バックオフィスが突然辞めた!事業停止リスクを回避するために今すぐ講じるべき対策とは?

目次
「来週から出社しません。」
ある日突然、会社の経理、人事、総務を一手に担っていたバックオフィス担当者から、そんな衝撃的な一言を告げられたら、あなたはどうしますか。
会社の根幹を支える心臓部とも言えるバックオフィス。
その機能が、たった1人の従業員の肩にすべてかかっているとしたら、それはもはや「効率的な組織」ではなく、「極めて脆弱な組織」と言わざるを得ません。
バックオフィスが突然辞めるという事態は、とくに成長期の中小企業やスタートアップにとって、事業の継続すら困難にするほどのリスクとなります。
本記事では、なぜバックオフィス担当者は突然の退職を決意してしまうのか、その深刻な理由と、十分な引き継ぎなしに担当者が不在となった場合のリスクを解き明かします。
さらに、属人化という問題を解決し、持続可能で強固な経営基盤を築くための具体的な方法についても詳しく解説していきます。
バックオフィスの業務
まず、「バックオフィス」が担う業務を紹介します。
バックオフィスとは、営業や開発といった直接的に利益を生み出す「フロントオフィス」を後方から支援し、会社全体の円滑な運営を司る管理部門の総称です。
その業務は、企業の成長フェーズとともに複雑かつ広範になります。
経理・財務:日々の現金出納、請求書発行・支払処理、経費精算、売掛金・買掛金管理、月次・年次決算書の作成、税務申告、資金繰りの管理など、会社のお金の流れのすべてを掌握します。
人事・労務:採用計画の立案と実行、入社・退職手続き、勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、就業規則の整備、人事評価制度の運用、従業員の相談対応など、会社の「人」に関する制度と運用を担います。
総務:オフィスの賃貸契約・管理、備品・消耗品の発注管理、文書・印章管理、契約書の管理、社内規程の整備、福利厚生の運用、社内イベントの企画・運営など、従業員が働きやすい環境を包括的に支えます。
法務:契約書のリーガルチェック、コンプライアンス体制の構築、知的財産(特許や商標)の管理、法的トラブルへの対応など、企業を法務リスクから守ります。
情報システム:社内サーバーやネットワークの保守・管理、PCやソフトウェアの管理、セキュリティ対策の実施、各種ITツールの導入・運用支援など、企業のITインフラを維持・管理します。
これらの業務は、どれか1つが欠けても組織運営に支障をきたす、まさに企業の土台そのものといえます。
「ひとりバックオフィス」とは
「ひとりバックオフィス」とは、前述したような広範なバックオフィス業務を、文字通り"たった1人"の担当者が担っている状態を指します。
従業員数十名規模までの企業で非常に多く見られる体制であり、その担当者は「管理部長」「コーポレート担当」「社長の右腕」などと呼ばれることもあります。
ひとりバックオフィス状態では、担当者が日々発生するあらゆる種類のタスクに対応する「何でも屋」とならざるを得ません。
午前中は経理として請求処理を行い、午後は人事として面接を実施し、夕方には総務としてオフィスの移転準備を進める、といった働き方が常態化します。
その結果、業務の進め方やノウハウ、各種パスワードや取引先との関係性といった無形の資産が、すべてその担当者個人の中に蓄積されていきます。
業務は完全にブラックボックス化し、他の誰もその実態を把握していない。
ひとりバックオフィスという体制は、企業の持続可能性を脅かすリスク要因といえます。
バックオフィスが突然退職する理由
会社のすべてを知るキーパーソンであるはずのバックオフィス担当者は、なぜある日突然、すべてを投げ出して会社を去ってしまうのでしょうか。
その理由は、極めて深刻かつ構造的な問題に根差しています。
理由1:過重労働と終わりのない業務範囲
会社の規模が拡大し、従業員が増えるにつれて、バックオフィスの業務量は爆発的に増加します。
しかし、経営層はその重要性や負荷の増大に気づきにくく、人員の補充が後回しにされがちです。
結果として、担当者は1人で捌ききれないほどの業務を抱え、慢性的な長時間労働に陥ります。
終わりが見えない業務の連続に、心身ともに疲弊しきってしまうのです。
理由2:誰にも相談できないという精神的孤立
「ひとりバックオフィス」状態にある場合、担当者には業務上の悩みや困難を分かち合える同僚がいません。
