カフェテリアプランとは?導入のメリットや流れ、仕組みを事例付きで解説

目次
カフェテリアプランは、従業員一人ひとりが自分のライフスタイルやニーズに合わせて福利厚生を選べる制度です。
企業から支給されるポイントを、住宅補助や育児支援、自己啓発などに活用することができます。
カフェテリアプランは従業員の満足度向上や人材確保に効果的とされ、働き方の多様化が進む中で注目を集めています。
今回は、カフェテリアプランの仕組みや導入の流れ、企業と従業員が得られるメリットについて、具体的な事例を交えつつわかりやすく解説します。
カフェテリアプランとは
「カフェテリア」とは、利用者がメニューの組み合わせを自由に選択できる食堂のことです。
福利厚生における「カフェテリアプラン」は、企業や団体があらかじめ用意した福利厚生メニューの中から自身のライフスタイルにあったものを選択し、ポイントを使って利用できるという選択型の福利厚生制度です。
従業員が福利厚生を利用したい際に、企業や団体から付与されたポイントを補助金として消化することで、福利厚生を割安で利用できる仕組みになっています。
たとえば、スキルアップのための学習や育児・介護、旅行など、その時々のライフプランに合わせてメニューを選択できます。
カフェテリアプランの歴史
カフェテリアプランは、1980年代にアメリカで生まれた制度です。アメリカで1970年代から進んだ医療費の高騰、従業員のニーズの多様化などに対応するため、福利厚生制度の1つとして広まっていきました。
日本では、1990年代になってから知られるようになった制度といえます。1995年に株式会社ベネッセコーポレーションが初めてカフェテリアプランを導入し、その後、日本全国の企業にも普及しました。
パッケージプランとの違い
カフェテリアプランは、企業が用意した特定の福利厚生メニューから、従業員が自身のニーズやライフスタイルに合わせて付与されたポイントの範囲内で選択できる制度です。
たとえば、住居費や自己啓発費用、育児・介護支援などの選択肢があり、個人ごとに異なる価値観や生活状況に対応する形で福利厚生をカスタマイズできます。
一方、パッケージプランは、企業が事前に決めた福利厚生を、全従業員へ一律で提供する制度です。内容が固定的であるため、従業員の選択の自由度は低いものの、管理や運用がしやすいのが特徴です。
カフェテリアプランが個別の多様なニーズに応える制度であるのに対し、パッケージプランは均一性と効率性を重視した制度であるという点が両者の大きな違いといえるでしょう。
カフェテリアプランが注目される背景
カフェテリアプランが注目される背景には、働き方や価値観の多様化が大きな要因として挙げられます。
リモートワークの普及や働き方改革の推進により、従業員が求める福利厚生の内容には一律で対応しにくくなっています。
そのため、個々のニーズに応じて福利厚生を選べるカフェテリアプランが、柔軟性の高い制度として注目を集めています。
また、企業にとって福利厚生制度は、優秀な人材を確保し、定着率を向上させるための手段として重要です。
カフェテリアプランを導入し、福利厚生の多様な選択肢を提供することで、従業員の満足度を高め、結果として離職率の低下にも有効とされています。
企業におけるカフェテリアプランの導入率は、2015年度に15.6%だったものが2019年度には17.1%まで増加しており、期待の高さがわかります。
[※1]カフェテリアプランを導入するメリット
カフェテリアプランを導入するメリットは以下のとおりです。
- 従業員の満足度向上につながる
- 福利厚生費の管理がしやすくなる
- 企業のブランディングになる
従業員の満足度向上につながる
カフェテリアプランでは、さまざまな福利厚生制度がメニューとして用意されているため、多様なニーズに対応できます。
従業員自身が使いたいメニューを選べることが福利厚生制度の利用促進にもつながり、企業に対する満足度が向上するでしょう。
福利厚生費の管理がしやすくなる
福利厚生制度が複数あると、企業はそれぞれの予算や費用を管理しなければなりません。
一方、カフェテリアプランであれば、付与するポイントの額のみを予算として計上すれば済むため、福利厚生費の管理がしやすくなります。
また、カフェテリアプランでは付与ポイントの範囲内でしか制度を利用できないため、予算がオーバーする心配もありません。
