シナジーとは?ビジネスにおける意味や効果・メリット、生み出す方法などを解説
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目次
「シナジー」とは複数のものが互いに作用しあい、その機能や効果を高めるという意味があります。
「相乗効果」と同じ意味で、元は薬学や生理学、生物学分野の専門用語でした。
ビジネスシーンでは、M&Aや業務提携の文脈で「シナジー効果を生み出す」などのように使われています。
企業にとって、シナジー効果の創出にはメリットがある一方でリスクも想定されるため、両方の側面を理解しておく必要があります。
シナジーの意味や、もたらされる効果の種類、企業がシナジー効果を生み出す方法と注意点について解説します。
シナジーとは
シナジー(synergy)とは、英語で相乗効果を意味する言葉です。
相乗効果とは、人やモノなど複数の事柄が作用することで、個別に働くよりも大きな効果を得られる事象を指します。
1+1が2ではなく、3にも4にもなる状態、と考えるとわかりやすいでしょう。
シナジーは、もともと生理学や薬学分野の専門用語として使われていましたが、ビジネスシーンでも「相乗効果」を意味する言葉として広く使われるようになりました。
【分野別】シナジーの意味・使われ方
シナジーの意味や使われ方は分野によってさまざまです。
たとえば、小売業や卸売業では、企業同士が提携して新たな商品開発をしたり、商品を消費者に届ける物流を共同でおこない効率化するなど、シナジーは売上の拡大を目指す意味をもちます。
分野別のシナジーの意味と使われ方を解説します。
【医療業界・福祉業界】
病院と介護施設が連携して高齢者へのサービスを向上させたり、診療所と薬局が連携して治療効果を高めたりなど、シナジーは質の高いサービスを目指す意味をもちます。
【製造業・建設業】
メーカーと技術者などが連携して、品質向上や生産性の向上、作業の効率化やコスト削減を目指す意味をもちます。
【情報通信業】
通信サービス企業と、ソフトウェアの開発企業・ハードウェアメーカーなどとの提携により、生活に便利なアプリの新規開発や、通信技術の開発など、シナジーは技術面で多くの顧客への価値提供を目指す意味をもちます。
【学術研究の分野】
医療技術の研究機関とIT企業の提携により、新しい医療機器の開発や、オンラインでの遠隔地診療の実現など、シナジーは研究開発の成果の最大化を目指す意味をもちます。
シナジー効果とは
シナジー効果とは、双方にとって有益な効果が生じる状態を指します。
たとえば、M&Aや共同運営、共同投資などによって個々で活動するよりも大きな結果を出せている状態は、シナジー効果を得られたといえます。
双方が「Win-Win」の関係である状態が前提であるため、片方のみに利益をもたらしているだけではシナジー効果を生み出しているとはいえないのです。
アナジー効果とは
シナジー効果と反対の意味で「アナジー効果」という言葉があります。
複数の事柄が作用しあうことでプラスの影響が生じるシナジー効果に対し、アナジー効果はマイナスの影響が生じる事象を意味します。
たとえば、A部署とB部署という異なる部署が連携して大きな成果を出せた場合は、シナジー効果を生み出せたといえますが、業務効率の悪化や残業時間の増加などマイナスに作用した場合は、アナジー効果が生じたことになります。
シナジー効果が求められる背景・理由
ビジネスシーンにおいてシナジー効果が求められる背景には、シナジーによる相乗効果が、効率的なコスト活用や、企業の成長に欠かせないからです。
なぜビジネスシーンでシナジー効果が求められているのか、詳しく解説します。
企業の成長に欠かせない
シナジー効果は、現在では企業の成長に欠かせない要素になりました。
これまで企業は自社内で新しい商品を生み出したり、積極的に新規事業へ参入したりし、自社を成長させてきました。
しかし現代では、企業が単独で成長し続けるのは難しいのが現状です。
他社と連携したり、互いに協力したりしながら、シナジー効果を生み出していく取り組みが、企業の持続的な成長につながります。
M&Aや業務提携など、シナジー効果を生むための方法はさまざまですが、専門知識や技術力のコラボレーションで生まれた相乗効果は、企業の成長に欠かせないものとなっています。
効率的にコストを活用できる
