【専門家監修】モラトリアムの意味とは?原因や脱却方法について解説

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【専門家監修】モラトリアムの意味とは?原因や脱却方法について解説

目次

モラトリアムとは、猶予期間をあらわす言葉で、政治や経済、心理学の分野で使われる用語です。

とくに心理学の分野で使われるモラトリアムでは、モラトリアム人間のような聞き馴染みのある言葉も生まれています。

この記事では、モラトリアムの一般的な意味や分野別の意味、モラトリアムから脱却する方法などについてわかりやすく解説します。

モラトリアムとは?

モラトリアムとは、一般的に「一定の猶予期間」をあらわす言葉です。

金融や心理学の分野で使われる用語で、それぞれにおいて猶予期間を意味しています。

学術的用語としての「モラトリアム」は、エリクソンが提唱した発達心理学の言葉です。

モラトリアムの語源は英語のmoratoryで、「支払いの猶予」といった意味があります。

分野別のモラトリアムの意味

モラトリアムという言葉は、複数の分野で使われています。

政治・経済におけるモラトリアムと心理学におけるモラトリアムについて解説します。

政治・経済におけるモラトリアム

政治・経済におけるモラトリアムは、「猶予期間」を意味します。

政治では、法律の公布から施行までの期間などをモラトリアムと呼びます。

経済で使われるモラトリアムは、一般的に「支払いの猶予」という意味です。

戦争や災害などの非常事態が発生すると、債務の支払いが困難になります。

経済的な混乱を回避するために、債務の支払いを国が猶予することや、その猶予期間をモラトリアムと呼びます。

心理学におけるモラトリアム

心理学におけるモラトリアムは、青年期における猶予期間を指す言葉です。

青年期になって身体的に成長しても、社会的な成長を遂げて一人前の社会人になるには時間がかかります。

生計を立てるために働くなどの負担なしに、社会人になるために必要な経験や知識を学ぶ期間が必要です。

こうした「青年期における一人前の社会人になるまでの猶予期間」を、心理学の分野ではモラトリアムと呼びます。

モラトリアムはいけないことか

モラトリアムは、ネガティブなニュアンスをもつ言葉ととらえられがちです。

しかし、モラトリアムにはネガティブな側面だけではなくポジティブな側面もあります。

政治や経済でモラトリアムが設定される場合は、社会情勢などを考えると必要な取り組みといえるでしょう。

また、心理学分野で使われる青年期のモラトリアムについても、個人の成長に必要なものであり、一人前の社会人としての成熟を待つことも重要です。

不必要にモラトリアム状態を長期にわたって継続してしまうケースは問題ですが、モラトリアムは必要な期間と言えます。

モラトリアムになりやすい期間

心理学分野で使われる青年期のモラトリアムは、一般的には高校生や大学生時代になりやすいといわれています。

人によっては、高校や大学を卒業して社会人になってからモラトリアムを経験する人もいます。

モラトリアムの期間は人それぞれで幅があり、数か月から数年単位です。

高校、大学、社会人になってからの時期には、理想と現実のギャップを感じやすく、自分らしさを求めてモラトリアムになりやすいといえるでしょう。

モラトリアム人間とは

社会人として自立する段階になっても、社会に属さない人を「モラトリアム人間」と呼ぶことがあります。

その特徴として、以下のような傾向が挙げられます。

  • 「自分のやりたいことが分からない」と、社会人として自立できない
  • 就職したものの理想と現実のギャップを感じ転職を繰り返す
  • 「これは自分のやりたいことではないかもしれない」と定職につかない

これらの状態にある人を指して、一般的に「モラトリアム人間」という言葉が使われます。

自分がその状態にあると気が付いていても、なかなか抜け出せないというジレンマを抱える人も少なくありません。

モラトリアムの脱却方法についてはこちらに後述します。

モラトリアムの関連用語

モラトリアムに関連する用語として、「アイデンティティ拡散症候群」「ピーターパン症候群」があります。

それぞれどのような意味の言葉なのか、モラトリアムとどのような違いがあるのか解説します。

アイデンティティ拡散症候群

アイデンティティ拡散症候群とは、エリクソンの人格発達理論で述べられている「アイデンティティ拡散」の状態をベースとした言葉です。

アイデンティティ拡散とは、自分探しを続けるなかで、一時的に自分が何者かわからなくなる状態のことです。

モラトリアムのなかで、多くの人がアイデンティティの拡散を経験するといわれています。

ピーターパン症候群

ピーターパン症候群は、「大人になりたくない」という感情が強く、自己中心的な行動をとってしまう状態のことです。

モラトリアムが、自分探しのために社会参加できない状態を指すのに対し、ピーターパン症候群は社会参加しながらも、無責任さや依存性の強さ、社会性の欠如などの特徴が見られるとされています。

モラトリアムを構成する5つの特徴

臨床心理学者の下山氏によると、モラトリアムは以下の5つの要素で構成されるといわれています。[注]

