【社労士監修】業務命令は拒否できる?業務命令拒否が認められる正当な理由とは

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働き方改革
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【社労士監修】業務命令は拒否できる?業務命令拒否が認められる正当な理由とは

目次

終身雇用時代は「会社や上司の言うことは絶対」という考えが浸透していました。
業務を円滑に進めるために業務命令は必要ですが、会社の命令であればいかなる内容でも受け入れるべきかというとそうではありません。

会社や上司の命令を拒否することが可能なのか、業務命令を拒否して不利益を被った場合、会社に対抗可能なのか、可能であれば、どういった業務命令が拒否しうるのか、業務命令拒否が会社から認められない場合の対応方法などについて解説します。

そもそも業務命令とは

業務命令を拒むことの可否について解説する前に、そもそも業務命令とは何かという点に触れておきましょう。

従業員である以上、会社の指示命令に従うことは至極自然なことのように認識しがちですが、本来、雇用という関係がなければ、会社と従業員には、主従の関係は生じません。

つまり、雇用契約に基づいて、会社は従業員に対して、業務を遂行するために命令(業務命令)を行うことができる「業務命令権」を得ることになり、従業員は業務命令に従い職務を遂行及び労務を提供することで賃金請求権を得るという対の関係となります。

従って、雇用契約や就業規則その他のルールの存在が、会社が従業員に対して業務命令を強制できる拠り所となっており、業務命令を拒否できる正当な理由があるか否かに各種のルールに抵触するかどうかという点がポイントとなります。

業務命令は拒否できるか

結論としては、原則、会社や上司の業務命令には従わなければなりません。

しかし、これはあくまで原則であり、例外に該当すれば、その業務命令には効力が発生せず、その業務命令にも従う必要はありません。

業務命令を拒否するとどうなる?

業務命令を拒否した場合、会社は就業規則等に基づいて、従業員に対して口頭注意や叱責、出勤停止や減給などの懲戒を行うこととなり、重い事態であれば解雇に発展することもあるでしょう。

従業員は、原則として会社の業務命令には従う契約上の義務があり、これに反して命令に従わない以上、民法415条の契約上の債務不履行責任を問われ、甘んじて懲戒処分を受けることとなります。

しかしながら、会社の業務命令が無効である、つまり「業務命令を拒否できる正当な理由」があった場合、話は別です。無効な業務命令に対する懲戒処分で、従業員が損害を被った場合、会社は民法709条の不法行為責任を問われる可能性があり、会社が行った懲戒処分も無効となります。

加えて、効力の無い業務命令に従う義務はない為、「業務命令を拒否できる正当な理由」があれば、命令を拒否することが許されるという図式が成り立ちます。

では、どういった場面であれば、「業務命令を拒否できる正当な理由」があると判断できるのでしょうか。

業務命令を拒否できる正当な理由:コンプライアンス違反に該当する命令

業務命令が無効、つまり拒否できる正当な理由があると認められやすい例として、法令や会社規則に違反する趣旨の命令や、虚偽報告、偽造などの違法行為に加担することを強要する業務命令があります。

こういった違法、公序良俗に反する行為を促進させる業務命令が正当化される理由はなく、拒否したことを理由として懲戒処分を受けた場合、高い確率で会社側が不利となります。

最もコンプライアンスに敏感な近年の風潮から見れば、あからさまな違反行為を強制させる業務命令を出すことは稀になってきました。

問題となるのは、違反スレスレのいわゆるグレーゾーンで業務を遂行するようなケースです。

命令を出している上司や業界を知り尽くした方が、当たり前のようにこなしている業務や手法が実は、厳密に判断すれば違法行為であったということはよくある話です。

業務に不慣れな新人に、そのようなグレーゾーンを攻めるような業務命令を下し、当人がこれを拒否してトラブルに発展するといった展開が分かりやすい事例と言えるでしょう。

業務命令を拒否できる正当な理由:嫌がらせに該当する命令

会社の業務遂行に必要であると到底言えないような業務を行わせることにより、嫌がらせや他の社員への見せしめとする行為もまた、無効な業務命令となる可能性が高くなります。

たとえば、業務時間中、会社規則をひたすら書き写すことを強要する、充分な技能があるにも関わらず不当に長期間の研修を受けさせる、上司の横領を見逃すよう強要するなどの業務命令は拒否することができます。

また、自己都合による退職に仕向けるため、代替要員が要るにも関わらず、休日出勤を命じることや、距離の離れた現場や便の悪い僻地へ度々出張を命じる、ひたすら草むしりを命じるといったことも、場合によっては違法な行為として判断されることになります。

業務命令を拒否できる正当な理由:合理性を欠く命令

先述した違法行為の強制や嫌がらせに該当する命令は、業務命令を拒否できる正当な理由があることが比較的判断しやすい事例が多い一方で、画一的に判断が難しい案件もあります。

そういった事案の一例として、平成24年10月3日東京地方裁判所立川支部判決においては、学校の教員に対して入学式や卒業式などの行事の際、通学路に長時間立つことを命じた事案に関して、肉体的精神的負担を課してまで実施する理由や効果に乏しく、一部の教員にばかり当番が集中していたことから、違法な業務命令であたるとして、学校側に損害賠償を命じています。

このように、一見パワーハラスメントや、嫌がらせには該当せず、ましてや違法行為の強要にも該当しない業務命令であっても、裁判所は、業務命令の効力を否定する判断を下す事案があります。