業務をおこなうための資源や設備を、他社と共有できれば、企業が単独で資源や設備を準備するより、コストを大幅に削減できます。
シナジー効果には、効率的にコストを活用できるメリットもあるのです。
たとえば、製造ラインを共同で使用したり、複数企業の商品を1台のトラックにまとめて載せて運送したりなどの取り組みにより、コストを下げられます。
コストの効率的な活用ができるのもシナジー効果なのです。
ビジネスにおける3種類のシナジー効果
ビジネスシーンにおいて、シナジー効果は3つの種類に分けられます。
- 事業シナジー
- 財務シナジー
- 組織シナジー
3つのシナジー効果について、詳しくみていきましょう。
事業シナジー
事業シナジーとは、事業の推進に対するシナジー効果を意味します。
複数事業間における資源の共有や応用により、売上の増加やコスト削減、スケールメリット、人材獲得などの効果が得られます。
財務シナジー
財務シナジーは、お金や税金に対するシナジー効果です。
M&Aを通じた赤字企業の救済や、成長企業への資金投入によって、、余剰資金の活用や節税に効果があります。
組織シナジー
組織シナジーとは、組織に対するシナジー効果を指し、従業員同士の円滑な業務連携により、生産性の向上や業務効率化などの効果を生み出します。
また、働きやすい職場環境が構築されるため、従業員のモチベーションも高まるでしょう。
企業がシナジー効果を生み出す方法
企業がシナジー効果を発揮するには、他社や他部署と協力したり、合併したりする必要があります。
二者の関係性や、双方にとってどのようなシナジーが生まれるのかによって、どの方法で関係性を結ぶのかが異なります。
シナジー効果を生み出す方法には、以下のようなものが挙げられます。
- M&A
- 業務提携
- グループ一体化経営
- 多角化戦略
企業がシナジー効果を生み出す方法を紹介します。
M&A
M&A(エムアンドエー)とは、「Mergers and Acquisitions」の略称で、企業の買収、合併を指す言葉です。
M&Aをおこなうと、譲渡企業は従業員の雇用を守れたり、企業のブランド力が高まったりなどのメリットがあります。
一方の譲受企業は、コスト削減や節税効果、市場における競争力強化などのシナジー効果を得られます。
業務提携
業務提携とは、異なった事業や技術を持つ企業同士が協力して業務をおこなう施策です。
提携した企業同士が、お互いにノウハウを共有したり強みを活かしあったりする取り組みで、生産性の向上や新たな商品開発などのシナジー効果を生み出します。
グループ一体化経営
グループ一体化経営とは、グループ企業の共通業務を一体化させ、主にコスト削減を実現するための手法のひとつです。
グループ一体化経営は、共通業務が多い金融業界で多くおこなわれます。
多角化戦略
多角化戦略とは、既存事業とは別の新たな事業に参入し、企業の収益を上げたり価値向上を目指したりする方法です。
多角化戦略は以下の4つに分類されます。
- 水平型多角化戦略
- 垂直型多角化戦略
- 集中型多角化戦略
- 集成型多角化戦略
それぞれの戦略の意味を解説します。
水平型多角化戦略
水平型多角化戦略とは、既存事業と同じ顧客を対象として、すでに持っている技術やノウハウを製品開発に活かす戦略です。
たとえば、酒造メーカーが初めてビール事業に参入するケースが、水平型多角化戦略としてあげられます。
水平型多角化戦略は、蓄積されている技術やノウハウを活かせるため、成功する可能性が高いです。
垂直型多角化戦略
垂直型多角化戦略とは、バリューチェーンの川上から川下や、川下から川上へと事業領域を広げる戦略をいいます。
たとえば、製造業を営む企業が、川上にある原材料や部品を扱う企業と、川下にある販売店をグループ企業とした場合、コストの削減や仕入れから販売までの安定したルートの確保といったメリットが生じます。
このように、商品や産業の流れがエンドユーザーまでつながっている企業間における事業領域の拡大戦略を指します。
集中型多角化戦略
集中型多角化戦略とは、既存事業で蓄積されていた技術を活かし、新規製品を投入する成長戦略です。
自社の技術やノウハウを流用できますが、新規市場を開拓する必要があります。
たとえば、宿泊施設を運営する企業によるサテライトオフィス事業への新規展開などが挙げられるでしょう。
集成型多角化戦略
集成型多角化戦略とは、既存事業と関連性がない、異なる分野へ進出する戦略をいいます。
