ゲーミフィケーションとは?メリットと構成要素、ビジネスでの導入事例を解説
目次
「ゲーミフィケーション」とは、仕事や勉強などにゲームの要素を取り入れることです。
ビジネスや教育の場で活用されている取り組みで、楽しみながら実践できて、モチベーション向上にも効果的であるとして注目を集めています。
ゲーミフィケーションを実際に活用するためにも、構成要素や導入方法などを確認していきましょう。
ゲーミフィケーションとは?
「ゲーミフィケーション」とは、作業にゲームの要素を取り入れることを指し、ビジネスシーンや学校などの教育の場で多く活用されている取り組みです。
仕事や勉強にゲーミフィケーションの考えを導入すると、ゲームを楽しむような感覚で取り組めるようになるため、作業のモチベーションを高める効果が期待できます。
ゲーミフィケーションの導入目的
ゲーミフィケーションを導入すると、仕事や勉強の生産性を高められるとされています。
遊びの要素を含めながら仕事や勉強を実行すると、主体的かつ前向きな気持ちで行動できるようになるからです。
本人の能力を引き出せるようになれば、少しずつ自信が生まれて、主体的に行動できる人材を育成できるでしょう。
ゲーミフィケーションが注目される背景
ゲーミフィケーションが注目を集める背景には、スマートフォンの急速な普及が影響しています。
日本国内におけるスマートフォンの所有率は年々増加しており、総務省の「令和4年通信利用動向調査」によると、スマートフォンを保有する世帯割合は90.1%となっています。
スマートフォンの普及に合わせて、スマートフォンで使えるアプリの数も増えており、ゲーム感覚で勉強や学習ができるアプリを活用する人も増加傾向にあります。
また、働き方や教育に対する価値観に多様性が求められている背景も、ゲーミフィケーションの拡大を後押ししている要因と考えられるでしょう。
固定観念に縛られず、学びを得るための多様な手法が許容されるようになっています。
ほかにも、ゲーミフィケーションはアメリカの企業が導入している流れもあり、日本の企業でも注目を集めるようになっています。[注]
ゲーミフィケーションの構成要素と概要
ゲームの要素を取り入れて仕事や勉強を楽しみながら遂行できるゲーミフィケーションですが、ただゲームの要素を取り入れるだけでは、効果的とはいえません。
ゲーミフィケーションを活用する際に取り入れるべき5つの要素を紹介します。
- 目的
- クエスト
- 報酬
- 可視化
- 交流
これら5つの要素を含めると、作業内容の価値を向上できます。
実際にゲーミフィケーションをはじめる際の参考にするためにも、5つの構成要素それぞれの概要を確認していきましょう。
目的
仕事でも勉強でもゲームでも、物事を達成するためには「目的」の設定が重要です。
目的を決めると、実践する意味を見失わずに継続できるようになります。
小さな物事でも構わないので、ゴールや目的を定めると、達成感を得やすく、モチベーションを高めやすくなるでしょう。
クエスト
ゲーミフィケーションの面白さを引き出すには、ゴールまでの道のりにおける「クエスト(課題)」の設定も重要です。
クエストを設定しておくと、優先的に取り組むべき物事や、重要視すべきポイントなどが明確になり、ゲームの途中に方向性を見失わずにゴールに向かえるでしょう。
報酬
ゲーミフィケーションを効果的に実行するためには、やる気を高める「報酬」の準備も大切です。
報酬はクエストを達成するごとに設定しておくと、モチベーションを途切らせず維持できます。
報酬の内容は金銭に限らず、称賛や評価など、次のクエストに向かうモチベーションが高められるものを設定しましょう。
報酬内容に適切なものの一例を紹介するので、参考にしてみてください。
インナーリワード
インナーリワードとは、参加者の自己実現や目標達成につながる報酬を指します。
クエストを達成した人自身が、心のなかで満足感を得られるものが、インナーリワードに当てはまります。
たとえば、優勝者へのトロフィー授与や、参加者だけが特別な権利を得られるといった内容が例としてあげられます。
ソーシャルリワード
ソーシャルリワードとは、参加者からの称賛などによって生まれる報酬をいいます。
クエストを達成した人は、ほかの参加者との交流により「自分を認めてもらえた」という満足感を得られます。
たとえば、掲示板にランキング形式で成果を発表するといった方法があげられます。
マネタリーリワード
マネタリーリワードとは、お金などに関わる報酬を指します。
クエストを達成した人は、ポイントやクーポンなどがもらえるので、わかりやすい報酬として参加者のモチベーションを向上できるでしょう。
ただし、参加者の外発的動機付けをうながす傾向があるため、短期的に効果を引き出したい場合に向いている報酬といえます。
可視化
ゲーミフィケーションによって得られた成果の「可視化」も、モチベーションを高めるうえで重要です。
フィードバックやクエストにおける達成度などの可視化により、現状の状態を振り返りやすくなります。
たとえば、達成状況をランキング形式で発表する、SNSでシェアするなどの方法を取ると、競争意識を芽生えさせ、モチベーションを向上できるでしょう。
交流
