【専門家監修】冬季うつの原因とは?対策方法や特徴を解説
目次
「冬になってから気分が落ち込みがち」「体がだるくて疲れやすい」など、冬場に差し掛かるにつれて、気持ちや体調の変化に困っている人もいるでしょう。
「冬は寒いから仕方がない」と考えている人もいるかもしれません。
しかし、冬季うつと呼ばれる症状の可能性があります。
この記事では、冬季うつとはなにか、症状や原因、対策方法についてわかりやすく解説します。
冬季うつとは
冬季うつとは、秋から冬ごろにかけて「ゆううつな気持ちになる」「気分が落ち込む」「疲れやすい」といったうつ病のような症状がみられる気分障害です。
「ウインターブルー」「季節性うつ」「季節性気分障害(感情障害)」などの呼び方もあります。
冬季うつは、医学的な専門用語ではありません。
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)という、精神疾患の診断基準に使われているマニュアルのなかでは、冬季うつではありませんが季節性のうつ病が分類のひとつとして存在しています。
季節性のうつは、毎年決まった季節に生じて、決まった季節に寛解するのが特徴です。
寛解(かんかい)とは、病気の症状がおさまって安定した状態になることです。
季節性のうつでは、秋から冬にかけて発症し、春から夏にかけて寛解するケースが多いとされており、いわゆる冬季うつの特徴と似ています。
一般的なうつとの違い
冬季うつと一般的なうつ病には、心身における調子の良いときと悪いときのタイミングが違う、現れる症状が違う、といった違いがあります。
冬季うつは、秋から冬にかけて調子が悪くなり、春から夏にかけて回復するのが特徴です。
一般的なうつ病は、季節に関係なく調子の悪いときや良いときが存在します。
また、冬季うつと一般的なうつでは、現れる症状も異なります。
ゆううつな気分や強い疲労感など、共通する部分もありますが、冬季うつでは過眠や過食といった、一般的なうつとは異なる症状がみられます。
冬季うつの具体的な特徴や症状については、のちほどくわしく解説します。
冬季うつの原因
冬季うつの原因は、秋から冬にかけて太陽の出ている時間、すなわち日照時間が短くなることが関係しているといわれています。
日照時間が短いと、日光を浴びる時間が減少し、体内時計を正常に保つメラトニンを分泌するタイミングが遅れます。
また、日光を浴びる時間が少ないとセロトニンやドーパミンなど脳内の神経伝達物質が減少するため、やる気が出ない、気分がすっきりしないといったうつ病のような症状が出やすくなってしまうのです。
心身ともに健康な人でも、冬場にはセロトニンの分泌量が減少しますが、変化に敏感な人は、とくに冬季うつになりやすいといえるでしょう。
冬季うつのはっきりとした原因はわかってはいませんが、日照時間が短くなることによる神経伝達物質の機能異常が関係していると考えられています。
冬季うつになりやすい人
冬季うつになりやすい人は、以下のような特徴があります。
- 緯度が高い地域に住んでいる人
- 女性
- 若者
北欧などの緯度が高い地域は、日照時間が少ないので、冬季うつにかかりやすいといわれています。
日本でも、冬季うつの発症率が高いのは、緯度が高く日照時間の短い北国です。
性別では、男性よりも女性の方が冬季うつにかかりやすい傾向があります。
女性の方がうつにかかりやすいのは、冬季うつに限った話ではありません。
ほかのうつ病でも、女性の方がかかりやすいことがわかっています。
女性や若者は、運動不足などによるホルモンの乱れが影響を受けやすいため、冬季うつにかかりやすいといわれています。
冬季うつの症状
冬季うつの症状について紹介します。
なお、メンタル疾患について、安易に自己判断してしまうと、疾患の早期発見・対処が遅れて症状が悪化する場合があります。
また、病気ではないにもかかわらず「自分は病気ではないか」という不安を過度に感じてしまうこともあるでしょう。
心身の不調で困っている人、自分が病気なのか不安な人には、医療機関の受診をおすすめします。
冬季うつには以下のような症状がみられます。
- 無気力
- 過眠
- 過食
- 悲観的になりやすい
それぞれの症状について詳しく解説します。
無気力
