【社労士監修】出産手当金とは?支給条件や申請の流れをわかりやすく解説

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働き方改革
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【社労士監修】出産手当金とは?支給条件や申請の流れをわかりやすく解説

目次

出産を予定している従業員は、出産前後で産休を取得することが法律上認められています。

しかし、産休中は企業側に給与の支払い義務がありません。

そのため、産休で仕事を休まざるを得ない従業員の生活保障として、健康保険から「出産手当金」が支給されます。

出産を控えている人や、手続きをする担当者は、出産手当金の支給条件や申請方法を本記事で確認していきましょう。

出産手当金とは?

出産手当金とは、産休中の従業員の生活保障として健康保険から支給される給付金のことです。

労働基準法では、企業には産休中の賃金支払いが義務付けられていないため、産休中に給与が支払われるかは企業によって異なります。

もし産休中に給与が支払われない場合は、必然的に女性従業員の収入が減ってしまうため、産休中の生活保障として出産手当金が支給されます。

出産手当金の支給条件とは

出産手当金の支給条件は以下のとおりです。

  • 勤務先の健康保険に加入している
  • 妊娠4か月以降の出産である
  • 出産のために休業している

それぞれの条件について、詳しく解説していきます。

勤務先の健康保険に加入している

出産手当金の対象となるには、勤務先の健康保険に加入していることが条件です。

健康保険に加入するためには、原則として社会保険の適用事業所に勤めている正社員、または1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上で雇用されてなければなりません。[※1]

ただし、101人以上の事業所で以下の条件に該当する場合は健康保険に加入します。[※2]

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 賃金の月額が8.8万円以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

条件に該当せず、勤務先の健康保険に加入していない場合は、出産手当金の対象となりません。

>社会保険の加入条件に関する記事はこちら

妊娠4か月以降の出産であること

出産手当金は、妊娠4か月(85日)以降の出産を対象としています。

ここでいう「出産」とは、早産・流産・人工妊娠中絶も含まれます。[※3]

なお、早産・流産・人工妊娠中絶による出産の場合にも、産後8週間(56日)は原則働くことが禁止されており、出産手当金の支給対象となります。

出産のために休業していること

出産手当金は「出産のため休業をしている従業員」に給付されます。

そのため、産休のため休業しており、かつ給与が支払われていないことが条件です。

ただし、産休中に支払われる給与が出産手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。

出産手当金の対象外になるケースとは

出産手当金は、以下のケースに該当する場合に対象外となります。

  • 国民健康保険に加入している
  • 扶養家族として健康保険に加入している
  • 健康保険を任意継続している
  • 産休中の給与が出産手当金の日額を超えている

それぞれのケースを詳しく解説します。

国民健康保険に加入している

国民健康保険には出産手当金の制度がありません。

出産手当金は、会社員が加入する健康保険の被保険者が対象となる制度です。

そのため、自営業などで国民健康保険に加入している方は、出産手当金の対象外となりますので、注意しましょう。

扶養家族として健康保険に加入している

出産手当金は、健康保険の被保険者が産休で給与が支給されない場合に生活保障として支給されるものです。

扶養家族として健康保険に加入している方が産休で休んでいても出産手当金は支給されません。

健康保険を任意継続している

任意継続とは、一定の条件を満たせば退職後も引き続き健康保険に加入できる制度です。

任意継続で健康保険に加入している場合は、原則として出産手当金の対象外となります。

ただし、資格喪失日(退職日の翌日)までに継続して1年以上の健康保険に加入している従業員が出産手当金を受けている、または受ける条件を満たしていれば退職後も受給することができます。[※4]

産休中の給与が出産手当金の日額を超えている

産休中に給与が支給される場合は、給与が出産手当金の日額を超えると出産手当金が支給されません。

ただし、出産手当金の日額が給与額を上回る場合は、その差額が支給されます。[※3]

出産手当金を受け取れる期間

出産手当金が受け取れる期間は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日後56日までの範囲内で、給与の支払いがなかった期間です。

ただし、出産予定日より遅れて出産した場合は、遅れた日数分も加算されるため、42日+α日が支給されます。

なお、出産日が遅れた場合でも、出産日後56日の休業期間は変わりありません。

産休中に有給は取得できる?

