ゆでガエルの法則とは?ゆでガエル現象の原因や企業事例、陥らない方法を解説
目次
危険が迫っているにもかかわらず、状況の変化がゆるやかな場合、なかなか危機的状況に気づけないことがあります。
日常生活やビジネスシーンでも、気づいたときには取り返しのつかない状態になっていた、という事態を経験したことのある人も多いでしょう。
こうした状況をあらわす言葉として「ゆでガエルの法則」というものがあります。
この記事では、「ゆでガエルの法則」とはなにか、ゆでガエルになってしまう理由や原因、企業事例などをわかりやすく解説します。
ゆでガエルの法則とは
ゆでガエルの法則とは、危険が迫っているにもかかわらず変化がゆるやかなため気がつかず、気づいたときには手遅れになっている、という状況をあらわす言葉です。
「ゆでガエル現象」「ゆでガエル理論」「ゆでガエル症候群」とも呼ばれます。
カエルを熱いお湯の中に入れると、耐えられずに逃げ出しますが、冷たい水の中に入れて少しずつ水温を上げていくと温度変化に気づかず、最後にカエルはゆであがって死んでしまうという話が由来です。
実際には、熱湯にカエルを入れると逃げることなくすぐに死んでしまい、冷たい水から水温を上げていくとむしろ途中で逃げ出すともいわれています。
ゆでガエルの科学的な根拠がいずれであったとしても、変化がゆるやかな状況において、危機的状況に素早く気づき対応することの難しさや重要性を、ゆでガエルの法則は表現しています。
組織や個人においても、ゆでガエルの法則の考えを持っておくことは重要です。
ゆでガエルの法則が日本に広まった理由
ゆでガエルの法則はグレゴリー・ベイトソンが初めて寓話として発表しました。
ベイトソンは1950~70年代に活躍したといわれるアメリカの文化人類学者・思想家です。
日本では1998年に出版された「組織論」という本のなかで、ベイトソンのゆでガエルの法則が紹介されたことをきっかけに、ゆでガエルの法則が広まったのではないかといわれています。
「組織論」は桑田耕太郎と田尾雅夫による共著の本で、組織論において有名な本です。[※1]
ほかにも、経済の悪化について大手の企業が「ゆでガエル」という例えを使って表現したこともあるなど、日本においてゆでガエルの法則は広まっていきました。
企業がゆでガエルになってしまう理由・原因
企業活動において、ゆでガエル状態になってしまう事態は、現実に発生している切実な問題です。
いったいなぜ企業がゆでガエルになってしまうのでしょうか。
企業がゆでガエルになってしまう理由の一例として、以下の3つがあげられます。
- やり方を変えられない
- 危機の実感を得られにくい
- 変化や挑戦がしづらい文化
自社がゆでガエルになることを防ぐためにも、それぞれの原因を詳しくみていきましょう。
やり方を変えられない
企業において、経営や業務のあり方について、いまあるやり方を変えるのは難しいのが現状です。
とくに、これまでうまくいっていた方法を変えることは、より一層難しいでしょう。
技術や働き方が目まぐるしく変化し、過去にうまくいっていたやり方も現在では通用しないケースも珍しくありません。
しかし、やり方を変えるにはコストがかかり、失敗した場合の責任の所在などさまざまな問題もあります。
ゆでガエルになる前に危機的状況を変えるため、企業の経営や業務のやり方を変化させるのは難しいのが現実です。
危機の実感を得られにくい
ゆでガエルの法則では、危機的な状況への変化はゆるやかに訪れます。
たとえば、日本では少子高齢化が社会問題のひとつとなっています。
そのため人材の確保はどの企業においても、課題となるでしょう。
しかし、少子高齢化社会だからといって突然、社内の従業員や採用希望者数が明日から激減するわけではありません。
危機的状況に近づいていても、現実的にその実感を持つことは難しく、手遅れになって初めて危機を実感するゆでガエル状態になってしまうのです。
変化や挑戦がしづらい文化
企業において、危機的状況を変えるために個人が行動を起こすには勇気が必要です。
しかし、日本においては「出る杭は打たれる」「空気を読む」など、周囲への同調圧力が強い文化があります。
強い同調圧力のなかにいると、状況を変えるための挑戦やアクションを起こすことは難しいでしょう。
