トライアル雇用とは?試用期間との違いやメリット、助成金や受給要件を解説

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トライアル雇用とは?試用期間との違いやメリット、助成金や受給要件を解説

目次

企業の採用活動において、採用者とのミスマッチを防いだり、採用コストを抑えたりすることは重要です。

しかし、書類選考や面接だけで適性を見極めることは難しく、ミスマッチによる早期離職により再度求人をおこなうなど、採用コストが余分にかかることもあるでしょう。

国が定めているトライアル雇用制度を導入すれば、ミスマッチを防止できるだけでなく助成金を受けられる可能性があります。

企業と求職者の双方にメリットがあるトライアル雇用について、仕組みや助成金の支給要件、支給額などを解説します。

トライアル雇用とは?

トライアル雇用とは、就業経験が不足していたり、出産や育児、病気などによって長期間就業できなかったり、障害を抱えていたりする人を対象に、原則3ヶ月間の試行雇用期間を設け、無期雇用への移行のきっかけとしてもらう制度です。

トライアル雇用から無期雇用への移行は、企業とトライアル雇用の従業員の双方が合意して決定するため、適性を感じられないなどの理由で合意されない場合は無期雇用へ移行せず、トライアル雇用のみで就業が終了する可能性もあります。

2021年2月からは、コロナ禍の特例として、未経験職種への求職もトライアル雇用の対象となっています。

 

トライアル雇用の仕組み

求職者がトライアル雇用に申し込むためには、ハローワークや一定の職業紹介事業者で職業紹介を受ける必要があります。

トライアル雇用を受け入れる企業は、ハローワークなどに「トライアル雇用求人」を提出します。

トライアル雇用求人の要件は「無期雇用、トライアル雇用いずれの応募も可能」「派遣求人以外」「法令違反をしていない」「ハローワーク等で定めた規定を満たしている」のすべてを満たす必要があります。

 

トライアル雇用の目的

 

トライアル雇用の目的は、企業側と求職者側のミスマッチを防ぐことです。

トライアル雇用の対象者は、就業経験が少なかったり就業が困難だったりするため、企業が3ヶ月間試行雇用することで適性を見極められるだけでなく、求職者側も業務理解を深め、長く勤められそうか判断できます。

>ミスマッチに関する記事はこちら

試用期間との違い

トライアル雇用と試用期間は、それぞれ「お試し」期間ですが、実施期間と期間終了後の対応に違いがあります。

トライアル雇用は原則3ヶ月と期間が決まっていますが、試用期間は企業ごとに設定でき、1ヶ月から6ヶ月ほどが多い傾向です。

また、トライアル雇用終了後には無期雇用への本採用を拒否できますが、試用期間の場合は合理的で正当な理由がない限り、本採用を拒否できません。

トライアル雇用のメリット

トライアル雇用は、企業側と求職者側の双方にメリットがあります。

 

企業側のメリット

トライアル雇用を実施することにより、求職者とのミスマッチを防げます。

通常の採用では、採用者のミスマッチを感じた場合でも、試用期間であったり無期雇用であったりすると、本採用の拒否や解雇の対応が難しいです。

トライアル雇用の場合は、求職者の適性を見極める期間が3ヶ月間あるためミスマッチを防ぎやすく、トライアル雇用後も不適性と判断すれば本採用を拒否できます。

また、トライアル雇用は国から助成金が支給されるケースもあるため、採用コストを抑えながら採用活動をおこなえる点もメリットです。

 

求職者側のメリット

トライアル雇用は、3ヶ月間の試行期間があるため、企業側と同じく求職者側もミスマッチを防ぎやすい点がメリットです。

トライアル雇用で業務や職場の人間関係などを把握できるため、トライアル雇用後に本採用となった場合でも、企業の理解度が増していることから安心して就業できるでしょう。

また、トライアル雇用の選考方法は面接から始まることが多いため、就業経験が少ないなどの理由で履歴書を書きづらい求職者も、応募しやすいでしょう。

トライアル雇用のデメリット

トライアル雇用のデメリットを、企業側と求職者側からそれぞれ解説します。

 

企業側のデメリット

トライアル雇用を実施したり助成金を受け取ったりするには、「トライアル雇用求人」や「支給要件確認申立書」などの書類を提出する必要があるため、手続きに時間を要します。

また、トライアル雇用で就業する求職者は就業に慣れていなかったり、職種が未経験であったりする可能性が高いため、人材教育の体制を整える必要があるでしょう。

 

求職者側のデメリット

トライアル雇用終了後は、企業に本採用する義務がないため、無期雇用に移行できない恐れがあります。

無期雇用に移行しなかった場合、職歴は3ヶ月間の就業記録のみ残るため、次の求職活動で企業にマイナスにとらえられかねません。

また、トライアル雇用は複数応募ができないため、トライアル雇用先の企業の選別には注意が必要です。

トライアル雇用助成金の申請の流れ

トライアル雇用助成金は、トライアル雇用を実施し、就業困難者などへ雇用のきっかけを提供する企業に対し支給されます。

トライアル雇用助成金を受給するためには、「トライアル雇用求人」をハローワークに提出し、求職者をトライアル雇用で採用後、トライアル雇用期間開始から2週間以内にハローワークへ「トライアル雇用実施計画書」を提出します。

トライアル雇用の求職者を本採用した場合は、本採用の翌日から2ヶ月以内に「トライアル雇用助成金支給申請書」を管轄労働局に提出することで、トライアル雇用期間終了後に助成金が支払われます。[注1]

 

