ゴールデンサークル理論とは?具体例やマーケティング・ブランディングでの活用方法を解説
目次
ゴールデンサークル理論とは、聞き手の感情に訴えかけて行動を促しやすくする伝え方のことをいいます。
ビジネスで大きな成果を得ている企業の多くが活用していることで、注目を集めるようになりました。
マーケティングやブランディング、プレゼンテーションなど、さまざまなビジネスシーンで活用することができます。
本記事では、ゴールデンサークル理論の意味や具体例、マーケティング・ブランディングにおける活用方法と手順を解説します。
ゴールデンサークル理論とは
ゴールデンサークル理論とは、プレゼンテーションなどで「WHY(なぜ)」、「HOW(どのように)」、「WHAT(何を)」の順で伝えることで、共感を得やすくなるという理論です。
人間の脳の仕組みに合った伝え方であるため、聞き手の感情を動かすのに効果的な方法で、行動を促す効果が期待できます。
マーケティングコンサルタントのサイモン・シネックが提唱し、人気配信メディアで紹介したことで、注目されるようになりました。
ビジネスでは多くの場面で活用できる方法であるため、使い方を覚えてさまざまなビジネスシーンで活用しましょう。
一般的な伝え方とゴールデンサークル理論の違い
一般的な伝え方とゴールデンサークル理論では、伝え方の優先順位に違いがあります。
一般的な伝え方では、「WHAT(何が)」や「HOW(どうやって)」といった「商品・サービスのスペックや魅力」が重視されて、「WHY(なぜ)」が省略されがちです。
一方、ゴールデンサークル理論では、「WHY(なぜ)」を重視して、「なぜ商品・サービスを開発したのか」から説明します。
ここからはサービスを説明する例を参考に、違いを詳しくみていきましょう。
一般的な伝え方の例文
以下は、一般的な伝え方によってアプリを説明する一例です。
いつでもどこでも家族や友人と思い出を共有することができます。
商品のスペックやメリットは伝わるものの、感情に訴える力は弱いでしょう。
ゴールデンサークル理論の例文
ゴールデンサークル理論を活用して、アプリを説明する例を見ていきましょう。
この理念のもとに、いつでもどこにいても家族や友人と思い出をシェアできるアプリを開発しました。
写真や動画を共有できる機能のほか、メッセージのやりとりができるコメント機能も備えており、離れている大切な人を近くに感じられるサービスです。
一般的な伝え方よりも、商品やサービスに込められた企業の信念や意義が伝わりやすいと感じやすいのではないでしょうか。
このように「WHY」を重視することで、感情に訴えかけやすくなるため、顧客の行動も促しやすくなります。
ゴールデンサークル理論を活用している具体例
実際のビジネスシーンでは、どのようにゴールデンサークル理論が活用されているのでしょうか。
2つの事例を挙げて、実際に活用している具体例をみていきましょう。
有名テクノロジー企業の事例
スマートフォンなどの開発・販売をしている有名テクノロジー企業A社は、プレゼンテーションの際に新商品の説明を「WHY」から始めることで、ブランディングに成功しています。
A社は商品の説明よりも「なぜ商品を開発するのか」を伝えることを重視しており、「なぜ」という信念や価値観を発信することで共感を生み、商品のヒットやファンの獲得につながりました。
なおゴールデンサークル理論は、A社の当時のCEOによるプレゼンテーションから発見されました。
求人情報サービスを運営する企業の事例
求人情報サービスを運営するW社では、ゴールデンサークル理論を企業と求職者のマッチングサービスに活用して成果を上げています。
W社は共感を重視するために「求人募集に給与や待遇を記載しない」ことをルールにしており、代わりに「企業理念」「存在意義」「使命」を募集に記載し、これに共感した求職者がマッチングする仕組みを構築しました。
W社の活用は、ゴールデンサークル理論を採用活動でも効果的に活用できることがわかる事例です。
ゴールデンサークル理論が共感や行動につながる理由
ゴールデンサークル理論は以下の理由から、相手の共感や行動につながるといわれています。
- 人間の脳の仕組みと相性がいい
- イノベーター理論に沿った方法である
- 価値観の多様化や社会課題による影響
それぞれの詳細を解説します。
人間の脳の仕組みと相性がいい
ゴールデンサークル理論が効果的な理由として、人間の脳の仕組みが関係しています。
人間の脳には、合理的に物事を考える「大脳新皮質」と、感情や欲求などの本能行動を司る「大脳辺縁系」の2つがありますが、提唱者であるサイモン・シネックは「大脳辺縁系への刺激」が行動を促しやすくすると説いています。
「WHY(なぜ)」は聞き手の価値観や信念に訴えかける「大脳辺縁系への刺激」であるため、「WHY」で感情を刺激してから「HOW」「WHAT」を伝えることで、行動につながりやすくなります。
イノベーター理論に沿った方法である
イノベーター理論とは、新しい商品やサービスが市場に普及していく流れを分析した理論で、消費者を5つのタイプに分類できます。
イノベーター理論によると、商品やサービスの普及で重要なのは、5つのタイプの内「イノベーター」と「アーリーアダプター」の2つのタイプの攻略です。
「イノベーター」と「アーリーアダプター」はほかのタイプに比べて直感を大事にする特徴があるため、聞き手の感情や本能に訴えかけるゴールデンサークル理論は、攻略につながる行動の促進に効果的な方法だといえます。
価値観の多様化や社会課題による影響