無気力は冬季うつや一般的なうつ病によくみられる症状です。
- やる気が起きない
- 趣味に興味がわかない
- 身体がだるくて何もしたくない
このような無気力な状態になることがあります。
過眠
一般的なうつ病では、夜眠れないなどの不眠の症状がみられますが、冬季うつでは過眠の症状がみられる傾向があります。
いつもより多く寝てしまう、たくさん寝ているはずなのに眠いといった症状があります。
眠気は日中の活動のパフォーマンスを下げてしまい、さまざまな影響を及ぼしかねません。
また、寝すぎることで体内リズムが乱れさらに症状を悪化させ悪循環に陥ることもあり、注意したい症状です。
過食
冬季うつでは、過食や体重増加がみられます。
一般的なうつ病では、食欲が低下し体重も減る傾向があるため、過食や体重増加は冬季うつに特徴的な症状です。
悲観的になりやすい
悲観的になりやすい傾向は、冬季うつや一般的なうつ病でよく見られる特徴です。
「自分は役に立たない」と考えたり、過去の失敗を何度も思い出して、くよくよしてしまったりなど、悲観的になる症状がみられます。
冬季うつの対策方法
ここからは冬季うつの対策方法について紹介します。
ただし、冬季うつをはじめとしてメンタル不調は、医師の診断や助言にもとづいて適切に対処することが原則です。
以下に紹介する対策方法を実践することで、心身の安定につながる可能性がありますが、なかなか不調が改善しない場合は早めに医療機関を受診しましょう。
冬季うつの対策として主に3つの方法があります。
- 日光を浴びる
- 規則正しい生活を送る
- 適度に身体を動かす
日光を浴びる
秋から冬にかけて、とくに冬季うつの症状が強くなる時期に太陽の光を浴びる時間を増やしましょう。
日照時間の少なさが冬季うつの原因ともいわれており、意識的に太陽の光を浴びることは重要です。
くもりの日でも、日光は出ているので、外に出てみましょう。
太陽光だけではなく、照明などの人工的な光でも効果があるとされているため、日中に室内の照明をつけておくだけでも有効です。
日光を浴びることは、メラトニンやセロトニンなどの分泌に影響をおよぼします。
冬季うつの対策として、積極的に日光を浴びるようにしましょう。
規則正しい生活を送る
規則正しい生活を送ることも、冬季うつの対策方法としてあげられます。
規則正しい生活は、心身の健康のために重要な要素です。
冬季うつに限らず、さまざまな心身疾患の予防や改善効果が期待できます。
寝だめや朝寝坊のし過ぎは体内のリズムが崩れる原因となり、心身の不調を悪化させます。
起床時間や就寝時間を固定し、規則正しい生活をして体内リズムを整えましょう。
適度に身体を動かす
適度な運動も心身の健康維持に有効といわれています。
一定のリズムでおこなう有酸素運動は、セロトニンの分泌を促します。
たとえば、ウォーキングなどが効果的です。
一定のリズムでおこなう有酸素運動は、副交感神経を優位にしてリラックスできるといわれています。
交感神経の活動を抑えて興奮をしずめてくれるので、適度な運動もおすすめです。
規則正しい生活習慣を意識しましょう
冬季うつとは、秋から冬にかけてうつ病のような症状がみられ、春から夏にかけて回復してくる不調です。
冬季うつには、一般的なうつ病と同じように気分の落ち込みや無気力になるといった症状がみられます。
そのほかにも一般的なうつ病とは異なり、過眠や過食、体重増加といった症状がみられることがあります。
日光を浴びる、規則正しい生活を送る、適度に身体を動かすなどの対策方法により、冬季うつの症状が改善することもあるでしょう。
ただし、心身の不調についての自己判断は危険です。
冬季うつの症状は、双極性障害や非定型のうつ病など、ほかの病気と似ている部分があり、自己判断は難しいものです。
自分では冬季うつだと思っていても、別の病気の可能性もあります。
安易に自己判断せず、心身の不調については医療機関を受診し、医師の適切な診断と指導のもと対処しましょう。
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記事監修者:山崎ゆうき(やまざきゆうき)
臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。