アファーマティブアクションの意味とは?賛否や日本での事例を徹底解説
目次
多様化が進む現代では「アファーマティブアクション」という言葉を耳にするようになりました。
「アファーマティブアクション」とは少数派が過去に受けてきた差別を改善することを言います。
こうした動きは新たな社会の進歩の象徴として認知が広がる一方で、批判の声も耳にする言葉です。
アファーマティブアクションの意味や具体例について解説します。
アファーマティブアクションとは
アファーマティブアクションは日本語で「積極的格差是正措置」と訳され、「少数派が過去に受けてきた差別を改善する」という意味をもちます。
具体的には、民族や人種などの弱者集団の改善措置のために、差別の撤廃に深く寄与する取り組みを示します。
アファーマティブアクションは、これからの社会における差別の撤廃や格差の改善に役立つと言われています。
アファーマティブアクションの別名
アファーマティブアクションは時に異なる名前で言い表されます。
それぞれ、ニュアンスが若干異なるため、使用するシーンで使い分けられるようにしておくと、より理解が深まります。
アファーマティブアクションの別名と意味について詳しくご紹介します。
ポジティブアクション
アファーマティブアクションとよく似た言葉に「ポジティブアクション」があります。
ポジティブアクションは、特に「女性差別問題を是正する」という意味があります。
社会における女性差別から、「女性の権利を向上させて女性不利を無くす」ということを目的として、ヨーロッパなどの海外で取り入れられています。
ポジティブディスクリミネーション
「ポジティブディスクリミネーション」とは、アファーマティブアクション同様に、弱者集団の不利な状況を歴史や社会的要因を鑑みたうえで是正するための改善措置のことを示します。
その中でも、イギリスにおける非合法の場合の呼び名を「ポジティブディスクリミネーション」と呼びます。
アファーマティブアクションが生まれた背景
アファーマティブアクションが生まれた背景として、1965年にアメリカの36代目大統領のジョンソン氏が差別是正措置を求めたことが始まりとされています。
ジョンソン氏は、特定の民族や階級の人々の進学枠の確保や雇用の割り当てをすることで、平等を目指しました。
アメリカで生まれたアファーマティブアクションは、現在ではインドやマレーシア、南アフリカ共和国で取り入れられています。
2018年7月には、アメリカで大学入学時の少数派優遇措置が撤廃されるなど、その取り組みは今後も注目されています。
アファーマティブアクションの問題点とは?
差別の撤廃や改善に寄与するアファーマティブアクションは正しいことばかりのように思われますが、あらゆる問題点も存在します。
それらの問題点を把握したうえで推進していかないと、思わぬ問題に直面しかねません。
アファーマティブアクションの問題点を詳しくみていきましょう。
個人の能力が軽視されてしまう可能性
アファーマティブアクションには、個人の能力が軽視されてしまう可能性があります。
クオータ制を導入している場合は、それぞれの属性における採用枠が設けられるため、個人の能力が軽視されてしまう恐れがあります。
進学や就職の枠を埋めるために、「必要な能力」ではなく「採用枠」を基準に判断する状況に注意が必要です。
逆差別を助長させてしまう可能性
アファーマティブアクションは、時に逆差別を助長させてしまうこともあります。
差別を是正するための優遇措置を実施する一方で、マジョリティに対する差別を引き起こす可能性もあります。
アメリカではクオータ制が違憲であるという議論が発生したものの、今は合憲とされており、優遇措置の程度についてはいまだ議論が続いています。
アファーマティブアクションの代表的な手法
民族や性別などにおける少数派の差別を失くすため、世界各地でアファーマティブアクションが注目を集めています。
その中で、実際にはどのような方法でアクションを起こしているのでしょうか。
本記事では、中でも代表的な2つの手法を紹介します。
クオータ制
クオータ制とは、社会組織(政治、企業、教育など)の中で、特定の属性を持つ人に対して一定の枠を割り当てる制度を示します。
クオータ制の導入には、多様なバックグラウンドを持つ人たちが不利益を被っている状況を是正する目的があります。
人材のダイバーシティ化や多様な人材の社会進出促進を促すメリットがある反面、逆差別や運用問題などの課題も残ります。
現在では、100か国以上の国で導入・法制度化されています。
ゴール・アンド・タイムテーブル方式
「ゴール・アンド・タイムテーブル方式」はアファーマティブアクションのひとつで、男女格差を是正する手法です。
女性が指導的地位に就く割合の目標を設定して、達成までの期間を区切って一定の人数や割合を割り当てる方法です。
女性の職域拡大や仕事と生活の調和、研修の機会の充実、メンター制度など、多様なポジティブ・アクションの手法のひとつとして挙げられます。
日本におけるアファーマティブアクションの事例
日本でもアファーマティブアクションが実践されていますが、女性の社会進出は他の先進諸国と比べてもまだ低い水準です。
そのため、女性の参画を進めることを目的に「男女共同参画基本計画」が取り入れられています。
2010年12月には、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標が閣議決定されました。
この閣議決定により、再就職や企業における女性の働きやすい環境づくりや、暴力の根絶、健康支援など、女性をサポートするための働きかけが顕著に実施されています。
