属人化のデメリットを徹底解説!わざと属人化を起こすケース、属人化のメリットなど意外な知識も紹介
目次
特定の担当者に業務の知識やスキルが集中してしまう「属人化」は、企業にとって多くのデメリットやリスクを与えるものです。
この記事では、属人化とは何か、なぜ発生するのかという基礎知識から、属人化がもたらすデメリット、属人化を解消するための有効な方法まで詳しく解説します。
属人化をわざと引き起こすケースや属人化のメリットなどの意外な知識も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
「属人化」とは?
「属人化(ぞくじんか)」とは、特定の業務について、進め方・詳細な手順・必要な知識やノウハウなどが担当者個人の経験や勘の中に留まってしまい、組織内で共有されていない状態を指します。
その結果、担当者がいないと業務が円滑に進まなくなったり、場合によっては完全に停止してしまったりする場合もあります。
属人化は、担当者が意図的に情報を囲い込むことによって発生する場合もありますが、多くは無意識のうちに進行します。
例えば、長年同じ担当者が業務を行う中で独自の手順が確立されたり、マニュアルが更新されないまま担当者の記憶だけが頼りになったりすることによって、自然と属人化が進んでしまうケースです。
特に、専門性が高い業務や、手順が明文化されていない業務、引き継ぎが不十分なまま担当者が変わった業務などで属人化が発生しやすい傾向があります。
「属人化」と「業務のスペシャリスト」の違い
属人化と混同されやすい概念に、「業務のスペシャリスト」の存在があります。
両者は、特定の業務に詳しいという点では似ていますが、その性質と組織への影響には大きな違いがあります。
業務のスペシャリストは、特定の業務や分野において、深い知識、高いスキル、豊富な経験を持つ人材のことです。
スペシャリストは、その専門性を活かして、難易度の高い業務を遂行したり、業務改善を主導したり、他のメンバーを指導・育成したりすることで、組織全体の能力向上に貢献します。
重要なのは、スペシャリストが持つ知識やノウハウは、マニュアル化されたり、研修などを通じて他のメンバーに共有されたりすることが可能であり、組織の資産となりうる点です。
一方、属人化した状態では、担当者が持つ知識やノウハウが、その人個人の中に留まり、組織内で共有・継承されません。
そのため、担当者がいなければ業務が回らないという「依存状態」を生み出し、組織にとってはリスクとなります。
よって、スペシャリストが組織の「強み」であるのに対し、属人化は組織の「弱点」と言えるでしょう。
特定の従業員が高い専門性を持つこと自体は利点といえます。
問題なのは、その知識やスキルが共有されず、他の誰も代替できない状態になっていることであり、両者の違いを理解しておくことが重要です。
属人化が起こる原因
業務の属人化は、なぜ発生してしまうのでしょうか。
その原因は一つではなく、以下のような複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。
1. マニュアルの不備・欠如
業務の手順やルールが明文化されたマニュアルが存在しない、あるいは存在しても内容が古く更新されていないことが、属人化の大きな原因です。
担当者は、口頭での引き継ぎや自身の経験に基づいて業務を進めるしかなく、そのプロセスが他の人には見えにくくなります。
2. 業務の複雑性・専門性の高さ
業務内容が非常に複雑であったり、高度な専門知識や特殊なスキルが求められたりする場合、他の従業員が容易に代替することが難しく、特定の担当者に依存しやすくなります。
このような業務では、担当者自身も、そのノウハウを言語化して他者に伝えることが困難な場合があります。
3. 担当者の固定化・長期化
長期間にわたって同じ担当者が特定の業務に従事していると、その業務に関する知識や経験がその人に集中しやすくなります。
異動やジョブローテーションの機会が少ない組織では、属人化が進みやすい傾向があります。
4. 情報共有・人材育成の文化の欠如
組織内に、知識やノウハウを積極的に共有したり、後進を育成したりする文化が根付いていない場合、属人化は起こりやすくなります。
担当者が「自分の仕事を取られたくない」と感じて情報を囲い込んだり、多忙さから後輩への指導を怠ったりすることも、情報共有を妨げる要因となります。
5. 暗黙知の存在
業務の中には、マニュアル化しにくい「経験に基づく勘」や「暗黙の了解」といった、言葉で表現しにくい知識(暗黙知)が存在します。
この暗黙知の部分が大きい業務ほど、他の人が代替するのが難しく、属人化しやすくなります。
6. 評価制度の問題
特定の担当者しかできない業務があることを、その担当者の「能力」と評価してしまうような評価制度も、属人化を助長する可能性があります。
本来評価されるべき状況は、業務を標準化し、誰でもできる状態にすることです。
属人化がもたらす6つのデメリット
業務の属人化は、企業にとって看過できない多くのデメリットをもたらします。
ここでは、代表的な6つのデメリットを解説します。
デメリット1:業務の停滞・ブラックボックス化
担当者が不在(休暇、休職、退職など)になると、業務の進め方がわかる人が他にいないため、業務が完全に停止してしまうリスクがあります。
