経理の在宅勤務はなぜ難しい?理由や実情、成功のポイント、実現させている企業の特徴などを解説
目次
多くの職種で在宅勤務やテレワークが普及する一方、経理部門の在宅勤務は遅れているとも言われます。
本記事では、経理の在宅勤務が難しいとされる根本的な理由や実情を深く掘り下げます。
あわせて、在宅勤務を成功させるための具体的なポイントや注意点、そして外部サービスを活用した解決策も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
経理の在宅勤務が難しい理由は?
経理部門の在宅勤務が他の職種に比べて難しいとされる背景には、経理業務の性質に関係する理由が存在します。
1. 紙媒体の書類が多い
経理関連の業務には、紙でやり取りされる書類・ドキュメント類がいまだに多く存在します。
取引先から郵送で届く請求書や、従業員が提出する領収書、金融機関から送付される各種通知書などがその代表例です。
これらの書類を受け取り、確認し、ファイリングするといった物理的な作業は、オフィスでなければ対応が困難です。
書類を自宅に持ち帰ることは、紛失や情報漏洩のリスクを高めることから、多くの企業で禁止されており、経理の在宅勤務を妨げる要因となっています。
2. 押印・捺印文化が根強い
日本のビジネス慣習として根強く残っているのが、押印・捺印の文化です。
請求書への角印の押印や、稟議書、経費精算書などの社内書類に対する上長の承認印など、物理的な押印を必要とする業務フローが残っている企業は少なくありません。
この「ハンコ出社」とも呼ばれる慣習が、経理担当者の出社を余儀なくさせる大きな理由のひとつとなっています。
3. 専用の会計システムや社内サーバーへのアクセス
経理業務に用いる会計システムや販売管理システムを、社内に設置されたサーバー(オンプレミス)で運用している企業も多く見られます。
このようなケースでは、セキュリティ上の理由によって社外からのアクセスを制限していることが一般的です。
在宅勤務を行うためには、VPN(仮想プライベートネットワーク)などの特別なネットワーク設定が必要となり、その導入や管理に専門的な知識とコストがかかることが、経理の在宅勤務化の障壁となっています。
4. セキュリティへの懸念
経理部門は、会社の財務状況や従業員の給与といった、極めて機密性の高い情報を取り扱います。
これらの情報を、セキュリティレベルがオフィスとは異なる自宅のネットワーク環境で扱うことに対して、情報漏洩のリスクを懸念する声は根強くあります。
PCの紛失・盗難や、ウイルス感染などのリスク管理が、在宅勤務を実現する上での大きな課題です。
5. 部門間の連携・コミュニケーション
経理の仕事は、営業部門や人事部門など、社内のさまざまな部署と連携して進める業務が多くあります。
例えば、請求内容の確認や、経費精算の不備に関する問い合わせなどです。
オフィスにいれば気軽にできる口頭での確認も、在宅勤務ではチャットやメールでのやり取りとなり、コミュニケーションに時間や手間がかかることがあります。
経理の在宅勤務・テレワークの実情
先ほど紹介した通り、経理部門について完全な在宅勤務を実現できているケースはまだ少ないと言えます。
経理部門の働き方として、多くの企業で導入されているのが「ハイブリッド勤務」という形態です。
これは、週の数日は在宅で勤務し、残りの数日はオフィスに出社するというスタイルです。
経理部門が在宅勤務の日には、データ入力や資料作成、オンラインでの会議など、PCで完結する業務を行います。
そして、出社日には、郵送で届いた請求書の処理、押印作業、紙の書類のファイリングといった、オフィスでなければできない業務をまとめて処理します。
ハイブリッド勤務を行う中であっても、月末月初や四半期・年次の決算期などの繁忙期には出社頻度が高くなる傾向が見られます。
そのため、多くの経理担当者は、テレワークを取り入れつつも、紙や押印などの制約からは解放されておらず、完全在宅勤務(フルリモート)には至っていないというのが実情と言えるでしょう。
経理の在宅勤務化が進んでいる企業の業種、特徴
一方、経理部門の在宅勤務化が進んでいる企業も存在します。
ここでは、経理の在宅勤務化に成功している企業の業種や特徴を紹介します。
業種
IT・情報通信業:もともとデジタルツールやクラウドサービスの活用に積極的であり、ペーパーレスな業務フローが浸透している企業が多いです。
