「DX認定」とは?DX認定制度のメリットと認定に関わる概要を解説
目次
DX認定制度とは、経済産業省が策定した「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を推進するための認定制度です。
DX推進は、デジタル技術を扱える人材の育成や未来の投資にもつながるため、事業者が長期的に競争力を高めるためにも重要です。
DX認定制度を受けることで、税制措置や支援措置などを受けられ、さらに企業の信用やブランドイメージの向上につながるというメリットがあります。
本記事では、DX認定制度の概要やメリット、申請の流れを解説します。
DX認定制度とは?
DX認定制度とは「DX推進の準備が整っている事業者」として、国が事業者を認定する制度のことです。[※1]
DX認定制度は、2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」をもとに始まりました。
DX認定制度は、IPA(情報処理推進機構)が申請に関わる審査業務などを担当しています。
IPAとは、IT技術に関わる人材や技術のサポートを担っている組織で、経済産業省が管轄している独立行政法人です。
認定事業者がIPAに認定申請をおこない、審査結果を経済産業省に報告したのちに、IPAが結果通知を受ける流れで、最終的に認定事業者に通知される流れで認定を受けられます。
DX認定制度が導入された背景
DX認定制度は、事業者がDXを推進させるきっかけとして導入されました。
日本国内では、まだまだDXが普及していないという課題があります。
そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を使い、組織全体や事業活動など、あらゆるものを変革することを指します。
DX推進の取り組みを実施することで、組織全体の競争力を高められるだけでなく、社会全体の豊かさにつながると考えられています。
反対に、DXを推進しないまま事業活動を続けると、古い設備やシステムのまま事業活動を続けることになるでしょう。
DXの推進が普及しないと、事業者の競争力が弱まるだけでなく、経済全体で見たときに損失が大きくなると考えられています。
DX認定制度で認定を受けることで、事業者は支援措置などの恩恵を受けられるため、最終的に社会全体を豊かにする施策にもつながります。
デジタルガバナンス・コードについて
デジタルガバナンス・コードとは、デジタル技術をどのように事業活動に活かすのか、経営者に必要な方針を国がまとめたものを指します。[※2]
デジタルガバナンス・コードは、企業から個人事業主などを含めて、規模にかかわらず目を通さなければいけない内容です。
DX認定制度を受けるうえで、デジタルガバナンス・コードに記載された内容を参考に、自社でも取り入れていく必要があります。
DX認定制度の認定レベル
事業者のDX推進については、推進のレベルに合わせて4つの段階に区分されます。
- DX-Excellentレベル:認定事業者のうち、デジタル技術の活用実績が豊富な事業者
- DX-Emergingレベル:認定事業者のうち、将来性を評価できる事業者
- DX-Readyレベル:DXの戦略や体制などの準備が整っている事業者
- DX-Ready以前レベル:これからDXの準備を整えていく事業者
本制度では、「DX-Readyレベル」に当てはまる事業者が認定の対象となります。
DX認定制度の認定を受けるメリット
DX認定制度の認定を受けることで、以下のような恩恵が得られます。
- 税制の支援措置を受けられる
- 中小企業の支援措置を受けられる
- DX認定制度のロゴマークを使える
- 企業価値が高まる
DX認定制度のメリットを見ていきましょう。
税制の支援措置を受けられる
DX認定制度の認定事業者のなかでも、企業全体レベルでのDX推進計画を主務大臣に認められた場合、デジタル技術に関わる投資の税制支援措置を受けられます。
税制の支援措置を使えば、事業活動の投資にかかる税金を抑えられます。
具体的には「税額控除(3%、5%のどちらか)」または「特別償却30%」を受けることが可能です。
事業活動の投資に費用をまわせるようになり、DX推進に関わる人材育成や事業成長につなげられます。
中小企業の支援措置を受けられる
DX認定制度を受けた中小企業の認定事業者は、日本政策金融公庫より、DX導入に関わる費用の融資を受けることができます。
通常の融資よりも基準利率が低くなるため、DX導入にかかる費用を抑えられるでしょう。
また、支援措置について信用保証枠の拡大を受けることも可能です。
DX認定制度のロゴマークを使える
DX認定制度の認定事業者になると「DXを推進している企業」という証明になるロゴマークを使えます。
DXに関心が高い企業として、取引先や顧客からの信頼を得やすくなるでしょう。
ロゴマークは、IPA(情報処理推進機構)が管理する『DX推進ポータル』からダウンロードできます。
また、認定事業者は『DX推進ポータル』のWebサイトに企業名が公開されます。
自社でDXを推進している証拠になるため、社外にDX推進をアピールできます。
企業価値が高まる
DX認定制度の認定事業者になると、企業のブランド価値を高める効果が期待できます。
DXに関わるイメージを強化できるため、DXに関わる新しい事業活動を始める際にも役立つでしょう。
また、採用活動においてもDXを推進する企業としてアピールできれば、IT技術に強い人材を確保しやすくなるといったメリットもあります。
DX認定制度における申請の概要
DX認定制度の申請受付は、2020年11月から始まりました。
DX認定制度における申請の概要について、以下の項目を解説します。
- 申請期間
- 認定の有効期間
- 申請の対象者・申請方法
申請期間
DX認定制度は、一年365日のうちどのタイミングでも申請することができます。
認定までにかかる期間は、営業日中の約60日後(カレンダー上で約3か月後)になります。
認定の有効期間
DX認定制度の事業者として認定後、2年間が有効期間になります。
2年ごとに更新する必要があるため、有効期間が終了する60日前までに申請を済ませる必要があります。
申請の対象者・申請方法
DX-Readyレベル(DXの戦略や体制などの準備が整っている)事業者が対象です。
DX認定制度は『DX推進ポータル』のWebサイトから申請できます。
