CHROとは?5つの役割や人事部長との違い、スキルと育成方法を解説
目次
CHROとは、企業や組織における「最高人事責任者」を指し、経営と人事の視点を交えて戦略を考える役割を担います。
人事部長や人事担当者とは異なり、経営陣のメンバーとして人事戦略を管轄します。
そのため、経営や人事に関わる深い経験など、さまざまなスキルが求められる立場となるでしょう。
似ている立場として人事部長などがあり、それぞれとの違いについても抑えておくと、より理解が深まります。
本記事では、CHROの役割や求められるスキル、自社で育成する方法を解説します。
CHROとは?
CHRO(Chief Human Resource Officer)とは「最高人事責任者」を表す言葉です。
通常の人事担当者とは違い、経営側の主要メンバーとして人事戦略を検討します。
CHROは経営側の視点を含めながら、人事に関わる仕事全般の責任を担います。
CHROと人事部長との違いについて
CHROと人事部長の違いは「経営側の立場で見ているか」という点があげられます。
人事部門の責任者である人事部長は、現場で何ができるかという視点はもっていますが、経営者の視点から人事戦略を立てるわけではありません。
しかし、企業によってはCHROと人事部長の両方を任せられる場合もあります。
CHROとHRBPとの違いについて
HRBP(Human Resource Business Partner)とは、経営側と人事の視点をもって、経営者や各責任者のサポートをおこなう立場を指します。
HRBPがいることで、人材育成や採用活動などにおいても、経営側の視点をもって人事戦略を立てられるため、企業全体の成長につながります。
CHROは経営側のひとりとして人事戦略を立てる一方、HRBPは経営者と人事部門のパイプ役になるという違いがあります。
CHROとCHOの違いについて
CHO(Chief Human Officer)とは「最高人事責任者」という意味です。
表記に違いはあるものの、CHROと同じ意味合いになるため、どちらを使う形でも問題ありません。
CHROが求められる背景
CHROの重要な役割には、優秀な人材の確保が挙げられます。
近年では労働人口の減少が課題となっており、人材獲得における競合他社との競争がおこなわれています。
たとえ企業に安定したビジネスモデルが構築されていたとしても、事業活動に関わる仕事を担える人材がいないと経営は続けられません。
また、最近では新型コロナウイルスによるリモートワークへの切り替えなど、企業全体で事業体制における柔軟な対応が求められる状況も発生しています。
CHROの経営側の視点をもった人事戦略の実施により、社会や時代に合わせて臨機応変に対応しながら事業活動を進めることができます。
CHROの5つの役割
CHROは具体的に、どのような仕事を担っているのでしょうか。
- 役割(1):人事視点に基づく経営支援
- 役割(2):人事施策の管理
- 役割(3):人材育成
- 役割(4):人事評価に関する制度構築・整備
- 役割(5):企業理念・ビジョンの社内浸透
CHROの主な役割である5つを解説します。
役割(1):人事視点に基づく経営支援
CHROは、今後の経営戦略を踏まえながら、人事と経営の両方の視点をもって経営サポートをおこないます。
たとえば、採用した人材の能力を引き出すためにも、人柄や適性を見た人材配置の実施も仕事の一つです。
ほかにも、仕事量に対して人材が足りていない場合は、従業員の負担を減らせるように、新しい人材を確保して現場を調整します。
人事の視点を踏まえて全体をサポートする役割を担うことで、経営戦略の目標達成を目指します。
役割(2):人事施策の管理
経営側の目標を達成できるように、実行した人事施策がどの程度成果を出せているのかを管理します。
たとえば、実際に新しい従業員を雇用して、配置後に現場でのトラブルがないか、どのくらい生産性が改善されたのかなどをチェックします。
改善案が必要な場合は、CHROが経営陣と相談しながら今後の対応を検討します。
役割(3):人材育成
CHROは、企業全体の目標達成を図るために、現状でどのような人材育成が必要なのかを検討します。
自社の文化を始め、今後の経営を続けるうえで必要な人材を洗い出します。
人材育成の方法を検討したら、各部署の責任者や教育担当者に方針を伝えるなど、社内で連携体制を取って人材育成をおこないます。
役割(4):人事評価に関する制度構築・整備
CHROは、経営戦略につながる人事評価ができているのか、定期的に制度の構築と整備をおこないます。
適切な人事評価は、従業員のモチベーション低下や不満を生み出さない仕組みづくりにつながります。
また、数値化しづらい部分の評価についても、放置せずに適切な評価制度の整備が求められます。
経営陣と現場で認識の差が生まれないように、定期的に人事評価制度の見直しが重要です。
役割(5):企業理念・ビジョンの社内浸透
CHROは、企業理念やビジョンが現場に伝わるように働きかけます。
ただ内容を伝えるだけではなく、従業員が納得感をもちながら行動していけるように浸透させる工夫が必要です。
また、企業理念やビジョンと現場での乖離が起きないように、現状の課題や組織全体の風通しなどについても再検討します。
CHROの立場から現場を観察し、調整することにより、企業文化や風土を浸透させながら、社員が働きやすい職場環境をつくれます。
CHROに求められるスキル・知識・経験
CHROは以下のような、経営や人材労務などに関わる幅広い知識が求められます。
- 経営に関する幅広い理解・知識
- 人事・労務に関わる経験・知識
- 人材マネジメントスキル・経験
- 問題解決スキル
- 戦略立案スキル
CHROに求められるスキルや知識、経験の詳細を見ていきましょう。
経営に関する幅広い理解・知識
経営陣としての役割も担うため、CHROには経営に関する知識が必須です。
目の前の経営だけでなく、現状の社会情勢や今後の経営についても検討できる視点が必要です。
経営に関わるノウハウ以外にも、自社に関わる市場や業界の動向など、先を見据えて戦略を立てる視点も求められます。
