ノーマライゼーションとは?意味や歴史を事例付きで解説
目次
近年、ビジネスシーンで注目されている概念のひとつに「ノーマライゼーション」があります。
ノーマライゼーションとは、障害がある人を排除することなく、障害があってもなくてもだれもが同等に生活できるような社会が正常(ノーマル)であるとする考え方です。
この記事では、ノーマライゼーションの意味や取り組み事例、活用のポイントなどを解説します。
ノーマライゼーションとは
ノーマライゼーションとは、障害がある人を排除するのではなく、障害があってもなくても、だれもが同等に生活できるような社会が正常(ノーマル)であるとする考え方です。
障害がある人だけではなく、高齢者などを幅広く含めて、だれもが豊かに暮らしていける状態をさして、ノーマライゼーションと呼ぶケースもあります。
厚生労働省の定義では、障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指すことがノーマライゼーションの理念とされています。[注1]
ノーマライゼーションと類語との違い
ノーマライゼーションと混同しやすい言葉として、下記の3つがあげられます。
- バリアフリー
- ユニバーサルデザイン
- インクルージョン
それぞれの言葉の意味を確認していきましょう。
バリアフリーとの違い
バリアフリーとは、障害のある人が生活するうえでの障壁(バリア)を除く施策や状態を指します。
たとえば、階段にスロープを設置して、車いすを利用する人が階段を上り下りする障壁が取り除かれている状態は、バリアフリーに当たります。
ノーマライゼーションは、だれもが健常者と同等に生活できる社会が正常とする考えであり、その考えに基づいて、社会のなかにある障壁を取り除く施策をバリアフリーと呼びます。
ユニバーサルデザインとの違い
ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、文化など、人が持つさまざまな個性に関係なく、だれにとっても暮らしやすい社会となるような街づくり、ものづくり、サービス提供をしようとする考え方や設計・デザインです。
だれもが出入りがしやすいように自動ドアを設置する施策や、歩道などの段差解消などがユニバーサルデザインの例として挙げられます。
インクルージョンとの違い
インクルージョンとは、だれもが尊重され、それぞれが能力を発揮して活躍できている状態を指します。
インクルージョンは、近年、教育やビジネスのなかで、重要な概念として広まっています。
インクルージョン(inclusion)を直訳すると、「包括」「包摂」などの意味があり、だれもが社会に参加する機会をもっていること(社会的包摂)をインクルージョンといいます。
>ダイバーシティとインクルージョンの違いに関する記事はこちら
ノーマライゼーションの歴史
ノーマライゼーションは、デンマークの社会省で、知的障害者の施設を担当していたバンク・ミケルセンが提唱した概念です。
バンク・ミケルセンは、「障害があっても、健常者と同じように生活をする権利がある」という理念をもとに、デンマークの障害福祉に大きな影響を与えた人物です。
その後、スウェーデンでもノーマライゼーションの考え方が広まり、さらには世界中へと広まっていきました。
ノーマライゼーションの8つの原理
ノーマライゼーションが、スウェーデンで広く知られるようになった背景には、スウェーデンの知的障害者連盟のベンクト・ニィリエによって、8つの原理に整理されたことがあげられます。
ベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションを実現するためには、この8つの原理を満たす必要があるとしており、概念が明文化されたことで、ノーマライゼーションが広く知られるようになりました。
- 1日のノーマルなリズム
- 1週間のノーマルなリズム
- 1年のノーマルなリズム
- ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験
- ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
- その文化におけるノーマルな両性の形態すなわちセクシャリティと結婚の保障
- その社会におけるノーマルな経済的水準とそれを得る権利
- その地城におけるノーマルな環境水準
ノーマライゼーションの取り組み事例
ノーマライゼーションの理解を深めるためにも、実際の取り組み事例を確認していきましょう。
本記事では、福祉現場・教育現場の取り組み事例を紹介します。
福祉現場におけるノーマライゼーション
福祉の現場では、障害者福祉や介護福祉におけるノーマライゼーションの取り組みがあります。
たとえば、障害者や高齢者向けのグループホームは、ノーマライゼーションの例といえるでしょう。
障害者が働けるカフェなど、働く場所を提供する施策も、障害者が健常者同等の生活を送るための取り組みのひとつです。
教育現場におけるノーマライゼーション
教育現場におけるノーマライゼーションとしては、障害の有無にかかわらず、子どもたちが一緒に教育を受けられる体制づくりをするなどの取り組みがあります。
