ポピュレーションアプローチとは?健康経営との関係性や具体例を解説

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働き方改革
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ポピュレーションアプローチとは?健康経営との関係性や具体例を解説

目次

ポピュレーションアプローチとは、集団に対して働きかける、健康リスクを下げる取り組みのことです。

企業におけるポピュレーションアプローチとは、従業員全体の健康を向上させるための施策実施を意味します。

この取り組みにより、従業員の健康と幸福度を高め、生産性向上や医療費削減を実現することが可能となり、社会からの企業評価をあげることにもつながります。

ポピュレーションアプローチのメリット・デメリット、取り組み事例を解説します。

ポピュレーションアプローチとは

ポピュレーションアプローチとは、潜在的な健康リスクについて集団に対して働きかけ、健康リスクを下げる取り組みのことです。

ポピュレーションアプローチは、生活習慣や環境の改善、健康教育などによって健康増進を図り、病気の発生を防ぐ「一次予防」の役割があります。

企業におけるポピュレーションアプローチというと、従業員全体の健康増進やリスク低減を目指した施策や取り組みをおこなうことを指します。

ハイリスクアプローチとは

ハイリスクアプローチとは、健康リスクが高い人や病気の初期段階にある人に対しておこなわれる取り組みのことで、二次予防の役割があります。

ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの違いは、ポピュレーションアプローチが集団全体の健康リスクを低くするのに対し、ハイリスクアプローチは健康リスクが高い人の数を減らすことを目的としている点です。

ポピュレーションアプローチが注目を集める理由

経済産業省は、企業に対して従業員の健康管理を経営的な視点で考え、健康投資をおこなうなど戦略的に実践する「健康経営」に取り組むことを推進しています。[※1]

平成26年度から健康経営の顕彰制度である「健康経営銘柄」の選定がおこなわれ、平成28年度からは「健康経営優良法人認定制度」が創設されました。

健康経営優良法人に認定されると、従業員の健康管理に積極的な企業として社会的に評価を受けられるため、ポピュレーションアプローチが現在注目を集めています。

また、働き方改革によって時間外労働の削減や有給休暇の取得推進などの動きが活発になったことも、ポピュレーションアプローチが注目を集める理由のひとつです。

ポピュレーションアプローチのメリット・効果

企業がポピュレーションアプローチに取り組むことで、以下のようなメリットと効果を得られます。

  • 従業員の健康リスクが低減する
  • 生産性向上が期待できる
  • 医療費削減につながる

それぞれについて解説します。

従業員の健康リスクが低減する

ポピュレーションアプローチに取り組むと、従業員の健康意識が高まり、健康リスクが低減するメリットがあります。

また、集団の大多数が健康リスクの低い人になるため、集団全体としての発症者の減少効果も大きいでしょう。

生産性向上が期待できる

従業員の健康リスクが低いと、従業員の心身の調子がよくなるため、生産性向上が期待できます。

健康な心身であれば、ポジティブな活動や考え方ができて、成果を出せたり職場の雰囲気がよくなったりします。

医療費削減につながる

企業がポピュレーションアプローチに取り組むことで、従業員の疾病リスクを下げるほか、医療費の削減にもつながります。

医療費で貯金が減ると、精神的な余裕もなくなる恐れがあるため、ポピュレーションアプローチによって従業員の余計な出費や心の疲弊を防ぐことが可能です。

ポピュレーションアプローチのデメリット・課題

ポピュレーションアプローチには、以下のようなデメリットと課題もあります。

  • 個々への最適化は図れない
  • 健康格差が拡大する可能性がある
  • 初期費用がかかる

ポピュレーションアプローチに取り組む際には、デメリットと課題も把握しておくことが大切です。

個々への最適化は図れない

ポピュレーションアプローチは集団に対して働きかける取り組みのため、個々への最適化は図れません。

一人ひとりに適した施策を実施できないポピュレーションアプローチは、個人への効果が低い点に注意が必要です。

健康格差が拡大する可能性がある

集団のなかには、健康意識が高い人、低い人がおり、健康的な生活を心がけている人は健康リスクが低い一方で、不摂生な生活を送っている人は健康リスクが高いと考えられます。

健康についてさまざまな考えをもつ集団に対して働きかけるポピュレーションアプローチは、不十分な介入で実施すると健康格差が拡大する懸念があります。

初期費用がかかる

ポピュレーションアプローチの取り組みは、施策を実施するための初期費用がかかる場合が多く、社内におけるリソースの確保が欠かせません。

また、ポピュレーションアプローチは、漫然と実施すると費用対効果が低くなってしまう可能性があります。

取り組み自体を経営戦略として掲げ、費用対効果を高められるように意識することが大切です。

ポピュレーションアプローチに取り組む手順

ポピュレーションアプローチへの取り組みは、以下の手順でおこなってみましょう。

  • 手順(1):社内の健康課題を洗い出す
  • 手順(2):具体的な目標を設定する
  • 手順(3):健康課題に優先順位をつける
  • 手順(4):具体的な取り組み方法を決定する
  • 手順(5):取り組みの振り返り・評価をおこなう
  • 手順(6):評価をもとに改善方法を検討する

それぞれの工程について詳細を解説します。

手順(1):社内の健康課題を洗い出す

まずは、社内の健康課題を洗い出します。

健康課題を洗い出す方法として、定期健康診断やストレスチェック、従業員へのヒアリング、就業状況のデータの分析などがあげられます。

定量的に社内状況を確認するほか、他社との比較も課題の明確化に有効です。

手順(2):具体的な目標を設定する

洗い出した課題に対して、具体的な目標を設定します。

たとえば、従業員の年代によって「40代はストレスを感じる人が多い」「20代は健康意識が低い」などの課題があるかもしれません。

課題に応じて数値目標を設定すると、その後の定期健康診断やストレスチェックなどで目標達成したか否かがわかりやすくなります。

手順(3):健康課題に優先順位をつける

目標を設定した健康課題に優先順位をつけます。

優先順位を決める際には、「健康経営への影響の大きさ」「緊急性」「実現可能性」「従業員の関心の高さ」「予算」という要素を考慮し、健康課題ごとに要素を5段階などで評価します。

