【社労士監修】慶弔休暇とは?取得日数や給与有無、注意点を解説
目次
慶弔休暇とは、慶事や弔事があった際に従業員が取得できる休暇として、多くの企業で設けられている特別休暇です。
対象者や取得日数、給与支給の有無は、企業の裁量で決められるため、導入する場合は適切な条件を設定することが大切です。
本記事では、慶弔休暇の概要や導入する際の注意点を詳しく解説します。
慶弔休暇とは
「慶弔(けいちょう)休暇」とは、慶事や弔事があった際に従業員が取得できる休暇のことで、結婚や配偶者の出産、葬儀などで使用できる休暇として多くの企業で設けられています。
しかし、慶弔休暇の導入は、法律で義務付けられているわけではないため、制度がない企業もあります。
自社に慶弔休暇が導入されているか否かは、就業規則で確認することができます。
慶事とは
「慶」には、「喜ぶ」「祝う」などの意味があり、「事」をつなげることで、「喜ばしいこと」や「お祝いごと」という意味になります。
たとえば、結婚や出産、入学、卒業など、本人や家族にとって喜ばしいことを「慶事」といいます。
弔事とは
「弔」には、「悼む」「とむらう」などの意味があり、「事」をつなげることで、「悼むこと」や「とむらうべきこと」という意味になります。
たとえば、通夜や告別式、火葬の準備など、葬儀にまつわることを「弔事」といいます。
慶弔休暇と忌引きの違い
慶弔休暇と忌引きは、慶事と弔事の両方の休みであるか、弔事のみの休みであるかという点に違いがあります。
慶弔休暇は、慶事や弔事に出席したり、慶祝したりする際に取得する休暇のことで、たとえば、結婚式や入学式に出席する際や、親族の葬儀に参列する際に取得することができます。
一方で忌引きは、葬儀や告別式、通夜などの弔事のために取得できる休暇のことです。
そのため忌引きは、慶弔休暇の一部ととらえることができるでしょう。
慶弔休暇 | 慶事と弔事の両方に対して使える休暇 |
---|---|
忌引き | 弔事に対して使える休暇 |
慶弔休暇の対象になるケースと付与日数
慶弔休暇は、事象によって取得できる日数が異なります。
ここでは、一般的な慶弔休暇の対象になるケースと付与日数を解説します。
慶事の場合
慶事の対象となるケースと一般的な付与日数は、以下のとおりです。
本人が結婚するとき | 5日 |
---|---|
配偶者が出産するとき | 2日 |
子どもが結婚するとき | 2日 |
これらの日数は、あくまでも一般的なもので、法律で定められている日数ではありません。
企業の規定によって日数は異なるため、取得する予定がある場合は、事前に確認するようにしましょう。
弔事の場合
弔事の対象となるケースと一般的な付与日数は、以下のとおりです。
配偶者が亡くなった場合 | 10日 |
---|---|
父母・子が亡くなった場合 | 7日 |
祖父母・義理の父母が亡くなった場合 | 5日 |
兄弟姉妹・義理の祖父母・孫が亡くなった場合 | 3日 |
こちらも慶事と同様、日数は各企業の規定によって異なります。
弔事は予想しないタイミングで取得する必要が出てくる可能性もあるため、事前に就業規則を確認するようにしましょう。
慶弔休暇は有給か無給か
慶弔休暇を有給とするか無給とするかは、日数と同じく、各企業の判断に委ねられています。
社内で方針を決定し、就業規則に有給か無給かを規定したうえで、従業員に周知しましょう。
なお、2021年に「独立行政法人労働政策研究・研修機構」がおこなった調査によると、慶弔休暇を導入している81.3%の企業は、慶弔休暇を有給としています。[注1]
慶弔休暇が取得できる雇用形態とは
慶弔休暇は、正社員だけではなく、パートや契約社員、派遣社員など、雇用形態に関わらず取得できます。
なぜなら、同一労働同一賃金の原則により、雇用形態による休暇の格差が禁止されているためです。[注2]
結婚や葬儀などは、雇用形態に関わらずだれでも発生する可能性があり、雇用形態によって取得できる日数や条件が異なる規定は、同一労働同一賃金の原則に違反したことになります。
正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくすためにも、雇用形態に関わらず、慶弔休暇を取得できる環境を整備しましょう。
慶弔休暇の対象外となるケース
慶弔休暇は、条件を設けて一部対象外の条件をつくる企業もあります。
一般的に対象外となる主なケースは以下の3つです。
- 3親等以上離れている場合
- 喪主の場合
- 遠方の葬儀の場合
それぞれのケースを詳しく解説します。
3親等以上離れている場合
親族が亡くなったときの慶弔休暇は、2親等までとする企業が多いです。
2親等とは、以下の親族のことをいいます。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 配偶者の祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
曽祖父母や甥・姪などは3親等にあたり、対象外となるケースが多いです。
ただし、就業規則で「3親等以上の場合は1日取得可能」など、認めている企業もあるため、自社の就業規則を確認するようにしましょう。
喪主の場合