自社で提供するサービスがクラウドベースであることも多く、在宅勤務への親和性が高い業種です。
コンサルティング業・専門サービス業:物理的なモノのやり取りが少なく、PCとインターネット環境さえあれば業務が完結しやすい業種です。
成果物もデータでの納品が中心であるため、在宅勤務に移行しやすい特徴があります。
特徴
ペーパーレス化が進んでいる:請求書や契約書を電子的にやり取りする仕組みが整っており、社内での稟議や承認もワークフローシステムで完結するなど、紙を前提としない業務プロセスが構築されています。
クラウド型のツールを積極的に活用している:会計システムや経費精算システム、販売管理システムなどを、オンプレミス型ではなくクラウド型で導入しています。
クラウドツールは、場所を問わずにアクセスできるため、在宅勤務の必須条件と言えます。
押印文化からの脱却:社内での承認プロセスに物理的な押印を必要とせず、電子印鑑やワークフローシステムでの承認に完全に切り替えています。
取引先との契約も、電子契約サービスを活用しています。
経営層の理解とリーダーシップ:経営層が在宅勤務の重要性を理解し、トップダウンで業務プロセスの変革や、必要なITツールへの投資を推進している企業は、在宅勤務化がスムーズに進む傾向があります。
経理を在宅勤務にするメリット
続いて、経理業務の在宅勤務化を進めることによって得られるメリットを紹介します。
メリット1:優秀な人材の確保と定着
働き方の多様化が進む中で、「在宅勤務が可能であること」は、求職者が企業を選ぶ上での重要な要素となっています。
経理部門の在宅勤務を可能にすることで、居住地に縛られず、全国から優秀な人材を採用できるようになります。
また、育児や介護といった事情を抱える従業員も、仕事と家庭を両立しやすくなるため、離職を防ぎ、人材の定着率向上につながります。
メリット2:コスト削減
在宅勤務が普及すると、従業員が出社する頻度が減るため、オフィスの規模を縮小(縮小移転)することが可能になり、賃料や光熱費といった固定費を削減できます。
また、従業員に支払う通勤手当を削減できるほか、ペーパーレス化が進むことで、用紙代や印刷代、郵送費といった経費も削減できます。
メリット3:生産性の向上
従業員は、通勤にかけていた時間を業務や自己研鑽、休息に充てることができます。
また、オフィスでの電話対応や、周囲からの割り込み業務がなくなることで、集中して作業に取り組めるため、業務の生産性向上が期待できます。
在宅勤務化を進める過程で、非効率な業務プロセスが見直され、業務全体の効率化が進むという効果もあります。
メリット4:事業継続計画(BCP)の強化
地震や台風といった自然災害や、新たな感染症のパンデミックなど、従業員が出社困難になる不測の事態が発生した場合でも、在宅勤務が可能な体制が整っていれば、事業活動を継続することができます。
経理業務は、止めることのできない重要な業務です。
在宅勤務体制の構築は、企業の事業継続計画(BCP)を強化する上で、非常に重要な意味を持ちます。
経理を在宅勤務にするデメリット
多くのメリットがある一方で、経理の在宅勤務化にはいくつかのデメリットや課題も存在します。
デメリット1:導入コストと環境整備の手間
在宅勤務を実現するためには、相応の初期投資が必要です。
クラウド会計ソフトや経費精算システム、ワークフローシステムといったITツールの導入費用や月額利用料がかかります。
また、従業員に貸与するPCや、安全なネットワーク環境(VPNなど)の整備、そして新しい業務フローの構築や従業員への教育にも、時間と手間がかかります。
デメリット2:コミュニケーションの質の変化
オフィスにいれば気軽にできていた、隣の席の同僚へのちょっとした相談や、上司への確認が、在宅勤務では難しくなります。
チャットやWeb会議でのコミュニケーションは、対面に比べて非言語的な情報(表情や声のトーンなど)が伝わりにくく、意思疎通に齟齬が生じる可能性があります。
雑談などの偶発的なコミュニケーションが減ることで、チームの一体感が希薄になる懸念もあります。
デメリット3:労務管理の複雑化
在宅勤務では、従業員の労働時間を正確に把握することが、オフィス勤務以上に難しくなります。
自己申告に頼るだけでは、長時間労働(隠れ残業)を見過ごしてしまうリスクがあります。
勤怠管理システムを導入し、PCのログを管理するなど、客観的に労働時間を把握するための仕組み作りが必要です。
