セクショナリズムの原因とは?弊害や解決策をわかりやすく解説
目次
セクショナリズムとは、利益や権利を確保するために部署や立場に固執してしまい、他部署などを排除してしまう状態のことです。
組織内で縄張り争いや縦割り意識があると、うまく連携がとれず、業務効率や生産性が下がってしまう危険性があります。
働きやすい職場を目指すために、セクショナリズムの原因や弊害、解決策を、事例を交えつつ確認していきましょう。
セクショナリズムとは
「セクショナリズム」とは、組織内の部署や立場に固執して、外部を排除してしまう状態のことです。
英語の「sectionalism」から生じた言葉で、「縦割り主義」や「縄張り主義」と訳されます。
たとえば、「営業が契約した案件が短納期で、エンジニアから反発が起きてしまう」「商品開発部が開発した新商品の商品力が低いから、営業がうまくいかない」などといった状況が、職場内のセクショナリズムの例としてあげられます。
部署間での協力的な姿勢がないと、責任の押しつけ合いや縄張り争いが起きてしまい、部署間での連携がうまく行かず、業務効率化の妨げとなってしまうでしょう。
また、部署間連携がスムーズにいかないと、組織全体の足並みをあわせて利益を拡大していくことも難しくなってしまいます。
セクショナリズムは、管理担当者を悩ませる課題のひとつといえます。
セクショナリズムの原因
セクショナリズムは、どのようなことが原因で発生するのでしょうか。
セクショナリズムが起こる原因として、以下の3つの原因があげられます。
- 仲間意識・縄張り意識
- 評価制度の影響
- 人事異動が少ない
原因をひとつずつ解説します。
仲間意識・縄張り意識
部署内で結束を高めてプロジェクトを進めていくことは、仕事をするうえで重要なことです。
しかし部署内で仕事が完結するようになってしまうと、他部署に対して関心がなくなり、視野も狭くなってしまいやすいでしょう。
また、部署内での仲間意識や縄張り意識が高くなりすぎると、他部署への敵対心をもってしまったり、足を引っ張ろうとしてしまったりと、組織に悪影響を及ぼす危険性もあります。
仲間意識や縄張り意識が高すぎる場合は、セクショナリズムが発生しないように、注意が必要です。
評価制度の影響
評価制度によっては、組織内での競争を煽ってしまい、セクショナリズムの発生につながる恐れがあります。
たとえば営業の場合は、個人の売上だけではなく、部署の達成率も評価の対象となることもあるため、他部署をライバル視したり、競争心が生まれたりすることもあるでしょう。
また、部署内の従業員を比較して人事評価する相対評価を採用している企業であれば、自己評価を高めるために部署内で顧客の取り合いをしたり、ノウハウを共有しなかったりなど、足の引っ張り合いが発生しかねません。
人事異動が少ない
人事異動が少ないと、従業員の視野が狭くなり、セクショナリズムを引き起こす原因となります。
他部署の仕事内容を知ったり、自部署以外の従業員と交流したりする機会がないと、会社全体の利益拡大を考えずに、自部署や自己の利益にとらわれてしまうでしょう。
人事異動を増やし、他部署の仕事に対して理解が深まれば、協調性を高めることにつながります。
セクショナリズムの種類
セクショナリズムは、大別すると2つの種類があります。
- 無関心型・非協力型セクショナリズム
- 批判型・排他型セクショナリズム
2種類のセクショナリズムについて、詳しく確認していきましょう。
無関心型・非協力型セクショナリズム
「無関心型・非協力型セクショナリズム」とは、他部署に興味や関心がなく、協力的な姿勢がない状態のセクショナリズムです。
所属する部署の仕事に集中するあまり、他部署での業務や取り組みを知る必要がないと考える傾向があり、連携しようという意識そのものがありません。
また、自部署に固執しているため、他部署に助けを求められても、非協力的な態度を取りがちです。
無関心型・非協力型は、組織に大きな悪影響を与えませんが、部署をまたいだプロジェクトやトラブルが起きたときなどに、連携が取りづらく、スムーズに対応できない可能性があります。
批判型・排他型セクショナリズム
「批判型・排他型セクショナリズム」は、他部署に対して不満や敵対心をもっていて、批判して攻撃したり、排除したりする行動をおこすセクショナリズムです。
