【社労士監修】パートタイム・有期雇用労働法とは?改正のポイントや必要な企業対応

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【社労士監修】パートタイム・有期雇用労働法とは?改正のポイントや必要な企業対応

目次

パートタイム・有期雇用労働法は、正社員とパートタイム・有期雇用労働者の不合理(合理的ではない)な待遇差を禁止した法律です。

法律の施行により、企業には不合理な待遇差の解消や格差の理由についての説明が求められています。

この記事では、パートタイム・有期雇用労働法の改正ポイントや企業に必要な対応について詳しく解説します。

パートタイム・有期雇用労働法とは

パートタイム労働者の割合は2016年に雇用者全体の約3割を占め、日本経済を支える重要な役割を担っています。[※1]

一方で、パートタイム労働者が正社員と比べて賃金などの待遇が働きや貢献に見合っていない状況が見られています。

そうした背景から1993年に、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保や雇用管理の改善などを図る「パートタイム労働法」が施行されました。

その後2008年、2015年に改正され、さらに働き方改革関連法案の改正において2020年4月に正社員とパートタイム・有期雇用労働者の不合理な待遇格差を是正するため、「パートタイム・有期雇用労働法」に改正・改名されました。[※2]

パートタイム労働法との違い

パートタイム労働法は、パートタイム労働者のみを対象とした法律です。

一方、パートタイム・有期雇用労働法は、パートタイム労働者だけでなく、有期雇用労働者も対象とし適用される対象者を拡大しています。

また、正社員とパート・有期雇用労働者などの非正規社員との間で、給与や福利厚生などのあらゆる不合理な待遇差を禁止し、いわゆる「同一労働同一賃金」が明確に定義されました。

パートタイム・有期雇用労働法の改正ポイント

パートタイム・有期雇用労働法の改正ポイントは以下のとおりです。[※3]

  • 不合理な待遇差の禁止
  • 待遇に関する説明義務の強化
  • 裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

それぞれを詳しく解説します。

不合理な待遇差の禁止

パートタイム労働法の改正により、雇用する通常の労働者とすべてのパートタイム・有期雇用労働者の待遇について、不合理な格差を禁止しました。

待遇の違いが不合理と認められる判断は、個別の待遇ごとに性質や目的に照らして判断しなければいけません。

待遇については基本給や賞与、各種手当などの賃金だけではなく、食堂や休憩室の利用、教育訓練についても対象です。

企業は、業務の内容や責任の程度、配置の変更の範囲などを比較し、不合理な待遇差があれば是正しなければなりません。

待遇に関する説明義務の強化

パートタイム・有期雇用労働法の施行により、パートタイム労働者や有期雇用労働者は「同じ仕事をしているのに正社員と待遇が違う」場合に、企業に説明を求めることができるようになりました。

企業は説明を求められた従業員に対し、待遇の説明をする義務が生じることになります。

なお、説明を求めた従業員に対して不利益な取扱いをしてはいけません。

裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

裁判外紛争解決手続とは、裁判以外の方法で紛争を解決する手続のことです。

当事者同士での話し合いと裁判の中間に位置づけられ、専門的な知識を持った利害関係のない第三者を交えてトラブルの解決を図ります。

改正により、待遇の格差や待遇内容の説明について裁判外紛争解決手続の対象となりました。

パートタイム・有期雇用労働法で必要な企業の対応

パートタイム・有期雇用労働法の施行により企業には以下の対応が求められています。[※2]

  • 正社員との不合理な待遇差の解消
  • 就業規則の変更
  • 労働条件の説明義務の対応

それぞれを詳しく解説します。

正社員との不合理な待遇差の解消

不合理な待遇差は、正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間で「職務の内容」と「配置の変更の範囲」の違いで判断されます。

もし、「職務の内容」と「配置の変更の範囲」が同じ場合には、均等待遇にあたるとしてパートタイム・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取扱いが禁止されます。

また、「職務内容」あるいは「配置の変更の範囲」が異なる場合は均衡待遇にあたり、パートタイム・有期雇用労働者の待遇は、責任の度合いなどを考慮しながら不合理な待遇差を解消しなければいけません。