ゴールデンサークル理論が重要視される理由のひとつとして、消費者の価値観の多様化や、社会課題なども関係しています。
以前の消費者は、単に「モノを買う」「サービスを利用する」とシンプルでした。
しかし、市場の成熟、価値観の多様化、SDGsなどの社会課題によって、「ほかと違う価値のあるものが選びたい」「社会に貢献したい」などの考え方に変化したため、企業やブランドの理念や志が、より重要視されるようになったと考えられます。
ゴールデンサークル理論を活用できる分野
ゴールデンサークル理論は、ビジネスの多くの分野や場面で役立てられる方法ですが、具体的には以下の分野で効果が期待できます。
- ブランディング
- マーケティング
- プレゼンテーション
- ワークショップ
- 営業活動
- 人材育成
上記から、多くのビジネスシーンで共感が重要になることがわかるでしょう。
なお、プレゼンテーションやワークショップなど、聞き手が大勢いるシーンでは、「WHY」が正しく伝わっていないと共感や主体性を欠いてしまうおそれがあるため注意が必要です。
「HOW」や「WHAT」の説明に入る前に、「WHY」が正しく伝わっていることを確認してから進めましょう。
ゴールデンサークル理論をマーケティング・ブランディングに活用する方法
ゴールデンサークル理論をマーケティングやブランディングに活用する方法を紹介します。
- 手順(1):「WHY」にミッション・ビジョン・バリューを当てはめる
- 手順(2):「HOW」の商品・サービスの強みを明確にする
- 手順(3):「WHAT」に商品・サービスを当てはめる
- 手順(4):「WHY」「HOW」「WHAT」を組み立てる
手順に沿って説明しますので、それぞれに当てはまる内容を確認しながら進めてみましょう。
手順(1):「WHY」にミッション・ビジョン・バリューを当てはめる
「WHY」には、企業のミッション、ビジョン、バリューを当てはめましょう。
ミッション、ビジョン、バリューとは以下のとおりですが、企業によっては「WHY」に「企業理念」や「経営理念」が当てはまることもあります。
- ミッション:企業の存在意義や使命
- ビジョン:将来的に実現させたい理想像
- バリュー:企業活動における指針や社会に提供したい価値
ゴールデンサークル理論を効果的に活用するためには、自社のミッション・ビジョン・バリューを明確にすることが重要です。
またブランディングの際は、ミッション・ビジョン・バリューを「なぜやるのか」を考えて追及することで、効果的にブランディングがおこなえるでしょう。
>MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?に関する記事はこちら
手順(2):「HOW」の商品・サービスの強みを明確にする
まず、アピールしたい自社の商品・サービスの強みや、他社と異なる差別化のポイントを明確にしましょう。
いかに「自社の強み」や「他社との違い」をわかりやすく伝えられるのかによって、マーケティングの効果が変わるため、重要な工程です。
また、「HOW」で強みや差別化ポイントがしっかりと伝わると、聞き手や顧客は「WHY」への共感だけでなく、合理的な思考の部分でも納得感やメリットを実感できるようになります。
手順(3):「WHAT」に商品・サービスを当てはめる
「WHAT」には、「商品」や「サービス」そのものを当てはめましょう。
そして「WHAT」を顧客や聞き手に商品・サービスを説明するときは、「WHY」の実現にどのように関連するのかという説明もあわせておこないます。
手順(4):「WHY」「HOW」「WHAT」を組み立てる
プレゼンなどで活用する場合は、ゴールデンサークル理論に沿って伝えたい内容を「WHY」「HOW」「WHAT」の順に組み立てましょう。
組み立てたあとは、「WHY」のミッション・ビジョン・バリューと「HOW」「WHAT」の内容に関連性や整合性があるかどうかも確認します。
ゴールデンサークル理論をマーケティング・ブランディングで効果的に活用するポイント
実際にゴールデンサークル理論を活用するときは、紹介する商品やサービスが変わると「HOW」や「WHAT」も応じて変わりますが、「WHY」は変えないことが重要です。
「WHY」を変えてしまうと、ブランディングの際にブレが生じてしまい、共感を得られにくくなるなど、ゴールデンサークル理論の効果が乏しくなるおそれがあります。
活用する際は、「WHY」を一貫して発信することが重要であることも覚えておきましょう。
ゴールデンサークル理論をビジネスシーンで活用しよう
ゴールデンサークル理論は「WHY」「HOW」「WHAT」の順番で伝えることで、相手の共感を得やすくなる理論です。
効果的に活用するためには、「WHY」に当たる企業のミッション、ビジョン、バリューを明確にしたうえで、商品やサービスに込めた使命をわかりやすく伝えることが重要です。
ゴールデンサークル理論はさまざまなビジネスシーンで活用できるため、活用方法を覚えて、多くの場面で活かせるようになりましょう。
伝えたい内容を簡潔にまとめて、スピーディなコミュニケーションを図るにはビジネスチャットの活用もおすすめです。
ビジネスチャット「Chatwork」は、グループを作成し、複数人で一斉に情報共有をおこなうことが可能です。
マーケティングやブランディングにゴールデンサークル理論を活用するために、「WHY」「HOW」「WHAT」を社内で話し合うときには、ぜひ「Chatwork」をご活用ください。
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