経理担当・一人経理が退職するときの対応策|会社側の引き継ぎ手順と担当者の負担軽減方法
「来月末で退職したいと言ってきた。後任の見込みはなく、月次業務をどうするか見当もつかない」
「一人で経理を担い続けているが、もう限界かもしれない」
経理に関するこうした悩みは、会社の経理体制によって課題の性質がまったく異なります。まず、自社の状況がどれに当てはまるかを確認してみてください。
経理体制によって、課題と対応策は変わる
経理をめぐる問題を考えるうえで、まず自社の経理体制がどの状況にあたるかを整理することが重要です。体制によって課題も、取るべき対応策も変わってきます。
経営者自身が経理を担っている
専任の経理担当者がおらず、代表や経営者が経理業務を自ら処理している状態です。「退職」という問題は発生しませんが、事業の成長とともに業務量が増加し、本業との両立が難しくなるケースが多く見られます。
経理担当者が1名だけいる(いわゆる「一人経理」)
経理業務が1名の担当者に集中しており、その担当者が退職を申し出た、または「辞めたい」と感じている状態です。会社側・担当者側の両方に課題が生じやすい体制です。
複数人の経理チームがある
経理部門に複数名が在籍しており、そのうちの1名が退職を予定している状況です。業務の引き継ぎ・後任確保・チーム内の業務分担の再設計が主な課題になります。
この記事では、会社側の課題と対応策を前半に、担当者側の課題と解決策を後半にまとめています。ご自身の状況に該当する章から読み進めていただくことも可能です。
経営者自身が経理を担っている会社に起きること
経営者自身が経理を担っている場合、最も大きな問題は業務の属人化と本業への支障です。
経営判断・営業・採用など本来集中すべき業務と経理業務を兼務することで、どちらにも十分な時間が割けなくなります。月末・月次処理のたびに本業が止まる、決算期に経営判断が遅れるといった状況は、事業規模が拡大するほど深刻になります。
また経営者が経理を一人で抱えている場合、病気・出張・繁忙期に業務が完全に停止するリスクがあります。「自分にしか経理のことはわからない」という状態は、会社全体の脆弱性に直結します。
このような状況に心当たりはありませんか。
- 月末・月次処理のたびに本業が止まる
- 記帳・請求・給与計算をすべて自分で処理している
- 税理士への報告資料の作成に毎月多くの時間を取られている
- 自分が不在のときに経理業務が完全に止まる
この状況を改善するための具体的な方法は、後述の「会社側の解決策」をご参照ください。
経理担当者が退職したとき、会社側に起きること
経理担当者が1名しかいない会社の場合
一人経理の担当者が退職した場合、以下のような業務が即座に影響を受けます。まず自社でどの業務が該当するかを確認してください。
月次業務への影響チェックリスト
- 請求書の発行・送付
- 売掛金・買掛金の管理と入金消込
- 支払処理(振込・仕訳)
- 給与計算・給与明細の作成
- 勤怠データの集計と確認
- 記帳・会計ソフトへの入力
- 経費精算の確認・処理
- 月次決算の補助作業
一人経理体制では業務が属人化しているため、引き継ぎに必要なマニュアルが整備されていないケースが多く見られます。退職を告げられてから動き始めるのでは、対応が後手に回りやすいのが実情です。
資金繰り・従業員への給与支払い・税務申告といった会社の根幹に影響が及ぶ前に、早期に対応策を講じることが重要です。
複数人の経理チームから退職者が出た場合
複数人体制の経理チームで退職者が出た場合、業務が完全に止まるリスクは一人経理体制より低い一方、異なるリスクが生じます。
最も注意すべきは、残るメンバーへの業務負荷の集中です。退職者の業務がチーム内で再分配される際、特定のメンバーへの集中が起きやすく、それが連鎖的な離職につながるケースが少なくありません。
また退職者が特定の業務を専任で担っていた場合、その業務のノウハウが社外に流出するリスクもあります。引き継ぎの設計と、チーム全体の業務量の再可視化が急務です。
このような状況が起きやすくなります。
- 退職者の業務が特定メンバーに集中し過重労働が発生する
- 引き継ぎが不十分なまま退職日を迎え、業務精度が低下する
- 残るメンバーのモチベーションが低下し、連鎖的な離職が起きる
- 後任採用が長期化し、暫定対応が恒常化する
経理担当者が退職・不在になっても、業務を止めないための解決策
経営者が経理を担っている場合も、担当者が退職する場合も、会社側が取れる解決策は共通しています。自社の状況と緊急度に応じて組み合わせることが現実的です。
デジタルツールの導入で属人化を減らす
クラウド会計ソフト・経費精算システム・請求書発行ツールなどを導入することで、特定の担当者に依存していた定型作業を自動化・標準化できます。
銀行口座やクレジットカードとの自動連携、請求書の自動発行・送付機能を活用することで、担当者が変わっても業務が継続できる環境を作ることができます。ツールへの移行は退職者が在籍中に行うことで、引き継ぎの負担を大幅に軽減できます。
社内体制の見直しと協力体制の構築
経費精算のルールの明確化・承認フローの簡素化・各部署からの書類提出ルールの統一など、経理部門以外の協力を得やすい仕組みを作ることで、経理担当者への負担集中を構造的に解消できます。