また、業務プロセスが担当者の中でしか完結しているため、他の人からは「何をやっているかわからない」ブラックボックス状態となり、管理や改善が困難になります。
デメリット2:業務品質の低下・不安定化
属人化された業務は、担当者のスキルや経験、その日のコンディションによって、品質が変動しやすくなります。
また、万が一担当者が不在となり、他の人が不慣れな状態で業務を代行した場合、ミスが発生したり、通常よりも時間がかかったりして、業務品質が著しく低下する可能性があります。
デメリット3:不正リスクの増大
業務プロセスがブラックボックス化し、他者によるチェック機能が働かない状態は、不正行為が発生しやすい環境を生み出します。
特に、経理部門などでお金の流れに関わる業務が属人化している場合、横領などの不正リスクが高まります。
内部統制の観点からも、属人化は解消すべき課題です。
デメリット4:技術・ノウハウの喪失
担当者が退職や異動をする際に、その人が持つ知識や経験(暗黙知を含む)が適切に引き継がれなければ、企業にとって貴重な技術やノウハウが失われてしまいます。
これは、企業の競争力を低下させる大きな損失です。
特に、熟練技術者のノウハウが途絶えてしまうことは、事業継続の危機につながる可能性もあります。
デメリット5:担当者の負担増大とストレス
「自分がいなければ仕事が回らない」という状況は、担当者にとって大きな責任感と同時に、過度な業務負担と精神的なストレスをもたらします。
休みを取りにくくなったり、業務が集中して長時間労働になったりしがちです。
この過度な負担は、担当者のモチベーション低下や、心身の不調、そして離職につながるリスクを高めます。
デメリット6:業務改善の停滞
属人化された業務は、その担当者にとっては慣れたやり方かもしれませんが、客観的に見ると非効率な手順が含まれていることが少なくありません。
その上、業務プロセスが可視化されていないために問題点が発見されにくく、改善の機会が失われてしまいます。
よって、組織全体の生産性向上の妨げとなってしまうことがあります。
属人化のデメリットが特に大きい業務
属人化はどのような業務でも起こり得ますが、特に以下のような業務で発生した場合、そのデメリットやリスクは大きくなる傾向があります。
1. 専門性の高い技術・開発業務
特定のプログラミング言語を用いたシステム開発や、特殊な機械の操作・保守、研究開発など、高度な専門知識や特殊なスキルが求められる業務です。
担当者が限られていることが多く、その人が不在になるとプロジェクトが頓挫したり、製品の生産がストップしたりするおそれがあります。
2. 経理・財務業務
決算業務や税務申告、資金繰り管理など、企業の根幹に関わるお金の管理業務です。
属人化すると不正のリスクが高まるだけでなく、担当者の退職によって決算が組めなくなったり、税務申告が遅れたりする事態を招きかねません。
3. 情報システム管理業務
社内サーバーの管理や、基幹システムの運用・保守など、企業のITインフラを支える業務です。
担当者しかパスワードを知らない、設定内容が記録されていないといった状態では、システム障害が発生した際に迅速な復旧ができず、事業全体に大きな影響が出ます。
4. 顧客対応・営業業務(特定顧客担当)
特定の顧客との長年にわたる関係性の中で、担当者だけが知っている情報や、担当者個人の信頼関係に依存している業務です。
担当者が変わった途端に、顧客との関係が悪化したり、取引が停止したりするリスクがあります。
5. 許認可申請・管理業務
事業の継続に必要な許認可の申請や、その更新手続きなど、行政機関とのやり取りが必要な業務です。
担当者しか手続きの方法や期限を把握していない場合、更新漏れなどによって事業停止のリスクが生じます。
わざと属人化を起こすケースとは
多くの場合、属人化は意図せず発生しますが、中には担当者が「わざと」属人化を引き起こしているケースも存在します。
その背景には、担当者個人の心理的な要因が隠れていることがあります。
1. 自身の存在価値を高めたい(解雇不安)
「自分がいなければこの仕事は回らない」という状況を作り出すことで、社内における自身の存在価値を高め、解雇されるリスクを減らそうとする心理が働く場合があります。
特に、自身のスキルに自信がない、あるいは会社の経営状況に不安を感じている場合に、このような行動が見られることがあります。
2. 権限や裁量を手放したくない
特定の業務を長年担当していると、その業務に対する「縄張り意識」が生まれ、他の人に仕事のやり方を教えたり、権限を委譲したりすることに抵抗を感じる場合があります。
自分のやり方を変えたくない、自分のペースで仕事を進めたいという思いから、意図的に情報を共有しないことがあります。
3. 変化への抵抗
マニュアル化やシステム化によって、これまで慣れ親しんだ仕事のやり方が変わることへの抵抗感から、非協力的な態度をとるケースです。
新しいツールを覚えるのが面倒だと感じたり、自分の仕事が機械に奪われるのではないかという不安を感じたりすることが原因です。
このようなケースへの対処は容易ではありませんが、担当者を一方的に責めるのではなく、なぜそのような行動をとるのかという背景にある不安や不満に耳を傾け、丁寧なコミュニケーションを通じて、変化への理解と協力を促していく必要があります。
属人化にメリットはある?