企業のブランディングになる
カフェテリアプランのメニューは各企業で独自に設定できるため、企業のブランディングに役立ちます。
求職者へカフェテリアプランの内容を公開することで、企業の福利厚生に対する姿勢や取り組みが伝わり、人材採用への効果が期待できるでしょう。
カフェテリアプランを導入する際の注意点
カフェテリアプランの導入は多くのメリットがある一方、以下のような注意点もあります。
- 運用や管理が複雑になる
- 課税・非課税が混在する
- 予算が増加する
- ポイント失効の不満が生まれる
運用や管理が複雑になる
カフェテリアプランは企業が独自にメニューを設定できる一方、時代や従業員のニーズに合わせて内容を改善していく必要があります。
また、業務で使用するシステムを新たに構築した場合・システムの改修や入れ替えがあった場合などには、ポイント管理や申請フローなどの変更が発生するケースもあり、人手と費用が必要となります。
管理や運営に関わる負担を軽減したい場合は、福利厚生代行サービスの利用も合わせて検討しましょう。
課税・非課税が混在する
カフェテリアプランで利用できる福利厚生メニューには、課税・非課税のものが混在しています。そのため、運用にあたっては課税・非課税のメニューを把握しておくことが大切です。
たとえば、商品券や食事券、レジャー施設のチケットなどの換金性のあるものなどは課税対象となります。
一方、予防接種や医薬品(セルフメディケーション税制非対象商品を除く)など、全従業員が平等に受けられ、換金性のないメニューであれば非課税になります。
[※2]予算が増加する
日本経済団体連合会の調査ではカフェテリアプランに必要な予算は、従業員ひとりあたり月4,660円という調査結果が出ています。
つまり、年間では従業員ひとりにつき5〜6万円程度の予算がかかることになります。
[※1]企業によっては、カフェテリアプランの導入によって福利厚生の予算が増加する可能性もあります。
あらかじめ、必要な費用を把握してから導入を検討しましょう。
ポイント失効の不満が生まれる
カフェテリアプランでは、ポイントに有効期限があります。
たとえば、翌年度まで繰り越しができないポイントであれば年度内に消費する必要があり、福利厚生を使わないままポイントが失効するケースがあると、従業員から不満が生じる可能性があります。
また、知らないうちにポイントが失効する従業員が増えると、カフェテリアプランの仕組み自体が形骸化してしまいます。
企業側は、カフェテリアプランの使い方やポイントの有効期限について、定期的に周知活動をおこなうことが重要です。
カフェテリアプランの代表的なメニュー例
カフェテリアプランには豊富なメニューがありますが、ここでは代表的なメニューを以下7種類に分けてご紹介します。
- 健康管理・医療
- 育児・介護
- 住宅
- 自己啓発・学習
- 生活支援
- 財産形成
- 余暇支援
健康管理・医療
カフェテリアプランの健康管理・医療メニューには、健康診断や人間ドックの費用補助、インフルエンザ予防接種の補助などがあります。
従業員の健康維持や病気予防を支援することで、病欠の減少や生産性向上が期待されます。
また、ストレスケアやメンタルヘルス相談の費用も対象になる場合があり、心身ともに健康な職場環境を促進します。
育児・介護
育児・介護には、保育園や託児所の利用料補助、ベビーシッター費用の支援、介護サービスやデイケア施設の利用費用の補助が含まれます。
子どもがいる従業員や介護を担う従業員が仕事と家庭の両立をはかりやすくなり、離職率の低下や企業満足度の向上につながります。
住宅
住宅関連の内容としては、住宅ローンの利子補給、家賃補助、引っ越し費用の支援などが一般的です。
特に、転勤が多い企業では、引っ越しや住まいに関する費用を補助することで、従業員の経済的負担を軽減し、安心して働ける環境を提供できます。
自己啓発・学習
自己啓発や学習に関するメニューとして、資格取得費用や語学講座受講料の補助、通信教育の費用支援など、従業員のキャリアアップを支援する内容が挙げられます。
従業員個人のスキルアップを促すことで、長期的には企業全体の競争力を高める効果も期待できます。
企業によっては、研修費用や書籍購入費が支援されることもあります。
生活支援
生活支援メニューには、家事代行サービスやクリーニング代の補助、交通費や公共料金の支援など、日常生活をサポートする内容が含まれます。
