帳票電子化のメリット・デメリットとは?ペーパーレスが進む理由について解説
目次
IT技術の進歩した昨今においても、手書きの書類をあつかう企業は未だに一定数ありますが、書類管理の煩雑さから、ペーパーレス化を望む方もいるのではないでしょうか。
この記事では、昨今の働き方改革による業務改革で注目を浴びている、帳票電子化について、定義や帳票電子化がもたらすメリット、電子化を進めるうえでのポイントについて解説していきます。
帳票電子化とは?
IT技術が日々進歩する昨今では、企業にとって帳票の電子化はもはや無視できるものではなくなっています。
まずは帳票電子化の定義から解説していきましょう。
そもそも帳票とは?
帳票の電子化について解説する前に、「帳票」というものの定義があいまいな方も多いのではないでしょうか。
「帳票」は企業が経営活動を行ううえで作成する、「帳簿」「伝票」の総称です。
「帳簿」は、総勘定元帳、仕訳帳、出納帳、買掛帳等、お金の動き(時期や金額等)を確認するための帳票です。
「伝票」は、見積書、請求書、納品書、領収書、入出金伝票等、事業者が日々の取り引きをおこなううえで発生する書類であり、「帳簿」の内容を証明する役割も持ちます。
つまり「帳票」とは、企業の経営活動の履歴を表す書類であると言い換えることができます。
帳票電子化とは?
パソコンやIT技術が浸透する以前は、上記のような帳票類は、多くの企業において「紙」で作成、保管されていました。
帳票の電子化は、帳票の作成や保管を電子データで完結させることが可能で、従来の紙ベースでの作成や保管にともなうコストを大幅に削減できるメリットがあります。
帳票電子化が進む背景について
多くの企業において、以前は手書き帳票が一般的であったにも関わらず、ここまで帳票電子化が注目されているのには、大きくわけてふたつの要因があります。
手書きによる管理の煩雑さと業務効率化の推進
帳票電子化が進む一番の理由としては、手書き帳票のデメリットを解消できるという点にあります。
技術的に手書き帳票を利用せざるを得ない時代であれば、選択肢は他になかったことから、大半の企業においては、手書き帳票の煩雑な処理に多くのコストや手間を割いていました。
技術革新が進み、帳票電子化に対応した多種多様なツールの出現、働き方改革に合せた業務効率化が叫ばれるようになり、多くの企業において、手書き帳票からの脱却を検討するようになりました。
電子帳簿保存法などの法令の整備
政府としても、ペーパーレス化に対応するなかで、紙媒体による保管を義務付けている各種の法令の整備を迫られることとなりました。
このような流れを受けて、制定された法令のなかでも、近年注目されているのが、2021年に大幅な改正がなされた電子帳簿保存法であり、電子媒体でのハードルが高かった国税関係帳簿書類の管理の要件が大幅に緩和されました。
このように、法令面においても、帳票電子化を後押しする流れは強く、今後もこの傾向は続く見込みが強いといえるでしょう。
手書き帳票の問題点について
ここでは手書き帳票に関して、多くの企業が課題だと考えられているデメリットについて解説していきます。
コストが掛かる
一枚の帳票のコスト自体は、さほど高いものではありませんが、多くの企業において、紙媒体による帳票は、膨大なボリュームになることから、比例してコストもかさむこととなります。
保管・管理が難しい
紙媒体による処理は、作成後、当然保管スペースを確保しなければなりません。
企業規模によっては、膨大な量になるでしょう。
また、当然のことながら紙である以上、劣化を防ぐことはできないため、長期保管においても不安が残り、紛失というリスクも避けられないでしょう。
人的リスクが発生する
手書き帳票の最大のデメリットといえるのが、作成に要する手間と記入する個人によって生じるバラつきです。
手書きの場合、記入する分量が多いと、その分時間を要してしまいます。
誤字脱字を訂正する際も、面倒な処理が発生するでしょう。
また、字を書くのが苦手な人が作成した場合、内容を判別することが困難になり、帳票としての機能を果たさなくなります。
帳票電子化のメリット
帳票電子化は、手書き帳票が抱えていたデメリットを全面的に解決できる可能性を秘めています。
どういったメリットが帳票電子化にあるのか、解説していきましょう。
業務効率化が図れる
電子媒体での処理であれば、部署内における帳票の承認作業においても、帳票データが共有できるため、いつでもどこでも確認及び承認が可能となります。
また、データを検索できるため、社内や顧客からの問い合わせに対して迅速に対応できるようになり、結果として、業務効率を図ることができます。
資源や人件費などのコストカットにつながる
紙媒体を使用する機会が格段に減少するため、社会全体として、手書き帳票で使用されてきた資源の削減につながります。
また、業務効率化によって、手書き帳票の処理で発生していたコスト(作成、検索などの管理における人件費、保管スペースなど)も削減できるようになります。
セキュリティリスクの回避につながる
