HACCP(ハサップ)とは?義務化や7原則、認証・資格について解説
目次
HACCP(ハサップ)は、すべての食品等事業者に義務づけられた、衛生管理の手法のことです。
違反すると罰則があるわけですが、HACCPの意味やとりくむべき内容について、知らない人も多いかもしれません。
人体への健康被害を防ぐHACCPについて、意味や導入方法、認証や資格取得について解説します。
HACCP(ハサップ)とは?
HACCP(ハサップ)とは、2021年6月1日より厚生労働省より義務づけられた、すべての食品等事業者がとりくむべき衛生管理の手法のことです。
HACCPは、HA(危害要因分析)と CCP(重要管理点)で成り立っており、製品への食中毒菌や異物の混入などの危険要因を管理し、原材料の仕入れから製品出荷までの工程内で重要管理点を定めて、安全性を確保することが目的とされています。
HACCPは、国際的に認められている手法で、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同機関「食品規格(コーデックス)委員会」から発表されています。
危害要因分析(Hazard・Analysis)
HACCPは、5つの単語の頭文字をとった略語です。
先頭の2つの単語は「Hazard(危害)」と「Analysis(分析)」の頭文字をとっており、「危害要因分析」を意味します。
「危害要因分析」とは、食中毒を引き起こす細菌や微生物、人体に影響をおよぼす有害物質や金属などの異物混入によって、人体へ危害がおよばないために、危害要因となるものを把握、管理します。
重要管理点(Critical・Control・Point)
HACCPのCCPは、「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の頭文字をとっており、「重要管理点」を意味します。
「重要管理点」とは、危害要因分析で把握した危害要因を、人体へ影響がおよばないまでに減少、除去するために、重要な工程を定め管理することを指します。
HACCP(ハサップ)の必要性・目的
厚生労働省の発表によると、食中毒の約50%が飲食店で発生しているため、より安全な食品の販売や生産が求められています。[※1]
外国ではすでにHACCPの制度化が進行しているため、日本の食品も安全性を高めるためにも、HACCPが義務化されました。
HACCPの導入により、日本の製品の安全性が向上・確保されるだけでなく、衛生管理記録を残すことで、従業員の誰もが、記録を見て安全な製品を製造できるようになったり、衛生的でない製品のロス率が減ったりなどのメリットがあります。[※2]
HACCP(ハサップ)と従来の検査の違い
従来の検査方法は、製品出荷前の抜き取り検査が主でした。
しかし、すべての製品を検査するわけではないため、異物混入した製品が見逃されてしまった場合、そのまま出荷され、人体へ危害がおよぶ恐れがあります。
一方、HACCPは、原料の仕入れから出荷までのすべての工程で危害要因を管理したり、重要管理点で危害要因の除去をはかったりするため、危害をおよぼす恐れのある製品の出荷を防げる可能性が高くなります。
また、管理記録をとるため、問題発生時には、危害要因がある工程の把握をしやすいです。
HACCP(ハサップ)義務化
HACCPが義務化される事業者や、義務化により必要な対応について解説します。[※3]
義務化に関する法律「食品衛生法」
「食品衛生法」とは、食べ物や飲み物などの食品による、人体への健康被害を発生させないために定められた法律です。
HACCP以外にも、食中毒対策について、営業届について、輸出入食品についてなど、食に関する定めが幅広く記載されています。
義務化の対象となる事業者
HACCPの義務化の対象となる事業者は、原則「すべての食品等事業者」です。
具体的には、「大規模事業者」「と畜場」「食鳥処理場」「学校や病院等の集団給食施設」「農業、水産業の採取業」が対象となります。
「パン製造業」「コーヒーの量り売り」などの小規模な営業所等は、HACCPが義務化されていませんが、HACCPを意識した衛生管理が求められています。
義務化により必要になる対応
HACCPが義務化された事業者は、「HACCPに沿った衛生管理」と「一般的な衛生管理」を基準とした衛生管理計画を作成し、従業員に徹底させることが必要です。
また、衛生管理を記録し、管理方法を適宜振り返り、必要に応じて改善を施します。
従業員が衛生管理方法を把握しやすいように、洗浄や消毒方法など、衛生を保つ方法を手順書として作成するのも、必要に応じて求められます。
罰則について
HACCPの義務化の対象となったことで、違反した場合には罰則の対象にはなるため注意が必要です。
衛生管理に関して改善すべき点がある場合は、口頭や書面で指導されます。
しかし、改善されない場合、営業禁止や停止等の行政処分となり、行政処分に従わなかった場合には、懲役刑、罰金刑となる恐れがあります。
HACCP(ハサップ)の7原則12手順