評価結果から、点数の高い順に課題へ取り組んでいきましょう。

手順(4):具体的な取り組み方法を決定する

次に、具体的な取り組み方法を決定します。

たとえば、ウォーキングイベントの実施や、健康に関する社内広報誌の発行などがあげられます。

健康課題やポピュレーションアプローチの対象集団によって施策は異なるため、課題解決につながる施策を見極めることが大切です。

手順(5):取り組みの振り返り・評価をおこなう

ポピュレーションアプローチへの取り組み後は、振り返りと評価をおこないます。

評価は、目標の達成度、予算や人員などの実施体制、対象者の反応や参加率、取り組みのプロセスなどから判断しましょう。

振り返りや評価がしやすいように、計画段階で評価に用いるデータの収集方法や予算などをあらかじめ決めておくことをおすすめします。

手順(6):評価をもとに改善方法を検討する

評価をもとに、改善方法を検討します。

ポピュレーションアプローチの効果を高めていくには、PDCAサイクルを回すことが重要です。

考案した改善方法を次回のポピュレーションアプローチに取り入れ、従業員の健康リスクの低減を図っていきましょう。

ポピュレーションアプローチの具体的な取り組み

企業におけるポピュレーションアプローチの具体的な取り組みとして、以下があげられます。

  • 働き方の見直し・改善
  • メンタルヘルスケア
  • 食生活や運動習慣改善の声かけ

それぞれを詳しくみていきましょう。

働き方の見直し・改善

長時間労働の常態化や休みづらい職場環境は、従業員の心身の健康を損なう恐れがあります。

そのため、業務効率化できるツールやノー残業デーの導入、有給休暇の取得目標の設定をすると、従業員のストレス軽減につながるでしょう。

また、フレックスタイム制度やリモートワーク制度の導入は、従業員の働きやすさを向上させます。

メンタルヘルスケア

従業員の身体だけでなく、精神面の健康に意識を向けることも大切です。

従業員のメンタルヘルスケアとして、メンタルヘルスに関する研修の実施や、相談窓口の設置をしましょう。

また、従業員へストレスチェックを施すことも、従業員が自分のストレス度合いに気づくきっかけになります。

食生活や運動習慣改善の声かけ

食生活や運動習慣改善の声かけは、始めやすい取り組みとしてあげられます。

たとえば、定期的に社内広報誌やメール、社内SNSなどで情報発信すると、従業員の健康意識を高められる可能性があります。

さらに踏み込んだ取り組みとして、社食にヘルシーメニューを導入したり、運動イベントを実施したり、スポーツジムへの入会金補助などをおこなったりすることも効果的です。

ポピュレーションアプローチの取り組み事例

ポピュレーションアプローチの取り組みを実際におこない、従業員の健康増進だけでなく、生産性の向上や社内コミュニケーションの促進を実現した企業があります。

具体的な事例を2つ紹介します。

疾病日数が4年で500日以上減少した企業

製造業の企業は、若い従業員が病気になり、復職できなかったことで「何かできることがあったのでは」と考えたことをきっかけに、健康に関する社内の取り組みを開始しました。

血圧測定習慣化促進事業を開始して血圧リスクを可視化したほか、ヘルシー弁当の提供や、上司と仕事以外に健康についても相談できるように、面談表の変更もおこないました。

その結果、682日あった疾病日数が4年間で129日にまで減少し、休職人数も0人となって、職場の生産性向上につながりました。[※2]

健康指標を定めインセンティブを付与した企業

専門・技術サービス業の企業は、残業時間が膨大で、メンタル不調となる従業員が多くいることを課題に感じていました。

状況改善のため、「スポーツ施設の利用」「毎日の睡眠時間」「健康セミナーの視聴」などの具体的な健康指標10項目を定め、達成度に応じてインセンティブとしてQUOカードを進呈する制度を実施しました。

また、アンケートを実施し、料理教室イベントなど、従業員の意見を取り入れたイベントを積極的に開催することで、社内コミュニケーションも促進されました。

取り組みの結果、「食事摂取」「有給取得」「禁煙」の3項目で80%以上の従業員が目標達成しました。[※2]

社内コミュニケーションに「Chatwork」

ポピュレーションアプローチに取り組むと、従業員の健康リスクを低減できたり、企業の生産性が向上したりするメリットがあります。

ポピュレーションアプローチの取り組みとして、従業員への健康に関する声かけがあげられるため、従業員全員に一度に情報発信できるビジネスチャット「Chatwork」の活用をおすすめします。

ビジネスチャット「Chatwork」で従業員全員を入れたグループチャットを作成し、健康に関する注意点やポイントを定期的に情報発信すれば、健康へ意識を向けさせることが可能です。

>Chatworkのグループチャットに関する記事はこちら

ファイル添付機能もあるため、健康診断や地域の運動イベントなどのデータを共有することもできます。

>Chatworkのファイル共有機能に関する記事はこちら

従業員の健康意識向上のための社内コミュニケーションに、ビジネスチャット「Chatwork」をぜひご活用ください。

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[※1]出典:健康経営(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
[※2]出典:『健康経営優良法人 2023 中小規模法人部門』(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieeyuryohojin2023_chusyo_jirei.pdf

※本記事は、2024年6月時点の情報をもとに作成しています。


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