TEDxKyoto成功の裏で活躍した誰もが使いこなせるチャットワーク
大成功を納めた、400人規模のイベント「TEDxKyoto」。その運営に携わるボランティアスタッフの「プロジェクト管理・連絡手段」としてチャットワークが利用された。運営にどのように役立ったのかを詳しく伺った。
TEDxKyoto
TEDxとは、世界各地でTED本体と同様の体験をすることができるイベントです。TEDのライセンスを得た団体が、TEDの精神に基づいて独自に運営します。「x」は独自に運営されている(x = independently organized event)ということを示しています。TEDxKyotoは、株式会社はてなの代表取締役である近藤淳也さんと立命館大学で教鞭をとるJay Klaphakeさんが2011年に創立し、2012年9月16日に第一回目となるイベントを開催しました。(取材:2012年10月)
チーフキュレーター
(大阪大学 工学研究科 准教授)
金谷一朗 様
知のイベント「TED」と、西日本最大規模の「TEDxKyoto」
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世界の先頭を行く思想家や実行家の体験が披露される「TED」
金谷 : TEDは「よいアイデアを広めよう(Ideas Worth Spreading)」を理念とする非営利団体で、毎年カリフォルニア州Long BeachでTED Conferenceを開催しています。TEDでは、世界の先頭を行く思想家や実行家たちが、自分の人生・体験についての講演を18分でおこないます。その後、講演はTED.comで無料で視聴できるようになります。講演者には、ビル・ゲイツ(Bill Gates)、リチャード・ブランソン(Sir Richard Branson)、フィリップ・スタルク(Philippe Starck)などがいます。
世界各地でTED同様の体験ができる「TEDx」
金谷 : TEDxとは、世界各地でTED本体と同様の体験をすることができるイベントです。TEDのライセンスを得た団体が、TEDの精神に基づいて独自に運営します。「x」は独自に運営されている(x = independently organized event)ということを示しています。
2012年9月16日、第1回「TEDxKyoto」大成功!
金谷 : TEDxKyotoは、株式会社はてなの代表取締役である近藤淳也さんと立命館大学で教鞭をとるJay Klaphakeさんが2011年に創立し、2012年9月16日に第一回目となるイベントを開催しました。スピーカーは豪華の一言で、プレゼンの神様・ガーレイノルズさん、宇宙電波工学者・京都大学総長の松本紘さん、芥川賞作家・平野啓一郎さん、ソーシャルメディアエバンジェリスト熊坂仁美さんなど総勢21名でした。観客数は約300名以上、運営ボランティア数は100名以上で、述べ400名以上が参加したTEDxKyotoは、西日本最大規模のTEDxカンファレンスとなりました。
運営スタッフは、半数がイベント初体験・外国人率3割の有志約100名
- TEDxKyotoの運営組織について教えてください。
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金谷 : TEDxは、本家であるTED Conferenceのガイドラインに基づいて運営されます。スタッフ構成も、TEDの理念である「多様性」を目標に掲げており、外国人比率、女性比率を3割以上にしようと取り組んでいました。そのため運営スタッフは、100名超のメンバーのうち3割が外国人でした。また、半数がイベント運営の経験がありませんでした職業もさまざまで、和尚・カフェマスター・建築家・企画会社代表・写真家・介護士・出版社・中学教諭・学生・高校生などバラエティに富んでいましたし、年齢は10代~40代までと幅広い層が参加しました。
運営組織は、創始者であるJay Klaphakeさんをトップに、「オペレーションチーム」・「コミュニケーションチーム」・「制作チーム」の3チームを設けました。私は「ショーチーム」のコアリーダーを勤め、プログラムや誘導看板を制作するデザイン、舞台装置から映像制作までカバーするショー、スピーカーを選定するキュレーションの指揮を執りました。すべてボランティアでおこなわれるTEDxKyotoは、各分野のプロや学生が本気で取り組む「大人の文化祭」です。
プロジェクトマネジメントツールT(仮称)を使うも、難しくて破綻
- 100人もの有志のスタッフをまとめるにあたり、どのような方法でプロジェクト管理をしたのですか?
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金谷 : 2011年の10月に組織が発足し、私が参加した2012年2月ごろまではT(仮称)というアメリカ発のプロジェクトマネジメントツールを利用していました。しかし、ITに詳しい人には使えたものの、それ以外の人には難しく、私が参加したころにはT(仮称)の運用は事実上破綻していました。
- T(仮称)が破綻した理由を詳しくおしえてください。
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金谷 : それまでの書き込みを見た感想になりますが、プロジェクトマネジメントツールなので、どこに何を書き込むのか大体決まっており、イベント運営に慣れていない人には使い方が難しかったのではないかと思います。また、各自が自分にとって使いやすいツールであるSkypeやFacebookで情報交換した後、結論だけをT(仮称)に書き込んでおり、なぜその結論が出たのか分からないことは不安の原因になっているようでした。T(仮称)破綻後は、主にソーシャルネットワークサービスを利用していましたが、仕事用に設計されたツールではないため、メッセージの見落としが発生していました。
あらゆる職業の人が、教えなくても使えるChatwork
- Chatworkを利用し始めたきっかけを教えてください。
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金谷 : 運営ツールとしていくつかのツールを検証し、Chatworkを使い始めました。ツールに求める条件は、英語に対応していること・仕事と担当者が紐づけられること・締切を切れること・iPhoneアプリがあることでした。比較したのは、G・C・E・R(すべて仮称)などです。どれも「しっくりこない」「何か違う」と思っていた時、Chatworkのアカウントを持っていることを思い出し、メンバー4人で使い始めました。使っているうちに、後からメンバーになった人が、これまでのすべての情報をキャッチアップできていることに気づきました。そこで、私がリーダを勤める3つのチームのうちのひとつ「ショーチーム」で利用を開始し、その後、3つのチームすべて、約40人のスタッフで使うようになりました。会話は、最初は日本語でおこなっていましたが、途中から英語に変わりました。
Chatworkは、他のツールに比べて設計がシンプルだから、最初はあまり期待していなかったのですが、今思えば、あらゆる立場の人が、教えなくても使い方が理解できるのことにつながりました。
タイムラインが1本というシンプルさが肝。読めば脳ができごとを整理する!
