HPIとは?人材開発で活用する方法やメリット、ODとの違いを解説
目次
HPIとは
HPIとは、「Human Performance Improvement(ヒューマンパフォーマンスインプルーブメント)」の略語で、企業が目指すゴールに対し、期待する人材のパフォーマンスと現状のパフォーマンスのギャップの原因を分析・改善する人材開発の方法です。
HPIを推奨している非営利団体ASTD(米国人材開発機構)は、以下のように定義づけています。[注1]
人材のあるべき姿と現状の姿とのギャップを発見、分析し、ギャップを埋める効率的、倫理的な介入策を提案、実行して成果や業績を測定するシステム的な方法ATD
ODとの違い
ODとは、「Organization Development」の略語で、「組織開発」を意味します。
ODの目的は、組織に所属する人材が組織をよりよくしていくためにとりくみ、健全性や効果性を高めていくことです。
HPIは、人材から組織の課題を分析するのに対し、ODは上司と部下の関係、チーム内、チーム間の関係など、人間関係や人と人との相互作用から組織の課題を分析します。
人材開発でHPIが注目されている背景
人材開発でHPIが注目されている背景を解説します。
明確な目的なく研修を実施している
ビジネスマナー研修、マネジメント研修など、人材開発・育成に関する研修は多くありますが、明確な目的がないまま実施している場合、社員にスキルが身につかない恐れがあります。
研修をおこなっても活かせる場や機会がなければ成果は生まれず、スキルも身につかないため、研修をおこなうことを目的にするのではなく、人材に着目したHPIに注目が集まっています。
現場が新しいことを受け入れない
社員が研修で新たな知識を得たとしても、現場とのやり方にギャップや認識のずれがあった場合、知識やスキルを十分に活かしきれない可能性があります。
現場が新しいやり方や知識を受け入れる体制が整っていないと、企業の成長は難しいため、チームや部署内だけでなく、企業全体のパフォーマンスを向上させ、目標を達成するHPIが注目されています。
HPIのメリット
人材開発の一種であるHPIは、取り組むことでどのようなメリットを期待することができるのでしょうか。
HPIに取り組むメリットを2つ紹介します。
- 社内の人材開発の見直しにつながる
- 自社に必要な人材開発の方法がわかる
詳しく確認していきましょう。
社内の人材開発を見直すことができる
企業は、社内制度や組織構造、業務プロセスなどさまざまな要素で成り立っていますが、意思決定し、実行するのは「人」です。
企業の在り方が人によって左右されてしまうため、人材から課題分析、改善を図るHPIにとりくむことで、社内の人材開発・育成について見直すことができるため、人材のパフォーマンス向上につながりやすくなります。
自社に必要な人材開発の方法がわかる
社員に目的もなく研修を受けさせたり、必要性のない研修を実施したりしている企業もあるかもしれません。
HPIにとりくむことで、人材に足りない知識やスキルの要素を把握できます。
人材を軸にした研修を実施できることから、適切な人材開発・育成をおこなえるでしょう。
HPIにおける4つの原理
HPIは、4つの基本原理があります。
- 結果重視を基本に解決策を考える
- 組織・事象・業務環境の全体をシステムと捉える
- 科学的な理論と費用対効果のある幅広い手段を講じる
- 顧客や対象となる現場との信頼関係を築く
効果的にHPIに取り組むためにも、確認していきましょう。
結果重視を基本に解決策を考える
HPIにとりくむには、まず企業が目指すべき姿・ゴールを決めます。
定めたゴールを重視し、現状と照らし合わせることで、結果を出すためにおこなうべき人材育成の方法を把握できるでしょう。
組織・事象・業務環境の全体をシステムと捉える
組織や事象、業務環境を個別に考えず、全体をシステムとして捉えます。
組織や業務環境の改善は、人材のパフォーマンスを存分に発揮させるために必須です。
業務のプロセスや承認フロー、情報共有、評価制度など、全てのシステムに目を向け課題の分析、改善をおこないます。
科学的な理論と費用対効果のある幅広い手段を講じる
HPIを理解できていても、現状とゴールのギャップの原因を把握できなければ、改善することは難しいです。