有給休暇は産前休業の期間のみ取得できます。

産後休業期間中は、労働基準法により労働が禁止されているため、有給休暇は取得できません。

なお、産前休業中に有給休暇を取得すると給与が支払われるため、給与額が出産手当金の日額を上回る場合は出産手当金の支給されないので注意しましょう。

出産手当金の支給額と計算方法

出産手当金の1日あたりの支給額は以下の計算方法で決定します。

支給開始日以前12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2
[※4]

たとえば、標準報酬月額が26万円の月が2か月、30万円の月が10か月だった場合、以下のように計算されます。

(26万円×2か月+30万円×10か月)÷12か月(10円未満四捨五入) ÷ 30日 × 2/3 = 6,520円(1円未満四捨五入)

ただし、支給開始日以前の加入期間が12か月に満たない場合は、以下のいずれか低い額を使用して計算します。

  • 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
  • 全被保険者の標準報酬月額の平均額

なお、「全被保険者の標準報酬月額の平均額」は加入している健保によって異なります。

出産育児一時金との違いとは

出産育児一時金とは、出産にかかる費用の負担軽減を目的とした給付です。出産は病気ではないという考えであるため、医療費は全額自己負担になります。

出産育児一時金は、出産にかかる費用を軽減する目的で、一律50万円(多胎妊娠の場合は100万円)が支給されます。[※3]

なお、出産一時金は国民健康保険の加入者や扶養家族なども対象となります。

出産手当金の申請方法・流れ

出産手当金の一般的な申請方法は以下のとおりです。

  1. 従業員から産休の申請を受ける
  2. 健康保険出産手当金支給申請書を準備する
  3. 従業員に書類を渡す
  4. 医師・助産師の証明をもらう
  5. 事業主の証明欄を記入する
  6. 健康保険出産手当金支給申請書を提出する

手順に沿って解説します。

手順(1):従業員から産休の申請を受ける

従業員から妊娠の報告を受けたら、いつから産休を取得するのかを確認しましょう。

社内では、正式な休業期間を把握するために「産休申請書」などの社内書類を用意するのが一般的です。

手順(2):健康保険出産手当金支給申請書を準備する

協会けんぽに加入している場合は、出産手当金の申請に必要な「健康保険出産手当金支給申請書」がホームページからダウンロードできます。[※5]