- 他のツールはNGだったのに、なぜChatworkは誰でも使えたのでしょうか?
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金谷 : タイムラインが、ひとつのプロジェクトにつき1本だからだと思います。ひとつの仕事に対する書き込みスペースが1本道になっていることは、最初はプロジェクト管理にはデメリットと思っていましたが、実は「逆」でした。ある程度の書き込み量になってくると、1本道でないと人間の頭はフォローできなくなるようです。その証拠に、Chatworkの1本のタイムラインを上から順に読むだけで、「これは仕事A」「これは仕事B」という具合に内容を振り分けて理解できました。おかげでタスク漏れはありませんでした。脳は、プロジェクトマネジメントツールより優秀で、「スケジュール」「仕事内容」など、プロジェクトマネジメントツールが指定する場所にある大量の情報を、あちこち閲覧するよりも、ことの経緯を1本道で見る方が物事を理解しやすいのでしょう。
勘ぐりよ、さようなら。過程が目に見える「透明な議論」を実現
- Chatworkの利用で得た成果を教えてください。
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金谷 :ひとつ目は、「状況を把握する時間」を短縮できたことです。大人数で一度にコミュニケーションが取れるので情報共有が早いですし、「あのファイルどこに行った?」など必要なデータが行方不明になりにくいです。メールは便利ですが、3人以上のやり取りになると破綻しがちです。Chatworkは、メールやソーシャルメディアよりもベターなツールです。
2つ目は、「タスク機能」により自分の仕事が明確で、もれなく仕事を遂行できた点です。イベント準備の最大の締切が迫っていたころ、私には常に100個ほどのタスクがありました。「タスクが108個を越えたら処理を始める!」と決めていて、仕事に取り掛かるバロメータになりました。
金谷 : 3つ目は、「楽になった」ということです。楽というのは、極端なことを言うと、ちょっとしたことがChatworkを使うとオープンになるということです。ひとつの決定事項が出た時、その決定に至る過程や議論の内容を、第3者が想像する必要がなくなります。T(仮称)とソーシャルネットワークサービスを併用していた時は、議論は個別にソーシャルネットワークサービスで、結論はT(仮称)でという具合で、議論の当事者以外は、結論に至った筋道が分からない構造でした。だから、どうしてこの結論なのだろうか?と誰もが考え、困惑していました。
一方Chatworkでは、ひとつのプロジェクトの議論を、1本のタイムライン上ですべておこないます。結論が出たら、「タスク機能」で担当者に仕事を割り当てます。そのため、タイムラインを順に読むだけで、ことの経緯がすべて分かり、透明な議論ができるようになりました。有志の団体なので、参加できる時もできない時もあります。情報の追跡が途切れても、事の経緯が分かるので、読むだけで皆に追いつける点はとても役に立ちました。
「Chatworkが無かったらと思うと、ゾッとします。」
- TEDxKyotoの運営において、もしChatworkが無かったら、どうなっていましたか?
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金谷 : Chatworkが無かったらと思うと、ゾッとします。他のツールを使い、再び破綻していたと思います。ガントチャートを引いても、予定通りにいかなかった時の立て直しはとても大変です。
それに比べ、Chatworkは「使い方のルールがゆるい」。だから続けられます。TEDxKyotoには誰もが、それこそ「どうして?」と思うほど本気で取り組みました。使いたい機材・施したい演出などのこだわりも凄かったです。これらを進めるにあたり、Chatworkで「カメラさんどうする?」「パートナーの表示はどうすればいい?」「3本目の動画の編集終わりました」など、雑談するだけで、自分たちで掲げた高い目標をクリアしていけました。使い方のルールがゆるく、自由度が高いのです。
これを一言で表すなら、「罫線だけが引いてあるノート」です。他のサービスは、情報を書き込む場所の指定がありますが、Chatworkはありません。その「使い方のゆるさ」が長続きしている理由です。
「TEDxOsakaU」など、他のTEDxでもChatworkを利用
- 最後に、イベント運営に携わる読者に一言お願いします。
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金谷 : Chatworkは、
- 速報性(掲示板として利用できること)
- 応答性(特定の書込みに対してコメントできること)
- 可読性(参加者全員に、タイムラインを読むだけで情報共有できる)
があるからイベントのマネジメントにぴったりです。Facebookアカウントでログインできる敷居の低さ、YouTube動画がChatwork上で再生できる気の利いた機能など、イベント運営に役立つ機能があり、使えば使うほど良さを実感します。今では、「TEDxOsakaU」など、他のTEDxでもChatworkを利用しています。Chatworkは、ITに強い・弱いに関わらず、誰もが使いこなせるイベントマネジメントツールです。
- 業種
- 利用規模
- 目的・効果