ピッチとは?プレゼンとの違いやビジネスでの意味、メリットを解説

目次
ビジネスにおけるピッチとは、「短いプレゼンテーション」を意味します。
短い時間で相手に伝えたいことを伝えたり、自分が望むアクションをうながしたりするピッチは、成功させることで事業の大きな発展につながる可能性があるため、ポイントを踏まえて実施することが重要です。
ピッチのメリットや種類、混同されやすいプレゼンテーションとの違い、成功の方法とポイントを解説します。
ピッチイベントの事例も紹介しているため、興味がある企業はぜひご参考ください。
ピッチとは
ピッチとは、ビジネスシーンにおいて「短いプレゼンテーション」を意味する言葉です。
ピッチは英語で「pitch」と表記し、「(ボールを)投げる」「真っ逆さまに落ちる」「(船などが)縦揺れする」「(強さの)度合い・レベル」などを意味します。
さまざまな意味があるピッチですが、一般的には「物事を一定間隔で繰り返しおこなう際の速度や回数」を表す言葉として使われるでしょう。
ピッチの発祥
「ピッチ」の発祥地は、アメリカのシリコンバレーといわれています。
シリコンバレーは、Google、Apple、Meta、HP(ヒューレット・パッカード)、Intelなどの世界的に有名なIT企業が本拠地として構えている場所です。
そもそもシリコンバレーという名前の由来がシリコン(半導体)であり、半導体メーカーが集まったことから「シリコンバレー」と呼ばれるようになったといわれています。
大手企業が多くある地のため、「ピッチ」という新たなビジネス手法がうまれたのでしょう。
ピッチとプレゼンテーションの違いとは
ピッチと混同されやすい手法に「プレゼンテーション」がありますが、目的や時間、相手への伝え方が異なります。
ピッチは、相手にアイデアや新商品を売り込み、資金援助を受けたり購入させたりする目的でおこないます。
売り込みにかける時間は5分もなく、望んだとおりの行動を相手にとらせるように感情に訴えかける伝え方をします。
一方のプレゼンテーションは、業績や業務の進行状況などに関する相手の理解を深めることを目的としているため、ピッチよりも長時間を必要とするケースが多いです。
また、相手が理解しやすいように論理的に説明したり、データをもちいて客観的事実を示したりなど、理路整然とした伝え方が求められます。
ピッチ | プレゼンテーション | |
目的 | アイデアや新商品を売り込み、アクションを起こしてもらう | 情報を論理的に伝え、相手の理解を促進する |
かける時間 | 5分以内くらい | 決まりはなく、数十分になるケースもある |
伝え方 | 感情に訴えかけるようにストーリーがある | 客観的事実を交えながら論理的な説明 |
活用シーン |
ビジネスにおけるピッチの種類と役割
ビジネスにおけるピッチには、複数の種類があります。
それぞれのピッチの意味と活用シーンについて解説します。
エレベーターピッチ
エレベーターピッチとは、エレベーターに乗り、行先階に着くまでに要するような短い時間でプレゼンテーションをおこなうことです。
忙しい相手に話を聞いてもらうには、結論から話し、相手に話の内容へ関心をもってもらう必要があります。
エレベーターピッチの役割は、短く限られた時間のなかで相手の興味を引き、次のプレゼンテーションの機会につなげることです。
コンテストピッチ
コンテストピッチは、投資家や専門家が審査員を務めるコンテスト形式のプレゼンテーションのことです。
投資家の前で自社の事業計画についてアピールすることで、出資を検討してもらえたり、フィードバックを受けられたり、経営をサポートしてもらえたりします。
コンテストピッチは、出資やサポートを受けながら事業をスタートさせたい企業や、知名度を上げたい企業、ネットワークを構築したい企業などに向いているでしょう。
インベスターピッチ
インベスターピッチとは、投資家(investor)に対して30分ほどの時間でアイデアや商品を売り込むことで、資金援助を受ける目的があります。
検討が進むと、投資する前に投資対象の企業などの価値やリスクを調査するデューデリジェンスがおこなわれますが、デューデリジェンスの一部として実施されるマネジメント・プレゼンテーションもインベスターピッチと呼ばれます。
マネジメント・プレゼンテーションは、ピッチ20分、質疑応答40分のプレゼンテーションです。
ツイッターピッチ
ツイッターピッチとは、Twitter(現:X)などのSNSで事業を想像させる一言を投稿し、興味や関心をもった投資家を集めることです。
ツイッターピッチは、SNSを活用して投資家からの資金援助を求める手法といえるでしょう。
より効果を高めるポイントは、比喩表現をもちいて投稿することだとされています。