  1. 回避
  2. 拡散
  3. 安易
  4. 延期
  5. 模索

各要素について詳しく解説します。

回避

回避とは、将来を考えておらず、自分の就職や進学など、人生設計の決定ができないまま、無気力な状態になっていることです。

この要素が強くなってしまうと、引きこもりやニートになる可能性もあります。

また、現状のままでよいという打算的な考えから、フリーターを続けてしまうケースもあります。

モラトリアムの病的な側面が全面的に出てくる要素といわれています。

拡散

拡散は、将来について考えてはいるが、多くの選択肢から自分がやりたいことを決められない状態です。

モラトリアムは自分自身と向き合い、将来について考えるための猶予期間であるため、拡散の傾向が現れる人は多いです。

数ある選択肢の中から、何を選ぶかの意思決定ができれば、モラトリアムから脱却できる可能性は高いでしょう。

安易

安易とは、人生設計に関して、そもそも真剣に向き合おうとする意欲がない状態です。

その場の雰囲気や、周りに流されて行動するケースが多く、いざ自分のことになると深く考えられず、誰かの指示や意見を鵜呑みにしてしまいがちです。

決定を猶予するのではなく終始、受動的で安易な態度がみられます。

延期

延期は、社会的責任が発生するまでの期間を自分の意思で延期している状態です。

「今はモラトリアムの期間である」と自覚しているため、その期間が終わればモラトリアムが終了します。

しかし、決められた期間の終了が近づいても、将来について拡散や回避の状態となり、モラトリアムから脱却できない人もいます。

模索

模索とは、社会的責任を避けるのではなく、主体的に職業決定に取り組み、社会的責任を果たそうとしている状態です。

模索では、積極的に自分に合った職業選択をしようとする姿勢がみられます。

モラトリアムから脱却する方法

モラトリアムは人生において必要な期間ではありますが、いつまでも引きずってしまうとさらに脱却が難しくなってしまいます。

モラトリアム状態を脱却するための具体的な5つの方法について紹介します。

  1. 自分の考えを可視化する
  2. メタ認知を鍛える
  3. 人と関わる
  4. 読書などで知識を増やす
  5. 期限を決める

自分の考えを可視化する

 

自分の考えを可視化することは、自分と向き合うためのよい方法です。

たとえば、日記を書いたりスマホのメモ帳にその日あった出来事や考えたことをメモしたりといった方法があります。

記録をつけて考えを可視化すると、自分の心が惹かれるもの、面白いと思うものなどがわかりやすくなり、次に紹介する「メタ認知を鍛える」にもつながります。

メタ認知を鍛える

メタ認知とは、自分の思考や感情を自分自身で客観的に認識する能力をいいます。

さきほど紹介した「考えの可視化」によってメタ認知を鍛えると、深い自己分析が可能になります。

結果として、職業選択に必要な情報を得やすくなり、モラトリアムの脱却に役立ちます。

>メタ認知に関する記事はこちら

人と関わる

人との関わりもモラトリアムの脱却につながる可能性があります。

学生生活のなかでは、部活やサークル活動、アルバイトなどを通して多くの人と関わることが可能です。

人との関わりを通して、自分とは異なる価値観、考え方など多くの気付きを得られるでしょう。

多くの気付きを得ると、考え方が柔軟になり、自分の意思決定の参考となるので、モラトリアムの脱却につながります。

読書などで知識を増やす

本のなかには、文学や哲学など人生観についての知識や思考を学べるものもあります。

一般的にモラトリアムに陥りやすい大学生の場合、自分のために使える時間が多く、学校の図書館を利用できることから、読書しやすい環境にあるといえます。

読書だけではなく、学校での勉強を通して知識の蓄積も可能です。

知識を増やすと、将来を考える上での選択肢も増えるため、モラトリアムの脱却に役立つでしょう。

期限を決める

具体的に、モラトリアムをいつまで続けるのか期限を決めましょう。

「○月までは遊んで、その後は就職活動に専念する」など、期限を決めることでモラトリアムの時間を有意義に使いながら、将来選択ができるようになります。

決めた期限までに、選択ができなかったとしても「来月までには、ここまで行動しよう」という小さな期限を決めておく方法も有効です。

モラトリアム脱却に「Chatwork」を活用しよう

モラトリアムとは、青年期における猶予期間のことで、将来の選択に迷う時期でもあります。

自分自身の本当にやりたいことがわからず、悩む人も多いでしょう。

本記事で紹介したとおり、モラトリアムの脱却のためには、考えの可視化やメタ認知を鍛えるなどの方法があります。

考えの可視化をおこなうための具体的な手段として、チャットツールの活用がおすすめです。

ビジネスチャット「Chatwork」には、マイチャットという自分にしか見えないチャットルームがあります。

マイチャットに日々のできごとや考えたことの記録をつけておくと、日付や時刻も同時に記録可能です。

自分がいつ何を感じたのかを振り返りやすくなり、思考の整理に役立つでしょう。

モラトリアムからの脱却に役立つツールのひとつとして、ビジネスチャット「Chatwork」をご活用ください。

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[注]出典:下山晴彦「大学生のモラトリアムの下位分類の研究ーアイデンティティの発達との関連でー」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/40/2/40_121/_pdf/-char/ja


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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記事監修者:山崎 ゆうき(やまざき ゆうき)

臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。

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