従業員がより効率的に働ける環境づくりに役立つメニューを提供することで、従業員の生活の質や、企業に対する満足度の向上が期待できます。
財産形成
財産形成にかかわるメニューとして、確定拠出年金(企業型DC)への拠出金支援、株式購入補助、貯蓄計画の支援などがあります。
将来の生活に備えるための選択肢を提供し、補助をおこなうことで、従業員は長期的な安心感を持って働けるようになるでしょう。
余暇支援
余暇支援には、旅行費用補助、テーマパークのチケット購入支援、スポーツ観戦費用補助などのメニューが多くみられます。
従業員が仕事の疲れを癒し、リフレッシュできる時間を確保することで、業務へのモチベーションや生産性の向上が期待できます。
カフェテリアプランの運用方法
カフェテリアプランを実際に運用する際は、「ポイントの運用」と「課税・非課税」についてそれぞれ整理しておきましょう。
ポイントの運用方法
カフェテリアプランでは、企業から従業員へポイントを付与し、従業員は付与されたポイントの範囲内で福利厚生制度を利用することになります。
ポイントの単価は企業によって設定が異なり、1ポイントの単価を1円に設定している企業もあれば、1ポイント100円にしている企業もあります。
また、メニューによって単価が変動する「優遇単価方式」を採用している企業もあります。
たとえば、通常は1ポイント100円のところ、自己啓発メニューに関しては1ポイント=120円と単価を優遇し、従業員の資格支援を促進するなどです。
有効期限については、未消化のポイントがあっても次年度への繰り越しができない「単年度決算」を導入している企業が多いです。
次年度への繰り越しを認めている企業や、育児・介護・結婚・出産など、目的を限定して積み立てを認めている企業もあるなど、企業によってポイントの設定はさまざまです。
課税・非課税の見極め方
従業員に付与されるポイントの課税・非課税については、従業員が実際にポイントを利用して受けたサービスの内容に応じて判断します。
職位や給与の高低によってポイント数に差をつけると、全体が課税対象となってしまうため注意が必要です。
カフェテリアプランでは、社内の誰もが同じ条件でサービスや支援を受けられることが求められます。
また、課税を避けるためには、サービスが現物で提供されることが必要です。
ポイントを現金に換えられるなどといった換金性のあるメニューは、すべて課税対象となります。
[※2]カフェテリアプランの導入方法・流れ
カフェテリアプランを導入するまでの流れは以下のとおりです。
- 予算や社内のニーズを確認する
- メニューやポイントなどのプランを設計する
- システムやサービスを導入する
- 社内への導入促進
ステップ(1):予算や社内のニーズを確認する
カフェテリアプランを導入する第一歩は、予算の設定と従業員のニーズ把握です。
従業員数や制度の利用が見込まれる頻度、福利厚生への期待度などを調査し、結果を基に予算を割り当てます。
社内アンケートや従業員へのヒアリングを実施すれば、どのような福利厚生が求められているのか、より詳細に把握できるでしょう。
特に、従業員が多い企業では、個々のライフスタイルに合った多様な選択肢を用意する必要があるため、社内のニーズを詳細に確認しましょう。
ステップ(2):メニューやポイントなどのプランを設計する
次に、採用するメニューやポイント設定など、制度の内容に関するプラン設計を行います。
カフェテリアプランでは、食事券や育児支援、健康促進プログラム、レジャー施設利用など、さまざまなスタイルでメニューの選択肢を用意できます。
また、ポイントの付与方法や利用可能期間、未使用ポイントの取り扱いについても、明確なルールを決めておく必要があります。
予算配分や従業員のニーズを考慮し、バランスの取れた制度になるよう心がけましょう。
ステップ(3):システムやサービスを導入する
設計したプランの実現にあたり、自社のカフェテリアプランを管理できるシステムや、管理を委託できる外部サービスなどの導入を検討します。
選定時には、システムであれば使いやすさやカスタマイズの柔軟性、外部サービスであればフォロー体制やセキュリティ面などを確認するとよいでしょう。
導入後には、システムの使用方法に関するサポート体制を整えたり、外部サービスとの連絡担当を決めたりしておき、従業員がスムーズにカフェテリアプランの利用を開始できるようにしましょう。
