労働基準法で定められた「休憩時間」とは?【社労士監修】でわかりやすく解説

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働き方改革
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労働基準法で定められた「休憩時間」とは?【社労士監修】でわかりやすく解説

目次

労働基準法においては、休憩についてルールが定められています。

多くの職場においては、法令遵守を意識して休憩をとらせるというよりも、職場ひいては世間一般の常識を物差しとして休憩を捉えていることが多いのが実態ではないでしょうか。

法律が会社に対して義務つけている本来の休憩のルールが遵守されていない職場も多く、場合によっては、労働基準監督署による是正勧告の対象になるケースも珍しくはありません。

労働基準法で定められている休憩について正しい認識をして、労働基準法を遵守した休憩を与えるように見直していきましょう。

労働基準法における休憩の3原則

休憩に関しては、労働基準法の第34条で定めが置かれています。

条文のボリュームとしては少ないものの、法律が遵守を求めている休憩のルールをとらえるにあたって、非常に重要な以下の3原則が定められています。[※1]

  1. 労働の間に与えられる:途中付与の原則
  2. 従業員に一斉に与えられる:一斉付与の原則
  3. 労働から解放される:自由利用の原則

それぞれの原則の内容を詳しくみていきましょう。

(1)労働の間に与えられる:途中付与の原則

労働で疲労した心身を回復させ、無理のない労働を可能にするために、休憩は法律で義務つけられているため、「仕事の合間」に休憩を与えないと、本来の趣旨に沿わないものになります。
「忙しくて昼間に休憩がとれそうにないから、休憩時間分、早く退勤させる」という扱いはNGです。

もっとも、休憩をとる時刻については特に制限はない為、きっちり昼の12時に休憩を与える必要はなく、「仕事の合間」であれば職場の事情に応じて、休憩の時間を定めても問題はありません。

しかしながら、始業後あまり時間も経過していない時刻に休憩を与えるといった運用では、結局、この途中付与の原則の趣旨を満たすことは難しい為、ある程度常識の範囲内で、行政や専門家に適宜、確認をとりながら、実際の休憩時刻を定める必要があるでしょう。

(2)従業員に一斉に与えられる:一斉付与の原則

意外に思われるかもしれませんが、休憩は職場単位で、一斉に与えることが義務つけられています。

これに違反しているケースとしてイメージしやすいのが、手が空いている従業員に適宜休憩を与える場合です。

一見、この方が合理的に思えますが、休憩をとる時間帯が各々でバラバラだと、休憩しているのに同僚に業務関連のことを尋ねられることもあり、休憩がしっかりとれないこともあります。

結果、従業員ごとに休憩の質、量ともにバラつきが出てしまうことになり、これも休憩としての本来の趣旨を損なうことになるため、休憩は、職場単位で「一斉にとる」という原則が定められています。

しかし、職場によっては、全員に同じ時間に休憩をとらせることが業務に大きな支障を与えることもあり、運輸交通業や、接客娯楽業を始め、一定の業種では、一斉に休憩をとらせなくても構わない、つまり交代制で休憩を与えることができます。

また、これらの業種に該当していなくても、「労使協定」で一斉付与の対象外の従業員の範囲や休憩の与え方を、従業員の過半数代表と取り決めをしておくことで、一斉付与の原則から解放されることもできます。

(3)労働から解放される:自由利用の原則

休憩時間中は労働から解放されていることが重要であり、その間の行動は、従業員の自由に委ねなければなりません。(※一部の職種においては例外が認められています)

ありがちな違反例としては、電話当番や、作業の合間の手待ち時間を休憩と定めてしまうケースです。

休憩は本来、労働から解放されていることが、その趣旨となりますので、いつでも業務に対応できる状態は、休憩に当てはまらない場合がほとんどです。

したがって、「休憩時間中に電話が鳴ったら応答しなくてはいけない」というのは、この自由利用の原則に違反する可能性が高くなります。

もちろん、休憩時間であれば何をやっても構わないという訳ではなく、職場の秩序を維持するために必要最低限なルール(例えば休憩時間に、外出する際は上司に一言添えておく等)に関しては、自由利用の原則に抵触しないという判断が一般的です。

