イノベーションとは?意味や種類を【事例付き】でわかりやすく解説
目次
イノベーションとは、技術的な革新により、社会に新しい価値を生み出すことです。
イノベーションには、破壊的イノベーションや持続的イノベーションなどの種類があり、現代の日本社会ではオープンイノベーションが注目されています。
イノベーションの種類や内容、また、イノベーションの課題や注目される背景について、事例付きで詳しく解説します。
イノベーションの意味とは
「イノベーション(innovation)」とは、技術的な革新により、社会に新しい価値を生み出す取り組みを指す言葉です。
イノベーションは、直訳すると「革新」「改革」などを意味し、転じて「企業による画期的な商品開発」の意味合いとして、近年では一般的に使用されています。
また、イノベーションは「技術革新」と訳される場合もありますが、技術に限らず、商品やサービス、市場や組織、制度なども含まれる広い概念です。
イノベーションが実現すると、社会の常識を変えるほどの影響を与えるケースもあります。
イノベーションの提唱者
「イノベーション」という概念は、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターによって提唱されました。
ヨーゼフ・シュンペーターは、1912年に出版した著書「経済発展の理論」のなかで、イノベーションを、「新結合(neue Kombination)」という言葉を用いて、経済発展の要因は、人口増加や気候変動などの外的要因よりも、イノベーションのような内的要因が、大きな役割を果たすと定義付けています。
イノベーションが注目される背景
なぜ、近年イノベーションが注目を集めるようになったのでしょうか。
背景には、下記の3つの影響があるとされています。
- 労働人口の減少
- 技術革新の影響
- 市場の縮小
イノベーションが注目される背景について、詳しく解説します。
労働人口の減少
現代の日本では、少子高齢化の影響による労働人口の減少が予想されています。
すでに人手不足の企業や業界も多く、人手不足を補うための対策が、各企業には求められています。
このような労働人口の減少の対策方法として、企業のビジネスモデルや制度を変えて、イノベーションを起こす方法が考えられるようになっています。
イノベーションで改革を実現できると、従業員の生産性を高められて、最小限の人数で成果を上げられるようになるでしょう。
技術革新の影響
現代は、IT技術の目まぐるしい革新が日々起こっており、時代や市場が移り変わるスピードも速いです。
そのため、自社の商品が市場のシェアを現時点で獲得していたとしても、競合他社に市場を取られてしまう危険性が常に隣り合わせとなっています。
企業にとっては、継続的に顧客を獲得し、持続的に成長していくために、イノベーションで生み出した価値の提供により、時代の流れに取り残されない事業運営を実現できるでしょう。
市場の縮小
少子高齢化による人口減少は、市場の縮小にもつながります。
市場が縮小すると、消費者も減ってしまうため、企業は顧客を継続的に獲得するためにも、工夫を取り入れる必要があります。
たとえば、画期的な新商品の開発により、市場に変化を与えられるため、安定的にシェアを獲得する効果が期待できるでしょう。
イノベーションの種類
技術的な革新により、社会に新しい価値を生み出すイノベーションには種類があり、提唱者によって、いくつかの定義や枠組みに区分されます。
本記事では、3人の提唱者が定義付けたイノベーションについて、それぞれ詳しく解説します。
提唱者 | イノベーションの名称 |
---|---|
ヨーゼフ・シュンペーター |
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クレイトン・クリステンセン |
|
ヘンリー・チェスブロウ |
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5種類のイノベーション
「イノベーション」の概念を定義付けたヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションには5種類あるといっています。
- プロダクト・イノベーション
- プロセス・イノベーション
- マーケット・イノベーション
- サプライチェーン・イノベーション
- オルガニゼーション・イノベーション
ヨーゼフ・シュンペーターが定義付けた5つのイノベーションについて、詳しくみていきましょう。
プロダクト・イノベーション
プロダクト・イノベーションとは、まだ世間にはない、新しい商品やサービスを生み出すイノベーションです。
既存の技術を組み合わせて、従来にはない商品やサービスを生み出す行為も、このイノベーションに当てはまります。
