テレワークうつとは?コロナ禍で増加する原因や対策方法を解説
目次
新型コロナウィルス感染症の流行によって、テレワークを導入する企業も増えてきました。
テレワークには、労働者にとって通勤時間の節約や仕事の生産性の向上といったメリットがある一方で、テレワークによって家にこもって働き続けるなか、うつ病のような症状がみられる「テレワークうつ」が問題となっています。
テレワークうつとは一体なにか、症状や原因、対策方法について紹介していきます。
テレワークのメリットを活かしながら、心身ともに健康に働くための方法を考えていきましょう。
テレワークうつとは?
テレワークうつとは、テレワークという働き方のなかで生じるさまざまなストレスが原因となって、うつ病のような症状がみられる状態をいいます。
テレワークうつは医学的な用語ではなく、テレワークによる気持ちの落ち込みなどをさして使われる用語です。
そのため「テレワークうつ」という言葉の使い方や解釈については、人によって異なる場合もあるでしょう。
出社型の働き方であれば、作業中や休憩時間の様子から「ため息が多く悩みがありそうだ」「食欲がなさそうだから体調が悪いのかもしれない」など、周囲が不調に気づくこともできます。
しかし、テレワークでは本人の様子が周囲からわかりにくく、うつ症状が現れていても周りが気づきにくいことから「サイレントうつ」と呼ばれることもあります。
テレワークうつの症状
テレワークうつで見られる症状は、メンタル面の症状と身体面の症状の大きく2つに分けられます。
具体的に、それぞれどんな症状があるのかを紹介していくので、自分に当てはまるものがどれくらいあるのか、チェックしてみましょう。
メンタル面の症状
テレワークうつで見られるメンタル面の症状には、以下のようなものがあります。
- 気持ちが落ち込んでいる
- 寂しさや孤独感を感じる
- 仕事をしている実感がない
- やる気が出ない
- ちょっとしたことでもすぐイライラしてしまう
- リラックスできず落ち着かない
- ネガティブな考えになりがち
身体面の症状
テレワークうつで見られる身体面の症状には、以下のようなものがあります。
- 食欲がない
- 肩こり
- 頭痛
- 発熱
- 夜なかなか寝付けない
- 眠りが浅く寝た気がしない
- 身体がだるい
テレワークうつにはさまざまな症状がある
いま挙げた症状はあくまで一例のため、異なる症状で悩んでいる人もいるかもしれません。
また、当てはまる症状の数が少なくても、「日常生活に支障が出ている」「しんどさを強く感じている」といったケースもあるでしょう。
単に当てはまる症状の数だけでは、どれくらいつらいのかを判断することはできません。
また、テレワークうつではなく、他の疾患によって症状が引き起こされている可能性もあります。
自分なりに対処しても改善しない場合や、「病院に行ったほうが良いのかな」など不安に思う場合は、医療機関で受診するようにしましょう。
テレワークうつが増加する原因とは
厚生労働省が公開している調査では、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとして多くの企業がテレワークの導入・実施をスタートしています。
では、なぜテレワークによってうつ病のような症状が出てくるのか、その原因を紹介していきます。[※1]
コミュニケーション不足
テレワークでは、職場の人とのコミュニケーションが不足し、寂しさや孤独感といったネガティブな感情を持ちやすくなります。
とくに一人暮らしの場合、自宅で話し相手もいない環境のため、テレワークによるコミュニケーション不足の影響は大きいものです。
出社型の働き方であれば、業務のやりとりはもちろん、それ以外にも以下のようなコミュニケーションが発生します。
- お昼休憩に一緒にご飯を食べながら談笑する
- 会議室までの移動中に世間話をする
- 仕事終わりに一緒に食事に行ったり飲みに行ったりする
テレワークでは、このようなコミュニケーションがなく、人とのつながりが感じられず、孤独感が強くなります。
生活リズムの乱れ
テレワークでは、生活リズムが乱れやすく、日中の眠気や身体のだるさといった不調を引き起こしやすくなります。
テレワークでは、通勤がないため、朝寝坊をしたり、遅くまで寝ていられるからと夜更かししてしまったりなど、出社が必要な働き方よりも生活リズムが乱れやすくなります。
また、家で働ける環境が整っているため、夜遅くや休日も仕事をするなど働きすぎてしまうこともあるでしょう。
その結果、「寝る時間や食事の時間が遅くなる」「これまで取れていた休息の時間が取れなくなる」など、生活リズムの乱れにつながり、不調を引き起こします。
運動不足
運動不足はうつ症状だけではなく、さまざまな疾患の原因にもなりやすいので、注意が必要です。
テレワークでの仕事中は椅子に座りっぱなしという人も多く、なかには丸一日外に出ないという人もいるでしょう。
テレワークにより、通勤や社内の移動などの身体を動かすさまざまな機会がなくなるため、極端に活動量が減ってしまう傾向があります。
体を動かす時間が極端に減ると、同じ態勢を続けてしまうことで、肩や首のコリ、目の疲れなども感じやすくなります。[※2]
