忘れられる権利とは?インターネット上の個人情報削除の権利について解説

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忘れられる権利とは?インターネット上の個人情報削除の権利について解説

目次

「忘れられる権利」とは、検索エンジンから特定の個人情報を削除するように、検索エンジンに対して要請する権利のことです。

インターネットが普及し、さまざまな情報が不特定多数の人に見られる現代において、「忘れられる権利」は必要とされています。

本記事では「忘れられる権利」の意味と一般データ保護規則(GDPR)の規定、判断基準や考慮される要素を解説します。

忘れられる権利とは

「忘れられる権利」とは、検索によって得られる個人情報を検索結果から削除するように、検索エンジンに対して要請する権利のことです。

忘れられる権利は、2014年5月にEUで制定された権利の総称で、2018年には一般データ保護規則(GDPR)が採択されました。

忘れられる権利と同様の権利は、ロシアやトルコ、セルビアでも制定されており、インターネット上の情報の扱いに意識を向ける国が増えているといえるでしょう。

一般データ保護規則(GDPR)の規定

「一般データ保護規則(GDPR)」で「忘れられる権利」は、適切な期間を経たあと、不適切、不完全、無関係、過度であるような個人情報がインターネット上に残っている場合、削除や検索結果に表示させないことを要請する、個人の権利のひとつとして規定されています。

「忘れられる権利」は、2010年にスペイン人男性が、1998年に社会保障費を滞納し自宅が競売にかけられたことを報道する記事へのリンクを削除するようにGoogleに請求したことがきっかけとなりました。

この請求により、欧州司法裁判所が2014年5月13日にリンクを外すように判決を下したことで、制定されました。

GDPRとは

GDPRとは、「General Data Protection Regulation」の略語で、「EU一般データ保護規則」を指します。

2018年5月25日に施行されたGDPRは、個人データの収集や処理、取り扱いに関して詳細に定められた、EU域内で適用される法令です。

個人情報保護の観点から、個人に認められている権利が定められており、忘れられる権利も含まれます。

GDPR第17条の規定とは

2016年4月14日に欧州議会本会議で可決されたGDPR第17条には、「消去の権利(忘れられる権利)」として、個人からデータ削除の要請があった場合、遅滞なく削除する要件が規定されています。[※1]

具体的な要件は以下のとおりです。

  • 個人データがすでに必要ない
  • 取り扱いの同意を撤回し、かつ取り扱いに関するほかの法的根拠がない
  • 取り扱いに関して異議を申し立て、かつ取り扱いに関して優先する法的根拠がない
  • 個人データが不正に取り扱われていた
  • 個人データが法的義務遵守のために削除が必要
  • 個人データが情報社会サービスの提供に関して収集されていた

忘れられる権利の必要性とは

忘れられる権利は、インターネットが普及し、さまざまな個人情報が不特定多数の人の目に触れる現代社会では必要不可欠です。

自分や友人の写真、現在いる場所、今日の行動など、一度インターネットやSNS上に流した過去の情報は瞬く間に拡散され、半永久的に残ります。

自分が発信していない情報でも、悪意ある人物によって、人に触れられたくない言動や趣味、習慣などを拡散され、偏見やいじめが起きたり、穏やかだった日常が壊れたりすることもあるでしょう。

気軽に扱いがちなインターネットですが、個人情報が残ることで大きな問題に発展するリスクがあるため、個人の申し出で個人情報を削除できる「忘れられる権利」は、誰にとっても必要な権利といえます。

忘れられる権利を行使できる対象

忘れられる権利を行使できる対象は、個人に関する個人データのみで、企業や法人にはコンテンツを削除する権利はありません。

忘れられる権利は、権利を行使したい個人から直接要請を受けますが、法的に削除する権限を認められている代理人も、個人本人の代わりに要請できます。

忘れられる権利の判断基準・考慮される要素

Googleでは、忘れられる権利の判断基準として、当該情報が公共の利益になるか、公共の利益に役立っているかを審査担当者が吟味し、公共の利益とデータ保護法に基づく当事者の権利を比較検討したり、欧州司法裁判所の判例法などの情報源を参考にしたりして判断します。[※2]

また、以下のような要素も考慮します。

  • 要素(1):当事者の公的な立場
  • 要素(2):情報の入手場所
  • 要素(3):コンテンツの古さ
  • 要素(4):Google ユーザーへの影響
  • 要素(5):真実または虚偽
  • 要素(6):センシティブデータ

それぞれについて解説します。

要素(1):当事者の公的な立場

Googleは、当事者の社会的な地位と当該情報の関連性に注目し、世間一般的なイメージと関連性が低い情報ほど、削除する可能性が高まります。

一方で、当事者の社会的な地位の重要性も重視しており、当事者が公職へ立候補する人物であれば、公職に適しているかを有権者が判断できるように、当事者に関する情報を削除しないかもしれません。

要素(2):情報の入手場所

当該情報が政府関連のサイトにある場合は、政府が当該情報に対して公共の利益があると認識しているとみなし、削除しないでしょう。

ニュースサイトに当該情報が掲載された場合も、ジャーナリストが当該情報を公共の利益になると判断しているとみなすため、Googleはジャーナリストの判断を考慮して、公共の利益になる情報かを判断します。

