【専門家監修】介護業界の人材不足の原因とは?今後の動向や解消方法を解説

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働き方改革
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【専門家監修】介護業界の人材不足の原因とは?今後の動向や解消方法を解説

目次

介護業界の人手不足は、昨今さらに急務となっています。

令和6年に介護保険法の改正を審議した「介護保険部」の意見書においては、介護人材を確保には、処遇の改善や人材育成への支援、職場環境の改善などにくわえ、介護職の魅力向上や外国人材の受入れ環境整備などの取り組みを、総合的に実施する必要があるとされました。

今回は、介護業界の人手不足の実態と対応策について、詳しく解説します。

介護業界の人手不足の実態

介護業界における人手不足は、長らく問題視されており、2025年問題や2040年問題などでも、中心となっている課題です。

介護を必要とする高齢者の数は、年々増加傾向にありますが、一方で介護従事者の不足も続いており、2040年には、約69万人の不測が見込まれています。

訪問介護サービスにおける人材不足

介護業界における人手不足は、急務の課題となっていますが、とくに、訪問介護サービスでは、介護職員の有効求人倍率が15倍前後という人材不足が発生しています。

この背景には、訪問介護サービスの従事者に求められる資格の負担が大きい実情が影響しています。

訪問介護に従事する職員の平均年齢は、ほかのサービスに比べて高く、これは、介護保険創世記に、ヘルパーの資格をとったスタッフが、これまでの訪問介護を支えてきたことを意味しています。

また、介護職員に、初任者研修修了者などの医療福祉関連の資格を求めている点が、若い職員が増えない最大の要因であると考えられます。

訪問介護サービスを担当する職員になるには、初任者研修修了者以上の資格が必要ですが、資格を取得するために、時間と費用をかけなければなりません。

そのため、介護従事者を目指す若い職員は、資格が求められないデイサービスや介護施設の介護職員への就職を選択し、その結果として、初任者研修修了者以上の有資格者が、なかなか誕生しないという現状になっています。

介護業界の人手不足の原因

介護業界の人手不足は、長らく問題視されていますが、その背景にはどのような原因があるのでしょうか。

介護業界の人手不足の原因について見ていきましょう。

労働人口の減少

少子高齢化にともなう労働人口の減少は、介護業界に限らず、さまざまな業界の人手不足の原因となっています。

昨今話題にあがることの多い「2025年問題」では、日本の人口の、約4人に1人が、後期高齢者になる、超高齢化社会が訪れるとされています。

高齢者人口の増加にともない、医療・介護サービスの需要増加が見込まれる一方で、労働人口が減少してしまうと、需要に見合う充分な供給が難しくなるでしょう。

人間関係

介護業界の人手不足の原因として、離職率の高さがあげられますが、これは職場の人間関係が大きく影響しているとされています。

たとえば、令和6年の介護保険法改正審議の意見においても、職場の人間関係が、離職理由の大きな要因でもあるとされています。

介護業界の人間関係が悪化する要因としては、以下のような声があがっています。

  • サポートし合える環境が整備されていない
  • 同僚とコミュニケーションがうまくとれない
  • 医療スタッフと連携がとれない

介護の現場では、介護に従事する職員だけでなく、医師や看護師、リハビリスタッフや栄養士などの他業種との連携や、利用者・家族とも関係性を築く必要があります。

さまざまな人との連携が必要になるため、人間関係に問題が生じてしまう場面も多くあるでしょう。

給与水準の低さ

業務負荷に対する給与水準の低さも、介護業界の人手不足に影響していると考えられます。

厚生労働省が令和3年に発表した「業種別の賃金(年収)の状況」によると、介護・社会福祉職の平均年収は約372万で、国税庁が令和3年に発表した日本人の平均年収433万円を下回っています。[※1][※2]

業務量や心身の負担に対して、満足のいく報酬が得られないと、離職率は高まり、人手不足が進んでいくでしょう。

業務負担の高さ

前述した通り、業務負担の高さも、介護業界の人手不足を加速させている要因です。

介護の仕事は、夜勤業務や身体介護など、体力を要するものが多く、肉体的なストレスが溜まりやすいです。

また、すでに人手不足が問題視されている状況からもわかるように、職員1人当たりの業務負担が大きいです。

業務負担の高さに対して、適正な評価をうけることができないと、離職率が高まり、人手不足がより加速していくでしょう。

採用ハードルの高さ

介護業界に対して、ネガティブなイメージを抱いている人が多い実態も、人手不足が改善しない理由のひとつです。

たとえば、「きつい・汚い・危険」の3Kのイメージであったり、「帰れない・厳しい・給料が安い・婚期が遅れる・休暇が少ない・化粧のノリが悪い・規則が厳しい」の6Kのイメージであったたり、悪いイメージが先行してしまっている現状があります。

また、近年取り上げられる機会が多い介護職員へのハラスメントなどの影響で、肉体的負担だけでなく、身体的負担が高いイメージも、介護業界への採用ハードルを高くしています。