他部署に対して、「必要がない」「役に立たない」といったネガティブな印象をもっているため、部署間で衝突が起き、お互いに敵対してしまうといったトラブルが起きかねません。
組織内に大きな軋轢が生まれてしまう恐れがあるため、迅速な対応が必要です。
セクショナリズムが引き起こす弊害
セクショナリズムが引き起こす弊害としては、以下の4つがあげられます。
- 組織内に対立が生まれる
- 同調圧力が生じる
- メンタルヘルスが悪化する
- 生産性が低下する
セクショナリズムが引き起こす弊害を解説します。
組織内に対立が生まれる
セクショナリズムの発生によって、組織内に対立が生まれてしまう弊害があります。
自部署や自己の利益を優先しすぎてしまうと、他部署に共有すべき情報やノウハウなどを内部にとどめてしまうので、企業の成長を阻害してしまう原因となりかねません。
部署同士で敵対視するようになれば、コミュニケーションがうまく取れず、仕事の進捗に悪影響が出てしまうなど、売上損失につながる恐れもあります。
同調圧力が生じる
セクショナリズムによって部署内での仲間意識が強くなれば、意見があわない従業員へのあたりが強くなり、他部署からのアドバイスに耳を貸さないといった状況に陥りやすくなります。
組織内で同調圧力が生じてしまうと、自由な発言ができなくなり、一部の従業員の意見ばかりが採用されてしまうでしょう。
新たなアイデアを取り入れにくい環境となってしまうため、組織の成長にもつながりません。
メンタルヘルスが悪化する
部署同士が敵対心をもち、いがみ合うようになると、組織の雰囲気が悪くなります。
労働環境が悪化すると、従業員の精神的な負担が増え、労働意欲が低下する要因となるでしょう。
メンタルヘルスの悪化が深刻な状況になれば、モチベーション低下や離職者の増加の原因となってしまいます。
生産性が低下する
部署や自己の利益を上げるために、情報共有を怠ってしまうと、属人化が進んでしまい、部署内外との連携が取りづらくなってしまいます。
たとえば、部署ごとに使用するツールにばらつきがあると、権限管理などの手間が増えてしまうものです。
また、協調性がないことが原因で、業務の効率化が妨げられると、結果として組織の生産性も低下してしまいます。
組織内で方向性をあわせて仕事に取り組めないと、顧客からの信頼低下や失注にもつながりかねません。
セクショナリズムの対策方法
組織内でセクショナリズムが発生してしまうと、部署の対立や生産性低下につながり、企業にとって大きな損失となる恐れがあります。
セクショナリズムを防ぐためには、どのように対策すればよいのでしょうか。
対策方法の例を4つ紹介します。
- 横のつながりをつくる
- 組織体制を変革させる
- ジョブローテーションの機会を増やす
- 評価制度を見直す
自社にあった方法で、セクショナリズムの対策を目指しましょう。
横のつながりをつくる
部署や上下関係にとらわれない横のつながりを強化することは、セクショナリズムの発生を防ぐひとつです。
横のつながりを強化する方法としては、従業員同士が交流できるカフェスペースの導入や、社内SNSの運用などがあげられます。
他部署との交流を深めることで、縄張り意識や敵対心が薄れることが期待できるでしょう。
組織体制を変革させる
部署内で仲間意識が強く、他部署を受け入れないような場合は、思い切って組織体制の変更を検討するとよいでしょう。
たとえば、営業やエンジニア、企画など、さまざまな部署から人材を集めてチームを作り、プロジェクトを立ち上げます。
部署の垣根をこえて仕事をすることで、他部署に対して理解が深まり、視野が広がるきっかけにすることができるでしょう。
ジョブローテーションの機会を増やす
他部署との関わりがないと、所属する部署に固執しやすくなります。
同じ部署で仕事をしていくことは、専門的なスキルや知識を取得しやすくなりますが、視野が狭まり、部署や自己の利益のみを考えるようになりかねません。
ジョブローテーションの機会を増やすことで、組織全体の動きが見えるようになり、企業の利益向上につながる意識を自然ともちやすくなるでしょう。
>ジョブローテーションを効果的におこなう方法に関する記事はこちら
評価制度を見直す