申請に費用はかからないので、DX推進の準備が整っている事業者なら誰でも申請できます。
DX認定制度における申請の流れ
「DX認定制度」における申請の流れは以下のとおりです。
- 認定基準を確認する
- 申請書類を準備する
- Webから申請する
申請前には、事業者として認定基準を満たしているか確認する必要がありますので、詳しく見ていきましょう。
認定基準を確認する
まずは事業者として、DX認定制度の認定基準を満たしているかどうかを確認しましょう。
DX認定制度の認定基準は、経済産業省が発表している「DX認定制度 申請要項 (申請のガイダンス)案」が参考になります。[※3]
申請書類を準備する
IPA(情報処理推進機構)のWebサイト内「DX認定制度のご案内」のページから、申請書類をダウンロードします。[※4]
申請書類の「DX認定制度 認定申請書」と「申請チェックシート」に必要事項を記入していきます。
DX認定制度を更新する際も、同じページから更新申請の書類をダウンロードできます。
Webから申請する
『DX推進ポータル』のWebサイトから、DX認定制度に必要な申請書類を送信します。
郵送する必要がないため、手間をかけずに申請することが可能です。
DX認定制度申請までの社内プロセス
DX認定制度申請までに必要な、社内におけるプロセスを見ていきましょう。
- 経営ビジョンを策定する
- DX戦略を策定する
- DX戦略推進管理体制を策定する
- 経営者から情報発信をおこなう
- DX推進指標の自己分析をおこなう
- DX推進指標の自己分析をおこなう
- セキュリティ監査報告書をまとめる
社内の課題などを整理する際の参考としてください。
経営ビジョンを策定する
DX認定制度を受けるためにも、まずは事業者が現在のビジネス状況や経営環境を見直します。
デジタル技術の普及により、事業活動の面でどのような影響を受けているのか、競争力や環境面の課題などを分析しましょう。
DX認定制度に関わる課題などを含めて、社内で経営ビジョンや今後の方向性を整理していきます。
内容を整理できたら、取締役会から承認を受けて内容を公表しましょう。
DX戦略を策定する
経営ビジョンの策定内容を参考にしながら、DX戦略のビジネスモデルを検討していきます。
新しくデジタル技術などを導入して、ビジネスモデルを検討することが必要です。
場合によっては、デジタル技術に強い人材を育成・採用することや、外部からプロジェクトに参加してもらえる人材や組織を探す必要があります。
周りの環境を整備していき、DX推進に関わる具体的な内容や計画を立てていきましょう。
内容を整理できたら、取締役会から承認を受けて内容を公表します。
DX戦略推進管理体制を策定する
DX推進に関わる戦略について、どのくらい達成できているかをはかるために、KPIなどの指標を使います。
また、戦略の進捗状況を管理していくためにも、社内で体制を整える仕組みを作ることも大切です。
内容を整理できたら公表しましょう。
経営者から情報発信をおこなう
デジタル技術の活用に関わる戦略などについて、経営者から情報発信をおこないましょう。
自社のホームページなどを使い、情報発信をしていきます。
役員などを含めて積極的に情報発信をすることで、DX認定制度の認定基準に関わる項目を満たすことができます。
また、社内に向けても情報発信を進めることで、DX推進に関わる意識改革につながるでしょう。
DX推進指標の自己分析をおこなう
DX推進の成果について、DX推進指標を使いながら自己分析を実施しましょう。
DX推進指標は、IPA(情報処理推進機構)が公表しているページが参考になります。[※5]
セキュリティ監査報告書をまとめる
DX推進にあたり、セキュリティ対策に関わる監査報告書をまとめます。
デジタル技術を活用していくうえでは、事業活動に関わる情報を守るための管理が重要になります。
サイバーセキュリティ対策については、経済産業省が公開している情報が参考になります。[※6]
DX認定制度はDX推進に役立つ
DX認定制度の認定事業者になることで、支援措置などを受けることができます。
DXを推進する事業者としての価値が高まるため、未来の事業活動を検討できる企業として、ステークホルダーから信頼されるでしょう。
経営ビジョンやDX戦略を策定するなど、社内での準備を整えてから申請を受けるようにしましょう。
また、DX推進には、社内全体におけるDXの認知を高める取り組みが重要です。
社内全体にDXの情報共有をおこなう際は、ビジネスチャット「Chatwork」の活用がおすすめです。
グループチャットを作成することで、社内全体にDXの取り組みに関わる情報を共有できます。
DXを推進させる方法のひとつとして、「Chatwork」をご活用ください。
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[※1]出典:経済産業省「DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html
[※2]出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf
[※3]出典:経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)案」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dgs5/pdf/004_05_00.pdf
[※4]出典:独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)「DX認定制度のご案内」
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-nintei/about.html
[※5]出典:独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)「DX推進指標のご案内」
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html
[※6]出典:経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドラインと支援ツール」
https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/mng_guide.html