ほかの経営陣たちと話し合うためには、日頃からさまざまな情報収集を欠かさない姿勢が重要です。
人事・労務に関わる経験・知識
CHROは最高人事責任者なので、人事・労務に関わる幅広い経験や知識が必要です。
採用業務や人材育成、給与や労務管理など、人事のプロとして何でも対応できる必要があります。
また、労務内容は法改正も多いため、主体的に最新の情報収集をおこなうなど、日々勉強する姿勢が求められます。
人材マネジメントスキル・経験
CHROは、人事部門やほかの部門を含めて、全体の人材マネジメントをおこなうため、人材マネジメントの経験が必要です。
部署ごとにどんな課題があるのか、どのような人材が必要とされるのかなど、全体の仕事内容を含めて総合的な理解が求められます。
他部署での経験があれば、各部署の全体像を把握しやすいので、CHROとして人材マネジメントを進めやすくなります。
問題解決スキル
経営側の視点をもって人事の施策をおこなう際、何かしらの問題にぶつかる場面は少なくありません。
そのため、CHROは問題を放置せずに、その都度問題の根本的な原因を見つめて解決していく姿勢が求められます。
問題の内容によっては、経営陣や従業員と情報共有を進めながら解決できるように調整します。
戦略立案スキル
CHROは経営陣と人事の視点を踏まえながら、主体的に戦略を提案できるスキルが求められます。
特に近年では時代の移り変わりが激しいため、企業が生き残るには未来につながるような戦略の提案が重要です。
ただ意見を伝えるのではなく、企業戦略に基づいた提案が求められるため、CHROには経営者と同じくらいの知見やアイデア力が必要です。
コミュニケーションスキル
CHROは経営者と現場など、事業活動に関わる全体の人々と話す機会が多いため、高いコミュニケーションスキルが求められます。
相手の本音を引き出すような聞き方を始め、状況に合わせた伝え方ができるなど、従業員から信頼されるような人柄を目指しましょう。
CHROには、相手の伝えたい内容をくみ取れる能力が必須といえます。
CHROを育成する方法
経営側の視点をもちながら人事戦略をおこなうCHROですが、そういった業務ができる人材は少ないのが実情です。
自社でCHROを育成するには、以下のような方法が効果的です。
- 企業経営に関わる経験を積ませる
- 人事に関わる実務経験を積ませる
- 組織マネジメント経験を積ませる
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
企業経営に関わる経験を積ませる
企業経営に関わる経験を積むには、実際に経営陣をサポートする立場で働いてもらうといった方法があげられます。
また、各部門で経験を積ませてから、企業経営側にまわってもらう方法もあるでしょう。
人事部門を含めて幅広い経験を積んでもらうと、実際にCHROとして企業経営に関わるときに見えるものが多くなります。
人事に関わる実務経験を積ませる
CHROには人事の幅広いスキルが必須なので、役割を与えて幅広い経験を積んでもらいましょう。
たとえば、人事部門の役職やリーダーのポジションを与えるといった方法があります。
部下の教育や管理する立場にまわることで、一つ上の視点から人事部門の全体を見つめることができます。
少しずつ人事に関わる仕事の幅を広げられるため、本人の能力を高められてCHROに必要なスキルを磨けるでしょう。
組織マネジメント経験を積ませる
管理職の役割を与えるなど、組織マネジメントの経験を積ませる方法もあります。
部下を管理する側になると、経営資源を有効活用しながら、企業全体や部署全体の目標を達成するための能力を身につけられるでしょう。
組織マネジメントを経験することで、目標設定やリーダーシップなど、CHROに重要な幅広いスキルを伸ばすことができます。
CHROの企業における取り組み事例
CHROは、実際に企業でどのような取り組みをおこなっているのでしょうか。
実際の企業における取り組み事例を紹介します。
情報・通信業界の事例
情報・通信業界の事例では、報酬に関わる情報を従業員に公開するなど、CHROがさまざまな取り組みをおこなっています。
ほかにも、自立した組織を目指すために、成果と行動を半分ずつで評価する仕組みを設けました。
成果と行動の両方を重視することで、具体的に何をすべきなのかが明確になり、従業員は仕事に落とし込むときの行動をイメージしやすくなったといいます。
また、副業ができる環境を整えることで、自社のサービス改善につながる視点や意見をもらえるようになりました。
食料品業界の事例
食料品業界の事例では、キャリア登録型採用を導入することで、異業種からも新しい人材の獲得に成功しています。
また、副業を認めることで自社の魅力を高める取り組みにつながりました。
従来の採用方法を変えてグローバル化を図るなど、事業活動の先を見据えた人事戦略をおこなっています。
CHROは経営と人事の視点で戦略を考える役割
CHROは、最高人事責任者として、経営側と人事の両方の視点をもって戦略を立てます。
CHROになるには、経営や人事、人材マネジメントなどに関わる幅広いスキルや経験が必要です。
企業でCHROを育成するには、企業経営や組織マネジメントなどに関わる経験を積んでもらいましょう。
CHROを育成する環境を整えることで、事業活動の未来につながる人材を育成できます。
また、CHROの役割には、社内に企業戦略やビジョンなどを伝える内容も含まれます。
社内に企業戦略やビジョンなどを浸透させるためにも、自社の文化などを気軽に情報発信していける工夫が必要です。
情報発信の方法として、ビジネスチャット「Chatwork」を活用する方法がおすすめです。
グループチャットを使うことで、自社全体や各部署に向けて人事戦略に関わる情報共有も進められます。
各部署の課題や従業員の不満をヒアリングする際にも使えるので、人事戦略の一環として「Chatwork」をご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。