ピッチを実施するメリット
ピッチを実施すると、さまざまなメリットを得られる可能性があります。
ピッチのメリットについて紹介します。
決裁を得やすい
ピッチは、決裁を得やすいというメリットがあります。
相手に次のアクションを起こさせることを目的とするピッチは、その場で答えが出やすいため、ポジティブ・ネガティブ、どちらの答えでもスムーズに次の行動に移すことができます。
スピーディーな事業展開が可能になる
ビジネスの世界は変化が激しかったり多くの企業がライバルであったりするため、競争社会で優位に立つにはアイデアを早期に商品化し、他社との差別化を図った事業を展開していく必要があります。
その場で決裁を得やすいピッチは、スピーディーな事業展開を可能にするメリットがあり、事業の成功や自社の知名度向上が期待できます。
要点をまとめるスキルがつく
ピッチは、短い時間でアイデアや商品に込められた思い、自分の考えなどを相手に伝えることが求められ、要点を整理したり、伝える順番などを考えたりする必要があるため、ポイントをまとめるスキルが身につきます。
要点を適切にまとめるスキルが身につけば、日常業務のなかでもスムーズな報告や連絡ができると考えられます。
コミュニケーションスキルが向上する
ピッチは、ただ相手に伝えたいことを伝えるだけでは、まともに話を聞いてもらえなかったり、よい返事が期待できなかったりします。
話す内容や要点をまとめて伝えることも大事ですが、話し方、表情、ボディランゲージ、話すスピードなども重要です。
ピッチは、コミュニケーションスキル全般を向上させる効果があるため、ピッチの場に限らず、初対面の相手でも良好な関係を築きやすくなるでしょう。
信頼を獲得しやすい
短い時間で相手に売り込むピッチは、ピッチを作成した時点で、事業の内容、事業展開の方法、実現可能性などがすでに吟味されています。
新規事業について十分に考えられたうえでピッチとしてまとめられているため、投資家などの聞き手は内容を信頼しやすく、資金援助などのポジティブなアクションを起こしてくれる可能性があります。
ピッチを実施するデメリット
ピッチの実施にはメリットが多数ありますが、デメリットもあるため注意が必要です。
ピッチのデメリットも確認しておきましょう。
詳細な説明には向かない
ピッチは、5分以内を目安におこなわれるプレゼンテーションのため、詳細な説明には向きません。
詳細な説明を要する場合には、ピッチのあとにあらためて詳細を話す場を設けなくてはならないなど、スムーズに物事を伝えられないことも多いです。
また、ピッチは決裁を得やすい手法のため、業績報告などの決裁を必要としないシーンにも向いていないといえます。
準備にコストがかかる
短い時間で相手を納得させなければならないピッチは、話す内容や順番などを吟味する必要があるため、準備にコストがかかります。
話す時間が短いからと行き当たりばったりで伝えようと思っていると、伝えるべきことを間違えたり伝え忘れたりして、相手の心に響かない、ただ時間だけが流れる場になる恐れがあります。
ピッチの場を効果的なものにするには、念入りに準備することが求められます。
ピッチを成功させる方法とポイント
ピッチはかける時間が短いですが、成功したときと失敗したときでは、その後のビジネスに大きな差が出るため、ポイントを押さえて取り組むことが大切です。
ピッチを成功させる方法とポイントを紹介します。
ステップ(1):GTCメモを作成する
GTCメモとは、「Goal」「Target」「Connect」の頭文字をとった言葉で、それぞれ「自分が望むもの」「相手が望むもの」「自分と相手の希望が一致する点」を意味します。
GTCメモを作成することで、緊張や話の脱線で会話の目的を見失ったり、伝えたいことを伝えきれなかったりといった事態を回避できる可能性があります。
ピッチで大切なことは、自分の伝えたいことを話すだけでなく、相手のニーズも理解し、お互いが納得のいく着地点に落ち着くことです。
相手のニーズの理解には、企業サイトやSNSなどを確認し、価値観や現在の状況などの事前リサーチを実施することをおすすめします。
自分の望みが相手の望むものと合致していると、成約などの求めていた結果が出やすいでしょう。
ステップ(2):構成を作成する
ピッチの構成は、GTCメモを参考にしながら「フック(導入)」「ポイント(提案)」「クロージング(行動喚起)」の3つで作成します。
ポイントは、自分勝手な提案にならず、まずは相手に話を聞いてもらえるように、「GTC」を「CTG」の順番にして伝えることです。
「フック(導入)」では、前置きとして相手の興味を引く質問や共感の一言を伝え、話を聞きたいと思ってもらいます。