ほかの人との「交流」も、ゲーミフィケーションを活性化させるうえで効果的です。
同じ目的や目標に向かう仲間と交流を深める取り組みで、刺激をもらえたり、自己成長を実感できたりなど、モチベーションを高める効果が期待できます。
ゲームでも、仲間と協力プレイをしたり、対戦でレベルを上げたりなど、交流を深める機会があるでしょう。
ゲーミフィケーションも同じように、交流によって自己の成長を見込めたり、取り組みのレベルをアップさせたりできます。
ゲーマーの4分類「バートルテスト」とは
「バートルテスト」とは、ゲーマーの特徴を4つに分類したものです。
- アチーバー
- エクスプローラー
- ソーシャライザー
- キラー
ゲームでも、「攻撃」「魔法」「回復」「バランス」など、さまざまなタイプがありますが、ゲーミフィケーションも、4つの特徴に分類できます。
「バートルテスト」は、ゲーミフィケーションを効果的に実施するために、単独効果と集団行動のどちらを好むのか、何に喜びを感じるのかという軸で、参加者のタイプを4つに分けたものです。
ゲーミフィケーションを効果的に実施するためにも、バートルテストの内容を確認していきましょう。
アチーバー
「アチーバー」とは、「達成者」を意味する言葉で、ゲームのクエスト達成に向けて挑戦するなど、ゲームそのものを楽しみたいタイプです。
ひとりでゲームを楽しむことが好きで、継続的な努力も苦にならない特徴があります。
アチーバーには、目標をひとつずつクリアできるような場を準備してあげると、満足度を高めつつ、モチベーションを維持できるでしょう。
エクスプローラー
「エクスプローラー」は「探検家」を意味する言葉で、新しい発見や、新しい知識を得られるかどうかをモチベーションとするタイプです。
ゲーム自体を楽しむという点では、アチーバーと似ている部分がありますが、エクスプローラーは、仲間と一緒に関わりながらゲームを進めたい傾向があります。
ゲーミフィケーションを進める際は、新しい発見ができるような内容や、はじめて挑戦するような内容を加えると、意欲を向上できるでしょう。
ソーシャライザー
「ソーシャライザー」とは「社交家」という意味がある言葉で、他者と交流や協力することに喜びを感じるタイプです。
仲間との交流を大切にするという部分では、エクスプローラーと似ている部分がありますが、ソーシャライザーは、ゲームの世界観を楽しむよりも、交流の方を重視する点で、エクスプローラーと異なります。
仲間と交流できる仕組みを設けると、ソーシャライザーの満足度を高めるゲーミフィケーションを実現できるでしょう。
キラー
「キラー」は、「殺し屋」という意味がある言葉です。
やや不穏な印象を与える名称ですが、ゲーミフィケーションにおいては、ほかの参加者との競争が好きな人を指します。
仲間との交流よりも、ひとりでゲームをすることを好むという部分では、アチーバーと似ている部分があるでしょう。
ゲーミフィケーションにおいては、参加者以外も含めて成果を発表できるような場を設けると、キラーの満足度を向上できます。
ゲーミフィケーションのメリット
仕事や勉強にゲームの要素を取り入れる「ゲーミフィケーション」は、具体的にどのようなメリットや効果を期待できるのでしょうか。
ゲーミフィケーションを導入するメリットを解説します。
目標を設定しやすい
前述した通り、ゲーミフィケーションは「クエスト(課題)」を設定したうえで進めるため、最終的な目標やゴールを設定しやすくなるメリットがあります。
クエストは、最終目標を達成するために設定されているため、クエストを進めていけば、方向性や目的を見失わずに最終目標に向かえるでしょう。
たとえば、半期の個人売上を目標においた場合、架電数やアポ数などがクエストとなり、ひとつずつ達成していく取り組みによって、目標達成に近づけます。
楽しみながら実践できる
楽しみながら実践できる点は、ゲーミフィケーションの大きなメリットといえます。
仕事や勉強などにおいては、うまく進まずにストレスが溜まったり、人と比べて自己嫌悪に陥ってしまったりなど、楽しさよりも、辛さが多いと感じている人は多いでしょう。
しかし、ゲームの要素を取り入れながら進めると、「レベルアップ」や「協力クエスト」などを連想しながら、楽しさを感じる事ができるようになります。
義務感で進めるのではなく、工夫しながら頭を使って、ポジティブな気持ちで挑戦できるようになるでしょう。
モチベーションが高められる
ゲーミフィケーションは、「成長実感」や「承認」「報酬」などが得られるため、モチベーションを高く維持したまま、物事に取り組めるようになるメリットもあります。
仕事や勉強を楽しみながら進めていたら、成果が出るようになっていたケースもあるでしょう。
ゲーミフィケーションのデメリット
さまざまなメリットを期待できるゲーミフィケーションですが、注意するべきデメリットも存在します。
本記事では、ビジネスシーンでゲーミフィケーションに取り組む際の注意点を3つ紹介します。
- 課題設定が難しい
- 効率化が難しい
- モチベーション低下のリスクもある
効果的な運用を目指すうえで知っておくべき内容のため、それぞれ確認していきましょう。
課題設定が難しい