具体的な手順は以下のとおりです。

  1. 現状の雇用形態を整理・確認
  2. 待遇の状況を確認
  3. 均等待遇と均衡待遇の判断
  4. 待遇差の是正策を検討

順を追って解説します。

現状の雇用形態を整理・確認

まずは、自社で雇用する労働者の雇用形態を整理し、パートタイム・有期雇用労働法の対象となる労働者がいるかどうかを確認します。

雇用形態は区分や名称に関わらず、「労働契約期間の定めがあるか」「1週間の所定労働時間に差があるか」の2つ観点から、対象労働者を判断しましょう。

待遇の状況を確認

待遇の確認はパートタイム・有期雇用労働者に関わるすべての待遇です。

正社員との間で待遇ごとに「同じ」か「異なるか」をひとつひとつ確認していきます。

たとえば、「通勤手当」を正社員には支給し、パート社員には支給していない場合は、待遇が異なるとして是正を検討しなければいけません。

均等待遇と均衡待遇の判断

待遇差の解消にあたって、「均等待遇」と「均衡待遇」を判断しなければいけません。

均等待遇とは、正社員と比べて「職務の内容」と「配置の変更の範囲」が同じ場合です。

均等待遇に該当する労働者がいた場合は、すべての待遇について差別的取扱いが禁止されています。

一方、均衡待遇は「職務の内容」と「配置の変更の範囲」が異なる場合です。

均衡待遇に該当する労働者がいた場合は、待遇について不合理な格差があってはいけません。

労働者の能力や経験を考慮し、その待遇差に不合理ではない理由を明確にもつ必要があります。

待遇差の是正策を検討

不合理な待遇差があった場合には是正策を検討し、計画的に進めなければいけません。

たとえば、「これまでパートタイム労働者には業績手当を支給していなかったが、今後は責任の違いに応じた額を支給する」といった対応方針を定めます。

また同時に、待遇改善に向けた予算の確保についても検討が必要です。

このように是正策の検討は時間を要するため、できるだけ早めに自社の状況を確認する必要があります。

就業規則の変更

不合理な待遇差があるかを点検し、その解消のために就業規則を変更する際は、代表する従業員と十分に話し合うことが求められます。

就業規則変更の際には以下の点を意識しましょう。

  • パートタイム・有期雇用労働者の意見をくみ取り、反映するようにする
  • 労使で有意義な話し合いができるように情報を適切に提供する

また、不合理な待遇差の解消をおこなうにあたっては、正社員の待遇を引き下げること(不利益変更)は望ましい対応とはいえません。

就業規則の変更において従業員の受ける影響を鑑みて、慎重に検討をおこないましょう。

労働条件の説明義務の対応

企業側には、パートタイム・有期雇用労働者の求めがあった場合には、正社員との待遇差について理由の説明が義務付けられています。

そのため、あらかじめ待遇の説明ができる資料を用意し、誰が対応しても企業として適切に対処できるよう備えておく必要があります。

なお、待遇の決定基準に違いがある場合は、その基準の違いが不合理でないことも説明が必要です。

パートタイム・有期雇用労働法を正しく理解しよう

これまでパートタイム労働者や有期雇用労働者は、正社員に比べて賃金だけでなく教育訓練などの実施率も低く、大きな格差につながっていると指摘され続けてきました。

パートタイム・有期雇用労働法はそうした格差を是正する法律です。

雇用形態のみで判断するのではなく、仕事の内容や責任の度合いなど総合的に判断して待遇を決定しましょう。

また、不合理な待遇差を解消する際は、パートタイム・有期雇用労働者の意見をくみ取り、反映することが大切です。

パートタイム労働者や有期雇用労働者も企業の貴重な人材として位置づけ、適切な管理を行いましょう。

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[※1]内閣府大臣官房政府広報室「改正パートタイム労働法が施行」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201503/2.html

[※2]厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000815429.pdf

[※3]多様な働き方の実現応援サイト
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/reform/chapter07.html

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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

記事監修者:北 光太郎(きた こうたろう)

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。

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