オンラインストレージは自作できる?構築する方法と注意点

目次

オンラインストレージを自作するメリット
オンラインストレージは、インターネット上のストレージにデータを保存できるサービスで、データのバックアップや大容量データの保管、社内外や個人間でのファイル共有などに活用されています。
なお、オンラインストレージは多様なベンダーが提供しているものの、「容量を増やしたい」「セキュリティを強化したい」などと感じている方もいらっしゃるでしょう。
そのような不満を抱えている場合は、オンラインストレージを自作し、仕様をカスタマイズするのも1つの方法です。ここからは、オンラインストレージを自作するメリットについて紹介します。
自由に設計・構築ができる
オンラインストレージを自作する最大のメリットは、自由な設計・構築が可能な点です。
既存のオンラインストレージは機能やデザインが決まっていますが、自作すれば自社に適した仕様にカスタマイズできます。オンラインストレージの自作には専門知識が必要ですが、スキルが高ければより自由度の高い設計・構築が可能です。既存のサービスでは容量や利用可能ユーザー数、セキュリティなどの面で自社の運用に合わないと感じている場合は、オンラインストレージを自作するメリットがあるといえるでしょう。
運用費用を削減できる
運用費用を削減できる点も、オンラインストレージを自作するメリットの1つです。
既存のオンラインストレージサービスの場合、サーバーやソフトウェアなどの初期費用が不要で、インターネット環境さえあれば利用を開始できます。その反面、ストレージ容量やユーザー数などに応じて毎月利用料金が発生するため、コスト負担が大きいと感じるケースもあるでしょう。
一方、オンラインストレージを自作する場合は、サーバーやソフトウェアなどを用意する必要がありますが、一度構築してしまえばメンテナンス以外では基本的に費用は発生しません。そのため、既存のサービスと比較すると、自作したほうが長期的なコストは安いといえます。
ただし、オンラインストレージを構築・使用するためのソフトウェアの中には、機能やサポート内容などに応じて利用料金が発生するものもあるため注意が必要です。オンラインストレージの自作を検討する際は、使用期間や必要な容量・ユーザー数などを想定したうえで、既存のサービスと費用を比較することが大切です。
オンラインストレージを自作するデメリット
オンラインストレージの自作には、設計・構築の自由度や運用コスト面でメリットがある一方、デメリットも少なからずあります。どのようなデメリットがあるのか、事前にしっかり理解しておきましょう。
ここでは、オンラインストレージを自作するデメリットについて紹介します。
初期費用がかかる
オンラインストレージを自作する最も大きなデメリットは、初期費用がかかる点です。
オンラインストレージを自作するには、サーバーやソフトウェア、ハードウェアなどをすべて自社で用意しなければなりません。さらに、構築には専門知識と労力が必要となるため、それらの人的コストも発生します。自作するための予算や人材を確保するのが困難な場合は、初期費用がかからない既存のサービスを利用したほうが無難といえるでしょう。
運用・管理の手間がかかる
運用・管理の手間がかかる点も、オンラインストレージを自作するデメリットの1つです。
既存のオンラインストレージであれば運用・管理はベンダーがおこないますが、自作の場合はすべて自社でおこなわなければなりません。当然、メンテナンスやトラブル対応には専門知識と労力が必要となるため、人的コストは増大するでしょう。さらにユーザー数やデータ容量が増えていけば、ストレージの分散や管理担当者の増員なども必要となります。運用・管理にリソースを充てられなければ、自作のオンラインストレージを活用していくのは困難です。そのような場合は、日々のメンテナンスからサポートまでベンダー側でおこなってくれる既存のサービスを利用したほうが安心といえます。
セキュリティリスクがある
セキュリティリスクに注意しなければならない点も、オンラインストレージを自作するデメリットの1つといえます。
既存のオンラインストレージは、強固なセキュリティ対策が施されているものが多いため、安心して利用できます。しかし自作の場合は、セキュリティ対策もすべて自社でおこなわなければなりません。セキュリティ対策を万全にするには、より高度な専門知識に加え、常に最新情報の収集に努め、知識をアップデートし続ける必要があります。設計・構築や運用・管理と同様、セキュリティ対策も担当者のスキルや確保できるリソースによって、品質が大きく左右されます。オンラインストレージを自作し、安全に運用していけるだけの体制が作れない場合は、既存のサービスの利用も検討してみましょう。
オンラインストレージを自作する場合、管理〜運用に手間がかかってしまったり、初期費用がかかったりとデメリットがあるのも事実です。また、一から構築するとなると専門的なスキルも必要になるため、スムーズに導入したい場合にはオンラインストレージサービスの導入がおすすめです。
オンラインストレージを構築する方法