複雑な労務問題、デリケートな人事評価、経営に関わる情報など、すべてを1人で抱え込み、1人で決断を下さなければならないプレッシャーは計り知れません。
この精神的な孤立感が、担当者を退職へと向かわせる要因となります。
理由3:貢献度が評価・報酬に反映されない不満
バックオフィスの仕事は、会社の基盤を支える「守り」の業務です。
問題なく運営できて当たり前と見なされ、その貢献度は売上などのように明確な数字で示しにくいため、正当な評価や報酬に結びつきにくいという現実があります。
「自分がいなければ会社は回らないのに、誰もその価値を認めてくれない」という不満は、退職を決意させる大きな動機となります。
理由4:キャリアの停滞に対する強い不安
バックオフィス担当者は、広く浅く、様々な業務をこなす「何でも屋」としてのスキルは身につくものの、特定の分野における専門性を深める機会は限られます。
「この会社でこのまま働き続けても、市場価値の高いプロフェッショナルにはなれないのではないか」というキャリアへの不安は、向上心の高い人材ほど強く感じやすいかもしれません。
専門性を高めることができる環境を求めて、退職を検討するのは自然な流れと言えるでしょう。
バックオフィスが突然退職した場合のリスク
もし、十分な引き継ぎもなく、バックオフィス担当者が突然辞めたとしたら、会社は事業活動の全面的な停止、すなわち「機能的倒産」状態に陥る可能性があります。
以下では、バックオフィス担当者が突然退職した際に起こり得る代表的なリスクを紹介します。
リスク1:会社の血液である「カネ」の流れが止まる
請求書の発行、入金確認、取引先への支払、経費精算、そして従業員への給与支払などといった、お金に関する業務がすべてストップします。
資金繰りは一瞬で悪化し、取引先や従業員からの信用も失墜するおそれがあります。
リスク2:羅針盤を失い、経営が漂流する
担当者の退職によって、月次決算が行われなければ、経営者は自社の正確な業績や財務状況を把握できなくなります。
これは羅針盤も海図もないまま、嵐の海に航海に出るようなものです。
勘と経験だけに頼った経営判断は、致命的な失敗を招く可能性が高まります。
リスク3:「ヒト」に関する機能が麻痺する
担当者不在のため、採用活動が完全に停止し、事業拡大の機会を逃すリスクもあります。
入社・退職に関する社会保険の手続きが滞れば、従業員に直接的な不利益を与え、労務トラブルに発展しかねません。
従業員の相談窓口がなくなることで、社内の雰囲気も悪化します。
リスク4:組織運営のインフラが崩壊する
オフィスの賃貸借契約書はどこにあるのか、各種ITツールの管理者IDとパスワードは何か、複合機のリース契約の詳細はどうなっているのかなど、会社の運営に不可欠なあらゆる情報が引き継がれないまま担当者が退職してしまうと、組織は文字通り機能不全に陥るおそれがあります。
バックオフィスの退職を回避する方法
バックオフィス担当者の退職を回避するためには、ひとりバックオフィス体制を解消することが急務です。
以下では、退職の回避に効果的な方法を紹介します。
1. 経営層の意識改革:バックオフィスを経営パートナーと位置づける
すべての変革は、経営層の意識改革から始まります。
バックオフィスを単なるコストセンターではなく、経営戦略を共に推進する重要なパートナーとして位置づけましょう。
担当者の声に耳を傾け、その貢献を正当に評価し、必要なリソース(人材、ツール、予算)へ積極的に投資する姿勢が不可欠です。
2. 業務の可視化と標準化:ブラックボックスをなくす
担当者の頭の中にしかない業務を、徹底的に可視化し、誰でも理解・実行できるように文書化(マニュアル化)します。
このプロセスを通じて、非効率な業務フローや改善点が見つかることも多くあります。
業務の標準化は、退職リスクに対する有効な防御策となります。
3. ITツールの積極活用:アナログ業務からの脱却
クラウド会計、勤怠管理システム、電子契約など、バックオフィス業務を効率化するSaaSツールを積極的に導入しましょう。
反復的な手作業を自動化することで、担当者の負担を劇的に軽減し、ヒューマンエラーを防ぎ、より付加価値の高い業務に集中できる時間を生み出します。
4. 業務のアウトソーシング(外注)を検討する
すべての業務を自社で抱え込む必要はありません。
とくに定型的・専門的な業務は、外部のプロフェッショナルに外注することを積極的に検討しましょう。
これにより、社内担当者の負担を軽減し、業務品質を向上させ、組織全体のスリム化を図ることができます。
バックオフィス業務は外注できる!
