【業種別の成功事例に学ぶ】属人化の解消に効果的な方法は？今すぐ使える「属人化危険度チェックリスト」も紹介

多くの企業で業務の「属人化」が課題となっています。

特定の担当者に知識や手順を依存する業務にはさまざまなリスクがあり、組織全体の成長を妨げる要因となりかねません。

この記事では、属人化の意味や発生原因、デメリットとともに、属人化を解消することのメリットを解説します。

さらに、属人化解消に成功した企業の事例も業種別に紹介するため、ぜひ参考にしてください。

属人化の意味、原因、リスクとは

まず、「属人化」という言葉の意味、発生する原因、そして放置した場合のリスクについて正しく理解しておきましょう。

属人化の意味

属人化とは、特定の業務の進め方や知識、ノウハウなどが担当者個人の経験や勘の中に留まってしまい、組織内で共有・標準化されていない状態を指します。

担当者がいないと他の誰もその業務を同じように遂行できない、あるいは業務そのものが止まってしまうような状況です。

属人化が起こる原因

属人化は、以下のような複数の要因が複合的に絡み合って発生することが一般的です。

• マニュアルの不備・欠如：業務手順が文書化されていない、または情報が古く更新されていない。

• 業務の複雑性・専門性：高度な専門知識や特殊なスキルが必要で、他の人が容易に代替できない。

• 担当者の固定化：長期間同じ担当者が業務に従事し、異動やジョブローテーションが少ない。

• 情報共有文化の欠如：知識やノウハウを組織内で共有する意識や仕組みが弱い。

• 暗黙知の多さ：経験に基づく勘やコツといった、言語化しにくい知識（暗黙知）に依存している。

• 担当者の意図：自身の存在価値を示すために、意図的に情報を囲い込むケースもある。

属人化が引き起こすリスク

属人化を放置すると、企業経営において以下のようなリスクが生じます。

• 業務の停滞・ブラックボックス化：担当者の不在時に業務が止まる。

  業務プロセスが不透明になる。

• 業務品質の低下・不安定化：担当者以外が行うと品質が落ちる。

  担当者のコンディションに品質が左右される。

• 不正リスクの増大：チェック機能が働かず、不正行為が起こりやすくなる。

• 技術・ノウハウの喪失：担当者の退職・異動により、企業の貴重な知識資産が失われる。

• 担当者の負担増大と離職リスク：業務が集中し、担当者の心身の負担が増加、離職につながる可能性がある。

• 業務改善の停滞：業務プロセスが見えにくいため、問題点が発見されず、改善が進まない。

属人化の危険度チェックリスト10項目

自社の業務に属人化のリスクが潜んでいないか、以下の10項目でチェックしてみましょう。

当てはまる項目が多いほど属人化が進行している危険度が高いと判断でき、早急な対策が必要です。

属人化を解消するメリット

属人化を解消し、業務を標準化・仕組化することは、企業に次のようなメリットをもたらします。

メリット1：業務の安定化と継続性の確保

業務プロセスが標準化され、マニュアルなどが整備されることで、特定の担当者に依存することなく、誰が担当しても一定の品質で業務を遂行できるようになります。

担当者の急な不在や退職が発生した場合でも、業務が滞るリスクを低減し、事業の継続性を確保できます。

メリット2：業務品質の向上と均一化

マニュアル作成などを通じて業務プロセスを見直す過程で、最適な手順が確立されます。

その結果、担当者による品質のばらつきがなくなり、組織全体の業務品質が向上し、安定します。

ミスの削減にも効果があります。

メリット3：生産性の向上

標準化された効率的な手順で業務を行えるようになるため、作業時間の短縮や、無駄な工程の削減につながります。

また、担当者が不在の場合でも他の人がスムーズに業務を引き継げるため、業務の停滞によるロスを防ぎます。