オンラインストレージの自作を検討する際は、構築方法についても事前に確認しておく必要があります。自作でオンラインストレージを構築する手順は、以下のとおりです。
- 動作環境の整備
- オンラインストレージの構築
- オンラインストレージの検証
ここでは、オンラインストレージの構築方法について、手順に沿って解説していきます。
1.動作環境の整備
まずは、オンラインストレージの動作環境を整備しましょう。
オンラインストレージを構築するためのソフトウェアとしては、NextcloudやownCloudが代表的です。これらはオープンソースのオンラインストレージであり、自社サーバーに設定することでプライベートクラウド環境を構築できます。システム要件はソフトウェアによって異なり、たとえばNextcloudの場合は以下の通りとなっています。
■Nextcloudサーバー
対象 | 動作環境 |
サーバーOS |
|
データベース |
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Webサーバー |
|
PHP ランタイム |
|
2.オンラインストレージの構築
次に、オンラインストレージを構築していきます。オンラインストレージを自作する場合は、自社で運用・管理することになるため、十分なセキュリティ対策を施さなければなりません。
たとえば、SSL証明書のインストールやファイアウォールで外部からアクセスできるユーザーの制限、パスワードポリシーの設定など、さまざまなセキュリティ対策を施しておくと、より安全性を高められるでしょう。さらに、OS・ソフトウェアを常に最新の状態にしておく、定期的にデータのバックアップを取っておくなどの対策も必要です。
また、NextcloudやownCloudなどのソフトウェアには、多種多様なプラグインアプリが存在します。カレンダーやToDo管理、ファイルのバージョン管理、外部ストレージとの連携など、目的に合わせてプラグインを設定することで、活用の幅が広がり業務効率化にも役立つでしょう。
3.オンラインストレージの検証
オンラインストレージの構築が完了したら、検証をおこなっていきましょう。以下のような網羅的な検証をおこなうことで、自作のオンラインストレージを安心して利用できます。 動作オンラインストレージが正常に動作しているか確認します。
ファイルのアップロードやダウンロード、ファイル共有、同期、ユーザーの認証など、利用する主な機能の動作に不自然なところがないかチェックしてください。
セキュリティセキュリティソフトでスキャンし、セキュリティの穴がないか確認します。不正なアクセスや情報漏洩を想定してサーバに対する疑似攻撃をおこない、セキュリティに問題がないかチェックしましょう。
パフォーマンス複数人でアクセスしてもパフォーマンスが落ちないかどうか検証しましょう。ファイルのアップロードやダウンロードの速度、同時にアクセスしたときの応答が大きく落ちないかなど、常に安定した状態を保てるかを確認してください。
利用利用者が使いやすいかどうか検証しましょう。実際に現場のスタッフに使ってもらい、操作性やアクセスのしやすさ、使い勝手などをチェックしてください。
互換性オンラインストレージは他のプラットフォームやアプリケーションと連携することで大きな効果を発揮します。異なるプラットフォームのブラウザやアプリケーションとの互換性を確認しておきましょう。
オンラインストレージを自作する際の注意点
オンラインストレージを自作する際には以下の点に注意しましょう。
- 高度な専門知識が必要
- ハードやソフトは自分で管理する
それぞれ詳しく解説します。
高度な専門知識が必要
オンラインストレージを自作するには、ストレージそのものだけでなく、サーバーやソフトウェアなどについての知識も高レベルで網羅しておく必要があります。
NextcloudやownCloudなどのソフトウェアは、対応OSがWindowsではなくLinuxとなっているため、専門知識がなければまったく使いこなせません。
オンラインストレージの自作は、設計・構築の自由度が高いというメリットがある一方、導入や運用・管理には高度な専門知識と労力が必要です。そのため、社内に専門知識を持つ人材がいない場合や運用・管理にリソースを割けない場合は、既存のサービスを利用したほうが無難といえるでしょう。
近年はオンラインストレージも多様化しており、機能を絞ったシンプルなものから豊富な機能を備えた高性能なものまで、数多くのサービスから選ぶことができます。まずは既存のオンラインストレージをよく比較したうえで、自社のニーズに近いサービスを試してみるのがおすすめです。
ハードやソフトは自分で管理する
オンラインストレージを自作する場合は、ハードウェアやソフトウェアは自社で用意し、管理しなければなりません。データのバックアップや保守、トラブル時の対応、OSやミドルウェアなどのアップデートも自社でおこなう必要があります。特にビジネスで利用する場合は、重要な情報が含まれるファイルをオンラインストレージに保管することもあるでしょう。情報漏洩やデータ消失、障害による業務停止などのトラブルを防ぐためにも、万全なセキュリティ対策や迅速な障害対応は欠かせません。