従業員を比較し、ランクづけで評価する相対評価は、部署間や従業員同士の競争を煽ってしまう傾向があります。
個人の能力や成績で判断する絶対評価であれば、比較対象がいないため、不要な対立を避けることができるでしょう。
また、組織全体の営業戦略に貢献したり、他部署と積極的にコミュニケーションを取ったりするなど、セクショナリズムの対策に直結する動きを評価項目として取り入れることも効果的です。
セクショナリズム解決の注意点
セクショナリズムの解決に向けて、体制変更や評価制度の見直しなどをおこなうことは重要ですが、解決のために実施した内容が組織になじまず、うまくいかないこともあるでしょう。
セクショナリズムの対策を成功させるためには、いくつかの注意点をおさえておく必要があります。
- 従業員に調査してから対策を検討する
- 労働環境の見直しを定期的に実施する
2つの注意点を詳しく解説します。
従業員に調査してから対策を検討する
セクショナリズムの対策として、体制や評価制度などの変更をおこなう際は、まずは従業員の意見を集めて、組織や部署の状況を把握する必要があります。
どのような問題を抱えているのかを知らずに対策をおこなっても、思うような効果が期待できません。
従業員から細かく聞き取りをおこなったうえで、客観的な視点で対策を検討することが大切です。
労働環境の見直しを定期的に実施する
セクショナリズムを解決するために、従業員同士が交流する機会を設けたり、新たな制度を導入したりして対策をおこなう企業も多いでしょう。
しかし、対策を実施しても、結果としてうまく機能しないこともあります。
そのため、対策を実施したら、想定していた効果が得られているのかを振り返り、必要に応じて修正していく必要があります。
たとえば、「想定していた効果が得られているのか」「セクショナリズムの解決につながっているのか」など、さまざまな観点で振り返りをおこないましょう。
結果に応じて、労働環境は定期的に見直すことが大切です。
セクショナリズムを解決した事例
セクショナリズムの解決に成功した企業の事例を2つ紹介します。
大手電機メーカーの事例
ある大手電機メーカーでは、長引く事業低迷を解決するために、企業の変革をおこないました。
各部門の代表者を集めて、組織が抱えている問題の原因を話し合ったことで、部門によって戦略方針についての認識にばらつきがあることがわかりました。
この企業は、認識のばらつきを解決するために、戦略と戦術の見える化をおこない、組織全体のつながりの強化を実施しました。
コミュニケーションの活性化のために縦割り体制からプロジェクト体制に変更し、開発の手戻りが少ない環境の構築につなげた事例です。[注1]
印刷会社の事例
ある印刷会社では、部門によって認識や意見の違いが生まれてしまい、業務の非効率化が発生し、トラブルなどの原因となっていました。
そこで、顧客向けに印刷技術を知ってもらうための工場見学を実施したところ、部門にとらわれずに協力する必要があり、結果として、お互いの仕事への理解を深めることに成功しました。
相互理解ができるようになったことで協調性が高まり、業務効率化につながった事例です。[注2]
コミュニケーション活性化には「Chatwork」
セクショナリズムとは、利益や権利を確保するために、部署や立場に固執してしまい、他部署などを排除してしまう状態のことです。
組織内での縄張り争いや縦割り意識は、業務効率や生産性が下がる原因となるため、適切に対処する必要があります。
まずは、他部署と交流する機会を増やし、横のつながりを強化するようにしましょう。
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[※1]出典:シャープ株式会社「AQUOSスマートフォン事業におけるマネジメント・イノベーションⅡ」
https://japan-toc-association.org/wp-content/uploads/2021/09/2020_11_sharp.pdf
[※2]出典:JAGAT「セクショナリズムをなくす社内の取り組み」
https://www.jagat.or.jp/archives/82820
※本記事は、2023年9月時点の情報をもとに作成しています。