この事案においては、学校側が、業務の必要性や合理性を裁判所に対して十分に説明できなかった点が決め手の一つとなりました。

必要ない業務であると薄々、感じてはいるけれども、会社の命令だから仕方なくやっているという業務は、多かれ少なかれ社内には、つきものと言えますが、場合によっては合理性のないものとして、命令を拒否できる正当な理由がある、無効な業務命令である可能性も実はあるのです。[注1]

業務命令の拒否が認められない場合の対応

上記のような業務命令には従う必要はなく、はっきりと拒否することができます。その結果、業務命令違反を理由に、会社が懲戒処分や解雇を行えばその行為は違法となります。

しかし、正当な理由を提示したにも関わらず、会社側が業務命令の拒否を認める姿勢を従業員に対してとらない場合も考えられます。

その場合は、以下の対応をとるとよいでしょう。

上司と話し合う

職場における、上司との関係性にもよりますが、まずは上司の下した業務命令において、その業務がなぜ必要なのか、業務に従わなければならない理由を確認することから始めましょう。理由を深堀していくことで、命令を拒否していた当初では気付かなかったことが浮き彫りになるかもしれません。

一方で、実は上司も、その業務の必要性を十分に説明できない(実は本当に必要がない、或いは改善の余地が大いにある)場合であれば、抜本的に業務を見直す機会となります。より効果のある代替案があれば積極的に提示することもおすすめします。

しかし、上司との関係によっては、真正面から問いただすことが難しい場面も多いことでしょう。会社や上司の命令に背くことは、正当な理由があるとは言えやはり勇気のいる行動であり、「会社の命令は絶対」という一種の不文律も未だに根付いているのが現状かもしれません。

そういった流れで、業務命令を拒否したことで懲戒処分を受ける憂き目になった際は、弁明の機会を求めましょう。

先述の判例にもあったように、近年、業務命令の無効が認められるケースも見受けられることから、業務命令拒否があったことのみを以って直ちに懲戒処分を下すことは、会社にとってもリスクとなることから、会社側としても従業員の言い分を確認する場を確保することが、コンプライアンス上求められる事案も増えています。

雇用契約書、就業規則を確認してみる

業務命令の中には、雇い入れ時に約束した範囲を逸脱するものや、実現が困難であることもありえます。

業務命令の内容に疑義が生じた際や、業務命令違反による懲戒に納得がいかない場合は、雇用契約書や就業規則の内容にも反していないか確認してみましょう。

先述の通り、会社の業務命令権は、雇用契約がその拠り所となっており、契約にないことまで強要することはできません。

就業規則についても同様で、規則に反することや記載の無い事項に関しては、それに従う義務があるか否かについて、疑問が生じることとなります。後述の労働基準監督署に相談する場合であっても、高い確率で、「雇用契約書や就業規則ではどのような内容となっているか」確認される為予め、その内容を確認しておくことが必要です。

労働基準監督署に相談する

直接上司や経営陣に対して面談の機会を得ても、会社が業務命令の拒否について耳を貸さない場合は、専門的な知識を持った第三者の知見を活用することをおすすめします。

労働基準監督署はこういった事案に関して、過去の判例なども踏まえて中立的な判断を下すことができる公的機関です。

また、業務命令の違反性が疑われる事案については、ケースバイケースではありますが、会社側に働きかけてくれることもあり、無料で利用できることもあって労働者側としても非常に頼りになる存在と言えます。

会社としても、労働行政の関与を無視することはできない為、効果的な反面、過剰に反応して、かえって事態が混乱するケースもあります。

最初から労働基準監督署に駆け込むのではなく、監督署に相談することも検討している旨、会社や上司に通知して、相手の出方を伺うといった対応も場合によっては、効果的な手段の一つと言えるでしょう。

業務命令は正当な理由によって拒否できる場合も多い

終身雇用が多数であった昔は、会社や上司の存在は絶対的なものであり、「会社や上司の命令に背くのはもっての外」という考えが一般的でした。入社から定年退職まで一貫して面倒を見てくれる会社に盾突くことは、従業員にとっても大きなリスクであり、滅私奉公していれば、長期的には功を奏した時代でもありました。

そういった風潮では、理不尽で合理的な風習もまかり通っていたことでしょう。しかしながら時代は変わりました。終身雇用はとうの昔に崩壊し、変化の激しい競争の中、己の価値観で働き方、仕事の流儀を選択していくことが歓迎される時代になったことで、意義のない業務や必要性の疑われる前時代的なルールが見直されるべきフェーズに移行しているといえます。

そういった中で、従うことに疑義がある業務命令に対しては、勇気を出して、より建設的な意見を出し合うことが、会社の成長にもつながる場面も多々あることでしょう。その証拠として、業務命令の効力を否定する判決も近年増加しており、従来と比較しても労働者側にとって有利な流れになっていると考えられます。

会社や上司の命令に盲目的に従うのではなく、前向きな姿勢で仕事に向き合い、その命令が果たして本当に実りあるものか否か、考えていただく機会としてみてはいかがでしょうか。

本記事で解説した業務命令については、会社や上司・従業員が効力を正しく理解することも必要です。

また、仕事との向き合い方など、日頃からコミュニケーションをしっかりとっておくことも、スムーズな業務遂行に役立つでしょう。

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[注1]参考:地判東24・10・3判例集平25.358

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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)

2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長さん向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営をサポートしています。

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