多くの帳票電子化ツールには、データの内容に応じて閲覧権限を設定することができ、閲覧履歴も確認できる機能が標準で搭載されていることから、紙媒体での管理の際に懸念されたセキュリティ面での不安も払拭することが可能です。また、電子データでの保管となるため、紛失の心配もありません。
帳票電子化のデメリット
帳票電子化は企業にとって数多くのメリットをもたらしますが、多少のデメリットが存在することにも留意しなければなりません。
企業における実情によっては、メリットよりもデメリットのインパクトの方が大きい可能性もあるので、帳票電子化の導入は慎重に検討するべきでしょう。
フォーマット作成の手間が一時的にかかる
手書き帳票のフォーマット内容を電子化する際に、特殊なフォーマットや、手の込んだ書式を取り入れている企業の場合、電子化に手間がかかってしまいます。
また、急いで電子化を進めてしまうと、電子データのあつかいに不慣れな従業員を取り残してしまい、かえって運用段階で支障をきたす可能性もあるため、各部署と連携しながら手順を追って準備を進めていく必要があります。
導入や運用のコストがかかる
帳票電子化を導入する場合、大半の企業においては、専用のツールを購入すると思いますが、このようなツールは数十万単位の価格帯であることが多いです。
また、ツールを使用するためのデバイス(パソコンや、タブレットなど)も揃える必要があるため、全体的な導入コストは、企業規模によっては数百万単位となることもあるでしょう。
このような初期投資やランニングコストも見込んで導入計画を立てましょう。
帳票電子化の進め方
帳票電子化の進め方や、進めるうえでのポイントについて解説していきましょう。
業務フローへの影響範囲を検討する
現在の業務フローがあいまいであれば、帳票電子化を機会に簡易なものでもいいのでマニュアル化しましょう。
客観的に業務フローが見えなければ、帳票の電子化後の業務フローもあいまいになるため、かえって現場が混乱してしまいかねません。
現在の業務フローが見える化された時点で、帳票電子化の際にどの範囲が影響を受けるのかを確認し、それらの業務範囲に関わる人員と連携したり、電子化の推進と新しい業務フローを策定したりしましょう。
展開する範囲を検討する
自社であつかっている帳票の種類や、あつかう頻度についてリストアップし、どの帳票類を電子化するのか検討しましょう。
「電子化するなら全てを対象に」と思われるかもしれませんが、業務環境の実情から、段階的にペーパーレス化していく方が望ましい場合もあります。
どのツールが自社に適しているか検討する
帳票電子化ツールは、それぞれに特色があるため、高価なツールが必ずしも自社に適しているとは限りません。
業務フローの見直しや、電子化する帳票の範囲特定がある程度まで進んでいるのであれば、システム間の連携の必要性の有無や、部署内でのツールの使い勝手の良否についても具体的な考察が可能でしょう。
いくつか目ぼしいツールをピックアップしたうえで、実際にデモンストレーションを体験して、自社に適したツールを見極めましょう。
帳票電子化の注意点
帳票電子化の注意点について解説していきましょう。
導入による業務負担を把握しているか
帳票の電子化は、結果として業務効率化という多大なメリットをもたらす半面、導入初期から業務フローが浸透するまでは、従業員に負荷がかかります。
繁忙期などで職場が慌ただしいシーズンや、引継ぎが完了していない時点での帳票の電子化は、現場に過度な負荷や混乱を発生させることになりかねません。
導入に対して、相応の業務負担が発生する点を、関係各位に周知したうえで、導入のタイミングについて入念な調整をおこないましょう。
システム障害などのリスクを検知しているか
帳票電子化システムは、利便性が高い反面、複雑な構成になっているため、システム障害が発生した際は、自社で解決することは実質的に不可能であることが多いです。
また、システム障害でなくとも、システムのあつかいを誤れば、手書き帳票ではありえないミスが起こる可能性があることも留意しなければなりません。
システム障害のリスクを最小限に抑えるためにも、多少ランニングコストがかかっても、バックアップ体制が充実している会社の製品を利用されることをおすすめします。
帳票電子化で業務効率化を推進しましょう
IT技術の進歩や、働き方改革による業務効率化の要請など、企業を取り巻く環境は、帳票の電子化を推進する方向に向かっており、多くの企業が、帳票電子化に取り組んでいます。
帳票電子化にともなう初期投資や業務フローの変化等の負担はありますが、電子化が遅れるほど他社に遅れを取ることになります。
今や企業の規模に関わらず、各種の電子化による効率化及び課題解決は避けることのできない命題のひとつになっています。
いま一度、今回の記事を参考に自社の現状に合わせて取り組んでみてください。
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記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートをおこなう。