人時生産性を上げるにはどうしたらいい?労働生産性との違いから計算方法までを解説

目次
企業や組織の経営において「人時生産性」という指標が注目されています。
本記事では、人時生産性の意味や労働生産性との違い、計算方法、人時生産性を向上させるポイントを紹介します。
人時生産性とは?
人時生産性(にんじせいさんせい)とは、従業員1人が1時間あたりにどれだけの粗利益を生み出せるかを示す指標です。
自社の経営状況の分析や、今後の経営につながる意思決定の判断材料として役立ちます。
「人時(にんじ)」とは、従業員1人が1時間におこなう作業量を指す単位です。
たとえば、2人で1時間かける作業は「2人時」、2人が30分でおこなう作業は「1人時」と計算します。
また、「生産性」とは、投入した資源(インプット)に対して得られた成果(アウトプット)の割合を指し、これらを組み合わせた指標が「人時生産性」となります。
人時生産性と労働生産性の違い
人時生産性と似た言葉に「労働生産性」があります。どちらも経営指標として使われますが、両者には明確な違いがあります。
労働生産性とは、労働者1人あたりが生み出す成果を数値化したもので、投下した労働量に対してどれだけの成果が産出されたのかを測定する指標です。
労働生産性における成果とは、具体的な生産量や付加価値額などを指します。
一方、人時生産性は、1人の従業員が1時間でどれだけの粗利を生み出すかを測定する指標であり、労働生産性の一部である「付加価値生産性」を示すものとみなされます。
人時生産性と人時売上高の違い
人時生産性と人時売上高(にんじうりあげだか)は、従業員1人あたり・1時間あたりの業績を示す指標という点で共通しています。
しかし、計算方法と意味合いには明確な違いがあります。
人時生産性は、売上高から売上原価を引いた「粗利益」を、総労働時間で割って算出します。
一方、人時売上高は、売上高そのものを総労働時間で割って算出するもので、企業の売上規模を時間あたりで測る指標です。
人時生産性が注目されている背景
人時生産性が注目される背景には、少子高齢化による労働人口の減少が大きく影響しています。
少子高齢化が進行する日本では労働人口が減少しつづけており、多くの企業にとって深刻な問題となっています。
そのため、限られた従業員数でいかに効率よく業務を進めるかが課題となっており、業務効率化の度合いを示す指標である人時生産性に注目が集まっています。
また、働き方改革の推進も大きな理由の一つです。
長時間労働の是正や有給休暇取得の義務化などが進んだことで、従業員1人あたりの労働時間は以前より制限されるようになりました。
日本の生産性は世界的に見ても高い水準とはいえない面があり、企業が利益を拡大していくためには、限られた人材で成果を上げるための工夫が求められています。
従業員がよりよい環境で働けるようにするという観点からも、人時生産性が注目されています。
人時生産性の算出方法と具体例
人時生産性は、企業の粗利益から生産性を判断するための指標です。
人時生産性の数値が高いほど、従業員1人あたりの1時間の粗利も高いことを示します。
これは企業の生産性自体が高いことの証明にもなり、優良な企業かどうかを測るバロメーターにもなります。
ここでは、人時生産性の算出方法と具体例について解説します。
人時生産性の算出方法
人時生産性は、以下の計算式で求められます。
人時生産性 = 粗利額 ÷ 総労働時間
この数式で算出されるのは「従業員1人・1時間あたり」の粗利益であるため、数値が高ければ高いほど「その企業の従業員は生産性を意識し、効率のよい業務をおこなっている」と判断できます。
人時生産性の具体例
人時生産性の具体例をみていきましょう。
仮に、ある企業の売上高が20万円、売上原価(仕入原価)が10万円だった場合、以下の計算式から粗利益は10万円となります。
粗利額 = 売上高 - 売上原価
この企業の総労働時間が100時間だった場合の人時生産性は、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
売上高 | 20万円 |
売上原価(仕入原価) | 10万円 |
粗利益 | 10万円 |
総労働時間 | 100時間 |
計算式 | 10万円 ÷ 100時間 |
人時生産性 | 1,000円 |
人時生産性の算出においては、労働時間と粗利益が重要な鍵となります。
とくに、総労働時間の算出方法は企業によって異なる場合があり、正確な把握が難しい側面もあります。
勤怠管理が徹底された企業であれば、より正確な労働時間を把握でき、人時生産性の数値も正確になるため、従業員の勤怠管理体制を整え、労働時間を正確に計上してもらうことが大切です。
