三方よしとは?意味や読み方、語源、使い方、ビジネスでの事例を解説

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三方よしとは?意味や読み方、語源、使い方、ビジネスでの事例を解説

目次

「三方よし」とは、「売り手」「買い手」「世間」の異なる立場の人たち全員が満足している状態を指す言葉です。

「売り手」である企業の利益だけでなく、「買い手」の満足や「世間(社会)」への貢献があってこそ「よい商売」であると考える「三方よし」の考え方は、現代のCSRやSDGsの取り組みにも通じるものがあるとして、昨今注目を集めています。

「三方よし」の意味や語源、実現する方法を企業の事例付きで解説します。

「三方よし」の読み方と意味とは

三方よしとは、「売り手」「買い手」「世間(社会)」の異なる立場である三者の全員が、満足できるように事業活動をおこなう考え方のことです。

三方は、「さんぽう」または「さんぼう」と読みます。

「三方よし」の考え方は、商品やサービスを売る「売り手(企業)」の利益や、商品やサービスを買う「買い手(顧客・取引先)」の満足だけでなく、さらに進んで「世間」や「社会」に対する貢献をも目指しています。

現代において「三方よし」の実現には、どのようなメリットがあるのか、また、どのように実現できるのかを解説します。

「三方よし」が注目される背景

「三方よし」の考え方は、近年、企業の持続的な成長を目指すうえで重要とされているCSRやSDGsの先駆けともいえる考え方として注目を集めています。

CSRは、「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった略語で、「企業の社会的責任」を意味します。

企業の社会的責任とは、従業員や顧客などのステークホルダーからの要求に応じたり、自然環境への配慮や社会貢献をしたりなど、企業が自社の利益だけでなく、自社を取り巻く環境や社会に対しても適切な意思決定をすることです。

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略語で、地球温暖化や貧困格差などの社会課題を解消し、持続可能なより良い社会を目指すための目標です。

環境問題や貧困問題などの社会課題への危機意識が高まっている昨今、社会課題の解消に取り組む企業に投資をする投資家や、SDGsに取り組む企業の製品やサービスを選ぶ顧客が増えています。

つまり、CSRやSDGsへの取り組みは、持続可能な社会を実現することに加え、企業の持続的な成長を目指すうえでも重要な取り組みになっています。

そのため、「売り手」である企業や「買い手」である顧客や取引先だけでなく、「社会」や「世間」に対しても貢献することを重要視する「三方よし」の考えが、改めて注目を集めています。

CSRやSDGsの取り組みについて、より詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご参照ください。

>CSRとは?に関する記事はこちら

>SDGs(持続可能な開発目標)とは?に関する記事はこちら

「三方よし」の起源と近江商人とは

「三方よし」の考え方は、江戸から明治にかけて活躍した「近江商人」の経営理念が起源といわれています。

近江商人とは、現在の滋賀県にあたる近江を出身とする商人を指し、近江を含めた全国各地で商売をしていたとされています。

全国各地で商売を成功させるためには、その土地に住む人に買い手になってもらう必要があり、買い手になってもらうために必要とされたのが、「信用」や「信頼」でした。

信用や信頼を得るためには、売り手としての自分の利益だけでなく、買い手である顧客の利益や満足、また、その土地への感謝が必要であるとして、「三方よし」の考えが生まれたとされています。

「信用」や「信頼」が、ビジネスにおいて重要になるという考え方は、現代においても変わらない思想といえるでしょう。

現代企業に受け継がれる「三方よし」の考え方とは

「三方よし」の三方とは、「売り手」「買い手」「世間(社会)」のことです。

事業活動の成立や企業の持続的成長を目指すうえでは、この「三方」それぞれが「よし」の状態になる必要があるとされています。

では、「売り手」「買い手」「世間(社会)」それぞれの立場における「よし」とは、どのような状態なのでしょうか。

三方それぞれの立場における「よし」の内容や、「三方よし」の考えがなぜビジネスにおいて必要とされるのかを解説します。

「売り手よし」

「三方よし」の最初に位置する「売り手」とは、商品やサービスを提供する企業や事業者を指します。

事業活動を成立させ、企業の持続的な成長を目指すためには、まず「売り手」である企業や事業者が利益を得る必要があります。

企業や事業者が利益を得られなければ、自社で働く従業員に給与を支払ったり、働く環境を整備したりできずに、事業が存続できなくなってしまうためです。

しかし、売り手の利益や満足だけを追い求めてしまうと、買い手や世間には不利益が生じてしまう恐れがあります。

買い手や世間に不利益を生じさせる商品やサービスは、一時的に利益を獲得できても、継続的に利益を獲得できず、衰退していってしまうでしょう。

売り手が持続的に利益を獲得し、持続的な成長を実現するためには、「買い手」と「世間」にとっても、「よし」と思えるような状態をつくる必要があります。

「買い手よし」

「三方よし」の二番目に位置する「買い手」とは、商品やサービスを購入する消費者を指します。

「買い手よし」の状態とは、売り手である企業や事業者の商品やサービスが、買い手である消費者に利益や満足を与えられている状態をいいます。

どのような商品やサービスに利益や満足を感じるかは、消費者によって異なります。

そのため、売り手である企業や事業者は、自社の商品やサービスが、どのような顧客層に利益や満足を与えられるのかなどを調査・分析し、適切にターゲティングを実施する必要があります。