組織全体の生産性が向上します。

メリット4：人材育成の効率化

整備されたマニュアルや標準化されたプロセスは、新人や異動者に対する教育・研修を効率化します。

OJT担当者の負担を軽減し、早期に戦力化することが可能になります。

教育の質も均一化され、組織全体のスキルレベルの底上げに貢献します。

メリット5：不正リスクの低減と内部統制の強化

業務プロセスが可視化され、標準化されることで、他者によるチェック機能が働きやすくなります。

ブラックボックス化を防ぎ、不正行為が行われにくい透明性の高い業務環境を構築できます。

企業の内部統制を強化する上で重要なメリットです。

メリット6：組織としての知識・ノウハウの蓄積

担当者個人の経験や勘といった暗黙知が、マニュアルなどの形式知として組織に蓄積されます。

退職などによる貴重なノウハウの流出を防ぎ、組織全体の知識レベルを高めることができます。

属人化の解消に有効な方法

属人化のリスクを理解し、解消のメリットを認識した上で、具体的にどのような方法で解消に取り組めばよいのでしょうか。

ここでは、代表的な解消法を5つご紹介します。

1. マニュアルの作成・整備

属人化解消の基本であり、効果的な方法の一つが、業務マニュアルの作成です。

担当者へのヒアリングなどを通じて、業務の目的、手順、判断基準、注意点などを詳細に洗い出し、誰が読んでも理解・再現できるように文書化します。

文章だけでなく、図やフローチャート、スクリーンショットなどを活用し、視覚的にわかりやすくすることが重要です。

2. 業務の可視化・標準化

マニュアル作成と並行して、業務プロセス全体を可視化し、標準化する取り組みも重要です。

業務フロー図を作成したり、担当者ごとの作業時間を計測したりして、現状の業務を客観的に把握します。

そのうえで、無駄な手順や非効率な部分を見つけ出し、最適な業務プロセスへと改善・統一します。

3. 複数担当制・ジョブローテーションの導入

一つの業務を常に複数の担当者が把握している状態を作ることも有効です。

主担当と副担当を置いたり、定期的に担当業務を入れ替えるジョブローテーション制度を導入したりすることで、特定の担当者しか業務を知らないという状況を防ぎます。

従業員の多能工化にもつながり、組織全体の柔軟性が高まります。

4. DX（デジタルトランスフォーメーション）の推進

デジタル技術を活用して、属人化しやすい業務を自動化・システム化するアプローチです。

例えば、複雑なExcelマクロで行っていた集計作業をBIツールに置き換えたり、担当者の経験と勘に頼っていた顧客対応履歴をCRMシステムで共有したりします。

RPAツールで定型作業を自動化することも有効です。

DXは、業務の標準化と効率化を同時に実現します。

5. アウトソーシング（外部委託）の活用

社内で対応するのが難しい専門性の高い業務や、定型的なノンコア業務を、専門の外部業者に委託（アウトソーシング）する方法です。

外部のプロフェッショナルに任せることで、業務品質を担保しながら、社内の属人化リスクを根本から解消できます。

社内の従業員は、より付加価値の高いコア業務に集中することができます。

属人化を解消するステップ

属人化の解消は、場当たり的に進めるのではなく、計画的に段階を踏んで取り組むことが成功の鍵です。

ここでは、解消に向けた基本的なステップを5段階でご紹介します。

ステップ1：現状把握と課題特定

まず、組織内のどの業務が、どの程度属人化しているのか、現状を正確に把握することから始めます。

前述のチェックリストを活用したり、各部署の担当者にヒアリングを行ったりして、属人化している業務とその担当者を特定します。

特定した業務について、属人化が引き起こしている具体的な問題点（業務停滞のリスク、品質のばらつきなど）を洗い出します。

ステップ2：目標設定と優先順位付け

