同調圧力とは?日本に多い理由や発生する要因、対処法を解説【臨床心理士監修】
目次
ビジネスを円滑に進めるためには、一緒に働く人とのチームワークが重要になります。
しかし、周囲に同調しすぎる「同調圧力」が働くと、自分の意見をいえない、流されてしまうなどの悪影響も発生しかねません。
この記事では、同調圧力の概要や日本で同調圧力が強い理由、同調が起こる理由、同調のメリット・デメリットなどを解説します。
同調圧力に対処する方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
同調圧力とは
同調圧力とは、集団のなかで少数意見をもつ人に対し、周囲の大多数の人と同じような考えや行動をとるよう、暗黙のうちに強制することです。
英語では、仲間や同僚を表す「peer」に、社会的・精神的な圧力を表す「pressure」をあわせて、「peer pressure」と表されます。
同調圧力の具体例
学校や職場などの集団生活のなかでみられる同調圧力は、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
同調圧力の具体例を、いくつか紹介します。
- 仕事が終わっても、周囲の人が残業しているので帰れない
- 異なる意見をもっていても、その場の大多数の意見に賛同してしまう
- 有給を取得したいけれど、周囲の目が気になり、申請できない
- 意見を伝えたいけれど、関係性が壊れるのが怖くていえない
日本は、世界のなかでも同調圧力が強いといわれています。
なぜ日本では同調圧力が強く働くのでしょうか。
理由をみていきましょう。
日本社会で同調圧力が強い背景
日本は、とくに同調圧力が高いとして、たびたび指摘されています。
日本の同調圧力の高さの背景には、以下の3つの理由が関係していると考えられます。
- 場の空気を読む傾向
- 村社会の名残
- 和の文化を大切にする
それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。
場の空気を読む傾向
日本では、言葉にしなくてもその場にふさわしい言動、立ち居振る舞いをすること、いわゆる「空気を読む」ことが求められる傾向にあります。
職場など集団のなかでは、常に意識的あるいは無意識的にその場の空気を読んで行動しているため、同調圧力が強く作用してしまいます。
村社会の名残
村社会とは、集落にもとづいてつくられる地域社会のことで、かつては日本において中心的な社会構造でした。
集団のしきたりや秩序に背いたものに対しては、村八分という制裁が加えられていました。
現代でも、かつての村社会のように力のある人を中心とした厳しい秩序を守る社会、よそ者を受け入れない排他的な社会をあらわす言葉として「村社会」という言葉が使われています。
昔の村社会から続く集団構造が今もなお残っていることから、日本では同調圧力が強い傾向があります。
和の文化を大切にする
日本では、集団の輪を乱さないこと、周囲と同じように行動することといった和の文化も重要視される傾向にあります。
周囲と異なる発言や行動に対して、批判的な目を向ける傾向が強く、集団のメンバーに対して「周りと同じ行動をとらなければいけない」という意識を強くもたせる状態になりやすいです。
同調圧力が起こる理由
周囲にあわせようと心理的圧力が働く「同調圧力」は、なぜ起こるのでしょうか。
同調が起こる理由をみていきましょう。
情報的影響
情報的影響とは、他者から得られる情報を判断基準にしやすいことを指します。
商品を買おうとしたときに、「周りの人がみんなこれがいいといっているからこれを買おう」とするのは、情報的影響による同調圧力を受けている例になります。
人は、なにかを選択するときに、「間違った選択をせずに正しい選択をしたい」と思う傾向があります。
正しい判断をするために、多数派の意見に人は影響されやすいことから、同調圧力が発生すると考えられています。
規範的影響
規範的影響とは、周囲の人の行動から一定のルールの存在を推測し、それに従おうとすることです。
たとえば、職場のみんなが定時で帰らず残業しているときに、自分もとくに理由なく残業してしまうことなどが規範的影響の例です。
就業規則などで定時が決められていても、「みんなが帰らず残業している」ことによって、「残業をしなければいけない」という別のルールが働いているといえます。
この暗黙のルールから逸脱すると、「周囲から非難されるのではないか」「自分だけ仲間外れにされてしまうかもしれない」という考えが働き、人は集団内の暗黙のルールに従ってしまうことが多いです。
このような規範的影響があることから、同調が起こるとされています。
同調圧力によるメリット
マイナスの意味で使われることが多い同調圧力ですが、以下のようなメリットも存在します。
- 自己肯定感を得られる
- 不正の抑止力があがる
- チームワークが向上する
同調圧力が働くことによりもたらされるメリットをみていきましょう。
自己肯定感を得られる
集団内における同調圧力と、自分の考えや行動が一致している場合、チームの一員であるという実感が沸くことから、自己肯定感を得られるでしょう。
自分がチームになじめている実感や帰属意識をもつことは、心理的安全性の観点からも重要であり、適度な同調圧力は、ポジティブに作用します。
