労務相談とは?よくある労務相談内容と労務相談ができる相談先

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働き方改革
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労務相談とは?よくある労務相談内容と労務相談ができる相談先

目次

働くうえでの悩みや問題の解消のためには労務相談をする場面もあることでしょう。

しかし、労務相談をどこにすればいいのか、どのような内容であれば労務相談の必要性があるのかを判断することは難しいものです。

さまざまな労務に関する悩みや課題の解決に、労務相談を活用できるようになるために、労務相談について理解を深めていきましょう。

労務相談とは

会社に雇用されて働くということは、会社と従業員が「雇用契約」を締結する法律行為に基づくものです。

契約は、本来対等な当事者同士で交わすものであり、一方が相手側に対して契約に反する不利な条件を要求すれば、相手側は契約解除などの対抗手段を取ることで当事者同士のパワーバランスは保たれることになります。

しかしながら、雇用契約に関しては、雇う側の立場が強くなることが多く、歴史的に従業員の権利が侵害されてきた部分もあります。

そういった経緯を踏まえ、現在では労働基準法を始めとした各種労働法が定められ、行政としても従業員の権利を守るべく、労働基準監督署などの労働行政を充実させています。

しかし、従業員を守るための法制度が存在することは知っていても、自身が直面しているトラブルに当てはまるのかなどを判断することは個人には難しいものです。

そこで、労働関係で悩みを持つ従業員を始め、会社側の事業主に対しても労働問題における解決の糸口を探るために「労務相談」があります。

労務相談は、労働トラブルに関わることであれば対象になるため、内定取り消しによるトラブルなど、学生、就職希望者、外国人労働者も労務相談の対象となります。

労務相談の例:雇用に関する相談

昨今のコロナ禍のような不安定な情勢下では、労働者としての立場そのものが危うくなるような扱いがおこなわれることがあり、労務相談の現場においても非常に深刻な状況に直面されている事案も多く見受けられます。

労働者の立場に直結する雇用に関する労務相談はどのようなものがあるのかを見ていきましょう。

解雇に関する相談

給与を生活の糧としている従業員にとっては、解雇はまさに死活問題であり、その解雇が不当であるとして、大きなトラブルに発展することも少なくありません。

法律や過去の判例において、その解雇が正当なものと認められるためには厳しい条件があり、解雇に関する会社の対応が、果たしてその条件を満たしているのかが、ポイントとなります。

例えば、会社の業績が著しく低下した際の、整理解雇いわゆるリストラであっても、リストラの必要性、解雇を回避する為の努力義務を果たしたか、人員選定における合理性など、会社としてクリアしなければならないハードルは多くあります。

これらをすべてクリアできていなければ、解雇には何らかの不当性を帯びていると考えることもできますので、解雇に関して納得のいかない従業員側も解雇の正当性について相談することは多いでしょう。

雇い止めに関する相談

数か月~1年程度の雇用契約期間を定めおいて、期間の満了が近づくと、都度契約を更新する雇用契約において、契約を更新せず、期間の満了を以て契約解消とすることを雇い止めといいます。

派遣労働者や契約社員など、契約期間を定めて雇用されるいわゆる非正規労働者に多いトラブルとなります。

本来、契約期間が満了すれば、それで契約関係も終了となるのが一般ですが、こういった非正規労働者の契約は短期間の契約を更新することで、「次も更新してくれるはず」といった期待が労働者側にあることが一般的であり、労働法としてはそういった期待を含んでいる以上、法律でルールを定めて、一方的な雇い止めを制限しています。

例えば、経営悪化と契約期間満了が重なったタイミングで、会社側から一方的に更新しないケースが多く、リーマンショックの際の「派遣切り」も問題視された雇い止めの典型例と言えます。

採用に関する相談

採用で、トラブルになりやすいのが、不況下での内定取消です。

まだ社会のことをあまり分かっていない学生だけに、その内定取消が正当なものなのか判断がつかないことも多く、相談される機会が多い内容です。

内定取消は解雇と同様、本人にとってインパクトの強い事柄であり、度々メディアにおいても不当な内定取消が取り沙汰されています。

入社もしていない「内定」の段階だと、解雇よりも容易に取り消すことができるイメージが先行していますが、数々の不当な内定取消問題を経て、労働行政も内定取消に関するある一定の条件を定めており、これを満たさなければ、不当な内定取消として会社は責任を追及されることとなります。

労務相談の例:賃金に関する相談

労働の対価である賃金は、労働者の生活の糧であり、その支払いや金額の多寡に直結するようなトラブルは、そのまま労働者自身の生活への影響、モチベーションの低下をもたらすことになります。

賃金のことに関しては、会社の対応は妥当なのか判断材料とするためにも、専門家の知見を活用するが重要です。

特に残業の計算方法に関しては、一般の方には馴染みがない分、ひとりで悩むと深みにはまっていきますので分かりやすく説明してくれる窓口の方に頼ってみるのも効果的でしょう。

