【社労士監修】コロナハラスメントとは?職場での対策方法を解説
目次
2020年より新型コロナウイルスが突如として蔓延し、感染対策としてさまざまな規制や注意喚起がなされました。
2024年4月時点では、コロナウイルスは第5類感染症に移行し規制が緩和されていますが、未知のウイルスに不安を抱えている状況は変わりません。
しかし、職場において過剰に警戒や対応を要求することは、ハラスメントにつながる可能性があります。
本記事では、職場におけるコロナハラスメントについて詳しく解説します。
コロナハラスメントとは
コロナハラスメントとは、新型コロナウイルスの感染を理由に、差別や嫌がらせをすることです。
過去に新型コロナウイルスに感染したことを理由として、人格を否定するような言動を行ったり、集団で無視をして職場で孤立させたりなどがコロナハラスメントにあたります。[※1]
コロナハラスメント防止のためには、従業員に新型コロナウイルスに対する正しい知識を身につけさせ、お互いを思いやれる職場環境を作ることが大切です。
コロナハラスメントの具体例
コロナハラスメントとは、具体的にどういったものなのでしょうか。
日常の何気ない行為が、コロナハラスメントになっている場合があり、たとえば、以下のような内容が挙げられます。
- 感染を理由としたハラスメント
- 行為によるハラスメント
- コロナに関するパワハラ(パワーハラスメント)
具体例を見ながら、自身や周りの行動についても見直してみましょう。
感染を理由としたハラスメント
新型コロナウイルスの感染を理由としたハラスメントの具体例は以下のとおりです。
- 感染経験者に対して過度に距離を取る
- 不当に長期間自宅待機させる
- 本人に承諾なく席を変える
また本人だけはでなく、家族が新型コロナウイルスに感染したことを理由に行うハラスメントもコロナハラスメントに該当します。
行為によるハラスメント
行為によるハラスメントとは、コロナウイルスに関しての正しい知識がなく、感染防止に取り組まないハラスメントのことを指します。
具体的には以下のような行為を指します。
- 咳こんでいるのにマスクをしない
- コロナ感染の検査をせずに体調不良で出社する
ただし、2024年4月時点ではマスクの着用は本人の意思で判断されるものとなっています。
マスク着用の有無を理由に暴言を吐く行為はハラスメントに該当します。
なお、「マスクを取って顔を見せて」と言う行為も、本人が嫌がる場合はハラスメントにあたる可能性があるため、注意しましょう。
コロナウイルスに関するパワハラ
コロナウイルスに関するパワハラは、以下の行為が該当します。
- 感染したことを理由に仕事を減らす
- 繁忙期に感染した人を暴言や罵倒をする
- 「客に失礼だからマスクはするな」と言う
また、「感染すると業務が回らなくなるから」という理由で、熱や咳などの症状があっても仕事を病院に行かせないこともハラスメントに該当します。
新型コロナウイルスは感染力が非常に強く、対策をしていても感染してしまう可能性があるウイルスです。
感染したことを理由に仕事を減らしたり、罵倒を浴びせたりする行為はパワハラに該当します。
コロナハラスメントの発生状況
東京大学医科学研究科の「新型コロナウイルスに関わる全国労働者オンライン調査」によると、15人に1人がコロナハラスメントを経験しているとの結果が出ています。[※2]
この調査は、2020年3月から5月にかけての新型コロナウイルスに関連した職場のハラスメントの頻度と、その関連要因を調査してまとめたものです。
調査によると、2020年3月時点でハラスメントを受けていた割合は2.8%、5月時点では6.5%でした。
また、医療従事者は、一般労働者と比較して、3月、5月時点ともに高い頻度でハラスメントを受けていることがわかっています。
ハラスメントの内容で最も多かったのは、「嫌味を言われた」で、次に「嫌がらせを受けた」「職場の人から避けられた」と続いています。
特に子どもがいる世帯や肉体労働の職種など、人と接する機会の多い人に対して、ハラスメントが起きやすいとの結果が出ています。
企業に求められるコロナハラスメント対策
コロナハラスメントを防ぐためには、企業側が対策に取り組む必要があります。
正しい情報の周知だけでなく、ハラスメントが発生した際にどう対処するかなど、以下のような具体的な対策が必要です。
- 企業方針の明確化
- 相談窓口の設置・運営
- ハラスメントに関する処罰の周知
- ハラスメントに関する研修の実施
- オフィスにおける感染症防止対策
それぞれの対策を詳しく解説します。
企業方針の明確化