洗い出した課題の中から、解消に取り組むべき業務の優先順位を決定します。

業務の重要度や、属人化によるリスクの大きさなどを考慮して判断します。

優先度の高い業務について、「いつまでに」「どのような状態（誰でも担当できる、マニュアルが完備されているなど）」を目指すのか、具体的な目標を設定します。

ステップ3：解消策の検討と計画策定

設定した目標を達成するために、どのような解消策（マニュアル作成、DX、アウトソーシングなど）が最適かを検討します。

選択した解消策について、具体的な実行計画（担当者、スケジュール、必要なツールや予算など）を策定します。

計画は、関係者間で十分に共有し、合意を得ておくことが重要です。

ステップ4：解消策の実行

策定した計画に沿って、解消策を実行に移します。

マニュアル作成であれば、担当者へのヒアリングや執筆作業を進めます。

DXであれば、ツールの導入や設定、業務フローの変更を行います。

実行段階では、現場の担当者との連携を密にし、進捗状況を確認しながら進めることが重要です。

ステップ5：効果測定と定着・改善

解消策を実行した後、その効果を測定・評価します。

設定した目標が達成できたか、新たな問題が発生していないかなどを確認します。

効果が見られた場合は、その取り組みを組織全体に定着させるための仕組み（マニュアルの定期更新ルールなど）を構築します。

期待した効果が得られなかった場合は、原因を分析し、計画を修正して改善を図ります。

属人化の解消は、一度で完了するものではなく、継続的な取り組みが必要です。

【業種別】属人化の解消に成功した企業の事例7選

実際に、企業はどのように属人化の課題を乗りこえ、解消に成功しているのでしょうか。

ここでは、さまざまな業種や解消方法の具体的な成功事例を7つご紹介します。

事例1：マニュアル作成と動画活用で新人教育期間を半減（飲食業）

ある飲食店チェーンでは、店舗ごとのOJTに頼っていたため、新人スタッフの立ち上がりに時間がかかり、教える側の負担も大きいという課題がありました。

そこで、基本的な接客手順や調理方法を網羅した詳細なマニュアルを作成しました。

さらに、重要なポイントは動画マニュアルも作成し、スマートフォンでいつでも確認できるようにしました。

新人はまずマニュアルと動画で基礎を学び、OJTでは実践的な指導に集中できるようになりました。

結果、新人教育にかかる期間が従来の半分に短縮され、教える側の負担も大幅に軽減されました。

事例2：業務改善プラットフォーム導入で案件管理を標準化（コンサルティング業）

ある中小コンサルティング会社では、案件の進捗状況や顧客情報が、各コンサルタントの頭の中や個別のExcelファイルで管理されており、情報共有が滞っていました。

担当者が不在だと、他のメンバーが状況を把握できないという属人化が問題でした。

そこで、クラウド型の業務改善プラットフォームを導入し、案件管理のデータベースを構築しました。

すべての案件情報（顧客情報、進捗状況、関連資料など）をプラットフォームに集約し、メンバー全員がリアルタイムで状況を確認できるようにしました。

結果、情報共有が円滑になり、担当者不在時の対応もスムーズになりました。

報告業務も効率化され、コンサルタントは顧客への価値提供に集中できるようになりました。

事例3：RPA導入で請求書発行業務を自動化（卸売業）

ある卸売業では、毎月数百件の請求書発行業務を、担当者が販売管理システムからデータを抽出し、Excelで加工して作成するという手作業で行っていました。

この作業は特定の担当者にしかできず、毎月多くの時間がかかっていました。

そこで、RPA（Robotic Process Automation）ツールを導入し、データ抽出から請求書作成、PDF化までの一連の作業をロボットに記憶させ、自動化しました。