集成型多角化戦略は高リスクであり、シナジー効果を生み出すまでに中長期間を要しますが、成功した場合企業の大きな成長となるでしょう。
たとえば、家電メーカーによる金融業への進出や、カメラメーカーによる医薬品業界への進出が集成型多角化戦略としてあげられます。
シナジー効果の成功事例
シナジー効果にはメリットが多くあり、戦略に組み込んでいきたいと考える企業も少なくないでしょう。
実際に検討するにあたっては、どのような企業や事業で、シナジー効果がうまく引き出せた事例があるのかを知っておくことがおすすめです。
シナジー効果の創出に成功した企業事例を紹介します。
自動車メーカー同士の業務提携によるシナジー効果
電動化技術に強みを持つ自動車メーカーA社と、小型車技術に強みを持つ自動車メーカーB社が業務提携し、シナジー効果を生み出しました。
それぞれの企業の強みを活かして、技術や商品、既存事業の基盤強化や、自動車産業の新たな課題の克服を目指しています。
また、インドでの事業に密着しているB社は、A社との業務提携によってインドの成長に貢献できるメリットを感じています。
一方のA社は、市場を拡大できたため、双方にとって効果の大きい業務提携となったでしょう。
国内外でM&Aを繰り返しシナジー効果を生み出した企業
通信事業を営む企業は、国内外でM&Aを繰り返し、シナジー効果を生み出しました。
出版業や固定通信業、移動通信業、半導体テクノロジーに強みを持つ企業や投資企業を買収し、現在では通信業だけでなく決済や金融サービスもおこなっています。
通信事業を営む企業は、さまざまな企業を買収するなかで、プロ野球界へも参入したことで、知名度や企業イメージを大きく向上させました。
グループ全体でシナジーを創出した企業
無線通信サービスを提供する通信事業者では、「シナジードライブセンター」を設立しました。
グループが集まるコミュニティであるシナジードライブセンターは、シナジーを推進する担当者が参加し、定期的な情報共有や協力方法の話し合いで、これまでに約100件の事業シナジーを生み出しています。
具体的には、グループ企業間での商材やサービスを組み合わせた新しいソリューションの開発や、共同調達によるコスト削減、将来を見据えた取り組みなどです。
これらは収益拡大や効率化を実現するシナジー効果の成功事例といえるでしょう。
シナジー効果を活用したユニークなサービス
インターネット関連サービスを展開する企業では、同社が手掛ける通信事業とECサイトの連携が大きな成果を上げています。
同社の通信事業での契約者が同社のECサイトで買い物をするなど、新規顧客の入り口の役割を果たすシナジー効果が生み出されています。
また、同社での買い物や同社が提供する旅行サービスなどを、同社の保険商品と組み合わせて、トラベル保険やゴルフ保険など、ユニークなサービスも生み出しています。
さらに、支払保険料に対してポイントを付与するなど、シナジーを活用して顧客への価値を提供しています。
シナジー効果が企業にもたらすメリットとは
シナジー効果の創出は、企業価値の向上や、コストの削減、ノウハウ・ナレッジの蓄積など、複数のメリットがあります。
シナジー効果が企業にもたらすメリットについて詳しく確認していきましょう。
企業価値の向上
シナジー効果は企業価値を向上させます。
M&Aや業務提携により、欲しかった事業や技術を自社に取り込めば、市場における自社の競争力を強化できます。
また、新しい事業分野に参入できれば、新たな収益源を得られるうえに、事業のリスクを分散・軽減できます。
シナジー効果の創出により、企業の市場評価が上がり、企業価値が向上するメリットがあります。
コスト削減
シナジー効果は求められる背景でも述べたとおり、コスト削減のメリットをもたらします。
資源や設備の共有や物流・配送の共同運営で運送費用や保管費用などを削減でき、システム統合により管理コストの低減も期待できます。
また、共通の部品や材料を使って発注単位を大きくすれば、スケールメリットが得られて仕入れコストの削減も可能になります。
ノウハウやナレッジの蓄積
シナジー効果は、異なる企業間や異なる企業間でノウハウやナレッジの蓄積を促進するメリットがあります。
M&Aや業務提携を通じ、相手がもつ特有の技術や知識を取り入れると、自社の製品やサービスの品質が向上します。
蓄積されたノウハウやナレッジを共有する仕組みがあると、企業内での情報連携がスムーズになります。