ステップ(4):社内への導入促進
最後に、従業員がカフェテリアプランを積極的に活用できるよう、社内への導入を促進します。
プランの内容や利用方法を周知するための説明会やマニュアル配布、イントラネットでの情報共有が効果的です。
また、導入後の利用状況をモニタリングし、フィードバックを収集してプランを改善すれば、より従業員に満足してもらえる福利厚生制度が構築できます。
カフェテリアプランの導入事例
実際にカフェテリアプランを導入している企業は、どのような運用をおこなっているのでしょうか。
ここでは、カフェテリアプランの導入事例を3つご紹介します。
通信業者の事例
ある通信業者では、人間ドック受診や健康IT機器の取得などの健康増進に加え、財産形成支援などのカフェテリアメニューを提供しており、従業員各自が付与されたポイントを使って自由にメニューを選択することができるようにしています。
また、ポイントを使用せずに利用できるコアメニューとして、年齢とともに発生リスクが高まる「生活習慣病」や「がん」をはじめとする疾病の早期発見を目的とした人間ドックや遺伝子検査を提供しています。
さらには、フィットネスクラブの利用補助や、スマートフォンアプリを活用した健康活動促進メニューなどもあり、いつでも自由に利用できる仕組みを導入しています。
総合電機業者の事例
ある総合電機業者のカフェテリアプランでは、独自のポイント制度をもうけています。
各従業員に年間400ポイントを付与し、メニュー毎の利用可能ポイントの上限は決めず、従業員自身が各人のニーズに応じて自由に希望するポイント数を選択・利用し、キャッシュバックを受ける仕組みとなっています。
キャッシュバックの基準は、1ポイントあたり100円ですが、育児・介護メニューを使用した場合は、1ポイントあたり110円です。ポイント期限は年度内としています。
また、特定の年齢層のキャリアアップを支援するため、スキルアップや自己啓発のメニューに使えるポイントを追加付与する取り組みもおこなっています。
通信教育・出版業者の事例
ある通信教育・出版業者では、年間238,000円分のポイントが付与されるカフェテリアプランを運用しています。
メニューには住宅補助や出産・育児・介護、医療・健康増進、財産形成、ボランティア活動費補助などがあり、生活全般において手厚い補助が受けられます。
また、ポイントでの家賃補助にくわえて、一定の条件を満たした新卒入社3年目までの従業員には、賃貸住宅に対する手当も支給されます。
柔軟な働き方の実現に「Chatwork」
カフェテリアプランは、従業員が自分のライフスタイルに合った福利厚生を選択し、ポイントと引き換えに利用できる仕組みで、従業員満足度の向上や人材の確保・定着に効果的です。
導入には予算確保やメニュー設計などの準備が必要ですが、自社の福利厚生が大きく充実するでしょう。
多様な働き方が求められる現代において、福利厚生の柔軟性を高めることは企業競争力の向上にもつながります。
カフェテリアプランのような制度の導入を検討する際には、従業員と十分なコミュニケーションをはかり、ニーズを的確に捉えることが欠かせません。
ビジネスチャット「Chatwork」は、情報共有やタスク管理が簡単にできるチャットツールです。
Chatworkを活用することで、カフェテリアプランを利用したい頻度や福利厚生に対する期待について、従業員への調査を実施しやすくなります。カフェテリアプランの導入の際は、ぜひChatworkをご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※1]出典:日本経済団体連合会「第64回福利厚生費調査結果報告」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/129_honbun.pdf#page=15
[※2]出典:国税庁「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/36.htm
※本記事は、2025年2月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:北 光太郎
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。