「指導の効率化、卒論の品質向上」が可能な大学ゼミ運営ツール
神戸大学 三矢教授のゼミでは、ゼミの運営ツールとしてチャットワークを利用している。「指導プロセスの効率化」と「卒論クオリティの向上」を同時に実現できたチャットワーク活用法を、三矢様と大学院生の吉田様に詳しく伺った。※表記の都合で、吉田様の吉の字を「さむらいよし」ではなく、「つちよし」とさせていただいております。
国立大学法人神戸大学
神戸大学は「人文・人間科学系」「社会科学系」「自然科学系」「生命・医学系」の4大学術系列の下に11の学部、14の大学院、1研究環、1研究所を持つ総合大学。平成14年に創立百周年をむかえた。設立時に実業界の人材需要にこたえる形で設置された経緯から商学系に強みを持つ。日本で最初の経営学部を設置した大学としても知られている。(取材:2016年3月)
三矢 裕 様
「強い組織はなぜ強いのか」についてのフィールドワーク
三矢様は管理会計を得意としている神戸大学の教授で、ゼミでは「強い組織はなぜ強いのか?」などのテーマを掲げて、教育・研究を進めている。強い組織として有名な「サウスウエスト航空」「眼鏡21」「京セラ」などの会社を書物で学ぶことをはじめ、「強い組織」を見つけて学生が訪問インタビューをするフィールドワークにも積極的だ。
3年生は図書の輪読と3〜4人でのグループワークが中心となっており、4年生は卒業論文の執筆とその成果の発表が主な活動だ。ゼミの定員は各学年10名。3年生・4年生および大学院生の約30名が三矢教授のもとで研究を重ねている。
ゼミでは「卒論の書き方」などの基本手法を引き継ぎにくい
- ゼミ運営の課題を教えてください。
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三矢 : 大きく2つあります。ひとつめは、 「先輩の経験」が後輩に引き継ぎにくいことです。卒業論文は4年生の個人活動です。彼らは卒業論文を書いたとたんに卒業するので、研究手法や執筆ノウハウを後輩に伝える時間がありません。そのため、 3年生が新しくゼミに加わるたびに私(教授)が基本ノウハウを指導していました。基本ノウハウとは、フィールドワークで企業や団体にインタビューをおこなう際に送る「依頼文」の書き方などの社会常識から、「論文では、リサーチクエスチョンとそれに対するアンサーをきちんと対応させる」といった論文常識までさまざまです。貴重な先輩の経験を引き継げないもったいなさと、毎年白紙から学習がスタートする学習効率の悪さを感じていました。
2つめは、 私とゼミ生との情報共有に手間がかかることです。以前はメーリングリストを使っており、要件の大小に関わらずグループ全員にメールが一斉配信されていました。そのため「ちょっとの用事でメールを送るのは気が引ける」と感じるほか、大量に来たメールから必要な部分を探すのに時間がかかってストレスを感じていました。
Chatwork = チャットコミュニケーション + ストレージ
- Chatworkを使い始めたきっかけは?
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三矢 : ある学生がChatwork株式会社(現 株式会社kubell)の関連会社に取材を依頼したことです。Chatworkの通常の用途は業務コミュニケーションとのことでしたが、取材の一貫で「ゼミの運営」に利用することにしたのです。導入は2012年で、以後ずっと利用しています。
- Chatworkをどんなツールと感じていますか?
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三矢 : Chatworkにはコミュニケーションとストレージの両方の機能があり、 チャットコミュニケーション機能と、ストレージ機能を合わせたものと考えています。 これひとつでゼミ生と教授の相互コミュニケーション・課題提出・研究手法などの指導・資料の共有がすべて可能です。
吉田 : ベースが仕事用のツールなので、一般的なSNSアプリと異なり、 まじめな長文やPDFファイルを自然に投稿できる点がゼミに合っていると思います。また、一般的なクラウドストレージサービスは資料の保管はできるものの、「資料が保存された経緯」は分かりません。一方 Chatworkは会話の途中に資料が投稿されるので「資料が共有された経緯」を含めて履歴が残ります。これは後から研究をまとめる時に非常に役に立ちます。
Chatwork(チャットワーク)のログ保存・エクスポートをする方法 | ビジネスチャットならChatworkChatwork(チャットワーク)では、ログエクスポート機能によってチャットログの保存が可能です。ログエクスポート機能は、エンタープライズプランを利用中の組織管理者のみが実行することができます。ログをエクスポートすることで、Chatworkを使う社内の不正行為の抑止や内部統制に役立てることができます。
「課題の提出とフィードバック」「卒論アーカイブ」など、目的別にグループを作成
- 「ゼミ運営」はどのように実施されていますか?