人時生産性を向上させる方法6選
人時生産性を向上させるためには、さまざまな見直しが必要です。
ここでは、人時生産性を向上させるための具体的な方法を6つ紹介します。
①適切な数値管理
人時生産性の向上には、粗利額や総労働時間といった数値の正確性が問われます。
誤った数値で算出すると指標そのものが変わってしまい、経営判断に悪影響をおよぼす可能性があります。
手作業で入力や集計をおこなうと、人為的ミスが起こりやすくなります。
たとえば、出退勤時間の打刻や報告が曖昧なままでは、正しい労働時間がわからず、不正確な数値しか算出できません。
人時生産性を正しく評価するためにも、数値を正確に管理できる仕組みを導入することが重要です。
②業務プロセスの最適化
人時生産性向上のためには、業務プロセスの最適化が欠かせません。
業務プロセスを最適化するためには、通常業務における無駄やボトルネックを改善する必要があります。
しかし、現場の従業員の中には、慣れ親しんだ作業工程の変更に抵抗を感じる人もいるかもしれません。
そのため、一度に大きな変更を加えるのではなく、定期的に段階を経て、徐々に最適化を進めていくと、従業員からの納得感も得やすいでしょう。
③従業員の配置調整
適切な人員配置は、人時生産性の向上につながります。
従業員の業務状況にロスや無駄がないかをチェックし、本人の適性に合った部署への配置転換などを検討しましょう。
具体的には、従業員へのヒアリングによって本人の能力や希望を把握し、結果をもとに配置調整をおこなうなどの方法があります。
④従業員のモチベーション維持・向上
人時生産性を向上させるには、従業員のモチベーション維持・向上に注力することも大切です。
従業員のモチベーションが低い状態では、理想的な生産性や成果は期待できません。
モチベーションを高め、さらに良い状態を維持するための工夫が必要です。
人間の欲求を階層で示した「マズローの欲求5段階説」というフレームワークが参考になります。
階層 | 説明 |
---|---|
第1階層:生理的欲求 | 人間が生きるための本能的な欲求 |
第2階層:安全の欲求 | 身の危険を感じる状況から脱したい欲求 |
第3階層:社会的欲求 | 集団に所属して仲間を得たい欲求 |
第4階層:承認欲求 | 他者から認められようとする欲求 |
第5階層:自己実現欲求 | 第1から第4の全ての欲求が満たされる状態 |
まずは低次の欲求を満たす仕組みや制度を整え、最終的には従業員が自ら率先して成果を求めるような組織を目指すことが理想です。
⑤ITツールやRPAの導入
従業員の人数と稼働時間には限りがあるため、人時生産性の向上にはITツールやRPAの導入も有効です。
また、人の手でおこなうべき業務と、ツールで代替できる業務を切り分けることも検討しましょう。
従業員1人が1時間働く際の粗利益を向上させるためにも、従業員にしかできない付加価値の高い業務へ集中できる環境を整える必要があります。
ツールで代替できる業務については、自社にマッチしたツールの導入によって効率的に遂行することが可能です。
無駄な作業をなくすという意味でも、IT化できる部分は積極的に検討することが求められます。
また、RPA(Robotic Process Automation)を導入し、定型業務を自動化することも一つの手です。
RPAはソフトウェアロボットによる業務自動化の技術で、パソコン上でのマウス操作やキーボード入力といった作業を、ロボットが高速かつ正確に実行します。
従業員の疲労やストレスの軽減になるだけでなく、ヒューマンエラーによるミスを防止できる点もメリットです。
⑥オンラインアシスタントの活用
人時生産性の向上策として、オンラインアシスタントを活用するのも一つの選択肢です。
たとえば、Chatworkアシスタントは、「安く・早く・高品質」を掲げる業務代行サービスです。
経理・人事・営業といった専門領域の業務を代行するオンラインアシスタントとしてサービスを展開しています。
Chatworkアシスタントの導入メリットには、以下のような点が挙げられます。
- 情報共有が簡単にできる
- 既存の手作業でのプロセスやデータ連携などを効率的に解決する
- 結果として総労働時間の削減に役立つ
契約時間内で複数の業務を自由に組み合わせることが可能で、必要に応じてシステム導入支援や業務プロセス改善のサポートにも対応しています。
定型的ながらも煩雑な業務を代行することで、従業員はより付加価値の高いコア業務に集中できます。
生産性向上を妨げる7つの損失(ロス)とは?