かつては大手企業だけの選択肢と考えられていたバックオフィス業務の外注は、今やあらゆる規模の企業にとって現実的かつ効果的な経営戦略となっています。
経理の記帳代行や給与計算、人事の採用代行(RPO)や労務手続き、総務の秘書業務や庶務代行など、バックオフィスが担う業務の多くは、必要な部分だけを切り出して外部に委託することが可能です。
バックオフィスを外注するメリット・デメリット
バックオフィスの外注は多くのメリットをもたらしますが、導入前にデメリットも理解しておくことが成功の鍵です。
外注のメリット
属人化の解消と事業継続性の確保:最大のメリットです。
特定の個人への依存から脱却し、担当者の急な退職や休職といったリスクに怯えることなく、安定した事業運営が可能になります。
専門性の確保と業務品質の向上:各分野のプロフェッショナルが業務を担当するため、自社で専門人材を採用・育成するよりも迅速かつ確実に業務品質を高めることができます。
法改正などへの対応も万全です。
コストの最適化:正社員を1人雇用する場合の総人件費(給与、賞与、社会保険料、福利厚生費など)や採用・教育コストと比較し、トータルコストを削減できる可能性があります。
コア業務への集中:経営者や社員が、ノンコア業務に費やしていた時間と労力を、製品開発や顧客開拓といった事業の成長に直結するコア業務に再配分できます。
外注のデメリット
社内へのノウハウ蓄積の困難さ:業務を外部に委託するため、実務的なノウハウが社内に蓄積されにくいという側面があります。
外注先との定期的な情報共有や、業務プロセスの文書化を依頼するなどの工夫が必要です。
情報漏洩のリスク:企業の機密情報(財務情報、個人情報など)を外部と共有するため、情報漏洩のリスクはゼロではありません。
セキュリティ体制が強固な委託先を厳選することが絶対条件です。
コミュニケーションコストの発生:社内での「あうんの呼吸」のようなコミュニケーションは難しくなります。
円滑な連携を図るための定期的なミーティングや、明確な指示出しといったコミュニケーションコストが発生します。
バックオフィスの外注先を選ぶポイント
自社に最適な外注パートナーを選ぶためには、以下のような点を慎重に検討しましょう。
対応業務の範囲と柔軟性:自社が抱える課題に対して、必要な業務をワンストップで、あるいは柔軟に組み合わせて依頼できるかを確認します。
「ひとりバックオフィス」の課題解決には、幅広い業務に対応できる柔軟性がとくに重要です。
料金体系の透明性と費用対効果:料金体系が明確で、自社の予算規模に見合っているか。
単に価格の安さだけでなく、サービスの質や削減できる社内コストを考慮し、総合的な費用対効果で判断しましょう。
強固なセキュリティ体制:プライバシーマーク(Pマーク)やISMS認証の取得状況、具体的なデータの管理方法など、信頼できるセキュリティ対策を講じているかを必ず確認します。
実績とコミュニケーション品質:自社と類似した業種や規模の企業支援実績は豊富か。
また、担当者とのコミュニケーションはスムーズか、信頼できるパートナーシップを築けそうか、といった定性的な側面も重要です。
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「経理も人事も総務も、少しずつ、幅広くサポートしてほしい」
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『Chatworkアシスタント』を導入すると、以下のようなメリットがあります。
メリット1:「属人化」から「組織化」へ
Chatworkアシスタントの導入によって、特定の担当者の経験と記憶に依存する属人化状態から、業務がマニュアル化され、チームで対応する強固な体制へと移行できます。
担当者はプレッシャーから解放され、安心して休暇を取得したり、自己成長のための時間を確保したりすることが可能になります。
メリット2:多様な専門スキルを低コストで活用
1人の正社員を採用しても、すべてのバックオフィス業務に精通しているとは限りません。
Chatworkアシスタントであれば、契約時間内で、経理に強いアシスタント、採用実務に強いアシスタントなど、多様な専門スキルを持つチームのサポートを受けることができます。
メリット3:事業の成長に合わせた柔軟なリソース調整
事業の成長フェーズや季節的な業務量の変動に合わせて、依頼する時間や業務内容を柔軟に変更できます。
固定費である人件費を、必要な時に必要なだけ使える変動費として最適化できるため、無駄のない効率的な経営が実現します。
バックオフィス担当者が突然辞めるという事態は、もはや対岸の火事ではありません。
とくに、「ひとりバックオフィス」に依存している企業は、いつ直面してもおかしくない経営リスクです。
速やかに改善してバックオフィス担当者の精神的・肉体的ストレスを取り除き、強固かつ安定した組織づくりにつなげましょう。