【臨床心理士監修】リフレクションとは?内省の方法や効果を解説
目次
ビジネスシーンにおいて、人材育成や生産性の向上は重要な課題のひとつです。
その解決の方法として、リフレクションというものがあります。
リフレクションとは、自分自身を振り返り、できたことやできなかったことを俯瞰して内省することで個人としての成長を促す方法です。
この記事では、リフレクションとはなにか、反省との違いやおこなうメリット、実践方法などについて解説します。
リフレクションとは
リフレクションは英語の「reflection」に由来しており、日本語では「(光などの)反射、音の反響、(鏡や水などに映った)映像、影響、内省」などの意味があります。
ビジネスシーンにおいて使われるリフレクションは、日々の業務から一旦離れて、自分自身について振り返る内省のことを指します。
反省との違い
反省とは、主に自分の悪かった部分に注目し、改善を目指すものです。
リフレクションは、悪かった部分だけに注目するのではなく、よい面も含めて客観的に自分を振り返ります。
反省は自責感情が強い傾向にあるのに対し、リフレクションは客観的な視点で見る状態を重視しています。
フィードバックとの違い
フィードバックも振り返りのひとつですが、一般的に他人が相手に対してコメントするものをフィードバックと呼びます。
たとえば、上司から自分の行動について評価をもらったときには、フィードバックという言葉が使われます。
リフレクションのメリット
リフレクションをおこなうと、以下のようなメリットや効果があります。
- 従業員の成長につながる
- 失敗を次に活かせる
- リーダーシップが育つ
それぞれ詳しく解説します。
従業員の成長につながる
リフレクションをおこなうと、従業員はそれぞれ自分で自身の行動を振り返り、客観的な評価ができるようになります。
自己を適切に見つめられるようになると、業務の改善点、よりよい成果をあげるための方法を自分で見つけられるようになるでしょう。
リフレクションは従業員の成長につながる効果があるといえます。
失敗を次に活かせる
社会人として仕事をしていると、さまざまな失敗を経験します。
失敗しても、リフレクションにより失敗の原因や改善方法を見つけ、次のチャンスに活かすことができるでしょう。
リフレクションは、悪い部分だけではなく、いい部分にも注目するため、過度に「自分はダメなんだ」と自責の念を感じる状態も防げます。
リーダーシップが育つ
リフレクションは、人からのフィードバックではなく、自分自身で自己を客観視し、よりよい行動を目指すものです。
人からの指示を待つのではなく、自発的に自己を客観視するスキルは、リーダーに必要な素質のひとつといえます。
リフレクションは、リーダーシップを育てるのにも役立ちます。
リフレクションの代表的な手法
リフレクションには、以下のような代表的な手法があります。
- 経験学習モデル
- ジョハリの窓
- ダブルループ学習
ひとつずつ詳しく解説します。
経験学習モデル
経験学習モデルとはアメリカの教育理論家デービッド・コルブにより提唱された学習ステップです。
以下の4ステップで経験を振り返ることで、成長の土台を養っていきます。
- 具体的経験:自分がどのような経験をしたか思い起こす
- 省察的観察:客観的に経験した出来事の意味を考える
- 概念化:なぜそうなったかの理由やどうすればよいかを考える
- 新しい試み:概念化から得られた仮説を実践して検証する
このサイクルを回していくことで、経験した内容を本人がしっかりと思考し、リフレクションしていくことができます。
ジョハリの窓
ジョハリの窓とは、自己には以下の4つの面があるとする考え方です。
- 自分が知っていて他人が知らない自分(秘密の窓)
- 自分が知っていて他人も知っている自分(開放の窓)
- 自分が知らなくて他人も知らない自分(未知の窓)
- 自分が知らなくて他人が知っている自分(盲点の窓)
開放の窓を広げることで、対人関係の構築や自己理解につながるといわれています。
ダブルループ学習
ダブルループ学習とは、成果がどのような行動によって得られたかに加え、その行動はどのような前提によって引き起こされたかも含めて考える学習方法です。
行動によって得られた成果をもとに、問題解決を図るシングルループよりも、行動の前提というより一段深い考察をおこなうことで、さらに効果的な振り返りができるでしょう。
リフレクションの実践方法・フレームワーク
具体的なリフレクションの実践方法、フレームワークについて紹介します。
KDA
KDAとは、Keep(継続)、Discard(切り捨てる)、Add(加える)の頭文字をとった言葉です。
- Keep:今後も継続していきたいこと