次の「ポイント(提案)」で、相手のニーズを満たすような提案を具体的かつ簡潔におこないます。
最後の「クロージング(行動喚起)」で、「お気軽にご連絡ください」など、自分の目的に沿うようなアクションをうながします。
ステップ(3):見せ方を考える
図表やイラストを用いるなど、ピッチの見せ方を考えます。
図表などがあれば、相手はわかりやすく、内容をスムーズに理解してくれる可能性が高いですが、多量に情報を伝えようとすると、重要な部分がぼやけ、本当に伝えたかったポイントが伝わらない恐れがあるため注意が必要です。
また、視覚情報に頼り安易に図表などを多用すると、かえって見づらくなって情報の信憑性が疑われ、信頼関係の構築が難しくなるかもしれません。
そのため、伝える情報を取捨選択し、わかりやすく、信頼を獲得しやすい情報を提供しましょう。
ステップ(4):セリフや例文を考える
ピッチで話すセリフや、効果的な例文を考えます。
ピッチは短い時間で伝えたいことを話す手法のため、要点を押さえ、不要なセリフを削る勇気が必要です。
また、相手に明確に伝わるように話し方の順番を工夫する、専門用語をなるべく使わないなどの対応も求められます。
「フック(導入)」「ポイント(提案)」「クロージング(行動喚起)」となる例文をいくつか考えて、より相手の心に響くもの、行動をうながすものを吟味すると、ピッチの成功率を高められます。
ステップ(5):予行練習をおこなう
ピッチの準備が整ったら、予行練習をおこないます。
繰り返し予行練習しておくと、セリフをスムーズにいえるようになったり、立ち居振る舞いが自然になったりして、本番でも緊張に負けず、堂々と話ができるようになります。
相手に興味をもって話を聞いてもらうには、ゆっくりとハキハキ話したり、声に抑揚をつけたり、重要なポイントの前に間を置いたりするといいでしょう。
また、時間内に話し終えられるように、ストップウォッチなどを活用して時間配分に注意することも大切です。
聞き役がいれば、相手の反応を確認しながら必要に応じてリアクションをとるなど、聞き役とのコミュニケーションも意識するとより効果の高いピッチになります。
ピッチイベントの開催事例
ピッチコンテストは、ピッチイベントとも呼ばれます。
ピッチイベントに参加することで、資金援助を受けられたり、将来的なパートナーを得られたりするメリットがあります。
ピッチイベントの開催事例を紹介するため、参加を検討するといいでしょう。
スタートアップワールドカップ
スタートアップワールドカップは、アメリカの企業、ペガサス・テック・ベンチャーズが主催する、世界最大級のピッチイベントです。
世界100以上の国と地域で予選がおこなわれ、予選で優勝した企業はサンフランシスコで開催される世界決勝戦に出場できます。
2024年の日本予選は、東京、関西、九州の3か所でおこなわれ、計1億円の投資賞金が用意されています。
高額の投資賞金を得られるだけでなく、世界中に自社の名を知らせたり、国境を越えたネットワークの構築ができる可能性もあります。
イノベーションリーダーズサミット(ILS)
イノベーションリーダーズサミット(ILS)とは、経済産業省後援のもとに発足したアジア最大のオープンイノベーションマッチングイベントです。
スタートアップ企業と大手企業のマッチング商談のほか、スタートアップがピッチで自社の技術や製品を紹介できます。
大手企業がスタートアップから提案を求めるピッチを実施したり、簡易的な名刺交換もできたりするため、大手企業との協業を目指す企業に向いているイベントといえます。
ビジネスコミュニケーションの円滑化に「Chatwork」
ピッチを成功させるには、ポイントを押さえた内容になっているか、相手の興味を引けるかなどを確認し、質を高める必要があります。
そのためには、社内でピッチの内容を確認し、フィードバックしてブラッシュアップすることが求められます。
ビジネスチャット「Chatwork」は、チャット形式で気軽にメッセージを送り合えるため、ピッチの内容のブラッシュアップに便利なツールとしておすすめです。
グループチャットを作成し、ビデオ通話でピッチに関係するメンバーに予行練習の聞き役になってもらうことで、効果的なフィードバックを得られるでしょう。
また、ファイル管理機能を活用すれば、ピッチのスライド資料やセリフなどのファイルのやりとりも容易なため、日々の忙しい業務のなかでもより質の高いピッチを作成できます。
ピッチを成功させると、その後のビジネスが大きく飛躍することが期待できるため、ぜひビジネスチャット「Chatwork」をピッチ作成にご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。