複数人体制の場合は、退職者の業務を可視化し、チーム全体での再分配を明示的に設計することで、特定メンバーへの集中を防ぐことができます。
税理士・社労士への一部依頼
税務申告・年末調整・社会保険手続きなど、専門資格が必要な業務や法改正への対応が必要な業務は、税理士・社労士に依頼することで担当者不在のリスクを下げることができます。すでに顧問契約がある場合は、対応範囲を改めて確認・拡張してもらうことも選択肢の一つです。
業務代行サービスの活用
退職までの期間が短い場合や、採用活動と並行して業務を止めたくない場合に特に有効な選択肢です。記帳・給与計算・勤怠集計・支払処理など、定型業務を外部の専門チームにまとめて委託できるサービスがあります。
マニュアルが整備されていない状態でも、担当者へのヒアリングをもとに業務フローを整備できるサービスが多く、在職中の担当者が残っている間にスタートすることで引き継ぎの精度が上がります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 即応性 | ○ 最短数日〜1週間程度で稼働可能なサービスもある |
| コスト | 月額固定または時間単位。採用・派遣と比較検討が必要 |
| 継続性 | 契約継続する限り安定的に対応可能 |
| 複数業務対応 | ○ 経理・労務・総務など複数業務をまとめて依頼できるサービスあり |
Chatwork 経理アシスタントについて
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一人経理担当者が「辞めたい」と感じるとき、起きること
ここからは、経理を担当している方に向けた内容です。
一人経理の担当者が「辞めたい」と感じる背景には、いくつかの共通した要因があります。
業務量と精神的負担の蓄積
日々の記帳から決算業務、資金管理、税務申告まで、経理に関わる全ての業務を一人でこなす必要があります。繁忙期の残業が常態化しやすく、経理業務に求められる正確性のプレッシャーが精神的な負担として積み重なります。
些細なミスも許されないという緊張感が続くことで、日常的なストレスが高い水準で続きやすいのが一人経理の実情です。
スキル停滞と孤立感
経理部門が一人の場合、社内に専門的な話ができる相手がおらず、税法の改正対応や会計処理の判断を一人で抱える場面が多くなります。
新しい知識を学ぶ機会や研修に参加する時間も限られているため、スキルアップの停滞感と孤立感が重なり、「このままでいいのか」という不安が生まれやすい環境です。
給与・待遇・将来への不安
一人で経理業務全般を担う責任の重さに比べて、給与や待遇が正当に評価されていないと感じる方も少なくありません。
またキャリアパスが見えにくく、ルーティンワークが中心になりがちな一人経理では、成長実感を得にくいという問題もあります。これらが重なることで、転職や離職を検討するきっかけになるケースが多く見られます。
一人経理の負担を減らし、働き続けるための解決策
デジタルツールで手作業を減らす
会計ソフト・経費精算システム・請求書発行ツールなどを活用することで、入力・照合・発行といった定型作業の時間を大幅に削減できます。クラウド型ツールであれば場所を問わず作業できる柔軟性もあり、繁忙期の業務集中を緩和する効果も期待できます。
上司・経営者への業務量の可視化と相談
一人経理の業務量は、上司や経営者には見えにくいことがあります。月次の業務量・残業時間・対応している業務の種類を数値で示し、現状を適切に伝えることで、人員追加・外部サービス導入・業務分担の見直しといった対策につながるケースがあります。
まず声に出して相談することが、環境改善の第一歩です。
税理士・社労士への一部依頼
税務申告・年末調整・社会保険手続きなど、専門資格が必要な業務や知識的に不安がある業務は、税理士・社労士に依頼することで担当者の精神的な負担を大きく下げることができます。すでに顧問契約がある場合は、対応範囲を改めて確認・拡張してもらうことも選択肢の一つです。
外部代行サービスへの移管を会社に提案する
定型業務の一部を外部の業務代行サービスに任せることで、担当者自身が本来集中すべき業務や学習・スキルアップの時間を確保しやすくなります。
「全部自分でやらなければいけない」という状況を変えるために、外部化できる業務を整理して会社に提案することは、担当者自身が働き続けられる環境を作るための現実的な手段の一つです。
まとめ
経理をめぐる課題は、会社の経理体制によって性質が異なります。
経営者自身が経理を担っている場合は本業への支障と属人化リスク、経理担当者が1名の場合は退職による業務継続リスク、複数人体制での退職は残るメンバーへの負荷集中と連鎖離職リスクが主な課題です。
一方でこれらの課題に対する解決策は共通しています。デジタルツールによる標準化・社内体制の見直し・専門家への依頼・外部代行サービスの活用を、自社の状況と緊急度に応じて組み合わせることが現実的なアプローチです。
担当者の立場からも、ツールの活用・上司への相談・外部化の提案など、自分一人で全てを抱え込まない選択肢は複数あります。
どの立場においても、「使えるリソースを組み合わせる」という視点が、現状を打開するための第一歩です。