そのため、誰もが「このままではダメだ」と思うような状態になるまで、対処行動を起こせない事態が発生してしまうのです。
ゆでガエルの法則になってしまった企業事例
ゆでガエルの法則になってしまった企業の事例として、写真フィルム事業の事例を紹介します。
かつて写真は、カメラにフィルムをセットして撮影するのが一般的でしたが、デジタルカメラや携帯電話での写真撮影が可能になるなど、写真フィルムの需要は減っていきました。
自社の技術力をほかの分野に展開し、現在も残っている企業もありますが、多くの写真フィルムの関連企業が倒産、事業から撤退する事態となりました。
また、逆にゆでガエルにならなかった海外の事例として、時代に合わせて自社の製品や分野を広げ、変化を取り入れたことにより生き残った企業の例もあります。
国内でも、当初は全く異なる業態の会社であったにもかかわらず、時代の健康志向の高まりに着目し、社名も業態も変えた企業の事例も有名です。
自社の製品ややり方にこだわることなく時代に合わせて変化し、ゆでガエルになることなく大手企業として生き残り続けているケースもあります。
企業をゆでガエルにしない方法
企業にとって、自社をゆでガエルにしないことは重要です。
対応が難しいゆでガエルの危機に対して、企業がどのように対処すればいいのか紹介します。
- 変革ビジョンの浸透
- 危機感を定期的に共有する
- 客観的な視点を持つ
すでに始まっているかもしれないゆでガエルの危機に早期に対処するためにも、できるとりくみからぜひ実践を検討してみてください。
変革ビジョンの浸透
ゆでガエルにならないために、もともとの企業体質として変革ビジョンを浸透させておくことは効果的な手段です。
変革ビジョンがあれば、通用しなくなった古いやり方に固執することなく、新しいやり方を見つけるための挑戦が容易になるでしょう。
変革ビジョンも一朝一夕に取り入れられるものではありません。
日頃より、社員の新しい提案を受け入れたり、これまでとは違うやり方でより良い成果を出した社員をほめたりするなど、地道な活動が必要になります。
危機感を定期的に共有する
自分たちの会社がゆでガエル状態になっていないか適切に把握するために、定期的に危機感を共有しましょう。
ゆでガエルにならないためには、危機的な状況を早期にとらえることが重要です。
現場の社員が危機意識を感じたとき、率直に意見できるチームワークや関係性の構築が必要となるでしょう。
ゆであがる前に、危機感を定期的に共有できる状況や人間関係を作っておくのがおすすめです。
客観的な視点を持つ
ゆでガエルにならないためには、客観的な視点を持つことが欠かせません。
自分や自社への評価について、客観的な視点を持つことは難しく、危機的状況を前にしても「うちは大丈夫」「まだいけるはず」「これでうまくいってきた」と安易な楽観的思考をしてしまうおそれがあります。
企業として売り上げ目標などの数字を設定している場合に、それが達成されているのか、達成のために長時間労働など無理な手段が使われていないか確認しましょう。
「売上」「新規顧客獲得数」など指標はさまざまですが、事前に危機的状況をとらえるための指標を定義し、定期的に確認して状況を客観的にとらえるようにしましょう。
ゆでガエルにならないよう対策しよう
現在では、技術や労働環境の変化のスピードも速く、企業活動においても素早い対応が求められます。
危機意識を持たず、対策をとっていない組織では、簡単にゆでガエルになるおそれがあるでしょう。
過去のやり方への執着、変化や挑戦への抵抗感など、企業がゆでガエル状態になる危険はさまざまなところに潜んでいます。
企業のあり方はすぐに変化させられるものではないため、早期から時間をかけて対策する必要があります。
変革ビジョンの浸透、定期的な危機感の共有、客観的な視点の維持により、日ごろから企業をゆでガエルにしないための対策を定着させていきましょう。
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[※1]出典:桑田 耕太郎「組織論」
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