離職率が高い点が問題視されがちな業界ですが、採用ハードルの高さも、人手不足の要因となっています。

介護業界の人材不足を解決する方法

介護業界の人手不足は、今後もさらなる拡大が予想されます。

では、介護事業所は、どのように対策していけばいいのでしょうか。

今回は、対策の例として、下記の6つの方法を紹介します。

  1. 労働環境の整備
  2. ICTシステムの導入・活用
  3. 外国人雇用の拡大
  4. ハラスメント対策
  5. 積極的な採用活動
  6. 資格取得の支援

6つの対策方法について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

解決策(1):労働環境の整備

職員が働きやすい環境の整備は、離職率の低減に直結します。

たとえば、後述する ICTシステムの導入により、業務効率化をはかったり、業務時間や工数削減をはかったりなどが、具体例としてあげられます。

また、評価制度を再整備し、給与や報酬を適正な内容に調整したり、コミュニケーションのあり方を再考し、コミュニケーション手段を見直したりする取り組みも、労働環境の整備につながります。

労働環境の整備を目指す際は、自事業所の離職の原因を確認したうえで、最適なものを選択する対応が大切です。

解決策(2):ICTシステムの導入・活用

人材不足の対策として、昨今注目を集めているのが、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)化の推進です。

介護現場のICT活用は、介護の質の向上をはかりながら、業務負担の軽減と人員配置の効率化を実現できるとして、さまざまな事業所が取り組みを開始しています。

また、厚生労働省も、3年ごとにおこなわれる介護保険制度改正のなかで、介護職の業務改善・効率化の方法として、以下のようなICT化の促進を進めています。

目的 ICT活用の例
見守り業務の効率化 見守りセンサー
情報共有の効率化 インカム
記録・報告様式の効率化 介護記録ソフト

見守りセンサー

たとえば、見守りセンサーは、介護報酬の加算における算定要件や、人員基準の緩和要件を実現しています。

見守りセンサーは、夜間の利用により、夜勤職員の負担を軽減できるだけでなく、人件費も削減できるとして、介護業界の負担軽減に効果を発揮しています。

インカム

また、インカムを活用して、情報伝達を実行できると、時間のロスを大幅に軽減できるとされています。

たとえば、各階の入浴順についてインカムを通じて連絡を取りあえば、順番を待つ入所者の効率的な移動が可能となるでしょう。

介護記録ソフト

令和3年度の介護報酬改定で導入されたLIFE(科学的介護情報システム)によって、一躍、脚光を浴びているのが、介護記録ソフトです。[※3]

介護の現場では、日々の記録をタブレットに入力し、それを電子データとして蓄積していく必要がありますが、LIFE導入前は、これを手入力で対応していました。

たとえば、蓄積が必要なデータが100人分あったとすると、これを3か月ごとに100人分手入力する必要があり、職員にとっては、大きな負担となっていました。

しかし、LIFEの活用がはじまり、介護記録ソフトを利用できるようになると、介護計画書やアセスメント、スクーリングなどの日常業務の蓄積が、二度手間の必要なく可能になります。

いままで紙ベースでおこなっていた業務のICT化により、二度手間の発生を防止でき、さらに、全国の事業所でデータの共有をおこなうことも可能になります。

ICTの活用促進により、業務効率化はもちろん、提供する介護サービスの質向上をはかることもできるでしょう。

>【専門家監修】科学的介護情報システム(LIFE)とは?に関する記事はこちら

解決策(3):外国人雇用の拡大

介護業界の人材不足が深刻化するなかで、政府が力を入れて取り組んでいるのが、 外国人人材の活用です。

外国人人材は、一定の水準を満たしていれば、長期間の雇用が実現できるため、人材不足に悩む事業所では、積極的な採用を検討してみましょう。

現在政府が導入している技能実習生制度では、段階別に雇用期間が定められており、最長で10年の雇用が可能です。

また、介護福祉士の国家資格を取得できれば、永続的な在留資格も取得できます。

技能実習制度で定められている技能実習の流れは、以下の通りです。[※4]

区分 入国年数
技能実習1号 1年目
技能実習2号 2〜3年目
技能実習3号 4〜5年目
特定技能1号 5年

技能実習で求められる要件には、実技試験や学科試験などがあり、入国時点で、一定水準以上の日本語能力も求められています。

労働人口のさらなる減少が見込まれるなか、外国人人材の採用により、職員増加・離職率を低減させる効果が期待できるでしょう。

解決策(4):ハラスメント対策

ハラスメント対策などに力をいれ、職員が安心して働ける職場環境を整備する取り組みも、離職率の低減を目指すうえでは重要です。

令和3年度の介護報酬改定において、パワーハラスメント(パワハラ)及びセクシュアルハラスメント(セクシャルハラスメント、セクハラ)などのハラスメント対策の措置を講ずることが、各事業所に義務付けられました。