結果、担当者はボタンをクリックするだけで請求書発行が完了するようになり、作業時間を月間数十時間削減できました。

ミスもなくなり、担当者は他の分析業務などに時間を割けるようになりました。

事例4：社内Wiki導入で問い合わせ対応を効率化（ITサービス業）

あるITサービス企業の情報システム部門では、社員からのPC操作やシステムに関する問い合わせ対応に、担当者が多くの時間を取られていました。

同じような質問が繰り返し寄せられることも多く、非効率でした。

そこで、社内Wikiツールを導入し、よくある質問とその回答（FAQ）、基本的な操作マニュアルなどを集約しました。

社員はまずWikiで情報を検索するようになり、情報システム部門への問い合わせ件数が大幅に減少しました。

担当者は、より専門的なシステムの改善やセキュリティ対策に時間をかけられるようになりました。

事例5：アウトソーシング活用で経理業務を標準化（製造業）

ある中小製造業では、長年一人のベテラン経理担当者がすべての経理業務を担っており、業務が完全に属人化していました。

担当者の高齢化に伴い、将来的な業務継続に不安がありました。

そこで、日々の記帳代行や請求書発行、支払い管理といった定型業務を、経理専門のアウトソーシングサービスに委託することを決断しました。

導入にあたり、アウトソーシング会社と協力して業務プロセスを可視化・標準化し、マニュアルも整備しました。

結果、担当者の退職後もスムーズに業務が継続できる体制が構築され、月次決算も早期化されました。

事例6：複数担当制で顧客対応の質を向上（不動産業）

ある不動産管理会社では、物件ごとに担当者が決まっており、その担当者しか入居者の情報や過去の対応履歴を把握していないという属人化がありました。

担当者が不在だと、入居者からの問い合わせに迅速に対応できないことが問題でした。

そこで、顧客管理システム（CRM）を導入し、すべての顧客情報と対応履歴を一元管理するようにしました。

さらに、各物件に主担当と副担当を置く複数担当制を導入しました。

結果、担当者不在時でも他のスタッフが状況を把握し、スムーズに対応できるようになり、入居者満足度が向上しました。

事例7：技術動画マニュアルで若手育成を促進（建設業）

ある建設会社では、ベテラン職人の持つ熟練技術が、若手にうまく伝承されないことが課題でした。

OJTだけでは限界があり、技術レベルにばらつきが出ていました。

そこで、ベテラン職人の作業風景をスマートフォンで撮影し、ポイントを解説するテロップを入れた「技術動画マニュアル」を作成し、社内サーバーで共有しました。

若手従業員は、いつでも好きな時に、繰り返し動画を見て学ぶことができるようになりました。

結果、若手従業員のスキル習得スピードが向上し、全体の技術レベルの底上げにつながりました。

属人化の予防・解消には『Chatwork アシスタント』がおすすめ！

属人化している業務を標準化したくてもマニュアル作成やDX推進のリソースがない、担当者が退職したけれど即戦力となる人材がいないなどのように、属人化の解消に課題を抱えつつも、社内だけでの対応が難しい企業におすすめしたいのが、アウトソーシングサービス『Chatwork アシスタント』の活用です。

『Chatwork アシスタント』は、国内利用者数No.1のビジネスチャット「Chatwork」が提供する、オンライン完結型のアシスタントサービスです。

経理、人事、総務、秘書といった、属人化しやすいバックオフィス業務全般を、厳しい採用試験を突破した優秀なアシスタントがチームでサポートします。

業務を外部のチームに委託することで、特定の担当者に依存する体制から脱却し、業務の標準化と安定運用を実現します。

マニュアル作成のサポートも依頼できるため、属人化の防止にも役立ちます。

Chatwork アシスタントで属人化を解消するアプローチとは

『Chatwork アシスタント』では、次のような方法で属人化の解消にアプローチします。

以下は一例であり、各企業の状況に応じて柔軟な対応が可能です。

1. 採用・教育コストゼロで、業務の担い手を確保

属人化を解消するために、新たな担当者を採用・育成するには多くの時間とコストがかかります。

『Chatwork アシスタント』であれば、契約後すぐに、さまざまな業務の実務経験を積んだプロのアシスタントチームを活用できます。

採用や教育の手間とコストをかけることなく、質の高い業務遂行体制をスピーディーに構築できます。

2. チーム対応による業務の標準化と継続性

アシスタントは個人ではなくチームで業務を担当し、業務内容はマニュアル化されて共有されます。

そのため、特定のアシスタントが不在の場合でも、他のメンバーが対応でき、業務が滞ることはありません。

業務が標準化され、特定の個人に依存しない、持続可能な業務体制が実現します。

3. マニュアル作成サポートによるノウハウの形式知化

属人化している業務について、アシスタントが担当者へのヒアリングを通じて業務内容を整理し、わかりやすいマニュアルを作成するサポートも提供しています。

担当者の頭の中にしかなかった暗黙知を、組織の資産である形式知へと転換するお手伝いをします。

4. Chatworkによる円滑な連携と業務の可視化

アシスタントとの業務連絡や指示、成果物の確認は、すべてビジネスチャット「Chatwork」で完結します。

チャットの履歴はすべて記録として残るため、業務の進捗状況や、どのようなやり取りがあったのかが可視化されます。

連絡内容や業務のブラックボックス化を防ぎ、透明性の高い運用が可能になります。

まとめ

本記事では、業務の属人化がもたらすデメリットと解消に有効な方法、属人化の解消に成功した事例などについて解説しました。

属人化は、多くの企業が気づかぬうちに抱えている経営リスクであり、業務の停滞、品質の低下、不正の発生、そして貴重なノウハウの喪失といった深刻な問題を引き起こしかねません。

マニュアルの整備、業務の標準化、複数担当制の導入、DXやアウトソーシングの活用など、自社の状況に応じた方法で属人化の予防・解決を目指してみてください。