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三矢 : 用途ごとにグループチャットをつくり、そこに関係者を全員入れます。グループ内の会話・資料をグループメンバーはすべて閲覧できます。
ゼミで作っているグループチャットには大きく2つの種類があります。ひとつめはプロセス系のグループチャットです。メインのメンバーは課題や卒論に取り組んでいる学生です。ここでは「グループワークの進行」・「研究に関する質問」・「課題の提出とフィードバック」・「参考資料の教え合い」などをやり取りします。一部のグループチャットは全学年が入っており、下級生は先輩が課題を進める様子をすべて見ることができます。下級生は上級生のChatwork上での発言や提出物を見ることで、研究の進め方などを自然に学びます。
三矢 : 2つめはアーカイブ系のグループチャットです。メンバーはすべての学生です。ここには代々の卒論・プレゼン資料・企業に対する調査の依頼状や令状をアーカイブしています。学部生はこれらを活用してフィールドワークを進め、先輩の論文を読み込んでから卒業論文に着手するなどしています。卒論の完成品については卒業生も閲覧可能です。新しい論文を社会人になってからも読むことができるだけでなく、卒業後もゼミと交流を持つ良いきっかけになっています。
卒論のクオリティが上がり、指導プロセスも効率化
- Chatworkの導入効果を教えてください。
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三矢 : 生徒が提出する課題や卒業論文のクオリティが上がり、私が毎年繰り返していた基本事項の指導プロセスが効率的になりました。
課題のクオリティが上がった理由は、先輩の成果物をすべて参照できることです。後輩は先輩の作ったものを見ながら構成や展開などを学ぶだけでなく、良いところを真似して書いてくれるため、自然と提出物の質が上がります。同時に、皆の前で成果物を共有し指導を受けるというプレッシャーが生じるため、論文に磨きがかかります。この取り組みを通じて、卒論をはじめ、課題のクオリティは年々上昇しています。
また私の指導のプロセスが効率的になった理由は、 先輩の体験がChatworkを通じてすべて引き継がれるようになり、はじめから私が何もかもを教えなくても、学生が自分で学習するようになったためです。
吉田 : 私はChatwork導入の年にゼミに入りました。その時は先輩の論文などを今のようには参考にできませんでした。今のゼミ生の「先輩の資料をいつでも閲覧できる環境」は、当時の自分にはとても羨ましいことです。
ゼミでChatworkを活用する主な効果
- 「先輩の資料」が後輩に残るようになった
- 「学習プロセス」を共有できるようになった
- 社会常識や論文常識を自学自習できるようになった
- 本質的でクリエイティブなことに時間を使えるようになった
- 皆の前で課題を提出するプレッシャーが良いものを育てる
- 卒論や課題のクオリティが上昇した
- 教授は基礎的なことを毎年教える必要がなくなった
- 学習プロセスと指導プロセスの両方が効率化された
- 卒業生とのつながりが太くなった
- メーリングリストより「情報共有の手間」が圧倒的に少ない
導入する時に最も大切なのは、Chatworkを使う意図を共有すること
- Chatworkを大学のゼミで導入する時のポイントを教えてください。
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三矢 : 2つあります。ひとつめは、学生のメールアドレスの収集です。春に新しいゼミ生が入ってくる時、Chatworkのことを知らない学生にアカウントを取得してもらう必要があります。そこで、 新しくゼミに参加が決まった学生のメールアドレスをできる限りデータで収集するといいでしょう。
2つめは、 「何を目的としてChatworkをどのように利用するのか」を、学生に最初にしっかり伝えることです。うちのゼミでは目的を伝えてあるので、学生はアーカイブや先輩のプロセスを参考に意欲的に学習を進めてくれます。単にツールを与えられただけでは、ここまで活用はできないでしょう。
卒論のクオリティは年々上がっている
- 最後にメッセージをお願いします。
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三矢 : Chatworkは 操作が簡単で、使う時のストレスが少ないツールです。そうでなければおそらく使っていないでしょう。そして使うと 学習の効果と効率を上げてくれます。基本的なことを学生が自主的に学習するようになるため、指導者も学生も「クリエイティブな活動のための時間」が増えます。結果、卒論のクオリティは年々上がっており、ゼミの進化を実感しています。
- 業種
- 利用規模
- 目的・効果