しかしながら、そのルールが自由利用の原則に抵触するか否かのボーダーラインは、事案によっては、その線引きが難しいこともあるため、休憩3原則の中で、比較的トラブルの火種になるテーマでもあります。

判断に迷う場合は、お近くの労働基準監督署に相談するのが無難でしょう。

労働基準法における休憩の与え方に関する定め

休憩に関しては、世間一般の常識という、やや曖昧な物差しで、運用していることも多く、労働基準法に定められた基準に満たない休憩の与え方が横行している事案は、もちろん、意図せず法定以上の休憩を与えているといったケースも多々見受けられます。

今まで常識と思っていた休憩のルールが、労働基準法において本当に正しいものなのか、今一度、おさらいしておきましょう。

休憩時間の定め

労働基準法においては6時間を超え8時間以内の労働には45分以上、8時間を超える労働については1時間以上の休憩をとらせることを義務つけています。

一見、当たり前ですが、案外判断に迷いがちなのが、このルールです。

例えば、始業9時、終業17時45分、休憩はお昼に45分という勤務体系は、上記のルールに反するのでしょうか。

「8時間を超える労働」は始業から終業の「拘束時間」を指すのか、それとも「実際の労働時間」を指すのか?これによって、結論が異なってきます。

結論としては、「実際の労働時間」なので、上記の例では、「8時間以内」なので、休憩は45分でも問題はありません。

もっとも、1分でも残業となれば、実際の労働時間は8時間を超える為、追加で15分、合計1時間の休憩を与えなければなりません。

ありがちなケースとしては、法定以上に休憩を与えてしまっているというものです。

もちろん業務の実情を踏まえて、必要であれば問題はありませんが、従業員からの主張をそのまま受け入れてしまっているケースや、経営者の個人的な感覚で休憩時間を設定していることがあります。

いたずらに長い休憩は、一部の従業員にとっては不満の対象になる可能性もあります。

まずは、法定の最低基準はどこなのか、そして自社の事情を鑑みて現実的なラインはどの辺りなのかというふたつの判断基準を軸にして、休憩時間の設定はなされるべきです。

雇用形態による違い

正社員は休憩をとらせるが、アルバイト、パートには休憩を与えなくても大丈夫という認識が根付いている職場が稀に見受けられます。

休憩時間の多寡は、雇用形態に左右されることはなく、あくまでも実労働時間によって決定します。

つまり、アルバイトでも実労働が8時間を超えていれば1時間以上の休憩を与えなくてはなりません。

一方、正社員でも1日の実労働時間が6時間に満たない短時間勤務であれば、労働基準法上、休憩は与えなくても違反とはなりません。

もっとも、就業規則で法定以上の休憩を与える旨、特別に定めている、あるいは個別の労働契約で、同様の旨定めている場合は、そちらが優先されることとなりますので、要注意です。

休憩の分割

労働基準法では、6時間を超え8時間以内の労働には45分以上、8時間を超える労働については1時間以上の休憩を与えなければならない旨規定しているだけで、休憩の分割については、特に制限を設けてはいません。

したがって、例えば1時間の休憩を30分ずつ、2回に分割して与えても問題はありません。

もっとも、休憩の趣旨に反するような、小刻みに休憩を与えるような運用は、休憩の合計時間が基準を満たしていても、休憩と認められない可能性が高くなるので要注意です。

残業における労働基準法での休憩の扱い

労働基準法では、労働が8時間を超える場合には、1時間以上の休憩を与えればよいと、定めている為、残業が何時間に及んだ場合でも、すでに1時間休憩を与えているのであれば、追加で休憩を与えなくとも、法違反にはなりません。