保育の現場では、専門家が訪問して、障害のある子の支援をおこなう保育所訪問支援があります。
ノーマライゼーションの課題
ノーマライゼーションの実現を阻む課題として、社会における理解がいまだ十分ではない状況があげられます。
法律や制度は整いつつある状況ですが、「ノーマライゼーション」という言葉の意味を知っている人は、いまだに多いとは言えない状況です。
また、ビジネスの現場においては、具体的にノーマライゼーションを実現させるためのノウハウが足りておらず、障害者雇用が進まないといった問題もあります。
ノーマライゼーションの身近な事例
ノーマライゼーションは、身近なところでも進んでいます。
身近なノーマライゼーションの事例を見てみましょう。
ユニバーサルデザイン
だれもが暮らしやすいまちづくりやサービス提供を意味するユニバーサルデザインは、ノーマライゼーションの身近な例といえます。
具体的には、以下のような事例があり、多機能トイレや自動ドアなどは、目にする機会も多いでしょう。
- トイレなどの絵文字表記のピクトグラム
- 多機能トイレ
- 自動ドア
- 歩道などの段差解消
- シャンプーボトルの突起
障害者雇用促進法
障害者雇用促進法では、障害者雇用における差別の禁止や合理的な配慮の義務などが定められています。
これにより、障害者があっても、健常者同等に働ける社会の促進につながっています。
ノーマライゼーションを実現する際のポイント
ノーマライゼーションを実現するにあたって、注意しておきたいポイントがあります。
企業におけるノーマライゼーションの実現における注意点を紹介します。
障害者を特別扱いはしない
ノーマライゼーションでは、障害があっても健常者と同等に生活ができるようにする状態を目指しますが、障害者を特別扱いするのとは異なります。
障害者に対して過保護な扱いをしたり、逆に健常者と同様の生活を強要することも、ノーマライゼーション考え方からは外れています。
ノーマライゼーションの実現には、障害者に対する適切なサポート体制の整備が重要です。
助成金を活用する
障害者雇用では、助成金を活用できます。
障害者を一定期間雇い入れた際に利用できる「トライアル雇用助成金」や、障害者雇用に当たって必要となった施設などの整備に対する費用を助成する「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」などが、助成金の例としてあげられます。
助成金の活用により、企業のノーマライゼーションを促進できるでしょう。
国内のノーマライゼーション取り組み事例
最後に、国内企業における具体的なノーマライゼーションの取り組み事例を紹介します。
ノーマライゼーションの実現を目指す際の、参考にしてみてください。
サポート体制の充実
障害者雇用においては、「どのように接すればいいのかわからない」という現場の悩みが発生するケースも多いでしょう。
障害者へのサポートのために、従業員に対して、ジョブコーチ(企業在籍型職場適応援助者)や、障害者職業生活相談員などの資格取得を積極的におこなっている企業もあります。
多くの資格取得者を確保することで、雇用される障害者はもちろん、だれもが働きやすい職場の実現を目指しています。
制度や職場環境の整備
人事評価、雇用形態、業務内容を障害の有無にかかわらず、同じ条件として定めている企業もあります。
同条件で働くことで、障害があっても、健常者同等に活躍する機会が得られます。
制度面でも、通院が必要な社員に対して、定期的に取得できる休暇制度を設けるのも、環境整備のひとつとして機能するでしょう。
段差の解消など物理的な環境整備も効果的です。
ノーマライゼーションの実現にも「Chatwork」
ノーマライゼーションとは、障害がある人を排除することなく、障害があってもなくても、だれもが同等に生活できるような社会が正常(ノーマル)であるとする考え方です。
社会的に、今後ますますノーマライゼーションへの理解が求められるようになる状況が予想され、企業におけるノーマライゼーションの考え方も重要性を増してくるでしょう。
このような変化の中で、コミュニケーションツールとして、ビジネスチャットを活用する施策は、障害がある社員が働きやすくなるための方法の一つとして、効果的でしょう。
離れた場所にいても、円滑にコミュニケーションが実現できるだけでなく、たとえば、耳が聞こえづらい社員とのコミュニケーションや、メモをとるのが苦手な社員への指示などに役立ちます。
ビジネスチャット「Chatwork」には、チャット機能だけでなく、ビデオ/音声通話機能も搭載されているため、多様なコミュニケーション手段の確保が可能です。
企業のノーマライゼーションの実現にも効果的な「Chatwork」を、ぜひご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[注1]出典:厚生労働省「障害福祉施策の考え方」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/idea01/index.html
※本記事は、2023年8月時点の情報をもとに作成しています。