また、従業員の孤独感やメンタルヘルス不調へのケアも、新たな課題となります。
デメリット4:セキュリティリスクの増大
機密性の高い経理情報を、セキュリティレベルが異なる家庭のネットワーク環境で扱うことは、情報漏洩のリスクを高めます。
ウイルス対策ソフトの導入徹底、公共Wi-Fiの利用禁止、貸与PCのセキュリティ設定強化、そして従業員へのセキュリティ教育など、オフィス勤務以上に厳格な情報管理体制の構築と運用が求められます。
経理の在宅勤務を成功させるポイント
経理部門の在宅勤務を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。
ポイント1:ペーパーレス化の徹底
在宅勤務を実現するための大前提は、紙の書類に依存した業務フローからの脱却です。
取引先には、請求書や領収書をできるだけ電子データ(PDFなど)で送受信してもらうよう協力を依頼します。
社内で発生する経費精算も、紙の領収書をスマートフォンで撮影して申請できるような、経費精算システムの導入を検討します。
どうしても紙で受け取らなければならない書類は、スキャナで電子化してデータで共有するルールを徹底します。
ポイント2:クラウドツールの導入
会計システムや販売管理システム、ワークフローシステムなどを、社内サーバーで管理するオンプレミス型から、インターネット経由で利用できるクラウド型へ移行します。
クラウドツールを導入することで、従業員は場所を問わずに必要な情報へアクセスし、業務を遂行できるようになります。
法改正への対応も、ツール提供会社が自動でアップデートしてくれるため、自社での対応負担が軽減されます。
ポイント3:押印業務の見直しと電子化
社内の承認プロセスや、取引先との契約において、本当に物理的な押印が必要なのかを根本から見直します。
社内での承認は、ワークフローシステムを導入して電子承認に切り替えます。
取引先との契約も、電子契約サービスを活用することで、押印のためだけに出社する必要がなくなります。
法的に押印が不要な書類も多いため、慣習で行っているだけの押印業務は積極的に廃止を検討しましょう。
ポイント4:コミュニケーションルールの確立
在宅勤務では、意識的にコミュニケーションの機会を設けることが重要です。
ビジネスチャットツールを導入し、業務連絡はチャットで行うことを基本ルールとします。
朝礼や定例ミーティングをWeb会議で定期的に実施し、チームメンバーの顔を見ながら話す機会を確保します。
また、業務に関係のない雑談専用のチャットルームを作るなど、偶発的なコミュニケーションを促す工夫も有効です。
経理の在宅勤務における注意点
在宅勤務の体制を構築・運用する上では、いくつか注意すべき点があります。
これらを事前に理解し、対策を講じることが重要です。
注意点1:セキュリティポリシーの策定と周知徹底
在宅勤務を開始する前に、セキュリティに関する明確なルール(セキュリティポリシー)を策定し、全従業員に周知徹底する必要があります。
具体的には、貸与PCの私的利用の禁止、公共Wi-Fiでの業務禁止、ウイルス対策ソフトの常時アップデート、機密情報の取り扱いルール、そして万が一インシデントが発生した場合の報告手順などを定めます。
定期的なセキュリティ研修を実施し、従業員の意識を高めることも不可欠です。
注意点2:業務の進捗状況を可視化する仕組み
在宅勤務では、誰がどのような業務をどのくらい進めているのかが見えにくくなります。
管理者が部下の業務状況を把握し、適切にサポートするためには、業務の進捗を可視化する仕組みが必要です。
プロジェクト管理ツールやタスク管理機能を活用し、各担当者のタスクとその進捗状況をチーム全体で共有できる環境を整えましょう。
これにより、業務の偏りを防ぎ、遅延が発生する前に対策を講じることができます。
注意点3:従業員の評価制度の見直し
オフィス勤務が前提の評価制度では、勤務態度やプロセスが見えにくい在宅勤務の従業員を、公正に評価することが難しい場合があります。
在宅勤務を導入する際には、労働時間ではなく、仕事の成果(アウトプット)に基づいて評価する「成果主義」の考え方を取り入れた評価制度へと見直すことが望ましいです。
各従業員の目標と達成基準を明確に設定し、その達成度合いで評価する仕組みを構築することが、従業員の納得感とモチベーションにつながります。
経理の在宅勤務が難しい場合は『Chatwork 経理アシスタント』もおすすめ!