- Discard:切り捨てたほうがよいこと、今後改善したほうがよいこと
- Add:加えた方がよいこと、新しくやるべきこと
これらについて考えるのがKDAです。
KDAのフレームワークをとり入れると、リフレクションを効果的におこなえるでしょう。
KPT法
KPT法とは、継続したいこと、問題、実践方法について考え、行動につなげていくフレームワークです。
KPTはそれぞれ、以下の英単語の頭文字をとっています。
- Keep:継続
- Problem:問題
- Try:試行
リフレクションの具体的な手順
リフレクションの具体的な手順について紹介します。
ステップ(1):リフレクションする出来事を選ぶ
まず、リフレクションをおこなう出来事をひとつ選びます。
複数の出来事を選ぶのではなく、まずはひとつだけを選んで集中してリフレクションしましょう。
ステップ(2):出来事を分解する
リフレクションでは、結果のみに目を向けるのではなく、出来事をプロセスに分解して振り返りましょう。
たとえば、「新規顧客の獲得に成功した」という場合、「見込み客の選定」「アポイントをとる」「おすすめする商品を決める」などさまざまなプロセスがあります。
各プロセスに分解し、振り返っていきます。
ステップ(3):できたこと・できなかったことを振り返る
各プロセスについて、できたこと・できなかったことを振り返ります。
このステップでのポイントは、失敗の原因探しに集中し過ぎないことです。
「失敗の原因が誰にあるか」という他責思考をしていると、客観的な振り返りをするリフレクションの目的を見失ってしまいます。
ステップ(4):振り返りを発表する
内省した結果をアウトプットすると、他者からのフィードバックを得ることができます。
フィードバックを得ることで、内省がより深まるなどメリットがあるので、振り返りを発表するのもよいでしょう。
ステップ(5):プロセスの再構築をおこなう
最後にプロセスの再構築をおこないます。
再構築は、これまでリフレクションで得たことにもとづいて、同様の状況で実践し、またリフレクションをするという流れです。
プロセスを再構築して、さらにリフレクションをおこなうことで、よりよい行動につなげられます。
リフレクションを実践する際の注意点
リフレクションを実践する際に押さえておきたい注意点について解説します。
失敗や悪い点ばかりに着目しない
リフレクションでは、失敗や悪い点ばかりに着目しないように注意しましょう。
ビジネスシーンはもちろん、日常のさまざまな場面でも失敗や悪い面に着目する習慣が多くの人にあります。
できていることやいい点もバランスよく注目することで、より深いリフレクションができます。
他責思考をもたないようにする
リフレクションは、自分の思考や行動に注目するのがポイントです。
原因を他人のせいにしてしまうと、効果的なリフレクションができません。
他人の考えや行動をコントロールすることはできないので、あくまで自分に焦点を当てて、振り返りをおこないましょう。
時間を確保する
リフレクションをおこなうには、そもそも時間が必要です。
日々の業務が忙しいと、リフレクションをする時間的な余裕がなくなりがちです。
週1回、月1回などルールを決めて、定期的にリフレクションをする習慣をつけて時間を確保しましょう。
完璧を求めすぎない
完璧を求めすぎないことも、リフレクションで重要なポイントです。
完璧を求めすぎると、負担も感じやすくリフレクションを継続するのが難しくなります。
簡単なメモから始めるなど、できる範囲でとり組みましょう。
リフレクションにも「Chatwork」を活用しましょう
リフレクションとは、日々の業務からいったん離れて、自分自身について振り返ることです。
いいことや悪いことについて、バランスよく客観的に振り返ることで、さらなる成長が期待できます。
完璧を求めすぎず、まずは気軽なメモ程度から始めてみると、負担を感じにくく継続しやすいでしょう。
ビジネスチャット「Chatwork」には、自分にしか見えない「マイチャット」という機能があります。
マイチャットを活用して出来事のプロセス、できたこと・できなかったことを記録していけば、振り返りをしやすくなるでしょう。
マイチャットなら、日付と時刻も残るので、いつどんな振り返りをしたのかもわかるため便利です。
リフレクションにぜひビジネスチャット「Chatwork」をご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
記事監修者:山崎ゆうき(やまざきゆうき)
臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。