「世間よし」

「三方よし」の三番目に位置する「世間」とは、競合他社などを含めた自社を取り巻く社会全体を指し、「世間よし」とは、売り手と買い手、また、それ以外の第三者や社会や環境などにとっても利益がもたらされている状態をいいます。

たとえば、利益率が高いが手に取りやすい価格の商品が販売されると、売り手と買い手にとっては、満足のいく状態になるでしょう。

しかし、その商品が、地球環境に害をもたらす商品だった場合、一時的な利益を得ることができても、次第に世間や買い手から選ばれなくなり、企業の信頼や信用は失われ、最終的には事業活動が継続できなくなってしまう恐れもあります。

反対に、地球環境に優しい商品や、社会問題の解決につながるサービスを販売した場合、世間や買い手からの評価が向上し、継続的な利益が見込めるようになるでしょう。

また、社会や環境に配慮した事業活動への継続的な取り組みにより企業価値が向上すると、優秀な人材の獲得や、優良な企業との取引も期待できるようになります。

企業が持続的に成長し、継続的に利益を得るためには、「売り手よし」の状態だけでなく、「買い手」「世間」にとっても、利益をもたらす必要があるのです。

「三方よし」以外の近江商人の商売十訓

近江商人は、「三方よし」以外にも商売に関する教訓を掲げていました。

ここで紹介する「商売十訓」は、近江商人の経営理念となっているもので、「三方よし」の考えも含まれています。

現代のビジネスにも応用できる「商売十訓」の内容を紹介します。

                                                                                                                                   
十訓意味
1商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり商売をとおして世間のために奉仕できているならば、その報酬として利益を得るべきである
2店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何商売で大切なのは、規模よりも場所、場所よりも商品の質である
3売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる商品を売った後のフォローを大切にすることで、継続的に顧客を獲得できる
4資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし資金がなくても商売はできるが、信用がないと商売はできない。目先の利益よりも信用が大切にするべきである
5無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ顧客が望まないものを無理に売ろうとせずに、顧客が必要とするものを提供することが大切である
6良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり良い商品を売り、良い商品をたくさんの人に知ってもらうことは、顧客と社会への貢献につながる
7紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ商品に付加価値をつけることで、さらなる顧客の喜びを期待できる
8正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ安易に値下げをするのではなく、商品価値や顧客満足を高める方法を考えることが大切である
9今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ利益を獲得できているかを毎日確認し、把握することが大切である
10商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ好景気や不景気などの外部環境に依存せずに、利益を出し続ける方法を考えることが大切である

「三方よし」を実現する方法・手順

企業の持続的な成長を目指すうえでも重要な「三方よし」は、どのように実現できるのでしょうか。

「三方よし」を実現する方法を4つの手順にわけて紹介します。

  • ステップ(1):企業理念・課題を明確にする
  • ステップ(2):ターゲットを明確にする
  • ステップ(3):ターゲットの悩みや課題を分析する
  • ステップ(4):悩みを解決する商品開発をおこなう

「三方よし」の実現を目指す企業の方は、ぜひ参考にしてください。

ステップ(1):企業理念・課題を明確にする

「買い手」や「世間」に満足を感じてもらうためには、まず、自社の商品やサービスが、どのような利益や価値を提供できるのかを知る必要があります。

自社の強みや弱みの把握や、市場や競合他社の調査分析、顧客分析などを実施することで、自社にしかない強みや、競合他社と比較した際の弱みや課題を明確にできます。

また、自社の商品やサービスを提供する際に、どのような価値観や考え方をもって事業活動をおこなっているかなどの企業理念やMVVを明確にすることも大切です。

企業の価値観や考え方を明確することで、「買い手」や「世間」に自社のスタンスやブランディングを示すだけでなく、従業員に対しても事業の方向性を明示できるようになります。