シナジー効果による知識の蓄積と効率的な活用は、企業の持続的な成長を可能にします。
シナジー効果を発揮するためのポイント
シナジー効果を発揮するためのポイントは以下のとおりです。
- ポイント(1):明確な目標を設定する
- ポイント(2):コミュニケーションを強化する
- ポイント(3):相互の強みを活かす
3つのポイントについて、それぞれ詳しく解説します。
ポイント(1):明確な目標を設定する
シナジー効果を発揮するためには、明確かつ具体的な目標を設定する必要があります。
業務提携する前に各企業のビジョンやミッション、向かおうとしている方向について確認しあいましょう。
売上を増やすのか、サービスの質を向上させるのか、最新の技術を生み出すのかなど、達成したい具体的な目標を明確に設定することがシナジー効果を生むポイントです。
ポイント(2):コミュニケーションを強化する
シナジー効果を発揮するためには、事業・企業間でのコミュニケーションの強化が不可欠です。
業務提携はしたものの、互いにコミュニケーションを取らずにいると協力関係は停滞し、シナジー効果は生まれなくなります。
定期的なミーティングを開催したり、互いの要望や懸念に柔軟に対応したりなど、コミュニケーションの強化により、信頼関係が構築でき、シナジー効果の創出につながっていきます。
ポイント(3):相互の強みを活かす
互いの強みを理解し、それぞれが強みを最大限に活かせるような協力体制の構築も、シナジー効果を発揮するためのポイントです。
専門的知識や技術を提供しあえば、互いの強みが相まってシナジー効果を創出しやすくなります。
たとえば、一方が強力な研究開発能力をもち、もう一方が優れた販売網をもつ場合は、研究により開発された質の高い製品を消費者に広く届けることができ、シナジー効果を生み出していけるでしょう。
シナジー効果を狙う際の注意点
シナジー効果を狙う取り組みには、コスト削減や顧客の拡大などさまざまなメリットがある一方で、リスクを生じさせる可能性もあります。
なかでも、企業の統合など大きな変化が生じる場合は、かかわる人数が多いため注意が必要です。
シナジー効果を狙う際の注意点を解説します。
従業員の離職リスクがある
M&Aなどで企業が統合すると、社風や働き方の変化によって従業員が働きづらさを感じ、離職してしまうリスクがあります。
技術やノウハウを持った従業員が離職してしまうと、シナジー効果のメリットを十分に得られないため、統合によって生じうる変化や今後の方針などを従業員に丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。
従業員や組織が疲弊するリスクがある
シナジー効果を得るまでに、企業間で契約の締結や業務の統合などの工程が生じるため、従業員や組織が疲弊するリスクがあります。
疲弊リスクを避けるためには、工程をスムーズに進められるよう早めの準備や、体制整備が肝心です。
ビジネスコミュニケーション円滑化に「Chatwork」
シナジーとは、「相乗効果」を意味する言葉であり、M&Aや共同運営、共同投資などによって個々で活動するよりも大きな結果を出すことをシナジー効果といいます。
シナジー効果を得られると企業価値の向上やコスト削減を実現できる可能性がありますが、従業員の離職リスクがあるため注意が必要です。
シナジー効果を狙って業務提携やM&Aを円滑に進めていけるように、ビジネスチャット「Chatwork」の導入をおすすめします。
ビジネスチャット「Chatwork」は、チャット形式で情報共有や連絡がとれるコミュニケーションツールのため、電話やメールよりも気軽に報連相をおこなえます。
ビジネスコミュニケーションを円滑化し、滞りなく業務を進めるためにもビジネスチャット「Chatwork」の活用をご検討ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
記事監修者:杉浦詔子
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー・ファイナンシャルプランナー。 2012年にみはまライフプランニングを設立。働く人とその家族を応援するキャリアプランやファイナンシャルプランを提案。ひとりひとりの生きやすさと働きやすさを目指して、相談・講義・執筆をおこなう。職場の人間関係や恋愛などコミュニケーションに関する支援も対応。