社内で取り組む際の参加人数が多いと、課題設定の難易度調整が難しいという問題がでてくるでしょう。
ゲーミフィケーションは、目的やクエストを設定して取り組んでいくため、参加者全員にあったレベルで課題を設定する事が難しいケースもあるでしょう。
高すぎるレベルを設定してしまうと、リタイアする人がでてきたり、モチベーションが下がってしまう人が出てきたりする恐れもあります。
しかし、低すぎるレベルを設定してしまうと、クリアする楽しさや、レベルアップする楽しさを実感できないため、事前にどのくらいの難易度が最適なのかを検討しておく準備が重要です。
少しずつクエストの難易度を上げていくなど、ゲーミフィケーションのなかで調整を測っていく対応も検討しましょう。
効率化できないこともある
ゲーミフィケーションに慣れるまでは、かえって作業に時間がかかる可能性もあります。
また、新しいルールを覚える必要もあるため、人によっては「従来通りの方法の方が効率的」「いままでのやり方で進めたい」と感じるかもしれません。
まずは、手順を説明するマニュアルを準備するなど、わかりやすく理解できるような工夫が大切です。
内容によってはモチベーションが下がってしまう
ゲーミフィケーションは、ゲームと同じく、内容が面白くないと、やる気がなくなって途中で飽きられてしまう可能性もあります。
また、クエストや報酬に魅力が感じられないといった状況も、モチベーションを下げる要因になります。
モチベーションの低下を避けるためにも、参加者にとって有意義に感じられる内容の設定が重要です。
効果的にゲーミフィケーションを実践する方法・ポイント
ゲーミフィケーションは、ゲームのように楽しみながら仕事や勉強を進められることがメリットの取り組みです。
飽きられずに、効果的に実践するためにも、いくつかのポイントをおさえておくようにしましょう。
効果的にゲーミフィケーションを実践する方法・ポイントを解説します。
フィードバックをおこなう
参加者のモチベーションを持続させるためにも、迅速にフィードバックをおこなえる仕組みを整えましょう。
たとえば、ゲームの途中で参加者を称賛する言葉を伝えるようにしたり、レベルに応じて特別なクエストを用意したりなどの方法が効果的です。
ストーリーを重視する
ゲーミフィケーションを実践する際は、スタートからゴールまでのストーリーを事前に決めておき、参加者に伝達するようにしましょう。
たとえば、「参加者と協力して○○のゴールを目指す」といった流れがあらかじめ把握できていると、目的が明確になり、作業を進めやすくなります。
ゲーミフィケーションのビジネスでの活用事例
最後に、ビジネスシーンにおけるゲーミフィケーションの活用事例を紹介します。
ぜひ実践する際の参考としてみてください。
情報・通信業の事例
ある情報・通信業を取り扱う企業では、製品のチェックをおこなう工程にゲームの要素を取り入れ、楽しみながら仕事ができるような工夫を仕掛けました。
この企業では、ポイントを付与し、最終的に優勝チームを決定するなどのイベントを実施し、目標達成までのスピード感を早めることに成功しました。
小売業の事例
ある小売業を営む企業では、一定の商品を購入するごとにゲームに挑戦できるというゲーミフィケーションを実践しました。
ゲームに挑戦して成功するとプレゼントがもらえるようにして、顧客は購入体験にくわえて、ゲーム要素からも楽しい気持ちを味わうことができるようになりました。
事業活動にゲーミフィケーションの要素を取り入れて、売上を増加につながった事例といえるでしょう。
ゲーミフィケーションをビジネスに活用しよう
仕事にゲームの要素を取り入れる「ゲーミフィケーション」を活用すると、事業活動の効率化や生産性の向上を期待できます。
実践する際は、構成要素を確認しながら、参加者のモチベーションを高められるような内容を設定してみてください。
また、社内でゲーミフィケーションを実施すると、従業員同士のコミュニケーション活性化にもつながります。
ゲーミフィケーションの一環として、従業員同士が交流しやすい場を設け、風通しの良い職場づくりもぜひ目指してください。
社員同士が交流する方法のひとつとして、ビジネスチャット「Chatwork」の活用もおすすめです。
「Chatwork」は、チャット形式でコミュニケーションがとれるビジネスツールで、1対1はもちろん、グループチャットを作成すれば、複数人で簡単にやりとりをすることもできます。
たとえば、ゲーミフィケーションのグループチャットを作成すれば、情報共有や成果状況の報告を簡単におこなうことができるでしょう。
「Chatwork」は、無料で使用できます。
部署やチームなどの少人数で使うこともできるので、まずは導入してみて、コミュニケーションや業務にどのような変化があるのか試してみてはいかがでしょう。
社内コミュニケーションを活性化させる方法として、「Chatwork」をぜひご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[注]出典:総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/230529_1.pdf
※本記事は、2024年1月時点の情報をもとに作成しています。