【社労士監修】ハラスメント研修とは?必要性や目的・実施内容について解説
目次
ハラスメント研修は、職場におけるハラスメントを防止するために行われる研修のことです。
この研修は、企業秩序を維持・確保するために、従業員一人ひとりがハラスメントの定義や具体例を正しく理解する目的で行われます。
パワハラ・セクハラ・マタハラなどあらゆるハラスメントが意識されている昨今では、企業にとって重要な取り組みの一つといえるでしょう。
本記事では、ハラスメント研修の必要性や目的・実施内容について詳しく解説します。
ハラスメント研修とは
ハラスメントとは、人に対する「いやがらせ」や「いじめ」などの迷惑行為のことです。
職場で起こりやすい代表的なハラスメントには、パワハラ、セクハラ、マタハラなどがあります。[※1]
ハラスメント研修は、ハラスメントの定義や具体例を学び、その防止と適切な対応方法を習得する研修です。
ハラスメント問題に適切に対処するため、多くの企業で実施されています。
ハラスメント研修の必要性
2020年に労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が改正され、ハラスメント防止が企業に義務付けられました。
ハラスメント研修は、以下のような目的で行われます。
- ハラスメント被害が深刻化しているため
- ハラスメントを未然に防止するため
- ハラスメント防止に効果的なコミュニケーションスキルを身につけるため
- ラスメントと判断される基準を正しく理解するため
ハラスメント研修は、パワハラ防止法の施行によって企業が実施している取り組みを周知するために効果的な方法といえます。
ハラスメント研修の必要性を具体的に解説します。
ハラスメント被害が深刻化しているため
「令和2年度 ハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間のパワハラ、セクハラ、カスハラ(顧客からの迷惑行為)の経験有無・頻度を調査した結果、パワハラが31.4%、カスハラが15.0%、セクハラが10.2%という結果でした。[※2]
また、過去5年間に妊娠・出産した女性従業員の中で、マタハラを受けたと回答した人の割合は、26.3%であったという結果も出ています。
このように、ハラスメントの被害は深刻化しているため、企業は「ハラスメントが起きない組織」をつくる目的で研修を実施しています。
ハラスメントを未然に防止するため
ハラスメントが起これば、被害者の心身に深刻な影響を与えかねません。
精神的なストレスから健康を損ない、場合によっては退職に追い込まれる事態も起こり得ます。
一方で、ハラスメント研修を行えば、従業員一人ひとりがハラスメントの定義や具体例を正しく理解し、自らの言動を改めるきっかけとなり、ハラスメントを未然に防ぐことができます。
また、管理職や人事担当者などが適切な対応方法を学ぶことで、ハラスメント発生時に迅速な是正措置ができるようになり、被害の拡大を最小限に食い止められるでしょう。
ハラスメント防止に効果的なコミュニケーションスキルを身につけるため
ハラスメントは、言葉や態度の不適切さから生じることが多くあります。
相手の立場に立って考えることなく、つい軽口を叩いてしまったり、無神経な発言をしてしまったりすることで、知らず知らずのうちにハラスメント行為に該当してしまう可能性があります。
ハラスメント研修では、具体的なケーススタディなどを通じて、どのような言動がハラスメントに当たるのかを体験的に学ぶことができます。
また、従業員は自身の言動を客観的に振り返る機会が得られ、適切なコミュニケーションの在り方を身につけられるでしょう。
ハラスメントと判断される基準を正しく理解するため
ハラスメントは相手の意に反する言動によって不快感や嫌悪感を与える行為のことです。
研修では、具体的な事例を示しながら、どのような言動がハラスメントに当てはまるかを判断する力が養われます。
またハラスメントは、個人の主観だけでなく、相手からみてハラスメントと受け取られるかどうかの観点も重要です。
研修を通じて多様な視点からハラスメントの基準を正しく理解することが、ハラスメント防止につながります。
ハラスメント研修の内容
ハラスメント対策で最も効果的なのが、研修の実施です。
一般的なハラスメント研修では、以下のような内容を組み込んで実施します。
- ハラスメントの意味
- ハラスメントの予防法・対処法
- ケーススタディ
ハラスメント研修は正社員だけではなく、パート・アルバイトや派遣社員、外国人従業員など、雇用形態や人種問わず行いましょう。
それぞれの内容を詳しく紹介します。
ハラスメントの意味
ハラスメントには、パワハラやセクハラ、マタハラなど、多くの種類があります。
中には従業員本人が気づかずにハラスメントなる言動を行っている可能性もあるでしょう。
そのため、従業員一人ひとりが、これらのハラスメントの定義や具体的な事例を正しく理解することが、ハラスメント防止の第一歩となります。
従業員が自らの言動を振り返り、何がハラスメントに当たるのかを正しく理解する機会をつくりましょう。
ハラスメントの予防法・対処法