たとえば、過去に家電製品の三種の神器と呼ばれていた、カラーテレビ・クーラー・自家用乗用車も、プロダクト・イノベーションの例にあげられます。
プロセス・イノベーション
プロセス・イノベーションとは、従来にはない生産工程や流通方法を取り入れて、生産性向上に働きかけるイノベーションです。
たとえば、製造業にロボットを導入するといった例があげられます。
マーケット・イノベーション
マーケット・イノベーションとは、新しい市場に参入して、新しい顧客や販売経路、ニーズなどを確保するイノベーションです。
たとえば、不動産の企業が、飲食店やアパレル店を展開するといった例があげられます。
サプライチェーン・イノベーション
サプライチェーン・イノベーションとは、製品に関わる原材料や供給ルートを新しく開拓、または改善する行為です。
たとえば、仲介に業者を挟まず、自社から直接仕入れるといった例があげられます。
オルガニゼーション・イノベーション
オルガニゼーション・イノベーションとは、自社の組織運営やビジネスモデルを変えることで、競合他社や社会に影響を与えるイノベーションです。
たとえば、社内ベンチャー制度を導入するといった例があげられます。
破壊的・持続的イノベーション
次に、ハーバードビジネススクールで経営学者として教鞭を執っていたクレイトン・クリステンセンが定義付けた2つのイノベーションを確認していきましょう。
クレイトン・クリステンセンは、1997年に出版した著書「イノベーションのジレンマ」のなかで、イノベーションを2つに分類しました。
- 破壊的イノベーション
- 持続的イノベーション
クレイトン・クリステンセンが定義付けた2つのイノベーションについて、詳しくみていきましょう。
破壊的イノベーション
破壊的イノベーションとは、業界や市場のルールなどを破壊するほどの影響を与えるイノベーションです。
従来にはない商品やサービスを生み出せるものの、既存の業界や市場の仕組みを大きく変えてしまう恐れがあるイノベーションです。
たとえば、高価な製品で市場シェアを獲得していた商品に対して、低価格かつ高品質な類似製品を開発するといった例があげられます。
持続的イノベーション
持続的イノベーションとは、市場で優位性を保つために、性能向上や改善をおこなうイノベーションです。
たとえば、スマートフォンのアプリをアップデートして、改善を図るといった例があげられます。
ただし、顧客や市場の意見を重要視しすぎてしまうと、破壊的イノベーションに淘汰されてしまい、イノベーションのジレンマが起こる可能性もあります。
イノベーションのジレンマとは
イノベーションのジレンマとは、市場で優位性を保とうと持続的イノベーションを重視するあまり、破壊的イノベーションで革新に成功した企業に市場を奪われてしまう状態を指しています。
たとえば、大規模な既存事業としてコンピューターを持っていた企業が、新規事業のスマートフォンへの参入が遅れてしまい、地位を失ってしまう状態などがイノベーションのジレンマの事例としてあげられます。
大企業からすると、破壊的イノベーションの実現を目指す企業は、競合には見えず、軽視してしまいがちですが、ある日突然脅威となり、市場に乗り遅れてしまう危険性があるのです。
オープン・クローズドイノベーション
次に、ハーバードビジネススクールの助教授ヘンリー・チェスブロウが定義付けた2つのイノベーションを確認していきましょう。
- オープンイノベーション
- クローズドイノベーション
ヘンリー・チェスブロウが定義付けた2つのイノベーションについて、詳しくみていきましょう。
オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、自社の技術力と外部企業の技術力、ノウハウを組み合わせて、新しい商品を生み出すイノベーションです。
現代社会では、IT技術の発展やグローバル化の流れもあり、自社の技術力だけでは対応しきれない場面や、追いつけない部分が多々あるでしょう。
そのため、大学の研究機関や、自社とは関係がない異業種の分野など、外部と連携を取り合って実現するイノベーションを、オープンイノベーションと呼びます。
クローズドイノベーション
クローズドイノベーションとは、オープンイノベーションとは反対に、研究や開発などを、自社だけでおこない、商品を生み出す方法です。
情報が外部に漏れないため、競合他社から真似されにくいメリットがあります。
1990年代までは、クローズドイノベーションが主流でしたが、研究に費用がかさむ状況や、競争が激しくなった背景などもあり、現代社会ではオープンイノベーションが主流になりつつあります。
日本におけるイノベーションの現状
海外企業に比べると、日本企業はイノベーションの創出を実現できていない部分があります。
理由としては、長期的な視点で成果を求めるのではなく、短期的な視点での目標達成が重視される傾向にあるからです。