自社の価値観や考え方を従業員に明確に示すことで、商品やサービスの品質改善を一貫した方向性で実施できるでしょう。

>MVVの意味と浸透させる方法に関する記事はこちら

ステップ(2):ターゲットを明確にする

次に、自社の商品やサービスが、どのような「買い手」に価値や満足などの利益を提供できるのかを明らかにする必要があります。

年齢や性別、居住地や職業などの顧客の特性によって、価値や満足を感じる商品・サービスは異なります。

そのため、ターゲットを明確にせずに事業活動を進めてしまうと、自社の商品を必要としない人にマーケティングを実施してしまったり、自社の商品に価値を感じる人に届かなかったりする恐れがあります。

売り手・買い手・世間の三方に利益をもたらすためには、自社の商品やサービスに価値を感じる人を特定する取り組みが大切です。

ステップ(3):ターゲットの悩みや課題を分析する

ターゲットを特定できたら、次にそのターゲットの悩みや課題を深掘りしていきましょう。

ターゲットとなる顧客を分析する際は、4C分析などのフレームワークの活用により効率的に進めることができます。

4C分析は、「顧客価値」「顧客コスト」「顧客の利便性」「顧客とのコミュニケーション」の4つの顧客視点から、マーケティング戦略を考えるフレームワークです。

顧客視点で物事を考えることで、顧客がどのようなものに価値や利益を感じるのかを深掘りできるでしょう。

ステップ(4):悩みを解決する商品開発をおこなう

ターゲットの悩みや課題を把握できたら、その悩みや課題を解決する商品やサービスを開発しましょう。

商品やサービスに対する満足度が高ければ、リピーターになってもらえる可能性も高まり、継続的な利益創出を期待できます。

商品開発を実施する際は、「売り手」だけの利益追求になっていないか、「買い手」ファーストになりすぎて利益が失われていないか、「世間」に貢献できる内容になっているかなど、三方へ意識を向ける姿勢が大切です。

「三方よし」を経営に取り入れた企業の事例

最後に、「三方よし」の考えを経営に取り入れている企業の事例を紹介します。

「三方よし」の考えを経営に取り入れたい企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。

総合商社の事例

創業者が近江商人である総合商社大手のある企業は、「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という「三方よし」の考え方を、現在も経営理念の根幹に据えています。

この企業は、「大店を持たず商いを自らの足で開拓していた」近江商人のDNAを企業の強みとしており、時代とともに移り変わる顧客や社会のニーズを汲み取り、柔軟に対応していく姿勢を重要視しています。[※1][※2]

百貨店の事例

大阪に本社をおく老舗百貨店は、「三方よし」の考え方を経営理念に取り入れ、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」社会の実現や、CSR経営を推進しています。

たとえば、地球環境へ配慮した事業活動や、持続可能な商品・サービスの提供をはじめ、多様な人材が働きやすい職場環境の整備やキャリアサポートなどを経営の重点課題に据えて、ステークホルダーへの社会的責任を果たしています。

「売り手」としての自社の利益だけでなく、「買い手」である顧客への価値提供、「社会」への貢献を目指している事例といえるでしょう。[※3]

情報共有を円滑に進めるなら「Chatwork」

企業が持続的に利益を獲得するためには、「買い手」「売り手」「世間」の三方すべてが満足できる状態を目指す取り組みが大切です。

顧客の悩みに寄り添った商品の開発や、社会課題の解決につながるサービスの提供によって、長く愛される企業として成長できるでしょう。

「三方よし」の実現を目指す企業や、経営に取り入れたい企業の方は、本記事内で紹介した三方よしを実現する方法をぜひ参考にしてみてください。

実現方法のステップとして紹介した「企業理念の浸透」や「ターゲット分析」の実施をサポートするツールとして、ビジネスチャットが活用できます。

ビジネスチャットは、チャット形式でスムーズなやりとりができるビジネス専用のコミュニケーションツールで、社内外問わずに、複数人で同時にやりとりができます。

たとえば、企業理念の浸透を目指すために、経営層から従業員に向けてメッセージを発信したり、ターゲット分析をするために、セールスの担当者とマーケティングの担当者で簡単に情報共有を実施したりできます。

ビジネスチャット「Chatwork」は、チャット機能に加えて、音声やビデオでコミュニケーションが取れる機能や、高いセキュリティ水準を保ったままファイルを送受信できる機能が搭載されているため、簡単に、そして安全に情報のやりとりを実現できます。

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[※1]出典:伊藤忠商事株式会社「近江商人と三方よし」
https://www.itochu.co.jp/ja/about/history/oumi.html
[※2]出典:伊藤忠商事株式会社「個人投資家の皆様へ」
https://www.itochu.co.jp/ja/ir/investor/index.html
[※3]出典:高島屋「高島屋グループのESG経営」
https://www.takashimaya.co.jp/corp/csr/sdgs/

※本記事は、2024年9月時点の情報をもとに作成しています。


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