従業員がハラスメントの予防法を学べば、職場の安全性を高めることができます。
コミュニケーションやマナーを身につけさせ、ハラスメント行為の未然防止に努めましょう。
また研修では、万が一ハラスメントが起きた場合の対処法も周知することが重要です。
企業は、職場のハラスメント相談窓口や企業の対応方針について周知徹底し、被害の早期発見と拡大防止を図る必要があります。
ケーススタディ
ハラスメントの定義や対処法を学ぶだけでなく、具体的な事例を示せば、より深い理解が得られます。
研修の中で、過去に実際に起きたハラスメント事案などを題材にしたケーススタディをおこない、より具体的なケースでハラスメント行為を認識してもらいましょう。
また、「これはハラスメントに該当するか」「加害者・被害者にどのような責任があるか」「どのように対処すべきか」など、ケースごとにグループディスカッションを行うのも効果的です。
ケーススタディは、さまざまな視点から検討することで、従業員がハラスメントの本質や深刻さをよりリアルに実感できます。
ハラスメント研修の実施方法
ハラスメント研修の主な実施方法は以下の3つです。
- 社内研修
- 専門家による研修
- eラーニング
それぞれの実施方法を詳しく解説します。
社内研修
社内研修は、主に人事部やコンプライアンス部など、管理部門が実施する研修です。
社内の実情に合わせた研修が可能で、受講者にとって身近な話題として理解が深まります。
一方で、社内講師の力量次第で研修の質が左右されるリスクがあるため、専門家による研修と組み合わせながらの実施を検討しましょう。
専門家による研修
専門の講師による研修は、最新の動向や判例を踏まえた内容が盛り込まれているため、より参加者の理解を深められます。
また、専門家は当事者ではない第三者の立場から公平・公正な視点で助言ができるため、企業の実情に捉われず、客観的な指摘を受けられるのがメリットです。
一方で、研修費用が高額になる場合もあるため、企業の事情に応じて、専門家主導の研修と社内研修を適切に使い分けしましょう。
eラーニング
eラーニングのハラスメント研修とは、インターネットを活用してオンラインで受講できる、自己学習型の研修のことです。
インターネットにアクセスできる環境さえあれば、いつでもどこでも自由に学習できるため、従業員が自身の都合に合わせて柔軟に受講できます。
また、教材へのアクセス状況やテストの結果から、受講者一人ひとりの理解度を把握できるため、人事部などの労務担当部門がデータとして分析できるのもメリットです。
一方で、受講が一方的であり、質問への対応が困難な場合もあるため、理解の質を保証することが難しい側面もあります。
ハラスメント研修を実施すべき企業の特徴
「過去にハラスメント問題が発生した企業」や「従業員数が多い企業」は、ハラスメントの発生率が高いため、研修を実施しましょう。
ハラスメントに関する訴訟や問題の前科がある場合は、管理職や従業員のハラスメント認識が不足していると考えられます。
一方、現在ハラスメントが発生していなくても、従業員数が増えれば、コミュニケーションによるトラブルは増加する傾向にあります。
リスクのある企業では、ハラスメント研修を計画的に実施し、全社的な意識向上を図ることが求められます。
研修によりハラスメントを未然に防ぎ、働きやすい職場環境づくりと企業イメージ向上を図りましょう。
ハラスメント対策・社内コンプラ認知には「Chatwork」がおすすめ
ハラスメント研修は、従業員一人ひとりがハラスメントの定義や具体例を正しく理解し、ハラスメントを防止する目的で行われるものです。
ケーススタディやグループディスカッションなどを交えながら研修を実施することでより効果が生まれます。
また、研修の実施方法は、対面の集合研修だけでなく、専門家による研修やeラーニングなど、多様な選択肢があります。
企業の実情に合わせて、最適な方法を選びましょう。
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「Chatwork」は、複数人に対して簡単にメッセージが送れるため、ハラスメント対策の周知や質疑応答がスムーズにできるようになります。
また、「オレンジフォーム」と連携すればアンケート集計もできるため、研修の理解度や感想なども簡単に集計が可能です。
ハラスメント対策や社内コンプラ認知に、ぜひ「Chatwork」をご活用ください。
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[※1]出典:厚生労働省「ハラスメントの定義」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about#sexhara
[※2]出典:厚生労働省「令和2年度厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査主要点」
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/000775797.pdf
記事監修者:北 光太郎
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。