たとえば、原因の分析に活用できる「ホワイツリー」というフレームワークを活用したり、人事管理の観点からギャップの改善をはかったりと、科学的な理論と費用対効果のあるさまざまな手段を講じることが大切です。
顧客や対象となる現場との信頼関係を築く
顧客や対象となる現場の連携ができていない場合、課題原因が見つけられなかったり、周りの協力が得られず、講じる改善策の選択肢が少なくなったりする恐れがあります。
そのため、関わる全員にHPIの重要性を理解してもらい、顧客や現場と信頼関係を築くことが大切です。
HPIの流れ・プロセス
HPIに取り組む際のプロセスを7つのステップに分けて解説します。
- ステップ(1):ビジネスの分析
- ステップ(2):パフォーマンスの分析
- ステップ(3):原因の分析
- ステップ(4):手法の選択
- ステップ(5):手法の実施
- ステップ(6):結果や成果を評価
- ステップ(7):現状の把握
取り組む際の参考にしてみてください。
ステップ(1):ビジネスの分析
まずは、HPIで達成したい企業のゴールと現状の差を把握する必要があります。
分析する際には、ビジネスのあるべき姿、ビジネスの現状、あるべき姿と現状の差を埋める方向性のそれぞれを明確にします。
ステップ(2):パフォーマンスの分析
パフォ―マンスを分析する際には、パフォーマンスのあるべき姿と現状のパフォーマンスの姿をそれぞれ明確にします。
たとえば、営業職の場合、ビジネスにおける現状が売上5億円、あるべき姿が7億円だったとします。
パフォーマンスのあるべき姿が営業に回る時間が多くあることで、現状では営業に回れる時間が少なかった場合、あるべき姿と現状にギャップが生じていることがわかります。
ステップ(3):原因の分析
パフォーマンスのギャップが生じる原因を分析します。
ギャップが生じる原因には、スキル不足、人員や資源などのリソース不足、モチベーションの低下などがあります。
たとえば、営業に回れる時間のギャップの原因が、営業以外に事務作業もおこなっていることだった場合は、人員のリソース不足が考えられます。
一方で、人員のリソース不足から人件費不足も考えられるため、原因の表面のみを見るのではなく、深掘りすることが重要です。
ステップ(4): 手法の選択
ギャップを埋めるために、とるべき手法を選択します。
たとえば、営業成績の悪さが社員のスキル不足の場合は、商品の知識をさらに身につけてもらったり、コミュニケーション能力を高めたりなどの研修が必要かもしれません。
人員のリソース不足の場合は、新たな人材を雇用するなど、組織としての対応が必要になるでしょう。
ステップ(5):手法の実施
選択した手法を実施していきます。
実施する際には、ビジネスのゴール指標であるKGIと、ゴール達成のための指標であるKPIを設定しましょう。
たとえば、KGIが「売上7億円」、KPIが「1日2件成約」のような設定です。
KPIを測定しながら、パフォーマンスのあるべき姿になれるように手法を実施していったり、現場と連携したりしましょう。
ステップ(6):結果や成果を評価
手法の実施後には、結果や成果を評価します。
評価の方法は、手法に対する満足度や理解度、行動に変わりがあったかなどを測定する短期的評価と、KGI・KPIへの影響や手法の浸透度、とりくみ具合などを測定する中期的評価があります。
ステップ(7):現状の把握
手法の実施後の現状を把握します。
企業が定めたゴールを達成できたかを確認し、現状との差がまだある場合は、原因分析、手法の選択、実施などのHPIのプロセスを繰り返します。
HPIのプロセスを繰り返すことで、人材のギャップが埋まり、少しずつ企業のゴールへと近づいていくでしょう。
人材開発にHPIを活用しよう
HPIは、人材のあるべき姿と現状のギャップから原因を探り、改善する人材開発の方法です。
HPIにとりくむことで、社内の人材育成の方法を見直せたり、適切な人材育成ができたりして、人材のパフォーマンスを向上させることにつながります。
HPIのプロセスを繰り返すことで、企業のゴール達成を目指せるため、人材開発・育成にHPIを活用するといいでしょう。
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[注1]参考:ATD MEMBER NETWORK JAPAN
https://www.atdj.jp/
※本記事は、2022年12月時点の情報をもとに作成しています。