残業強要はパワハラや違法になる?残業強要を拒否できるケースと対処法

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働き方改革
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残業強要はパワハラや違法になる?残業強要を拒否できるケースと対処法

目次

長時間労働やサービス残業などの労働時間や残業に関する課題は、社員の心身を疲弊させるなど、多くの問題をもたらします。

残業を強要するような雰囲気や言動がある場合もあり、残業強要についてはパワハラや違法性がある場合もあり、大きな問題ともいえるでしょう。

残業について学び、不当な残業の強要に対応できる知識を身につけておきましょう。

残業強要に該当する行為とは?

残業強要とは、言葉のとおりの意味になり、残業を強要することを指します。

たとえば、下記の行為が残業の強要に該当すると考えられます。

  • 業務上必要のない残業をさせる
  • 終わらない量の仕事をさせる
  • 定時間近に大量の仕事を頼む
  • 定時以降にミーティングや取引先との約束を入れる

業務上必要な残業もありますが、連日残業が続いている、終わりの見えない量の仕事をさせられていてるようでは、社員は「残業を強要されている」と感じてしまいます。

また、上司が帰宅するまで帰れない、残業をしないといけないという暗黙のルールや雰囲気がある場合なども、残業を強要していると考えることもできます。

残業を命じることができる条件とは?

そもそも残業というのは、会社が決めた労働時間または法律が定める労働時間を超えて働くということです。

前者のことを「所定労働時間」、後者のことを「法定労働時間」といいます。

使用者が労働者に法定労働時間を超えて残業をさせるためには、以下の3つの条件が満たされている必要があります。

  • 労働基準法第36条に基づく労使協定、いわゆる「36協定」が締結されていること
  • 所轄の労働基準監督署長への届出があること
  • 労働契約や就業規則に残業の義務がが含まれていること

つまり残業をさせるとしても最低限の条件を満たしていなければ、おこなうことができないということです。

残業強要が違法になるケース

残業強要が違法になるのはどのようなケースでしょうか。

考えられるのは、「36協定が未締結」「労働契約に記載がない」「残業を命じることが労働者の利益を著しく害する」「36協定の上限を超えた残業命令」というものです。

残業の強要が違法になる例を具体的に見ていきましょう。

36協定が締結されていない

36協定は、使用者が労働者に残業を命じる上で必要不可欠な条件です。

36協定が未締結の状態で残業を命じたり強要することは犯罪であり、労働基準法第119条第1号により「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」と罰則が定められています。

労働契約に残業が含まれていない

労働契約または就業規則に残業の義務を負う旨の記載がない場合も、残業を命じることができる条件下にないため、残業の強要をすると違法になります。

例えば、育児や介護などを理由に「残業なし」の契約で採用した社員は、「残業あり」の契約に変更しなければ残業を命じることはできません。

 

労働者の利益を著しく害する

労働者の利益を著しく害するおそれがある場合も、残業の強要をすると違法になります。

労働者の利益を著しく害するおそれがある場合とは、残業により心身の健康に影響がある場合や、子どもの送迎に間に合わないなど私生活に悪影響を及ぼす場合などが考えられます。

36協定の締結や労働契約により、残業を命じることができる条件であったとしても、労働者の利益を著しく害するような残業の強要は違法となる可能性があります。

 

36協定の上限を超えた残業命令

36協定の締結により、原則1日8時間・1週40時間以内と決まっている法定労働時間を超えて残業を命じることができます。

しかし、2018年6月におこなわれた労働基準法の改正により、36協定で定める時間外労働に上限が設けられ、「年で720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超える」残業を命じることはできなくなりました。

また、月45時間を超えることができるのは、年間6か月までという上限も決まっています。[※1]

この上限を超えて残業を命じた場合、違法な残業命令となり、労働基準法第119条第1条により「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」と罰則が定められています。

残業強要を拒否できるケース

正当な残業命令の場合は、原則その命令に従わなければいけません。

しかし、「残業を拒否できる正当な理由があること」「残業命令が違法であること」「業務上の必要がない残業を命じられた場合」であれば、残業の強要を拒否することができます。