トライアル雇用の該当者

トライアル雇用の該当者は、以下の条件を満たした人物です。

  • 紹介日前日から過去2年以内に2回以上離職や転職を繰り返している
  • 紹介日前日時点で離職期間が1年超
  • 妊娠、出産、育児が理由で離職し、紹介日前日時点で無期雇用されていない期間が1年超
  • 55歳未満かつハローワークで担当者制による個別支援を受けている
  • 生活保護受給者やホームレスなど、就職援助の特別な配慮が必要

また、現在はコロナ禍の特例措置として「紹介日において離職しており、未経験職種への就業を希望」している人もトライアル雇用(新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース)に該当します。

トライアル雇用の助成金の種類

トライアル雇用の助成金には、主に「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース」があります。

一般トライアルコースで対象外となるのは、自営業や役員で一週間に30時間以上働いている人や、学校に在籍している人です。

障害者トライアルコースは、トライアル雇用制度について理解しており、トライアル雇用による就業を希望している人が対象となります。

一般トライアルコースの受給要件と支給額

一般トライアルコースの受給要件は、以下の通りです。

  • ハローワーク等の紹介によること
  • 原則3ヶ月のトライアル雇用の実施
  • 一週間の労働時間が30時間以上(ホームレスなどの場合は20時間以上)

支給額は対象者一人につき月額最大4万円(母子家庭の母や父子家庭の父の場合は最大5万円)×最長3ヶ月間で、合計額がまとめて支給されます。

 

一般トライアルコースが減額になるケース

トライアル雇用期間が「求職者の責任による解雇」「求職者都合の退職」「求職者の死亡」「天災等で事業継続が不可能となり解雇」「トライアル雇用中の無期雇用への移行」のいずれかを理由として、一ヶ月に満たない月がある場合は、助成金が減額となります。

また、求職者都合の休暇や企業都合の休業があった場合も、一ヶ月間に就労した日数(有給休暇を含む)で助成金額を計算するため、支給額が減ります。

 

一般トライアルコースの助成金の計算方法

一般トライアルコースの助成金は、以下の計算式で計算することができます。

「求職者が一ヶ月間に就労した実日数」÷「求職者の一ヶ月間の就労予定日数」(=A)

計算により求められた割合(A)を、次の表に当てはめることで、助成金の月額を求められます。[注1]

割合 支給月額
母子家庭の母等または
父子家庭の父以外の場合
母子家庭の母等または
父子家庭の父の場合
75%≦A 4万円 5万円
50%≦A<75% 3万円 3.75万円
25%≦A<50% 2万円 2.5万円
0%≦A<25% 1万円 1.25万円
A=0% 不支給 不支給

障害者トライアルコースの受給要件と支給額

障害者トライアルコースの受給要件は「ハローワーク等の紹介によること」「トライアル雇用期間について雇用保険被保険者資格取得の届出を実施すること」です。

また、一般のトライアル雇用対象者と違い、障害者トライアル雇用の場合は「紹介日前日から過去2年以内に2回以上離職や転職を繰り返している」「紹介日前日時点で離職期間が6ヶ月超」「未経験職業への就労」「重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者」が対象になります。

支給額は、対象者が精神障害者の場合、一人につき月額最大8万円×3ヶ月、月額最大4万円×3ヶ月の最長6ヶ月間です。

精神障害者以外の場合は、月額最大4万円×最長3ヶ月です。[注2]

 

障害者トライアルコースが減額になるケース

以下のうち、いずれかを理由として、トライアル雇用期間が一ヶ月に満たない月がある場合は、助成金が減額となります。

  • 求職者の責任による解雇
  • 求職者都合の退職
  • 求職者の死亡
  • 天災等で事業継続が不可能となり解雇
  • トライアル雇用中の無期雇用への移行
  • 求職者の失踪等で離職日が不明確

また、求職者都合の休暇や企業都合の休業があった場合も、一ヶ月間に就労した日数(有給休暇を含む)で助成金額を計算するため、支給額が減ります。

 

障害者トライアルコースの助成金の計算方法

割合 支給月額
精神障害者の場合 精神障害者以外の場合
(精神障害者の4ヶ月目以降支給の場合も含む)
75%≦ア 8万円 4万円
50%≦ア<75% 6万円 3万円
25%≦ア<50% 4万円 2万円
0%≦ア<25% 2万円 1万円
ア=0% 不支給 不支給

障害者トライアルコースの助成金は、一般トライアルコースと同様で、以下の計算式で計算します。

求職者が一ヶ月間に就労した実日数」÷「求職者の一ヶ月間の就労予定日数」(=ア)

計算により求められた割合(ア)を次の表に当てはめることで、助成金の月額を求められます。[注3]

トライアル雇用は仕組みを理解したうえで活用しよう

トライアル雇用は、就業困難者などに就労の機会を与え、無期雇用への移行を目指す制度です。

企業と求職者の双方にミスマッチを防げるというメリットがあるため、無期雇用へ移行した場合も、企業は安心して業務を任せられるでしょう。

企業に対するトライアル雇用助成金は、支給されると採用コストを抑えられるというメリットがあるため、申し込む際には不備がないよう受給要件や手続き方法をよく確認する必要があります。

国が定めたトライアル雇用制度の仕組みを理解して、企業の採用活動に活かしていきましょう。

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[注1]出典:厚生労働省「トライアル雇用実施要領 」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000858495.pdf
[注2]出典:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html
[注3]出典:厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html
※本記事は、2022年6月時点の情報をもとに作成しています。


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