賃金未払いに関する相談

不況下の零細企業に勤められている従業員の方で、相談が多いのが給料の支払いが滞る「賃金未払い」です。

従業員という立場上、会社に対して強気になれず、そのまま給料を踏み倒されてしまうといった残念な事例も見受けられます。

相談内容で多いのが、会社がさまざまな債務を抱えており、給料支払いのお金が確保されるか怪しいといったものです。

実際に優先して支払いを受けられるかどうかは事例によりますが、賃金には「先取特権」という他の債権に優先して支払いを受けることができるルールが定められています。

残業代未払いに関する相談

残業しているのに給料に反映されていない(毎月同じ給与額である)場合、残業代未払いの可能性があります。

1日8時間の法定労働時間を超えて働いた場合、割増賃金を加えた賃金を支払うことが義務つけられています。

残業をしていないものとして、残業代を誤魔化すのはもちろん法違反となりますが労務管理がきちんとされていないがために残業のカウントができていない、残業の定義に関する会社と従業員で共通認識がとれていないといったケースも散見されます。

労働時間の管理は、割増賃金の対象になるか否か判断に迷うケースも少なくありません。

加えて、変形労働時間制を導入している職場の場合、残業時間の把握は一筋縄ではいかないので、一見、未払い残業があるように見えるだけだったということもあり相談してみないと実態がわからないということは多いでしょう。

労務相談の例:労働時間に関する相談

テレワーク勤務の普及や副業の解禁など、多様な働き方が広まりつつあると同時に、長時間労働や休日出勤が従来と比べて難しくなるなどの事情で、トラブルに発展する場面も今後は増えてくるかもしれません。

その前に、長時間労働や休日出勤に関して判断の軸になるような労務相談の事例について確認していきましょう。

長時間労働に関する相談

働き方改革の影響もあって、以前よりは長時間労働自体の相談件数は減少傾向にありますが人材不足気味の中小零細企業では、いまだに長時間労働の実態があります。

ひとつの基準として、過労死ラインというものがあり、残業時間が1ヵ月あたり100時間を超えると、過労死のリスクが上がるという目安があります。

働き方改革ではこういった統計を踏まえて、それまでは実質上限のなかった残業時間に対して「1ヵ月100時間」の上限規制を設けるに至りました。

この為、長時間労働に該当するか否かの判断ポイントとして、1ヵ月の残業時間の実態は非常に重要な判断材料となります。

休日出勤に関する相談

休日出勤で相談事例として多いのは、休日出勤を命じられた際に、出勤する義務があるのか否かです。

私用などで休日はどうしても出勤できないときもあるはずですが、果たして休日出勤の要請に応える義務はあるのでしょうか。

まず、法律では実は休日に労働させることは原則NGとなっています。

しかし、36協定により休日労働ができる旨定めて、労働者の過半数代表と正当な手順を経て協定を交わし、労働基準監督署に届出て、休日労働をさせてもよいというルールとなっています。

労務相談においては、まずは36協定があるのか、36協定の内容はどうなっているか、従業員側の意見を汲み取って交わされた協定なのかをチェックすることとなります。

労務相談の例:職場の人間関係に関する相談

職場の人間関係は、離職理由でも上位に入る、今や日本の労働環境における社会問題ともいえるテーマです。

法律や一般常識では、解決に至らない、人の感情にも左右される事案もあることから、労務相談においても、窓口対応にあたる担当の器量が重要となります。

パワハラ・セクハラに関する相談

近年増加している相談が、パワハラ・セクハラです。

当事者の一方はパワハラ・セクハラの意図がなくとも相手側がそうであると認識していれば、パワハラ・セクハラとなります。

パワハラやセクハラは事例によっては表面化せず、表沙汰になったときには、手が付けられない事態に発展することも多くあります。

当事者同士のみでなく、管理監督する会社側としても、非常に悩ましい問題であると言えます。

いじめに関する相談

最近では、パワハラ・セクハラと同義となる場面もありますが、職場におけるいじめの例としては、同僚間での陰口、えこひいき、苦手な人と一緒に仕事することが辛いなど、人間関係に起因するものがやはり大多数を占めることとなります。

中には、陰湿極まりない扱いを受けているケースもあり、会社側としての管理監督責任を問われる可能性もあります。

労務相談の例:待遇に関する相談

正社員と契約社員との不当な格差を禁止する法律の施行もあり、非正規労働者を中心に不合理な待遇差の設定は国の方針からも是正が求められています。

労務相談の現場においても、同僚との間で、納得できない格差や、あるいは雇い入れ時に聞いていた内容と実態が食い違うなどの相談が増加傾向にあります。

提示された待遇と異なることに関する相談

面接や雇い入れ時に提示された条件と、実際の待遇が異なる(手当の金額、勤怠時間、休日など)という場合、ハローワークなどの求人情報、契約締結時に交わされる労働条件通知書の内容の相違点を確認することとなります。

ここで内容が食い違うのであれば、責任の所在は分かりやすいのですが、中小零細企業の場合、口頭でやりとりしている場合も多く、書面では何も確認できず、言った言わないの問題となるケースは少なくありません。