しかしながら、労働による疲労を回復させるという、休憩の趣旨から考えれば、長時間の残業の場合、適宜必要な休憩を与えることが一般的には要請されると考えられます。

要注意な点として、普段の勤務が8時間以内で休憩時間が45分の従業員が、残業したことにより実際の労働時間が8時間を超えてしまう場合、少なくとも15分以上は休憩を与える必要があるということです。

突発的な残業で、休憩時間まで意識が及ばず、休憩を与えずに、退勤させてしまうなど、意図せず法違反となってしまうケースも見受けられます。

こういった場合は、残業に入る前に必要な休憩を与える、または、普段の勤務では、労働時間が8時間以内の労働者でも、残業があることも見込んで、1時間の休憩を常に与えておくといった運用が望ましいでしょう。

残業が何時間に及んでも、すでに休憩を1時間与えていれば、法定の基準はクリアできるためです。

フレックスタイム制における労働基準法での休憩の扱い

働き方改革の影響もあり、フレックスタイム制を導入する企業は増えています。

フレックスタイム制の定義としては、定められた労働時間の範囲内で、始業と終業の時刻を、労働者側の裁量に委ねているといった制度です。

細かい内容は割愛しますが、フレックスタイム制を導入するにあたり休憩について注意すべき点としては、先に挙げた休憩の「一斉付与の原則」との兼ね合いでしょう。

始業が早い従業員と遅い従業員に同時刻に一斉に休憩を与えるとなると、事案によっては不便な状況も想定されます。

よって、必要に応じて、労使協定を締結しておくことも検討しましょう。

ちなみに、フレックスタイム制において、例えば、10時~15時までは必ず勤務する時間帯(コアタイム)として、定めておき、その前後の始業、終業時刻は従業員の自由に委ね、12時に一斉に休憩するといった方式であればシンプルなルールとなります。

>フレックスタイム制とは?に関する記事はこちら

休憩に関する労働基準法上の罰則規定

休憩を与えていたつもりだったけれど、法定の基準は満たせていないことが判明した方もいるかもしれません。

そのような方は、まだ問題に発展していない、今の段階からできる範囲で是正するようにしましょう。

なぜなら、労働基準法においては、休憩に関する法令違反には第119条にて、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金というペナルティが用意されています。

もっとも、実際には法違反の事実のみをもって、問答無用で罰則が適用されることは稀ですが、労働基準監督署からの是正勧告を無視し続けている場合、書類送検され、罰則が科されるという最悪のシナリオも考えられます。

また、近年の働き方改革にあたっては、残業時間の上限規制を始め、さまざまな法改正がありましたが休憩に関する内容について直接的な改正は実施されてはいませんので、従来のルールを遵守するよう心がけましょう。

>労働基準法の違反とは?に関する記事はこちら

労働基準法における休憩の定義を理解しよう

今まで、やや軽く考えていた休憩に関して、労働基準法では案外細かいルールがあり、これに抵触している場合もあるでしょう。

しかし、まったく休憩を与えていないといった事案は少ない為、「ちゃんと与えていたつもりだった」のに、細かい部分で違反があるといったケースが多いといわれています。

休憩における労働基準法違反は、知ってか知らずか、放置されたままで、従業員側も反論することなく現在にいたっているといったところが多いのかもしれません。

働き方改革や、テレワークの普及など、労働環境が目まぐるしく変化していく情勢においては、思わぬタイミングで、休憩の労働基準法違反が露呈し、トラブルに発展してしまう火種となる可能性は否定できません。

まだトラブルになっていない段階で、行政や専門家のアドバイス、社内の意見なども汲み取ったうえで、会社にとって最適解となるような休憩の制度設計を進められるように改善や見直しをおこないましょう。

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[※1]出典: e-Gov法令検索「労働基準法」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)

2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長さん向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営をサポートしています。

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