若者雇用促進法とは?制定背景や目的、対象、具体的な内容について解説
目次
近年では、少子化にともなう労働力人口の減少により、若者の雇用促進とスキルアップが重要な課題になっています。
若者雇用促進法は、若者が適職を選択するための支援や、能力向上などの措置を講じて若者の雇用を促進する法律です。
企業が若者雇用促進法を正しく理解し、活用すれば若年層の採用率の向上が期待できます。
この記事では、若者雇用促進法の目的や内容を詳しく解説します。
若者雇用促進法とは
若者雇用促進法とは、若者の雇用促進と能力向上を目的とした法律で、正式名称は「青少年の雇用の促進等に関する法律」といいます。
まずは若者雇用促進法制定の背景とその目的を解説します。
若者雇用促進法制定の背景
若者雇用促進法は「勤労青少年福祉法等」の一部を改正する形で制定されました。
勤労青少年福祉法は「青少年の雇用の促進等を図り、能力を有効に発揮できる環境を整備する」ことを目的とした法律です。
しかし、少子化による若年層の減少や離職率向上にともない、より一層若者の雇用を安定させて職務経験と能力を向上させる必要がでてきました。
そのため、勤労青少年福祉法等の一部を改正し、「若者雇用促進法」が制定されたのです。[※1]
若者雇用促進法の目的
若者雇用促進法は、若者が安定した雇用のなかで職務経験を積みながら能力を向上させ、働きがいを持って仕事にとりくめる社会を築くことを目的としています。
そのため、就職の準備段階から就職活動時、就職後のキャリア形成まで、各段階で若者の雇用対策をおこない、安定した仕事に就けるよう支援をしています。
若者雇用促進法の対象
若者雇用促進法の対象である「若者」とは15歳以上35歳未満の方です。
ただし、個々の施策・事業の運用状況等によっては、おおむね「45歳未満」の方についても対象とする場合もあります。
また現在就業中の方に限らず、求職者やニートなども対象となります。
若者雇用促進法の従業員側のメリット
若者雇用促進法のメリットは従業員側と企業側の双方にあります。
まずは従業員側のメリットを詳しく解説します。
適切な企業選択がしやすい
若者雇用促進法により、ハローワークは法令違反があった悪質な企業からの新卒求人の受け付けを拒否できるため、求職者が適切な企業を選びやすくなります。
そのため、法令違反があった企業への就職が防止でき、求職者が安心して就職活動が行えます。
企業とのミスマッチを防ぐことができる
若者雇用促進法により、求職者に対して特定の内容の情報提供が義務付けられました。
そのため、求職者が事前に知りたい情報が手に入り、応募前から企業とのミスマッチを防ぐことができます。
若者雇用促進法の企業側のメリット
企業側のメリットは以下の2つです。
- ユースエール認定による支援・優遇
- 優秀な人材の確保
ユースエール認定による支援・優遇
若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業については、厚生労働大臣から「ユースエール認定」がされます。
これにより、株式会社日本政策金融公庫において実施している「働き方改革推進支援資金」の優遇や、公共調達において加点評価がされるようになります。[※2]
優秀な人材の確保
ユースエール認定により、ハローワークが実施する就職面接会などに参加できるようになり、若者と接する機会が多くなります。
また、ユースエール認定マークを商品や広告などに付けることで、認定を受けた優良企業であるということを対外的にアピールが可能です。
若者雇用促進法の具体的な内容
若者雇用促進法の施行により、若者の適職選択と能力開発・向上に向けた施策が実施されました。
主な施策は以下の3つです。
- 職場情報の積極的な提供
- ハローワークにおける求人不受理
- ユースエール認定制度
それぞれを詳しく解説します。
職場情報の積極的な提供
新卒者のミスマッチによる早期離職を解消するため、職場情報の提供が義務化されました。
具体的な内容は以下の2点です。
- 幅広い情報提供を努力義務化
- 応募者等から求めがあった場合は、3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務化
それぞれ詳しくみていきましょう。
幅広い情報提供を努力義務化
「幅広い情報提供」とは、労働条件や平均残業時間など応募者が求める多くの情報提供を求めたものです。
ただし情報提供は「努力義務」とされており、可能な限り情報の提供が求められていますが、義務ではありません。
そのため、応募者からすると必要な情報がすべて提供されていない可能性もあります。
応募者等から求めがあった場合は、3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務化
前述したとおり、企業から必要な情報が提供されていない場合があることから、「応募者から求めがあった場合」は以下の3類型ごとに1つ以上(計3つ以上)の情報を提供しなければならないとされています。[※3]
募集・採用に関する状況 | 過去3年間の新卒採用者数・離職者数 |
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過去3年間の新卒採用者数の男女別人数 | |
平均勤続年数 | |