不正の抑止力があがる
同調圧力は、周囲と異なる言動をとることに対して抵抗感を生じさせます。
そのため、同調圧力があることによって不正な手段をとることへの抑止力とつながります。
チームワークが向上する
同調圧力が働く集団では、お互いがお互いのことをよく観察しているため、なにかトラブルが起きた際に、すぐに助け合うことができます。
たとえば、残業が続いている人がいた場合、声をかけて、助けることなどができるでしょう。
また、不正の抑止力があがるため、自分勝手な行動をやめて、協調性を保とうという気持ちも生まれやすくなります。
結果として、チームワークが高い集団にすることができるでしょう。
同調圧力によるデメリット
適度な同調圧力は、チームワークや帰属意識の醸成に効果的ですが、過度になってしまうと、下記のようなマイナスの側面がでてきてしまいます。
- 無駄な残業が増える
- ハラスメントの原因になる
- 主体性のある従業員の減少
- 慢性的なストレスの原因になる
過度な同調圧力がもたらすデメリットについて、確認していきましょう。
無駄な残業につながる
職場で起こる同調圧力のデメリットとして、無駄な残業があげられます。
多くの人が残業をしていると、それだけで「定時になっても帰ってはいけない」という規範的影響が生まれやすくなります。
仕事が終わっているのに、無意味に残業する人が増えてしまうと、さらに同調圧力が強まるという悪循環が発生してしまうでしょう。
ハラスメントの原因になりやすい
同調圧力があると、行動や発言の正しさを十分に考えないまま、周囲に同調してしまうことがあるでしょう。
結果として、セクハラやパワハラなどのハラスメントが発生しやすくなるため、注意が必要です。
主体性のある従業員の減少
同調圧力が過度になると、周囲の意見にあわせる従業員が増え、主体性をもって積極的に働きかける従業員が減少することが懸念されます。
主体性のある従業員が減ると、挑戦する風土やイノベーションが起きなくなり、組織として成長することも難しくなってしまいます。
適度な同調圧力は、チームワークや協調性を向上させますが、過度な同調圧力は、従業員の主体性を失わさせるでしょう。
慢性的なストレスにつながる
過度な同調圧力がある集団のなかでは、常に誰かにみられている緊張感が生まれてしまい、慢性的なストレスにつながる恐れがあります。
また、周囲にあわせることを重視するあまり、仕事に集中できなくなり、生産性が低下する恐れも考えられます。
過度な同調圧力は、業務の進行を阻害するだけでなく、従業員の心身に悪影響を与える危険性もあるでしょう。
同調圧力に対処する方法
メリット・デメリットのそれぞれの側面がある同調圧力は、適切に向き合い、過剰にうけないことが大切です。
今回は、同調圧力に向き合い、対処する方法を3つ紹介します。
- 自分のなかに判断の基準をもつ
- 同調圧力がかかりやすい状況を自覚する
- 異なる意見でも伝え方を工夫する
個人ではじめることができるので、同調圧力を過剰に受けてしまっている自覚がある方は、ぜひ試してみてください。
対処法(1):自分のなかに判断の基準をもつ
同調圧力は「集団の大多数の人達」を判断基準にすることが原因で生じます。
他人ではなく自分のなかに、しっかりとした判断基準をもつことで、不用意に周囲に流されるリスクを減らすことができるでしょう。
対処法(2):同調圧力がかかりやすい状況を自覚する
日本社会はとくに、同調圧力がかかりやすい状況です。
職場などで、自分のいる環境がそもそも同調圧力がかかりやすいということを自覚しておけば、無意識のうちに同調圧力に従ってしまう事態も避けられます。
対処法(3):異なる意見でも伝え方を工夫する
大多数がもつ意見とは異なることを主張しようとすると、周囲から非難されるのではないかと不安を感じるでしょう。
しかし、異なる意見であっても、伝え方を工夫することで、周囲からの批判を受けずに自分の意見を主張することが可能です。
たとえば、クッション言葉を活用する方法があります。
異なる意見を持ったときは、我慢するのではなく伝え方を工夫して周囲と共有してみましょう。
過度な同調圧力は避けよう
同調圧力とは少数意見の人に対し、周りの大多数と同じように考えたり行動したりするよう暗黙に強制することです。
日本社会は、「空気を読む」などの文化的な影響から、同調圧力が生じやすいとされています。
適度な同調圧力であれば、うまく利用することで、モチベーションの向上などのメリットにつながりますが、過度な同調圧力は無駄な残業や、ハラスメントを引き起こしやすいなどのデメリットが生じやすくなります。
集団のなかで自分が同調圧力にさらされていないか、自分の考えを主張すべき場面で周囲に従ってしまっていないか、意識するようにしましょう。
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記事監修者:山崎ゆうき(やまざきゆうき)
臨床心理士・公認心理師の資格を所持。司法・障害福祉領域などでの勤務を経て、独立開業。メンタルヘルス系の記事を中心に、心理学の知識をいかした記事執筆・監修を担当。心理学の知識をわかりやすく、日常でも実践しやすい形で発信しています。