評価されていないと感じる
テレワークでは、業務のプロセスが見られないことから、自分の仕事が適切に評価されていないと感じることもあります。
オフィス内であれば、先輩に質問しつつ苦戦しながらも、自分なりの努力や工夫で仕事をしているプロセスを上司も見られますが、オンラインではそうした様子が見えづらい状況です。
仕事の結果のみのやりとりで終わってしまい、プロセスに対するフィードバックがないと、「頑張っても意味がない」などやる気の低下につながります。
テレワークうつの対策方法
テレワークで働く人向けに、テレワークうつの対策方法を紹介します。
テレワークうつの症状がないという人も、予防のためにぜひおさえておきましょう。
メリハリのある規則正しい生活を心がける
リモートワークでも、働く時間とプライベートの時間はきっちりと分けて、オンオフのメリハリある規則正しい生活を目指してみましょう。
- 起床・睡眠や食事の時間を一定にする
- 退勤ボタンを押したらパソコンは必ず閉じる
- 休みの日は仕事をしない
- 自分の好きなことをしていい時間を作る
自分なりの生活スケジュールを決めて、テレワーク中も規則正しい生活を心がけましょう。
運動する
運動することは、筋力維持など身体面はもちろん、達成感を得られるなどメンタル面にも効果的です。
- 朝にラジオ体操をする
- 寝る前にヨガやストレッチをする
- 仕事中も1時間に1回程度、椅子から立って体操する
- 仕事が終わったらウォーキングする
テレワークではどうしても運動量が減ってしまうので、意識して身体を動かすようにしましょう。
仕事環境を見直す
厚生労働省が公開しているチェックリストでは、仕事用の机に十分なスペースが確保されているかなど、作業環境がテレワークの快適さにおいて重要とされています。
- 仕事するのに十分なスペースが確保できる机を使う
- 疲れにくい椅子を使う
- 休憩場所と仕事する場所をわける
職場の人にどんな机や椅子を使っているのか、作業環境づくりでどんな工夫をしているのか聞いてみるのもいいでしょう。
同僚とのコミュニケーションのきっかけにもなります。[※3]
人とコミュニケーションをとる
仕事のコミュニケーションの場合も、事務的な内容にちょっと近況を添えてみるなど職場の人と積極的にコミュニケーションをとるようにしてみましょう。
会社によってはオンラインでのイベントや交流の機会を設けているケースもあるので、参加してみるのも対処法のひとつです。
また、仕事以外でも人と話す機会を増やしてみてください。
- 夜ごはんは家族と食べるきまりにして、会話する時間を作る
- 友達を食事や遊びに誘ってみる
- 趣味の集まりに参加してみる
もし、周囲に頼れる人がいない場合や、なかなか症状が改善しないときは、メンタルクリニックの受診やカウンセリングなどで専門家に頼るのも方法のひとつです。
自治体によっては、心身の健康について無料で相談できる窓口を設けていることもあります。
企業ができるテレワークうつへの取り組み
社員がテレワークうつにならないように、企業側ができる取り組みもあります。
たとえば、入社式などのイベントや目標達成を祝う会など、オンラインイベントの開催は社員の帰属意識を高めるのに役立つでしょう。
また、業務外での趣味のコミュニティを作って、グループチャットなどを設け、仕事以外のやりとりの場を作ることもできます。
新入社員は、積極的にコミュニティに参加したり発言したりするのが難しく孤立しやすいため、オンラインで個別の定期面談をおこなうのも効果的です。
テレワークうつを正しく理解して対策しよう
テレワークでは、うつ病のような症状がみられる「テレワークうつ」になるリスクがあります。
しかし、テレワークにはさまざまなメリットがあることも事実です。
テレワークでの働き方を工夫することで、テレワークうつのリスクは減らせます。
テレワークうつについて正しく理解・対策し、時代の変化に合わせながら心身ともに健康な生活を送っていきましょう。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※1]出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「テレワークの労務管理等に関する実態調査【概要版】」
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000782363.pdf
[※2]出典:厚生労働省「身体活動・運動」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html
[※3]出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/000759469.pdf
※本記事は、2022年6月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:山崎ゆうき(やまざきゆうき)
臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。