配偶者以外が亡くなった場合で、喪主を務める場合は、葬儀の全工程に関わる可能性があり、規定された日数では足りなくなる可能性があります。
企業によっては、慶弔休暇の規定日数を超えて休暇を取得できるケースもありますが、超えた日数分は慶弔休暇が使用できない場合もあるでしょう。
配偶者以外で喪主になった際は、規定日数に加算して慶弔休暇が取得できるかを、事前に確認しておきましょう。
遠方の葬儀の場合
遠方の葬儀に参列する場合は、移動日数を含めると規定日数では足りない場合があります。
規定日数を超えた分を追加で付与されるかは、企業によって異なるため、就業規則に明記されているか確認しましょう。
慶弔休暇を取得する際のマナー・注意点
慶弔休暇は、長期で休暇を取得する可能性もあるため、周囲の人に負担をかけないように、マナーを守って取得するようにしましょう。
ここからは、慶弔休暇を取得する際のマナーや注意点を解説します。
事前に就業規則の内容は確認する
前述もしましたが、とくに弔事は予想していなかったタイミングで発生する可能性があるため、慶弔休暇の有無や対象となるケースなどは、事前に確認しておくようにしましょう。
就業規則には、慶弔休暇の取得条件や日数、申請方法などが記載されています。
仕事に区切りがついたタイミングなどで、就業規則を確認しておきましょう。
申請は早めにおこなう
慶事の場合は予測できるケースが多いため、休暇中の業務に支障が生じないように、日程が確定した時点で申請をしましょう。
一方で、弔事は突発的に起こる場合が多いため、先に上司へ口頭で連絡をし、事後に慶弔休暇を申請する場合がほとんどです。
期間や伝達事項は関係者に伝える
慶弔休暇を取得している間にも、同僚や取引先などの関係者から重要な連絡がはいる可能性があります。
期間や理由、緊急連絡先などを伝え、業務に支障がでないように配慮しましょう。
慶弔休暇を設ける際の注意点・ポイント
これから慶弔休暇を設ける企業の方や、慶弔休暇の見直しを検討している企業の方がおさえておくべき注意点やポイントを解説します。
- 取得できる条件を決めておく
- 取得できる時期を決めておく
- 取得日数を決めておく
- 申請方法を決めておく
従業員がストレスなく休暇を取得できるように、それぞれのポイントを確認していきましょう。
取得できる条件を決めておく
慶弔休暇の取得条件を決める際は、一般的な取得条件を考慮して設定することが大切です。
慶事の取得できる条件が厳しすぎたり、弔事の親族範囲が狭すぎたりなど、取得しづらい条件設定をしてしまうと、従業員からの不満が生じやすいです。
慶弔休暇は福利厚生のひとつとして捉え、従業員が取得しやすい条件をしましょう。
取得できる時期を決めておく
慶弔休暇は、取得できる時期を明確にすることで、労務管理がしやすくなります。
たとえば、以下のような期限設定が考えられます。
- 本人が結婚した場合は、入籍してから1年以内に取得すること
- 配偶者が出産した場合は、出産の日から2週間以内に取得すること
取得できる時期をあらかじめ定めておかないと、いつまで取得できるか不明確になり、労務管理が煩雑になってしまうため、望ましくありません。
一般的な範囲内で取得できる時期を定めておきましょう。
取得日数を決めておく
取得日数は、それぞれの条件にあわせて適切に設定することが大切です。
配偶者が亡くなった場合は10日間、父母が亡くなった場合は7日間など、常識の範囲で取得日数を定めましょう。
また、喪主になった場合や遠方の葬儀に行く場合など、定めた日数で足りない場合にどのような対応をするかなども定めておくと、トラブル防止に繋がります。
申請方法を決めておく
慶弔休暇を取得する際は、基本的に申請・承認の手続きが必要です。
慶弔休暇用の申請書を用意し、だれにどのように申請するかの手順や流れを、就業規則に定めておきましょう。
申請方法を定めることで社内秩序が図られ、適切な運営ができるようになります。
社内コミュニケーション円滑化に「Chatwork」
慶弔休暇は、慶事または弔事が起こった際に取得できる休暇として、多くの企業で設けられています。
取得時の給与支給の有無や、取得条件は企業に委ねられていますが、福利厚生のひとつとして、従業員が利用しやすいよう規定することを意識しましょう。
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[※1]出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「年次休暇の取得に関するアンケート調査」
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/documents/211.pdf
[※2]出典:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html
※本記事は、2023年12月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:北 光太郎(きた こうたろう)
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。