健保組合に加入している場合は、独自の書類が用意されている場合がありますので、健保組合の担当者から書類をもらいましょう。

手順(3):従業員に書類を渡す

準備した書類は医師・助産師の証明が必要になるため、産休前に従業員に渡すのが一般的です。

従業員側で記入が必要な箇所があるため、記入漏れがないよう記入例なども一緒に渡しましょう。

手順(4):医師・助産師の証明をもらう

出産手当金の申請書には、医師または助産婦に出産日や出生児数などを証明してもらう欄があります。

従業員には医療機関に申請書を持参してもらい、証明欄に必要事項を書いてもらうよう事前に説明しておきましょう。

なお、医師または助産師の証明は1回目の申請のみ必要であり、2回目以降の申請は必要ありません。

また、病院によっては、申請書への記入に文書料がかかる場合があります。

手順(5):事業主の証明欄を記入する

事業主の証明欄には、産休中の勤怠状況や支払われた賃金などを記入します。

勤務表や賃金台帳などを参考に正確に記入しましょう。

記入方法が不明な場合は、加入している健保の担当者に確認しながら記入した方が不備なく申請ができます。

手順(6):健康保険出産手当金支給申請書を提出する

必要事項をすべて記入し終えたら、協会けんぽ、または加入している健保組合に「健康保険出産手当金支給申請書」を提出します。

一般的に出産手当金の申請は、産休後にまとめて行うケースが多いですが、出産後と産休後と2回に分けて申請することも可能です。

出産手当金が支給されるまでには申請から1〜2か月ほどかかります。

企業ができる子育てと仕事両立のサポートとは

従業員が出産・育児をしながら仕事を継続するためには、企業のサポートが不可欠です。

従業員が育児と仕事を両立でき、安心して働ける環境を整えるためには、以下のような取り組みをしてみるとよいでしょう。

  • 多様な働き方を採用する
  • 復職しやすい環境を整備する
  • 休暇や休業を取得しやすい環境を整備する
  • ワークライフバランスの重要性を周知する

所属しているチームのリーダーだけでなく、メンバーの理解も必要となるので情報共有をしっかりしておく必要があります。

それぞれの取り組みについて、詳細を見ていきましょう。

多様な働き方を採用する

多様な働き方とは、従業員一人ひとりのライフスタイルやニーズに合わせて、働く時間や場所を柔軟に選べる働き方のことです。

子育て中の従業員にとって、多様な働き方は、仕事と子育ての両立を実現するために欠かせません。

たとえば、時短勤務や在宅勤務を導入することで、育児休業から復帰した従業員は保育園の送迎や子どもの急な病気などに対応しやすくなります。

また、男性従業員も育児休業や時短勤務を利用することによって、家事や育児に積極的に参加し、子育てをしながら仕事を続けやすくなります。

>男性育休に関する記事はこちら

復職しやすい環境を整備する

子育て中の従業員が復職しても職場環境が整っていないと、仕事の継続が難しくなるケースがあります。

たとえば、短時間勤務で働く従業員が所定労働時間で帰宅できないほどの業務をかかえてしまう、子どもの急な病気や保育園の送迎などの影響で早退した際のフォロー体制が整っていない、などといった場合です。

企業は、このようなケースを防ぐために、復職しやすい環境を整備する必要があります。

具体的には、育児休業中の従業員と定期的に面談を行い、復職後の希望や不安を把握したり、復職後の職場環境や仕事内容を従業員と相談したりして調整するなどが考えられます。

企業が復職しやすい環境を整備し、安心して仕事に復帰できる職場を作りましょう。

休暇や休業を取得しやすい環境を整備する

子どもは免疫力が低いため病気にかかりやすく、子育て中の従業員は仕事を休まざるを得ない機会が多くなります。

しかし、休暇を取得する際に、上司や同僚からの理解や協力が得られないと、取得が難しいと感じてしまう従業員も少なくありません。

そのため企業は、従業員の業務を代替する体制を整えたり、取得を奨励する企業文化を醸成したりなど休暇を取得しやすくなる環境を整備する必要があります。

ワークライフバランスの重要性を周知する

ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」を意味し、仕事とプライベートの両方を充実させた状態のことをいいます。

子育て中の従業員にとって、ワークライフバランスの実現は、仕事と子育ての両立を実現するために欠かせません。

そのため企業は、ワークライフバランスの重要性を周知し、従業員一人ひとりが仕事とプライベートの両方を大切にする意識を高めるとともに、子育てと仕事の両立を実現できるように支援する必要があります。

定期的にワークライフバランスに関する社内研修やセミナーを開催したり、社内報などで周知したりなど、全従業員にワークライフバランスの重要性が認知される取り組みを行いましょう。

>ワークライフバランスに関する記事はこちら

ワークライフバランスの実現に「Chatwork」

出産手当金は、産休中の従業員の生活保障として健康保険から支給される給付金です。

原則、出産日以前42日から出産日後56日までの範囲内で、給与の支払いがなかった期間に支給されます。

企業側は制度の概要を知るだけではなく、出産を控えた従業員の不安を解消するために、支給条件や申請方法を適切に説明する必要があります。

出産を控えた従業員に出産手当金の説明をするときや、職場復帰後の制度・サポート体制を伝えるツールとしてビジネスチャットの活用がおすすめです。

ビジネスチャット「Chatwork」はチャット機能やビデオ通話、ファイル共有などを兼ね備えたコミュニケーションツールで、制度に関する質問や書類のやり取りもスムーズにできます。

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[※1]出典:日本年金機構:「私は、パートタイマーとして勤務しています。社会保険に加入する義務はありますか。」
https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/hihokensha/20140902-07.html
[※2]出典:日本年金機構:「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html
[※3]出典:全国健康保険協会「出産に関する給付」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31712/1948-273/
[※4]出典:全国健康保険協会「出産手当金について」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/
[※5]出典:全国健康保険協会「健康保険出産手当金支給申請書」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r125/

※本記事は、2024年4月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

記事監修者:北 光太郎

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。

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