高性能なオンラインストレージ3選
機能やセキュリティの面で自社の運用に適したオンラインストレージを求めているものの、自作するのはハードルが高いと感じる方も少なくないでしょう。そのような場合は、機能が豊富で高性能なオンラインストレージの利用がおすすめです。
ここでは、おすすめの高性能なオンラインストレージを3つ紹介します。
セキュアSAMBA
セキュアSAMBAは、簡単にファイル共有・編集ができる法人向けオンラインストレージです。豊富なセキュリティ機能が標準搭載されており、社内・社外を問わずセキュアな環境でファイルを管理できます。
Chatworkを契約しているユーザー向けのお得なプランもあり、コストを抑えて導入したいと考えている人におすすめです。
提供元 | 株式会社kubellストレージ |
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国 | 日本 |
課金タイプ | データ容量課金 |
容量・料金 | フリー 月額料金:¥0、容量:1GB スタンダード 月額料金:¥25,000、容量:300GB ビジネス 月額料金:¥35,000、容量:500GB エンタープライズ 月額料金:¥48,000、容量:1TB エンタープライズ 月額料金:¥88,000、容量:3TB エンタープライズ 月額料金:¥128,000、容量:5TB エンタープライズ 月額料金:¥178,000、容量:10TB エンタープライズ 月額料金:¥298,000、容量:30TB |
利用可能ID数 | 無料のみ2IDまで、有料版は無制限 |
導入実績 | 8000社以上 |
特徴 | 操作性・サポート体制・料金プラン・専門性に優れ、中小企業を中心に導入実績あり |
URL | 公式サイト |
Box
boxは、アメリカのbox社が提供しているサービスです。
世界で100,000社以上の導入実績があり、セキュリティの高さに定評があります。boxにアップロードされたファイルは「アクセス権限」や「強力なユーザー認証」などのセキュリティ機能によって守られているため、安心して利用できます。
また、有料のBusinessプランはストレージ容量に上限がなく、利用可能人数が無制限である点も魅力です。
提供元 | 株式会社Box Japan |
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国 | アメリカ |
課金タイプ | ID課金 |
容量・料金 | Individual 月額料金:¥0、容量:10GB Personal Pro 月額料金:¥1,320、容量:100GB Business Starter 月額料金:¥605、容量:100GB Business 月額料金:¥1,980、容量:無制限 Business Plus 月額料金:¥3,300、容量:無制限 Enterprise 月額料金:¥4,620、容量:無制限 Enterprise Plus 月額料金:¥6,600、容量:無制限 |
利用可能ID数 | 法人向けプランは最低3ID以上 |
特徴 | アメリカのbox社が提供。容量・人数が無制限、セキュリティの高さが評判 |
Google Drive(Google One)
Google One は、Googleアカウントがあれば誰でも利用可能なオンラインストレージサービスで、Googleドライブ・Gmail・Googleフォトの保存容量を統合的に拡張できます。有料では100GB〜2TB以上のプランがあり、最大5人まで容量を共有でき、家族間での共同利用が可能です。
さらに最近では生成AI「Gemini」のプレミアム機能が搭載された「AIプレミアム」プランも選択でき、ストレージだけでないユーザー体験価値が備わっています。
提供元 | グーグル合同会社 |
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国 | アメリカ |
課金タイプ | ID課金・容量課金 |
容量・料金 | 無料 月額料金:¥0、容量:15GB ベーシック 月額料金:¥290、容量:100GB プレミアム 月額料金:¥1,450、容量:2TB Google AI Pro 月額料金:¥2,900、容量:2TB |
利用可能ID数 | 1IDから利用可能 |
特徴 | Googleアカウントを持っていればすぐに利用可能 |
オンラインストレージはリスクを理解してから自作しよう
オンラインストレージの自作には、設計・構築の自由度の高さや運用費用の削減というメリットがあるものの、自作するには、ハードウェアやソフトウェアなどの初期費用に加え、サーバー管理に関する高度な専門知識が必要です。また、運用・管理やセキュリティ対策もすべて自社でおこなわなければなりません。
そのため、オンラインストレージを自作する場合は、リスクやデメリット、注意点をしっかり理解しておくことが重要です。もし、自社での構築や運用・管理は難しいと感じる場合は、本記事で紹介したオンラインストレージサービスの利用も検討してみましょう。