日本におけるアファーマティブアクション実践への取り組み
世界各地で取り組みが実施されているアファーマティブアクションですが、日本ではどのような取り組みが実施されているのでしょうか。
日本は、ほかの先進諸国と比較すると権利や差別に対する取り組みが後進的と言われています。
そんな中でもアファーマティブアクション実践に向けた具体的な取り組みを見てみましょう。
男女共同参画2000年プラン
「男女共同参画2000年プラン」は、男女共同参画社会づくりの促進のために1996年の12月
に作成されました。
この取り組みは、女性の人権や健康、メディアとの関わりなど、取り組むべき課題を踏まえて作成されたものです。
2000年までに政府が取り組むべき施策を整備するために計画され、1995年の「第4回世界女性会議」の「北京宣言及び行動綱領」による要請に対応したものといえます。
男女雇用機会均等法
「男女雇用機会均等法」は、男女の雇用における均等な機会と待遇の確保、および女性労働者の妊娠中や出産後の健康の確保を図ることを目的として制定されました。
採用や昇進、解雇などに男女の差別がなく、女性が出産・育児を尊重しながら差別されることなく仕事ができる環境づくりを進めています。
アファーマティブアクションの企業事例
法整備だけにとどまらず企業単位でアファーマティブアクションに取り組むことも重要です。
それぞれの企業が抱えている課題に対して、どのような取り組みを実践しているのでしょうか。
日本国内でアファーマティブアクションを実践している企業の具体的な事例を見てみましょう。
大手航空会社の事例
国内大手航空会社では半数が女性従業員であることから、女性が活躍できる場の発掘と女性の視点を事業運営に取り込むことを目標にしています。
「最大3年取得可能な育児休暇制度の整備」「2014年度から一時保育補助、月極保育補助育児用品レンタル補助などのサービス拡大」など、さまざまな取り組みを実践しました。
その結果、女性管理職の数と比率が年々増加してきている結果につながっています。
大手証券会社の事例
国内大手証券会社では、2005年まで総合職・一般職の区分が存在し、男女間の職種が分かれていました。
アファーマティブアクションを実践し、女性の働き方に特化したセミナーを実施したり、専攻に必要な内容の研修を受講した面接官を男女共に設置したりしました。
その結果、社員の男女比がどの世代でもほぼ同数になりました。(取り組み以前の50歳以上の世代を除く)
海外でのアファーマティブアクションの取り組み事例
アメリカが発祥とされるアファーマティブアクションですが、今では世界各地で取り組みが進んでいます。
- アメリカ
- ノルウェー
- フランス
- インド
各国の取り組みを紹介します。
アメリカ
アメリカでは大学入試や雇用において、少数民族や女性に対する優遇措置が取られており、これを「クオータ制(割り当て制)」といいます。
たとえば、入試試験において、定員のうち一定の割合をマイノリティーに割り当てることを指します。
しかし、自分の実力で合格しても「アファーマティブアクションのおかげだ」などと言われたり、逆差別や偏見につながったりする可能性もあるため、この制度については長く議論が続いています。
ノルウェー
ノルウェーでは、1978年に男女平等法が成立し、差別の禁止と積極的措置が義務化されました。
これにより女性の労働市場への参加が増加し、公的機関や教育機関においてジェンダー平等が進んだといいます。
また、2003年には、上場企業の取締役会における女性の割合を40%とする法が制定され、この義務を守らない企業には厳しい措置が取られています。
フランス
フランスでは2000年に「男女同数制(パリテ法)」が制定され、選挙において、各政党で男女同数の候補者を擁立することを義務付けています。
パリテ法をきっかけに、国民議員の女性議員比率は大幅に増加し、女性の政治参画が進みました。
フランス社会全体で男女平等の重要性が認識され、性別に関係なく能力に基づいて評価される文化が形成されつつあります。
インド
インドでは、カースト制度における歴史的な差別をなくすために、社会的・経済的に不利な立場にあるグループを対象にした政策があります。
たとえば、教育機関や雇用先、政治において、指定のグループに対し、一定の入学枠や雇用枠、議席を確保する制度があります。
教育水準や経済状況は改善されつつありますが、逆差別を生んでいるという懸念や、恩恵が一部に留まり広く行き渡っていないという問題もあるようです。
企業がアファーマティブアクションに取り組む際の注意点
アファーマティブアクションに取り組む際には、すべての社員にアファーマティブアクションへの理解を促すように注意しましょう。
中には、男性社員が女性優遇だと勘違いして不満を感じることがあります。
実際、アファーマティブアクションに取り組むことで、男性からの応募数の減少や、女性従業員の妊娠・出産や育児・介護などで、継続就業を阻まれる可能性があることもデメリットとしてあがっています。
評価制度の明確化や働き方の多様化は、女性以外のすべての社員にメリットがあることを理解してもらうようにしましょう。
働きやすさのサポートに「Chatwork」
少数派の差別を撤廃するアファーマティブアクションは重要であり、これからの社会でより積極的に取り入れられるべきアクションです。
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