企業が健全な経営をおこなうためには、生産性向上のための施策を考え、実行していく必要があります。
しかし、施策が計画通りに進むとは限りません。
生産性向上を妨げる「損失(ロス)」が存在すると、企業の成長は停滞してしまいます。
ここでは、具体的に考えられる7つの損失(ロス)について解説します。
①生産ロス
生産ロスとは、主に製造業の現場で発生する損失全般を指します。
生産プロセスのどこかに無駄な作業や時間がかかっている状態で、生産ロスの種類は多岐にわたります。
たとえば、設備故障による停止や不良品の発生(不良ロス)、材料の過不足(材料ロス)、段取り変更による時間超過(段取り交換ロス)などが挙げられ、さまざまな場面で起こりうるものです。
また、生産ロスが発生するのは製造業に限りません。
IT業界であれば、システムの不具合発生による修正・復旧作業なども生産ロスに該当します。
生産ロスを完全になくすことは困難ですが、製造や開発のプロセスを常に見直し、無理が生じていないかを確認して、極力ロスを減らす姿勢が重要です。
②管理ロス
管理ロスとは、管理者や関係者の不適切なマネジメントによって起こる損失です。
材料待ち・指示待ち・修理待ちといった待機時間が発生し、無駄な時間を浪費している状態を指します。
突発的な事象が原因になることもありますが、普段からの管理体制が整っていれば未然に防げる可能性もあります。
また、人員の調整や管理ができずに業務が中断してしまう場合も、管理ロスの一部です。
③動作ロス
動作ロスとは、従業員の無駄な動きによって発生する損失のことです。
作業する従業員に不要な動作が伴うことで、生産性の低下や損失を招くことがあります。
具体的には、現場の設備レイアウトが悪く動線が非効率な場合や、スキルの不十分な従業員が必要以上に時間をかけてしまう、といった状態が考えられます。
動作ロスはどのような業界でも起こりうるため、従業員教育の徹底と作業環境の最適化が重要な課題です。
④手作業によるロス
手作業によるロスとは、自動化できる業務を手作業でおこなうことで発生する無駄を指します。
たとえば、不良品発生時の手直しや手待ち時間・手空き時間などがこれにあたります。
近年では、システムで管理できる情報を手計算で集計したり、ロボットやAIで代替可能な作業を人力でおこなったりして、非効率になっている状態も該当します。
⑤人員配置ミスによるロス
人員配置ミスによるロスとは、従業員のスキルや適性に合わない人員配置によって発生する損失です。
多くの場合、従業員にミスマッチな業務を担当させたことにより、本人の能力が十分に発揮できずにロスが発生します。
未然に防ぐためには、従業員本人への十分なヒアリングを実施し、能力や希望を考慮しながら適性に合ったポジション・部署へ配置することが大切です。
⑥作りすぎのロス
必要以上に製品やサービスを生産してしまうことで発生するロスです。
過剰な在庫は、保管コストや管理コストの増大につながるだけでなく、品質の劣化や陳腐化のリスクも伴います。
需要予測の精度を高め、適切な生産計画を立てることが重要です。
⑦運搬のロス
製品や材料、情報などを不必要に移動させることで発生するロスです。
工場のレイアウトや動線が悪く、工程間の移動距離が長い場合や、オフィス内で書類を探し回る時間などが該当します。
動線を最適化し、運搬の回数や距離を最小限に抑える工夫が求められます。
人時生産性の向上にChatwork
企業が経営状況を分析する際は、客観的な指標を用いることが大切です。
人時生産性は、従業員1人あたり1時間の稼働で生み出す粗利を示す指標であり、業務効率化を目指す上で重要なバロメーターです。
自社の生産性を見直すために、この指標を活用してみてはいかがでしょうか。
また、業務効率化には、Chatworkのようなビジネスチャットの活用も有効です。
従来のメールや電話よりも効率的なコミュニケーションが可能なため、多くの企業で導入が進んでいます。
日々登場する新しいツールやシステムの情報も、積極的に収集していくとよいでしょう。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。