こういったトラブルを防ぐためにも、書面交付などで証拠が残る形でのやりとりが望ましいでしょう。

労務相談の例:就業規則や労働条件に関する相談

身近に情報が手に入るようになった現代においては、自身の労働条件に興味を持ち、就業規則を確認される労働者も増えています。

こういった中で、就業規則の内容や運用方法に疑問を持たれ、相談窓口に足を運ばれる労働者も珍しくなくなってきています。

就業規則で労働条件を変更に関する相談

社内の組織改編などで労働条件を見直すにあたり、就業規則を変更する企業も少なくありません。

ここで問題となるのは、従業員側に不利になるような変更が許されるのか、ということです。

また、就業規則の不利益変更について会社と従業員でトラブルになるケースも見受けられます。 原則のルールとしては、就業規則の内容を従業員にとって不利になるように変更することはNGとなっていますが、従業員の意見を十分に参酌するなど一定の条件の下認められることもあります。

しかし、形式上だけ従業員の意見を聞いただけで、従業員の意向は反映されておらずトラブルとなり、相談窓口に足を運ばれる事案も見受けられます。

労務相談するための準備物

労務相談のテーマによって、用意すべきものは変わりますが、共通点として、「客観的にその内容を示すもの」であるということです。

残業代の未払いが問題であれば、給与明細、出勤簿のコピー、就業規則の内容に疑問があれば、就業規則の該当部分の写しがあれば、相談先も判断材料とすることができます。

労働問題という時にはデリケートな内容に踏み入る以上、相談者の主観が混じる口頭の内容だけで判断することは危険であることから、何らかの書面的な証拠が必要と思っておいてほうがいいでしょう。

具体的に何を持っていけばいいのか分からないのであれば、相談に先立って、電話などで必要なものを確認しておくと、相談もスムーズに進むことでしょう。

労務相談ができる相談先

労務相談は、キッチリと枠にはまった一定のフォーマットではなく、生身の人間が、相談者の思いを直接受け止めて応えてくれる場です。

相談に乗ってくれる担当者によって結果も変わることがあり、自身との相性も重要なポイントとなります。

労務相談を受けることができる相談先ごとの大まかな特徴と傾向を解説していきます。

労働相談窓口

地方公共団体が地域サービスの一環で、窓口を設けていることもあれば、厚生労働省の委託を受けて、社労士などが派遣されているなど、その形式はさまざまですが、無料で気軽に利用できることが特徴です。

他の相談先と比較しても、フランクな雰囲気であることが多く労働問題を抱えた際は、最初に立ち寄る相談先としても適しています。

労働組合・ユニオン

お勤めの会社に労働組合やユニオンがあれば、労働者にとっては非常に心強い味方となってくれます。

こういった組織は労働者の権利義務が守られるよう、企業と近い距離で活動しており、労働者寄りのスタンスをとることも多く、直接的な解決に導いてくれることも期待できます。

しかし、労働組合やユニオンを擁している企業は少数派であり、ほとんどの中小企業には労働組合はありません。

労働基準監督署

労働相談窓口と比較して、やや硬い印象を受けることも多い労働基準監督署ですが、労働者の権利義務を守るための行政であり、非常に具体的な部分に踏み込んだアドバイスや指導を受けることができます。

ちなみに、労働相談窓口は、労働基準監督署の一角に設けられることもあり、労働相談窓口である程度案件を把握した後、引き続いて監督官からアドバイスを受けることも可能です。

期間限定で設けられていることが多い労働相談窓口と違って、平日夕方までは窓口対応があり、無料で利用できます。

社労士

労働相談窓口に社労士が派遣されている場合とは、別に社労士事務所に出向いて労務相談を受けるという手段もあります。

社労士はこういった分野の専門家であり、非常に踏み込んだレベルまで対応が可能ですが、普段は企業経営者を顧客として活動していることから、一般の個人の労務相談にまで対応できる社労士は、多いとは言えません。

また、裁判沙汰になった際は、依頼主を代理して法定に立つことはできません。

弁護士

裁判における訴訟も視野に入れる場合は、非常に頼りになる存在と言えます。

社労士のフィールドは裁判外となっており、依頼者の利益を優先して法廷で相手方と対峙してくれるのは、実際のところ、弁護士以外にはないと言えるでしょう。

しかし、弁護士であれば誰でも労働問題に対応できるわけではなく、やはり労働問題を得意分野としている弁護士を見つける必要がある上に、高額な報酬が必要となることも忘れてはなりません。

労務に関する問題はまず相談しよう

多くの社会人は、労働法に定められたルールを学ぶことなく社会に出ているため、問題に直面した際に、自分で解決に導くことは、難しいのが現状です。

そういった際に、相談に乗ってくれる存在は非常に頼もしいものです。

職場の待遇や、人間関係などで、労務に関して気になる点や悩みがあれば、大きなトラブルになる前にまずは労務相談をしてみましょう。

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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)

2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長さん向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営をサポートしています。

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