「食品規格(コーデックス)委員会」が定めている、HACCPの7原則12手順について解説します。
手順1:HACCPのチーム編成
事業者内でHACCPにとりくむために、チームを編成します。
製品に関するすべての情報を集めるために、仕入担当や製造担当など、すべての担当者をチームに含めます。
手順2:製品説明書の作成
原材料、アレルギー物質、賞味期限、製品の特性などが記載された、製品に関する説明書を作成します。
手順3:意図する用途及び対象となる消費者の確認
製品を飲食する対象者や、飲食の方法について記載します。
身体が強くない人が飲食する製品の場合、より衛生面に注意する必要があります。
手順4:製造工程一覧図の作成
危害要因を分析するために、仕入から出荷までのすべての製造工程を一覧にまとめます。
各工程においてかかる時間や、原材料の分量、加熱温度も記載するとわかりやすいでしょう。
手順5:製造工程一覧図の現場確認
製造工程一覧図に記載された工程に相違がないか、実際に現場を見て確認します。
製造工程が見られるように、製造中の現場の確認が望ましいです。
手順6 (原則1):危害要因分析の実施
製品製造にあたり、原材料や工程内で、食中毒菌の発生や有害物質、異物の混入などの危害要因が発生する恐れがないか、分析します。
手順7 (原則2):重要管理点の決定
工程内で、食中毒菌を増やしたり、製品につけたりしない、衛生を確保するための重要管理点を決定します。
手順8 (原則3):管理基準の設定
重要管理点で管理する、製造時間や温度などの基準値を設定します。
管理基準となるため、基準を満たさない場合、衛生管理がされていない製品として安全性に疑問が生じてしまいます。
手順9 (原則4):重要管理点のモニタリング
重要管理点で設定した管理基準を満たしているか、重要管理点のモニタリングを常時おこないます。
時計や温度計などを活用し、モニタリングで確認した計測値は記録しておきましょう。
手順10(原則5):改善措置の設定
管理基準が満たされなかった場合に、対処するための改善措置を設定します。
たとえば、管理基準を満たさなかった製品を製造工程から除去し、安全性が保たれないため廃棄後、管理基準を満たせなかった原因分析をおこない、改善して製造を再開する、のような改善措置をおこないましょう。
手順11 (原則6):検証方法の設定
作成、設定した製造工程一覧図や重要管理点などに沿って問題なく製造できているか、修正すべき点がないかを検証するための検証方法を設定します。
管理基準や製品検査などの検証担当者、検証頻度などを設定し、定期的な検証を実施しましょう。
手順12 (原則7):記録と保存方法の設定
HACCPは記録をつけ、保存しておくことが重要なため、記録と保存方法を設定します。
記録・保存をしておくことで、問題発生時に工程を見直し、原因を特定できたり、HACCPを実施している証拠となったりします。
HACCP(ハサップ)の認証・資格
HACCPは、HACCPの知識保有者として認証を受けたり、資格を取得できたりします。
HACCPの認証や資格について解説します。
HACCP(ハサップ)の認証の種類
HACCPの認証は、地方自治体による「地域HACCP」、厚生労働省の「総合衛生管理製造過程」、業界ごとの「業界団体認証」、そのほか、民間機関によるHACCP認証があります。
事業者の規模や製品の内容によって、適した認証を検討しましょう。
HACCP(ハサップ)の資格の種類
HACCPの資格は、日本HACCPトレーニングセンターの「HACCPコーディネーター」、一般社団法人日本要員認証協会の「HACCPリーダー」、一般社団法人日本食品保蔵科学会の「HACCP管理者資格」、公益社団法人日本食品衛生協会の「HACCP普及指導員」があります。
講習を受けて取得できる資格もありますが、「HACCPリーダー」は受験資格に「有効な食品安全活動実績」が必要です。
HACCP(ハサップ)の認証や資格を得るメリット
HACCPの認証を受けたり資格を取得したりすることで、HACCPに関する知識を有することになるため、正しい知識、手順でHACCPにとりくめます。
正しいHACCPを実施できることで、製品の安全性を高められるため、食中毒などの、人体への健康被害を防ぐことにつながるでしょう。
HACCPのとりくみにChatworkを活用しよう
HACCPは、食中毒などの人体への健康被害を防ぐことを目的として導入されたため、対象事業者は真摯にとりくむ必要があります。
HACCPへの正しいとりくみは、従業員全員の意識や対応が必要なため、人材育成やコミュニケーションを綿密におこなえるビジネスチャット「Chatwork」をご活用ください。
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また、タスク管理機能もあるため、検証作業や管理基準の記録など、やるべき作業をタスク化しておくことで、作業忘れを防げるでしょう。
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