また、人材の流動性の低さも指摘されており、優秀な人材を外部から呼び込めていないという現状もあります。
ほかにも、自社が開発した製品や技術にこだわりすぎてしまう課題もあげられます。
現状を打破するためにも、オープンイノベーションで外部の技術力を取り込む姿勢が求められています。
イノベーションの企業課題
日本でイノベーションが進まない背景には、どのような課題があるのでしょうか。
イノベーションを阻む企業課題について、詳しくみていきましょう。
経営者層の意識改革
イノベーションを起こすには、経営者層が意識改革をする必要があります。
企業の風土から、従業員が上層部に意見しづらい雰囲気があると、イノベーションを起こすきっかけを失ってしまうでしょう。
企業のイノベーションを実現し、持続的に成長していくためには、経営者層がイノベーションを理解し、促進させていく必要があります。
企業内の情報不足
イノベーションを実現するためには、自社や外部環境の情報、マーケティングに関わる情報など、周辺情報をまとめて分析していく必要があります。
そもそもイノベーションを起こすうえで、どのように資金調達をおこなう必要があるのかなど、必要な情報収集や分析方法がわからないといった問題も、イノベーションを阻む課題のひとつでしょう。
過去の経験に引きずられる
企業によっては、従来のやり方にこだわってしまい、イノベーションが生まれない環境になっている状況もあるでしょう。
既存の商品やサービス、また取り組みや業務にとらわれてしまうと、結果的にイノベーションを起こすための人材採用や育成もできなくなってしまいます。
過去の経験に固執してしまうと、市場の優位性を失い、衰退してしまう恐れも考えられるため、注意が必要です。
イノベーションに必要な4つのポイント
イノベーションの実現に必要なポイントを4つ紹介します。
- 市場や最新情報に敏感になる
- リスクや失敗も受け入れる
- 人材育成・採用に力を入れる
- 社内外の連携を活性化させる
それぞれ詳しくみていきましょう。
ポイント(1):市場や最新情報に敏感になる
イノベーションを起こすには、主体的に新しい情報を掴みにいく姿勢が求められます。
情報をスピーディーに掴めると、競合他社よりも先に、市場や顧客のニーズにあわせた商品を開発できます。
また、顧客が解決したいニーズを掘り下げる取り組みで、イノベーションが生まれる場合もあるため、社内で事業活動に関わる情報交換ができる体制を整えておく組織づくりも必要です。
ポイント(2):リスクや失敗も受け入れる
イノベーションを実現するためには、ある程度のリスクや失敗を受け入れる姿勢も求められます。
新しいアイデアを実行して、上手くいかなかった場合でも、どのような改善ができるか考えるなど、失敗を次の経験に活かすような考え方が必要です。
また、従業員から新しい提案を受けたときは、否定するのではなく、どのように活かせるのかという視点をもつ姿勢が大切です。
リスクを分散させたい場合は、まずは小さなところから挑戦をはじめて検証してみましょう。
ポイント(3):人材育成・採用に力を入れる
イノベーションを起こすには、多様性がある人材の確保も重要です。
グローバル化の流れを取り入れる意味でも、外国人人材の採用や、専門職・異業種の従業員を採用する方法もあります。
さまざまな人材を確保するためにも、人材採用時の評価基準を変えていく取り組みも必要です。
ポイント(4):社内外の連携を活性化させる
イノベーションの実現には、社内外問わずに、さまざまな組織と積極的に交流する機会をつくることが大切です。
社外の企業や団体、研究機関とコミュニケーションを図るなかで、イノベーションにつながる新しいアイデアを生み出せるかもしれません。
イノベーションの具体的な事例
最後に、イノベーション実現の参考に、具体的な企業事例を紹介します。
フリーマーケットサービスを提供するある企業では、アプリをとおして中古品を売買する仕組みをつくり、中古品EC市場のイノベーションを生み出しました。
また、この企業は、経営陣と従業員が気軽にコミュニケーションを図れる組織体制を整えており、イノベーションが生まれやすい環境を構築しています。
イノベーションを起こすには挑戦が重要
イノベーションは、技術的な革新により、社会に新しい価値を生み出す取り組みです。
IT技術の革新が目まぐるしい近年、企業が持続的に成長し、市場で優位性を維持するためには、イノベーションの実現がより重要性を増してくる状況が予想されます。
企業は、イノベーションを起こすためにも、まずは経営者層の意識改革や最新情報を掴む体制を整えましょう。
また、イノベーションを起こすときのポイントとして、社内外のコミュニケーションを活性化させる取り組みも重要なポイントです。
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