中小企業におけるIT投資の現状と経営課題との関係とは
目次
大企業と比較し中小企業は、自社内で使用するITツールなどに投資をする割合、いわゆるIT投資の割合が小さいといわれています。しかし昨今は、テレワークの推進にふみきろうとする企業を中心に、その割合が徐々に増えているようです。中小企業におけるIT投資の現状と、IT投資を支援する補助金について紹介します。
中小企業のIT投資の現状
まずは、中小企業におけるIT投資の現状を、金額の面からみていきましょう。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発行している「企業IT動向調査報告書2020」によると、以下の結果が報告されています。
IT投資予算の売上高に対する比率
業種全体における「IT予算の売上高に対する比率」の調査による、業種別の平均IT予算比は次のとおりです。
【業種別の平均IT予算比】
業種グループ | IT予算比率(平均) | 前年比増減 | |
---|---|---|---|
19年度 | 20年度 | ||
建築・土木 | 1.51 | 1.76 | +0.25 |
素材製造 | 1.75 | 1.75 | ±0 |
機械器具製造 | 1.65 | 2.03 | +0.38 |
商社・流通 | 1.23 | 1.25 | +0.02 |
金融 | 9.17 | 9.43 | +0.26 |
社会インフラ | 1.60 | 1.61 | +0.01 |
サービス | 3.51 | 3.44 | -0.07 |
[※1]
業績とIT投資予算比率の関係
それでは、実際にIT投資をおこなっている企業の事業はどのようになっているのでしょうか。
「企業IT動向調査報告書2020」によると、2018年度における売上高に対する営業利益率とIT投資予算比率の関係は、「売上高営業利益率が増加すると IT 予算比率が増加する傾向がみられ」[※2]ています。
IT投資をおこなう企業は、企業業績が高い傾向にあるといえるでしょう。
しかし、これだけでは、IT投資比率の大きな企業は、IT投資によって売上高が増加したのか、それとも投資をする以
前から高い売上水準を保っており、結果としてIT投資比率が高まったのか判断することができません。
そこで、中小企業庁の発行している「中小企業白書」をみてみましょう。
この調査では、対象を次の2つの条件に分け、売上高経常利益率に注目して実施されました。
- 2007年度から2009年度までIT投資をしていない中小企業で、2010年度にIT投資を開始し2013年度まで継続投資を行っている
- 2007年度から2013年度までIT投資をしていない中小企業
結果、2010年度にIT投資を開始し2013年度まで継続投資を行っている中小企業の売上高経常利益率は、開始前と比べて大きく伸びたことがわかりました。[※3]
IT投資は、業務効率化や売上増大につながり、結果として利益率向上に寄与したと推測できるでしょう。
ITツールの活用状況
一方で、IT投資予算だけではなく、実際の活用状況を含めた実態はどうなっているのでしょうか。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構の発行する「IT導入に関するアンケート調査報告書」によると、中小機構メルマガ会員約 37,000人に対する調査では、「ITを活用した業務効率化・生産性向上に取り組んでいますか。」という問いに対し、「取り組んでいる」と回答した企業が46.2%に対し、「取り組んでいない」が33.4%、「取り組んでいないが検討中」が20.4%という結果になりました。IT投資またはIT活用をしていない、できていない企業が過半数であるといえるでしょう。
一方で、「取り組んでいない」または「取り組んでいないが検討中」と回答した企業のうち、54.1%が、「ITを活用することで業務効率化・生産性向上ができると思いますか。」という問いに対して「思う」と回答しています。
また、同じ企業群の中で、「情報が得られたらIT導入を検討する」と回答した企業の割合は74.8%でした。[※4]
IT投資により業務効率化や生産性が向上することは理解はすでに進んでいるが、導入にふみきるために十分な情報を得られていないと考えている企業が多いようです。
中小企業がIT投資で解決したい課題とは
最後に、中小企業がIT投資によって解決したいと考えている課題が何かについてみていきましょう。「企業IT動向調査報告書2020」によると、最も多くの企業が中期的な経営課題として上げたもののうち、最も多かったのが「業務プロセスの効率化」でした。「迅速な業績把握、情報把握」「社内コミュニケーションの強化」と続きます。[※5]
IT投資は、これらの課題に有効であると考えられており、多くの企業が課題解決のために情報収集をしている段階であるといえるでしょう。
中小企業IT導入を支援する補助金
これまでみてきたように、IT投資は中小企業にとって、業績を向上させるために重要な要素となりえることがわかります。
そのような状況をふまえ、経済産業省は、中小企業・小規模事業者などを対象に、「IT導入補助金2021」で補助金の支援をしています。
今般の新型コロナウイルス感染拡大防止対策により、中小企業にもテレワーク業務が推奨されました。しかし現状は、オンライン化を実現できていない中小企業も多く、早急にITを導入して生産性を改善する必要にせまられています。
IT導入補助金の目的は、中小企業などの経営課題に合ったITサービスやソフトウェアの導入による経費負担を軽くすることにより、生産性向上や業務の効率化などを支援するものです。ぜひ活用してIT化を図りましょう。[※6]
2021年2月に、2021年度の補助金の申請について、交付規程と公募要領が公開となりました。2021年3月現在補助金は次のように区分されています。
A類型・B類型:ソフトウェア・サービス導入費用のうち1/2以下を補助
導入するITツールが担う「プロセスの数」と補助対象となるITツールの「導入費」から、補助金の上限額をA類型とB類型の2つに区分しています。補助率は1/2以下で、A類型の補助金額は30万円~150万円未満、B類型は150万円~450万円が上限です。
C類型・D類型:ソフトウェア費、導入関連費、ハードウェアレンタル費のうち30万~450万円を補助
「労働生産性の向上とともに感染リスクに繋がる業務上での対人接触の機会を低減するような業務の非対面化」するためのツール導入などが該当します。
PCやタブレットなどのハードウェアのレンタル費用や、公募前購入のITツール、指定ITツールに登録されているソフトウェアなどの導入に利用できます。
いずれも申請スケジュールが異なるため、詳細は経済産業省監督のもと事務局業務を担う「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」のホームページ「IT導入補助金2021」をご確認ください。
中小企業の課題はITによって解決しよう
さまざまな課題を抱える中小企業ですが、IT投資は生産性を向上させ、利益を伸ばすために重要な要素となるでしょう。特に「業務プロセスの効率化」「迅速な業績把握、情報把握」「社内コミュニケーションの強化」に課題を感じている経営者の方は、補助金の適用も合わせ検討してください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※1]参考:企業IT動向調査報告書 2021 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)
https://juas.or.jp/cms/media/2021/04/JUAS_IT2021_Ver2.pdf
[※2]引用:企業IT動向調査報告書2020 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)
https://juas.or.jp/cms/media/2020/05/JUAS_IT2020_original.pdf?20200522
[※3]参考:2016年中小企業白書「中小企業におけるITの利活用」 中小企業庁
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap2_web.pdf
[※4]参考:IT導入に関するアンケート調査報告書 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
https://www.smrj.go.jp/doc/org/201808_surveyreport.pdf
[※5]参考:IT導入補助金2020 一般社団法人サービスデザイン推進協議会
https://www.it-hojo.jp/
[※6]参考:IT導入補助金2021 交付規程・公募要領
https://www.it-hojo.jp/2021/