見直しと標準化
【概要】
現在の給与計算業務の流れを可視化し、無駄な工程や、非効率な手順がないかを見直します。
例えば、紙ベースでの申請を電子化したり、承認フローを簡略化したりします。
そして、誰が担当しても同じ手順で業務を行えるように、作業手順をマニュアル化し、標準化します。
【効率化できる業務】
情報の収集・伝達プロセス
承認プロセス
チェック・確認作業
ツール導入やアウトソーシングの効果を高めるためにも、この業務フローの見直しは不可欠です。
5. Web給与明細の導入
【概要】
紙で印刷・封入・配布していた給与明細書を、従業員がPCやスマートフォンで確認できるWeb明細に切り替えます。
多くの給与計算ソフトには、この機能が搭載されています。
【効率化できる業務】
給与明細書の印刷、封入、仕分け、配布作業
過去の明細書に関する問い合わせ対応(従業員が自分で確認できるため)
用紙代や郵送費といったコスト削減にもつながります。
6. 銀行振込のオンライン化(FBデータの活用)
【概要】
給与の振込を、銀行窓口での手続きではなく、インターネットバンキングを利用して行うようにします。
給与計算ソフトで作成した全銀フォーマットの振込データ(FBデータ)をアップロードするだけで、全従業員への振込が一括で完了します。
【効率化できる業務】
振込依頼書の作成
銀行窓口での振込手続き
振込手数料の削減(多くの場合、窓口より安価)
効率化とともに、振込ミスを防ぐ効果もあります。
効率化が難しい給与計算業務は?
ツール導入やアウトソーシングによって、多くの給与計算業務は効率化できますが、中には完全な自動化や外部委託が難しい、あるいは人間の判断が必要となる業務も存在します。
1. イレギュラーな勤怠の判断・確認
打刻漏れや申請漏れがあった場合に、その理由を確認し、正しい労働時間を認定する作業は、最終的には人間の判断が必要です。
例えば、「交通機関の遅延による遅刻」や「急な体調不良による早退」など、個別の事情を考慮する必要があるケースです。
勤怠管理システムはアラートを出すことはできますが、事実確認と最終判断は担当者が行う必要があります。
2. 法改正の解釈と自社ルールへの適用
法改正があった場合に、その内容を正確に理解し、自社の就業規則や給与規定にどのように影響するのか、具体的な計算方法をどう変更すべきかを判断する業務は、専門的な知識と解釈が必要です。
給与計算ソフトは法改正に対応しますが、その前提となる社内ルールの見直しなどは、担当者や専門家(社労士など)が行う必要があります。
3. 従業員からの個別性の高い問い合わせ対応
「自分の残業代の計算方法について詳しく教えてほしい」「扶養家族が増えた場合の手続きは?」といった、従業員一人ひとりの状況に応じた個別性の高い質問への対応は、自動化が困難です。
丁寧なコミュニケーションと、個別の事情を考慮した説明が求められます。
4. システムエラーや設定ミスの対応
給与計算ソフトや勤怠管理システムを利用していても、予期せぬシステムエラーが発生したり、初期設定や更新時の設定ミスによって誤った計算が行われたりする可能性はゼロではありません。
エラーの原因を特定し、正しい設定に修正するといったトラブルシューティングは、システムを理解した人間が行う必要があります。
5. 経営判断に関わる分析・報告
給与計算の結果(人件費の変動、残業時間の増減など)を分析し、経営上の課題を発見して経営陣に報告するといった業務は、単なる計算作業ではなく、高度な分析能力と経営的な視点が求められます。
これらの業務は、効率化によって創出された時間を使って、経理・人事担当者が注力すべき付加価値の高い業務と言えます。
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複数人によるチェック体制も整っているため、ヒューマンエラーのリスクを限りなく低減し、常に正確な給与計算を実現します。
2. 担当者の業務負担を大幅に軽減
毎月の煩雑な計算作業や、法改正に関する情報収集といった業務から、担当者を解放します。
創出された時間を、人事評価制度の運用や採用活動、従業員エンゲージメント向上施策といった、より戦略的で付加価値の高い業務に振り分けることができます。
担当者の残業時間削減にも直結します。
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まとめ
本記事では、給与計算の効率化について詳しく解説しました。
給与計算は、正確性が求められる一方で、非常に手間と時間がかかる定型業務です。
自社が抱える課題やリソース状況に合わせ、本記事で紹介したステップや考え方を参考に効率化を目指してみてください。