一般企業の場合は、上司からのパワハラや、同僚からのセクハラなどへの対策が求められますが、介護事業所においては、昨今ニュースなどで目にする機会も多い、利用者やその家族からの「カスタマーハラスメント」も重大な問題となっています。

介護職は、その職業上、我慢すべき問題と、ハラスメントとして報告すべき問題の区別がつきにくい実態が問題視されていますが、ハラスメントは、放置してしまうと、事態が悪化しやすいため、早期に発見し、対応する必要があります。

そのため、就業規則などで、ハラスメントへの対処方針を明確化するとともに、職員に対しては、ハラスメント研修を定期的に実施するようにしましょう。

また、ハラスメントに関する相談窓口の設置も、ハラスメント対策の一環として重要です。

職員が相談しやすい環境を整備することで、ハラスメントの早期発見・対応が実現でき、ハラスメントが原因で離職する職員の数を低減できるでしょう。

>社内相談窓口の効果的な運用方法に関する記事はこちら

解決策(5):積極的な採用活動

積極的な採用活動も、人材不足の解消を目指すうえでは、検討すべき方法のひとつです。

「求人広告をだしても応募されない」「若い人が応募してくれない」など、事業所によって、採用に関するさまざまな悩みがあると思いますが、待ちの姿勢の採用活動では、悩みを解決することは難しいでしょう。

現状、介護業界に対するイメージには、ネガティブなものも多いため、従来通りの採用活動では、なかなか人手不足の解消は目指せないでしょう。

まずは、「待ち」の採用活動をやめ、「積極的」な採用活動をはじめてみましょう。

たとえば、事業所のホームページの内容を見直してみたり、SNSやWebを活用して情報発信をおこなってみたりなど、ポジティブな情報の発信が効果的です。

解決策(6):資格取得の支援

職員のキャリアアップを支援する取り組みも、離職率の低減に効果的な方法のひとつです。

たとえば、介護福祉士などの国家資格を取得することができれば、給与や待遇を改善でき、仕事の幅を広げることができます。

離職の原因にもなりうる給与や待遇を改善することができれば、職員のモチベーション向上も期待できるでしょう。

また、職員が資格を取得し、スキルが向上すれば、提供するサービスの品質も向上するため、事業所にとってもメリットが大きいといえます。

介護業界のICT化の第一歩に「Chatwork」

介護業界における人手不足は、今後ますます深刻化していく状況が予想されます。

そのため、きたる2025年問題や2040年問題に向けて、各事業所は、離職率を低減させ、職員が長く働ける環境を整えることが、急務の課題となってくるでしょう。

介護業界のICT化のひとつとして、ビジネスチャット「Chatwork」を活用する事業所が増えています。

「Chatwork」は、離れた場所にいても、円滑なコミュニケーションがとれるビジネスツールで、シンプルな仕様のため、システムが苦手な方でも、安心して使うことができます。

また、ビジネス専用のコミュニケーションツールのため、仕事とプライベートの切り分けもつけやすく、ワークライフバランスの実現にも寄与します。

「Chatwork」は、複数人でコミュニケーションがとれる「グループチャット機能」や、書類やデータをやりとりできる「ファイル管理機能」も搭載されているため、迅速な情報共有や伝達をおこなうこともでき、業務効率化にも効果的です。

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導入事例を参考に、ぜひ活用イメージを膨らませてみてください。

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[※1]出典:厚生労働省「業種別の賃金(年収)の状況|令和3年版」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/20/backdata/2-1-11.html
[※2]出典:国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2021.htm
[※3]出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000750362.pdf
[※4]出典:厚生労働省「技能実習「介護」における固有要件について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000995757.pdf

※本記事は、2023年6月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。


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記事監修者:小濱 道博(こはま みちひろ)

小濱介護経営事務所 代表。日本全国で、介護経営のコンプライアンス指導、BCP、LIFE、実施指導対策などのコンサルティングをおこなう。介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで年間250件以上。全国の介護保険課・各協会・社会福祉協議会・介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。「これならわかる〈スッキリ図解〉介護BCP(業務継続計画)」(翔泳社)「おさえておきたい算定要件シリーズ」(第一法規株式会社)など、著書多数。「日経ヘルスケア」「Visionと戦略」など連載多数。

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介護業界における人手不足の原因に関するQ&A

介護業界における人手不足の原因とは?

介護業界における人手不足の原因として、労働人口の減少・人間関係・給与水準・業務負担などがあげられます。

介護業界の人手不足が長らく問題視されている背景には、これらの原因があるといえるでしょう。

介護業界の人手不足を解決する方法は?

介護業界の人手不足を解決するには、労働環境の整備やICTシステムの活用推進、外国人雇用の拡大・ハラスメント対策・採用活動強化・資格取得支援など、さまざまな切り口からアプローチすることが必要となってくるでしょう。

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