【社労士監修】独占禁止法とは?規制内容や違反した場合の措置をわかりやすく解説

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【社労士監修】独占禁止法とは?規制内容や違反した場合の措置をわかりやすく解説

目次

独占禁止法は市場の公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようルールを定めています。

この記事では、独占禁止法の目的や規制内容、違反した場合の措置などを詳しく解説します。

独占禁止法とは

独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できることを目的とする法律です。

正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といい、企業の事業独占を禁止して公正な取引を確保するためのルールを定めています。

また、法律を運用する機関として公正取引委員会が設置され、独占禁止法とその特別法である下請法を執行しながら市場の競争秩序を維持しています。

独占禁止法の目的

独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。

「公正かつ自由な競争」とは、市場の中で事業者自らが商品の価格、生産量などを決めてお互いに競い合うという意味です。

競争がおこなわれることで、事業者は優れた商品を提供し、消費者はニーズに合った商品を選択することができます。

そのため独占禁止法では、市場の競争秩序の維持を目的として、消費者の利益確保ができるようルールを定めているのです。

独占禁止法の規制内容

独占禁止法では、主に以下の6つを規制しています。[※1]

  • 私的独占の禁止
  • 不当な取引制限(カルテル)の禁止
  • 事業者団体の規制
  • 企業結合の規制
  • 独占的状態の規制
  • 不公正な取引方法の禁止

それぞれを詳しく解説します。

私的独占の禁止

私的独占とは、 ある事業者が他の事業者の活動を排除または支配し、取引の競争を実質的に制限することです。

私的独占は大きく分けて「排除型私的独占」と「支配型私的独占」の2つに分けられます。

「排除型私的独占」とは、事業者が単独、または他の事業者と共同で不当に競争相手を排除したり、新規参入者を妨害したりする行為です。

一方、「支配型私的独占」は事業者が単独で、または他の事業者と共同で株式取得などにより市場を支配しようとする行為です。

いずれも、私的に市場を独占する行為として禁止されています。

不当な取引制限(カルテル)の禁止

不当な取引制限(カルテル)とは、事業者同士で相互に連絡を取り合い、商品の価格や生産量などを共同で取り決め、競争を制限する行為です。

たとえば、事業者同士で「商品Aは100円以下の価格を設定しない」ことを合意し、価格競争を停止させるなどの行為が該当します。

また、入札に参加する事業者たちが事前に相談して、受注事業者や受注金額などを決めてしまう「入札談合」も不当な取引制限として禁止されています。

事業者団体の規制

事業者団体の規制とは、事業者団体が事業者の数を制限して新規参入を認めなかったり、価格の引上げや数量の制限などで不当に制限する行為です。

たとえば、事業者団体が会員の販売価格について基準価格や料金表を作成する行為などが該当します。

なお、規制している対象者は、事業活動を実施している事業者だけでなく、2つ以上の事業者で構成される社団や財団、組合なども含みます。

企業結合の規制

企業結合の規制とは会社の株式取得や合併、分割などによって、競争が実質的に制限されることです。

公正取引委員会では「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」を公表しており、そこに該当する行為は企業結合の規制となる可能性があります。

独占的状態の規制

独占的状態の規制とは、50%超のシェアを持つ事業者を規制するものです。

ひとつの事業者が50%超のシェアをもつと、需要やコストが減少しても価格低下が起こらない可能性があるため、規制が設けられています。

そのため、公正取引委員会が独占的状態を認めれば、その事業者が持つ営業の一部を譲渡するよう命じる場合があります。

不公正な取引方法の禁止

取引について、以下3つの観点から公正な競争を阻害するおそれがある場合は、不公正な取引として禁止されます。

  • 自由な競争を制限するおそれがある行為
  • 競争手段が不公正な行為
  • 自由な競争の基盤を侵害するおそれがある行為

たとえば、正当な理由なく特定の事業者との取引を拒絶したり、ある商品と別の商品を抱き合わせて販売して別商品の購入を強要する行為などが該当します。

独占禁止法を補完する「下請代金支払遅延等防止法」

独占禁止法には、補完する法律として「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」があります。[※2]

下請法とは、親事業者と下請事業者との間の取引を公正にし、下請事業者の利益を保護することを目的とした法律です。

親事業者による受領拒否や下請代金の支払遅延、減額、返品などの行為を規制しています。

これにより、力関係で上回る親事業者が下請事業者を搾取する行為を防ぎ、違反があった場合には、公正取引委員会が迅速に改善を求めることができます。

独占禁止法を違反した場合の措置

独占禁止法に違反した場合は以下の措置をとられる可能性があります。

  • 排除措置命令
  • 課徴金納付命令
  • 犯則調査
  • 民事措置

それぞれを詳しく解説します。

排除措置命令

排除措置命令とは、違反行為を速やかに排除するよう命じる行政処分です。[※3]

たとえば、不正な価格引き上げがおこなわれた場合には、価格引き上げの決定破棄とその周知、再発防止のための対策などが命じられます。

もし排除措置命令に従わない場合は、その事業者に刑事罰が科される可能性もあります。

課徴金納付命令

課徴金納付命令とはカルテルや入札談合、私的独占などがおこなわれた場合に、課徴金を納めるよう命じる行政処分です。[※3]

違反行為をした事業者は、対象商品や売上額、購入額などに応じた算定率を掛けて計算された金額を課徴金として国庫に納めなければいけません。

犯則調査

公正取引委員会は、独占禁止法に違反の疑いがある事業者には、営業所への立入検査や関係者からの事情聴取などの調査をおこなっています。[※4]

また、独占禁止法違反をした事業者で、犯則事件として調査する必要がある場合には、臨検や捜索、差押えも行われます。

民事措置

独占禁止法違反の被害者は以下2つの民事的救済制度を行使できます。[※5]

  • 差止請求
  • 損害賠償請求

被害者が自ら直接裁判所に対して違反行為の差止めを求めたり、損害賠償を求めることができます。

独占禁止法を正しく理解しよう

独占禁止法は企業経営において「知らなかった」ではすまされない重要な法律です。

もし違反した場合は、差止請求や損害賠償などの民事上の処分だけでなく、罰金や懲役などの行政・刑事処分を受ける可能性もあります。

そのため、本記事で解説した独占禁止法について、社員が正しく理解することが大事です。

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[※1]公正取引委員会「独占禁止法の規制内容」
https://www.jftc.go.jp/dk/dkgaiyo/kisei.html#csmShiteki

[※2]中小企業庁「下請代金支払遅延等防止法」
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/daikin.htm

[※3]公正取引委員会「排除措置命令と課徴金納付命令」
https://www.jftc.go.jp/ippan/part3/action_04.html

[※4]公正取引委員会「犯則調査権限」
https://www.jftc.go.jp/dk/seido/hansoku.html

[※5]公正取引委員会「独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度が整備されました」
https://www.jftc.go.jp/dk/seido/minjikyusai/siso02.html


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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記事監修者:北 光太郎(きた こうたろう)

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供。

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