要素(3):コンテンツの古さ

Googleは、当該情報が最近のものかどうか、すでに古くなっていないかを調査します。

また、当該情報が、情報公開当時の当事者の社会的地位に関係している場合、現在の当事者の立場を確認し、まだ同様の立場にある場合は、削除しない可能性が高いです。

要素(4):Google ユーザーへの影響

Googleは、当該情報をGoogleユーザーが検索した際に、利益を得るかを考慮します。

たとえば、当事者がある分野の専門家だった場合、当該情報が当事者にとってマイナスとなる内容でも、Googleユーザーにとっては「より自分に合った別の専門家を探す」きっかけになるため、利益をもたらすでしょう。

当該情報が刑事事件の有罪判決に関連する場合も、当該情報をGoogleユーザーが知ることで防犯できるなど、利益につながるのであれば、削除が必要かを検討します。

要素(5):真実または虚偽

Googleは、裁判所のように、当該情報の真偽を判断する立場ではないため、当該情報が虚偽の場合は、証拠の提供を求めます。

たとえば、裁判で当事者にとって有利な判決が下されたなどの事実は、重要な証拠となるでしょう。

要素(6):センシティブデータ

Googleは、センシティブなデータとして、個人に関わる健康、性的指向、人種、民族、宗教などの情報を挙げています。

当事者の同意を得ずにセンシティブな情報を含むコンテンツが公開されている場合は、削除される可能性が高いです。

EUにおける忘れられる権利の適用

EUにおける忘れられる権利の適用基準は、GDPR第17条の規定にある、「個人データがすでに必要ない場合」などです。

一方で、忘れられる権利が適用されない要件も定められており、以下のような内容が当てはまります。[※1]

  • 表現および情報の自由の権利の行使に必要な場合
  • 法的義務遵守で必要な場合、または公共の利益や公的権限の行使のための業務遂行に必要な場合
  • 公衆衛生の分野における公共の利益のために必要な場合
  • 公共の利益の目的、科学的・歴史的研究目的、統計目的の達成のために取り扱いが必要な場合
  • 法的主張時の立証、行使、抗弁に必要な場合

データ保護法における留意点

Googleの場合、コンテンツを削除できるのは当事者の名前に関するクエリの検索結果からのみであり、ほかのクエリの検索結果に当該コンテンツが表示される恐れがあります。

また、削除の範囲は、当事者の地域における関連法の適用範囲に基づき、たとえばEU域内でコンテンツを削除したとしても、EU以外の国では削除されません。

そのため、情報の削除を要請しても、完全に削除されるわけではないことに注意が必要です。

ほかの国の検索結果からも情報を削除したい場合は、Googleに要請し、当該国の法律に基づく削除の必要性を説明することが求められます。

日本における「忘られる権利」の現状

現状、日本において、明確な「忘れられる権利」は定められていません。

ただし、個人情報の開示や訂正、利用停止、利用目的の特定や目的外利用の制限は、適用対象を「事業者」として個人情報保護法に定められており、必要に応じて情報の削除や利用停止を求められます。[※3]

現在の日本の法律では、「忘れられる権利」のようにインターネット上の情報をすべて削除したり、個人間の情報の取り扱いを規制したりできないため、今後「忘れられる権利」がさらに注目を集めることで、改正されたり、新制度が作られたりする可能性が考えられます。

インターネット上での情報の取り扱い

インターネット上に情報を流すと、自分が把握できないほど拡散され、不特定多数の人に見られてしまいます。

個人情報はもちろんですが、ビジネスパーソンとして、SNSやインターネットの取り扱いは非常にセンシティブなことを理解することが重要です。

自分では問題ないと思い、軽い気持ちでインターネット上に流したことが重大なコンプライアンス違反となり、自社や取引先の社会的信用や売上の低下を招く恐れもあります。

インターネットに不要な情報を流さない、自社の広報活動の一環として情報を流す場合は、チェックリストを作ったりダブルチェックをしたりすると、トラブル防止につながるでしょう。

ビジネスコミュニケーションに「Chatwork」

「忘れられる権利」とは、検索エンジンから個人情報の削除を要請する権利のことで、さまざまな国が「忘れられる権利」と同様の法律を制定しています。

「忘れられる権利」を行使しなくても済むように、日頃からインターネットの取り扱いに注意し、個人情報を流さないなどの意識が大切です。

企業情報の漏洩も重大なトラブルを招きかねないため、ビジネスパーソンはビジネスのやりとりをする際に、個人用のSNSなどを使わず、ビジネス専用のセキュリティの高いツールを使うことをおすすめします。

ビジネスチャット「Chatwork」は、高度なセキュリティ水準を誇るチャットツールで、大企業や官公庁も導入できるほどの安全性があります。

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[※1]出典:一般財団法人日本情報経済社会推進協会「個人データの取扱いに係る自然人の保護及び当該データの自由な移転に関する欧州議会及び欧州理事会規則(一般データ保護規則)(仮日本語訳)」
https://www.jipdec.or.jp/archives/publications/J0005075.pdf
[※2]出典:Google「忘れられる権利についての概要」
https://support.google.com/legal/answer/10769224?hl=ja#zippy=
[※3]出典:厚生労働省「個人情報の保護に関する法律」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0623-15h.html

※本記事は、2024年7月時点の情報をもとに作成しています。


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