「在宅勤務化を進めたいが、ITツールの導入や業務フローの変更に、すぐには着手できない」。
「紙の請求書や領収書がどうしてもなくならず、出社が必要な業務が残ってしまう」。
このように、様々な理由で経理の完全な在宅勤務化が難しい企業にとって、有効なもう一つの選択肢が、業務そのものを外部に委託するアウトソーシングです。
特におすすめしたいのが、『Chatwork 経理アシスタント』の活用です。
『Chatwork 経理アシスタント』は、日々の記帳代行から、請求書発行、経費精算、支払い管理まで、幅広い経理業務をオンラインでサポートするサービスです。
このサービスは、アシスタントがリモートで業務を行うため、企業は自社で在宅勤務体制を構築することなく、経理業務の効率化とリモート化の恩恵を受けることができます。
例えば、会社に届いた紙の請求書や領収書をスキャンしてデータで送るだけで、後のデータ入力や処理は、すべてオンラインアシスタントがリモートで行います。
これは、経理業務のリモート化を実現する、新しい形のソリューションと言えます。
Chatwork 経理アシスタントを導入するメリット
『Chatwork 経理アシスタント』を導入することで、企業は在宅勤務体制を構築する際の課題を回避しつつ、多くのメリットを得ることができます。
メリット1:システム投資や体制変更なしで業務を効率化できる
自社で在宅勤務体制を構築する場合に必要な、クラウドツールの導入費用や、業務フローの変更といった、手間とコストのかかる準備が不要です。
契約後すぐに、経験豊富なプロのアシスタントチームに業務を依頼できます。
現在の業務フローを大きく変えることなく、煩雑な経理業務から解放され、担当者はより付加価値の高い業務に集中できます。
メリット2:コストを抑えて専門人材を確保できる
経理の実務経験者を一人直接雇用すれば、月々数十万円の人件費がかかります。
『Chatwork 経理アシスタント』は、月額数万円からというリーズナブルな料金で、プロの経理サポートを受けることができます。
採用や教育にかかるコストと手間を一切かけることなく、質の高い経理機能をスピーディーに立ち上げることが可能です。
メリット3:Chatworkによる円滑な連携
アシスタントとの業務連絡や、領収書・請求書といった証憑書類の共有は、すべて使い慣れたビジネスチャット「Chatwork」で完結します。
証憑をスマートフォンで撮影し、チャットで送信するだけでデータ入力や処理を依頼できるというスムーズな連携が業務のスピードを向上させ、コミュニケーションのストレスを軽減します。
まとめ
本記事では、経理の在宅勤務が難しいとされる理由や実情、成功させるためのポイントなどについて解説しました。
経理の在宅勤務化にはさまざまな問題が存在するものの、実現は十分に可能です。
また、自社での体制構築が難しい場合には、アウトソーシングを活用するという選択肢もあります。
自社が抱える課題を明確にし、自社に合った方法を検討してみてください。
