スキルマトリックスとは?作成のメリットや項目、注意点を解説
目次
スキルマトリックスは、企業の取締役メンバーがもっているスキルを表にしたものです。
企業によってスキルの詳細は変わりますが、取締役全体のスキルを一覧で確認できます。
株主や社外に向けた情報開示ができるため、公正で透明性の高い企業運営ができるでしょう。
スキルマトリックスの作成項目やメリット、注意点を解説します。
スキルマトリックスとは?
スキルマトリックスは、企業の取締役メンバーがもっているスキルを表にしたものです。
表にする項目は、主に下記のとおりです。
- 企業経営
- マーケティング、営業
- 財務、会計
- IT、デジタル
- 労務、人材開発
- 法務、ガバナンス
- グローバル経験
- ESG、サステイナビリティ
- DX(デジタルトランスフォーメーション)
企業の中枢になる取締役メンバーのスキルについて、株主・社外に向けた情報開示ができます。
スキルマトリックスの公表目的
取締役が保有するスキル全体のバランスを保てるといった意図が、公表目的にあげられます。
ほかには取締役メンバーを選任・解任するときの判断基準にできるでしょう。
国内・海外の投資家は、取締役の候補者の経歴で選任を判断しており、どのようなスキルがあるのかわかりづらいという課題がありました。
スキルマトリックスの作成で、取締役メンバーのスキルを情報開示できて、投資家から信頼を獲得できます。
日本企業のスキルマトリックスの公表状況
日本企業でスキルマトリックスを公表しているのは、2020年時点で49社(東証一部上場企業かつ時価総額上位500社において)という結果でした。
日本では2016年に情報開示がはじまり、現在のところ24業種(東証33業種ベース)がスキルマトリックスを公表している状況です。[※1]
スキルマトリックスの基本的な9項目
企業によってスキルマトリックスの項目は変わります。
基本的なスキルの9項目を解説します。
企業経営
今後の経営方針を決めるうえで欠かせないもので、取締役の軸になる重要なスキルです。
とくに取締役会をまとめる取締役は、企業経営のスキルの保有が求められます。
マーケティング・営業
自社の継続的な事業活動に欠かせない売上・利益を生み出すスキルです。
自社の営業・マーケティング部門の担当者、または外部から人材を雇用する形で、取締役に求められるスキルを確保します。
財務・会計
経営全体を俯瞰して、事業活動の投資に必要な資金調達を調整できるスキルです。
コンプライアンス遵守や不正会計の予防など、企業の運営を見守る役割も担います。
IT・デジタル
企業の事業活動において、業務効率化・生産性の向上に欠かせない必須スキルです。
取締役にIT・デジタルスキルの保有者がいると、時代の変化に取り残されない対応を進めやすくなります。
人材開発・労務
企業の未来は、自社の経営資源である人材の獲得・育成によって左右されます。
労務については、労働に関わるコンプライアンス遵守をしながら、対応と施策の仕組みづくりを進められるスキルが必要です。
法務・ガバナンス
企業の不祥事・問題を避けるためには、法律・コンプライアンス遵守が必要です。
取締役に法務・ガバナンスのスキル保有者がいると、リスクマネジメントの体制が整います。
グローバル経験
国内だけでなく、海外に事業を拡大したいときに役立つスキルです。
企業の事業内容に合わせて、追加で業種・時事に関するテーマを含めて作成すると、企業の特徴を表現できるスキルマトリックスを作成できます。
ESG・サステイナビリティ
ESG・サステイナビリティとは、持続可能な社会の実現に必要な考え方です。
ESGは、下記の3項目の頭文字をとっています。
- 環境(Environment)
- 社会(Social)
- ガバナンス(Governance)
事業活動を中長期的に発展させるには、社会や環境の課題など、幅広い視点で見据えられる取締役のスキルが必要です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)
企業の事業活動を継続する上で、デジタル技術を使った変革が求められています。
UI・UXデザインや開発に関するスキルなど、取締役にDXのスキル保有者がいると、今後の事業活動に大きな影響を与える効果が期待できるでしょう。
スキルマトリックスを作成するメリット
取締役のスキルを明確にできると、どのような効果が期待できるのでしょうか。
スキルマトリックスを作成するメリットを見ていきましょう。
株主・社外に向けた情報開示ができる
スキルマトリックスに関わるコーポレートガバナンス・コードは、企業統治指針をまとめた内容です。
企業に投資する株主・従業員・地域社会の人々に対して、社会的責任を果たすためにも、経営の軸になる取締役のスキルを公開することで、公正で透明性の高い情報開示ができるでしょう。
株主が取締役の選任・解任を決めるときの判断軸にできるメリットもあります。
スキルのバランスを客観的に整理できる
スキルマトリックスは、取締役のスキルをバランスよく配置することが重要だと考えられています。
取締役が保有するスキルを並べることで、スキルの偏りやバランスを整理する機会にできるでしょう。
スキルマトリックスの作成手順
実際にスキルマトリックスを作成するときの手順を見ていきましょう。
各自のスキルと根拠を明確にする
スキルマトリックスの項目は、取締役が高いスキルを保有している根拠を明確にするために、一定の基準を設けて各項目に「●」をつけていきます。
スキルの項目は、取締役の自己評価で決めていくため、過去の経歴・実績、保有資格など、客観的な根拠になる理由を添えておくと親切です。
作成内容の承認を受ける
スキルマトリックスの作成が完了したら、取締役会で承認を受けて情報開示を進めます。
その後、株主総会や社外に向けて内容を公開する流れです。
スキルマトリックスを作成する注意点
スキルマトリックスを作成するときの注意点を見ていきましょう。
昇格予定の取締役を考慮する
スキルマトリックスに記載するメンバーは、今後昇格予定の取締役を含めておくとよいでしょう。
バランスを判断しやすくなって、今後の課題を発見しやすくなり、追加でメンバーを確保する機会にできます。
社内用と外部公表用を作成する
スキルマトリックスを目的別に使用できるように、社内用と外部用にわけて作成しましょう。
社内用は、取締役が保有するスキルの内容とレベルなど詳細を記載します。
外部用は、取締役が保有するスキル全体の概要を記載し、見やすい内容にまとめておくことが大切です。
スキルマトリックスの活用事例
住宅メーカーの事例では、自社のグローバルビジョンに合わせて、作成したスキルマトリックスを再検討しました。
公式サイトには、取締役・監査役の選任理由が明確に記載されており、企業の透明性や信頼を獲得できるスキルマトリックスを公開しています。
スキルマトリックスの作成は企業の信頼につながる
スキルマトリックスの作成は、国内・海外の投資家の信頼を獲得するためにも重要です。
取締役が保有するスキルを整理する機会にできて、今後の取締役の選任・解任するときの判断基準にできます。
自社独自の項目を含めながら、外部の方が見たときに内容を把握しやすいスキルマトリックスを作成してください。
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[※1]出典:日本総研「CSRを巡る動き:スキルマトリックス公表企業数は昨年比2.5倍に」
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=36807
※本記事は、2022年6月時点の情報をもとに作成しています。