職業能力の開発・向上に関する状況 | 研修の有無及び内容 |
自己啓発支援の有無及び内容 ※教育訓練休暇制度・教育訓練短時間勤務制度がある場合はその情報を含む。 |
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メンター制度の有無 | |
キャリアコンサルティング制度の有無及び内容 ※セルフ・キャリアドック(定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組み)がある場合はその情報を含む。 |
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社内検定等の制度の有無及び内容 | |
企業における雇用管理に関する状況 | 前年度の月平均所定外労働時間の実績 |
前年度の有給休暇の平均取得日数 | |
前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別) | |
役員に占める女性の割合及び管理的地位にある者に占める女性の割合 |
企業の採用担当者は、応募者から求められた場合に備え、あらかじめ提示する情報を準備しておきましょう。
ハローワークにおける求人不受理
若者雇用促進法において、一定の労働関係法令違反があった企業はハローワークにおける求人を不受理にする(受け付けなくする)仕組みがあります。
求人の不受理の対象となる違反は以下のとおりです。
- 労働基準法と最低賃金法に関する規定について、1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けている
- 違法な長時間労働を繰り返している企業として公表された
- 対象条項違反により送検され、公表された
- 男女雇用機会均等法と育児介護休業法に関する規定について法違反の是正を求める勧告に従わず公表された
対象となった企業はハローワークで求人の掲載ができなくなるため、新卒者の悪質な企業就業を防止することができます。
ユースエール認定制度
若者雇用促進法が施行されたことにともない、若者の採用・育成に積極的で優良な中小企業を厚生労働大臣が「ユースエール認定企業」として認定する制度ができました。
ユースエール認定企業には以下のメリットがあります。
- ハローワークの就職面接会などへの優先的に参加できる
- 採用においてユースエール認定企業として自社をアピールできる
- 日本政策金融公庫による低利融資を受けることができる
このようなメリットがあり、若者を積極的に採用する企業が有利になります。
しかし、認定には以下の基準を満たす必要があります。
- 常時雇用労働者が300人以下
- 若者を対象とした正社員の求人や募集を行っている
- 人材育成方針と教育訓練計画を策定している
- 正社員として就職した人の離職率が20%以下
- 月平均所定外労働時間が20時間以下かつ、月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいない
- 有給休暇の年間付与日数に対する取得率が70%以上または年間平均取得日数が平均10日以上
- 男性労働者の育児休業等取得者が1人以上または女性労働者の育児休業等取得率が75%以上
- 青少年雇用情報を公表している(離職者数・平均継続勤務年数・研修内容など)
- 内定取り消し・解雇を行なっていない
- その他法令違反がないことや該当する事業内容ではない
また、認定申請にあたっては指定の様式に必要書類を添付して、住所を管轄する労働局に提出が必要があります。[※4]
若者雇用促進法を正しく理解し活用しよう
若者雇用促進法は、若者の雇用促進と若年層を採用したい企業を支援する法律です。
内容を正しく理解し、活用すれば若年層の応募・採用率の向上が期待できます。
若者雇用促進法の制度を活用しながら、若者の能力を向上させ、企業の若返りを図りましょう。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※1]出典:厚生労働省「若者雇用促進法」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000134614.pdf
[※2]出典:日本政策金融公庫「働き方改革推進支援資金」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/hatarakikata.html
[※3]出典:厚生労働省「就労実態等に関する職場情報を応募者に提供する制度について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000122440.pdf
[※3]出典:厚生労働省「ユースエール認定制度」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000100266.html
※本記事は、2022年8月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:北 光太郎(きた こうたろう)
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。