企業で方針を明確化することはコロナハラスメント対策において重要な取り組みです。
企業が職場におけるコロナハラスメントの内容やハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に周知・啓発しましょう。
企業方針を明確化することにより、従業員は安心して業務を行うことができ、管理者も方針のもとに注意喚起することができます。
相談窓口の設置・運営
2020年6月1日に施行されたパワハラ防止法では、企業に対してパワハラ対策のための相談窓口の設置が義務化されています。[※3]
コロナハラスメント対策として、陽性者や感染者への差別・嫌がらせについても相談窓口で相談して良い旨を周知しましょう。
コロナハラスメントが発生してしまった際に相談する窓口があれば、被害者も安心することができます。
また、相談窓口が設置されていることで、従業員一人ひとりがコロナハラスメントをしていないか、意識を高めることができます。
ハラスメントに関する処罰の周知
ハラスメント行為をした場合に、どのような処罰に科されるかを周知することで、コロナハラスメントの抑制につながります。
ハラスメントによって懲戒処分を科す場合は、就業規則に懲戒処分に関する規定が定められていることが条件です。
懲戒処分に関する規定が就業規則にない場合は、原則懲戒処分を科すことができないため、注意しましょう。
ハラスメントに関する研修の実施
コロナハラスメントを防止するためには、従業員に正しい知識を身につけさせることが重要です。
研修によって、どのような行為がコロナハラスメントにあたるのかを周知させることで、ハラスメントの防止につながります。
たとえば、感染した人に対してどのような対応を取る必要があるのか、マスクをしない状態で咳をすることはコロナハラスメントにあたるのかなど、研修を通じて従業員に正しい知識を身につけさせましょう。
オフィスにおける感染症防止対策
オフィスの中には呼吸器に疾患がある人や、家族に感染すると重症化してしまう恐れがある人もいます。
健康な人だけでなく、感染に対して不安を抱えた人も安心できるよう感染症防止対策を講じましょう。
たとえば、「時間を決めて換気を行う」「オフィスに入るときは必ず手指の消毒をしてもらう」など、全従業員が共通する行動を徹底させることが考えられます。
また、熱や咳などの症状があるときは無理に出社せずに休むよう促すことも、感染防止対策となります。
コロナハラスメントが発生する要因
コロナハラスメントが発生してしまう主な要因は、未知のウイルスに対する恐怖などが影響し、過敏になってしまうためです。
安全安心という欲求が満たされない状況で、抱えきれなくなった不安が感染した人に嫌がらせをしたり、圧力をかけたりする行為に発展してしまいます。
企業は、従業員に正しい知識を身につけさせ、その上でコロナハラスメントの発生を予防するために、適切な職場環境の整備やテレワーク・リモートワークの導入などを検討する必要があります。
ハラスメント対策に「Chatwork」
コロナハラスメントとは、新型コロナウイルスの感染を理由に差別や嫌がらせをすることです。
職場におけるコロナハラスメントは、従業員のモチベーション低下や就労環境の不満を増加させる要因となります。
企業は、適切な職場環境の整備やテレワークの導入などの新型コロナウイルス対策を講じ、従業員が安心して働ける環境作りを進めましょう。
ビジネスチャット「Chatwork」は、チャット機能だけではなく、ビデオ通話やファイル共有機能を兼ね備えたチャットツールです。
情報共有が気軽にできるため、テレワークでのコミュニケーションを活性化させるツールとして多くの企業で導入されています。
コロナハラスメント対策に、ぜひ「Chatwork」の導入をご検討ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※1]出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000805599.pdf
[※2]出典:東京大学医科学研究科「職場でのコロナハラスメントの頻度およびその関連要因」
https://dmh.m.u-tokyo.ac.jp/e-coco-j/09.shtml
[※3]出典:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf
※本記事は、2024年4月時点の情報をもとに作成しています。
記事監修者:北 光太郎
きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。