属人化は多くのデメリットをもたらしますが、一方で、限定的ながらメリットとして捉えられる側面も全くないわけではありません。
ただし、これらのメリットは、長期的なリスクと比較すると非常に小さなものであることを理解しておく必要があります。
属人化のメリットとして考えられることとして、以下のような点が挙げられます。
一時的な業務スピードの速さ:その業務に精通した担当者が一人で完結させるため、他の人に確認したり、相談したりする手間がなく、一時的に業務スピードが速い場合があります。
高度な専門性の発揮:特定の分野において、他の追随を許さないほどの高い専門性を持つ人材がいる場合、その人にしかできない高度なアウトプットが期待できることがあります(ただし、これは「スペシャリスト」の領域に近いです)。
これらのメリットは、担当者が常に最高のパフォーマンスを発揮できるという前提があって初めて成り立つものです。
担当者の不在や退職などのリスクを考慮すると、組織全体としてはデメリットの方がはるかに大きいと言わざるを得ません。
属人化の対義語として挙げられる言葉は「標準化」や「仕組化」です。
企業が目指すべき姿勢は、特定の個人に依存するのではなく、誰が担当しても一定の品質で業務を遂行できる、持続可能な仕組みを構築することと言えます。
属人化の解消に有効な方法5選
属人化のリスクを理解した上で、それを解消するためには、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは、代表的な解消法を5つご紹介します。
1. マニュアルの作成・整備
属人化解消の基本となるのが、業務マニュアルの作成です。
担当者へのヒアリングなどを通じて、業務の目的、手順、判断基準、注意点などを詳細に洗い出し、誰が読んでも理解・再現できるように文書化します。
文章だけでなく、図やフローチャート、スクリーンショットなどを活用し、視覚的にわかりやすくすることが重要です。
マニュアルは、一度作成したら終わりではなく、定期的に見直し、常に最新の状態に保つ必要があります。
2. 業務の可視化・標準化
マニュアル作成と並行して、業務プロセス全体を可視化し、標準化する取り組みも重要です。
業務フロー図を作成したり、担当者ごとの作業時間を計測したりして、現状の業務を客観的に把握します。
そのうえで、無駄な手順や非効率な部分を見つけ出し、最適な業務プロセスへと改善・統一します。
3. 複数担当制・ジョブローテーションの導入
一つの業務を常に複数の担当者が把握している状態を作ることも有効です。
主担当と副担当を置いたり、定期的に担当業務を入れ替えるジョブローテーション制度を導入したりすることで、特定の担当者しか業務を知らないという状況を防ぎます。
従業員の多能工化にもつながり、組織全体の柔軟性が高まります。
4. DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
デジタル技術を活用して、属人化しやすい業務を自動化・システム化するアプローチです。
例えば、複雑なExcelマクロで行っていた集計作業をBIツールに置き換えたり、担当者の経験と勘に頼っていた顧客対応履歴をCRMシステムで共有したりします。
RPAツールで定型作業を自動化することも有効です。
DXは、業務の標準化と効率化を同時に実現します。
5. アウトソーシング(外部委託)の活用
社内で対応するのが難しい専門性の高い業務や、定型的なノンコア業務を、専門の外部業者に委託(アウトソーシング)する方法です。
外部のプロフェッショナルに任せることで、業務品質を担保しながら、社内の属人化リスクを根本から解消できます。
社内の従業員は、より付加価値の高いコア業務に集中することができるようになります。
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まとめ
本記事では、業務の属人化がもたらすデメリットや、属人化の解消に有効な対策について解説しました。
属人化は、多くの企業が気づかぬうちに抱えている経営リスクです。
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自社の状況を俯瞰し、必要に応じて改善策を講じてみてください。