それぞれの残業強要を拒否できるケースについて見ていきましょう。

正当な理由がある場合

残業命令が適法であったとしても、正当な理由がある場合は残業を拒否することができます。

正当な理由とは、体調不良や、妊娠・出産、育児、介護などのために残業をすることができない場合をいいます。

特に、妊娠中の女性や出産から1年が経っていない女性から請求があった場合、残業を命じることはできません。

また、3歳未満の子どもを養育している労働者や未就学児の看護をしている労働者に対しても、残業の命令に上限があります。

違法な残業命令の場合

残業命令が違法である場合、残業の強要を拒否することができます。

たとえば、下記のケースが、残業命令が違法に該当します。

  • 36協定を締結していない状態での残業命令
  • 36協定の上限を超えた残業命令
  • 労働契約に残業の記載がない場合の残業命令

このような残業命令はそもそも違法なので命令に従う義務がありません。

  

業務上の必要性がない場合

業務上の必要性がなく、嫌がらせなどを目的として残業の強要をされた場合も拒否することができます。

業務上の必要性がないという判断は難しいですが、例えば「みんな残っているんだから、君も残業しろ!」といったものや「困らせたいから急ぎじゃない仕事を頼んで残業させよう」などの嫌がらせ目的の残業命令がこれに該当します。

また、このような残業命令はパワハラに該当する可能性があります。

残業強要はパワハラに該当する可能性もある

残業の強要はパワハラに該当する可能性もあります。

職場におけるパワハラは、上司などが優位的な立場を利用し、業務の適性な範囲を超えて部下などに精神的または身体的に苦痛を与えることなどを指します。

これに当てはめて考えると、下記の行為は、パワハラに該当する可能性があります。

  • 必要性のない残業をさせる
  • 精神的・身体的苦痛を与える量の残業をさせる
  • 用事があると分かっていて残業を命じる
  • 定時間近に急ぎではない仕事を頼む

残業を命じる立場にある人は、残業命令の適法性だけでなく、パワハラに該当するおそれはないかという観点からも考えて残業を命じなければいけません。

>【社労士監修】パワーハラスメントの定義とは?に関する記事はこちら

残業を強要されたときの対処法

残業を強要された場合、まずは残業命令の適法性を確認することが必要です。

残業の強要に違法性がある場合や、適法な残業命令であってもパワハラに該当する可能性がある場合は、労働基準監督署や弁護士など専門的知識のある人に相談しましょう。

残業の適法性を確認する

残業を強要されたときは、その残業命令の適法性について確認しましょう。

確認することは

  • 36協定が締結されているか
  • 所轄の労働基準監督署長への届出があるか
  • 労働契約に残業についての記載があるか

といったことです。

残業命令に違法性がある場合は拒否できますし、残業命令が適法であったとしても正当な理由があれば拒否できます。

労働基準監督署に申告する

残業の強要に違法性がある場合やパワハラに該当する場合、所轄の労働基準監督署に申告しましょう。

労働基準監督署は、労働基準法など労働に関する法律を守らない企業を取り締まる機関です。

残業代の未払いなどの違法行為に対し、企業に是正勧告をしたり、悪質な場合は刑事事件として送検したりします。

労働基準監督署に申告することで、労働問題に関するアドバイスを受けることができ、労働基準監督署に対応を求めることができます。

  

弁護士に相談する

 

労働基準監督署以外の相談先として、弁護士に相談することも考えましょう。

労働基準監督署との大きな違いが、弁護士であれば相談者を代理して企業に損害賠償などの民事的な請求をおこなえるという点です。

無料相談などを利用し、弁護士に相談することもオススメします。

残業について正しく理解しよう

不当な残業の強要を拒否するためには、残業について正しく理解することが大切です。

自身が働く会社の36協定や労働契約について今一度確認してみましょう。

また、残業の強要をされた場合は、その適法性についてきちんと考えるとともに、違法性やパワハラの疑いがある場合は専門的知識を持った人に相談するようにしましょう。

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[※1]出典:厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/000350731.pdf
※本記事は、2021年8月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

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