【社労士監修】ハラスメント・ハラスメントとは?具体例や対処法を解説
目次
近年、セクシャルハラスメント(セクハラ)・パワーハラスメント(パワハラ)・モラルハラスメント(モラハラ)など、様々なハラスメントを耳にする機会が増えています。
ハラスメントに対する価値観も変わりつつある昨今、「ハラスメント・ハラスメント」というハラスメントが登場するようになりました。
「ハラスメント・ハラスメント」とは、ハラスメントの概念を逆手にとって、嫌がらせを仕掛けるハラスメントのことです。
今回は、ハラスメント・ハラスメントの概念や具体例、対処法について、わかりやすく解説していきます。
ハラスメント・ハラスメントとは
「ハラハラ」というハラスメントを耳にしたことはありますか。
「ハラハラ」とは、ハラスメント・ハラスメントの略語で、同僚や上司の言動に、不快感・嫌悪感を覚えた際に、過剰な反応をして「ハラスメントだ」と主張したり、ハラスメントの概念を逆手にとって、嫌がらせを仕掛けたりするハラスメントのことです。
たとえば、適切に指導をしているのに、「パワハラなので訴えます」などと従業員から告発される場面などが、ハラハラに該当します。
ハラスメントの性質を逆手にとり、意図的に嫌がらせをする行為は非常に悪質であり、近年ハラハラに頭を抱える企業も多く見受けられます。
ハラハラへの対応方法について、詳しくみていきましょう。
ハラスメント・ハラスメントが生まれた背景
近年、パワハラやセクハラだけでなく、モラルハラスメントやリモートハラスメントなど、様々な「ハラスメント」が定義付けされ、対処するための法整備が進んでいます。
この変化のなかで、「ハラスメントは、コンプライアンス上、許されることではない」という意識が浸透してきました。
ハラスメントに対する意識が高まる傾向自体は歓迎すべきなのですが、ハラスメント関連の事案のなかには、周囲の言動に過剰に反応してしまい、安易にハラスメントを訴えるケースも見受けられるようになっています。
また、適切に指導・注意しているつもりの管理職や同僚が、ハラスメントに委縮し、適切な指導が阻害されるといった場面も見受けられています。
このように、ハラスメントに対する意識の高まりが影響して、ハラスメントを逆手にとる「ハラスメント・ハラスメント」という、ハラスメントが生まれるようになりました。
ハラスメント・ハラスメントの具体例
ハラスメント・ハラスメントは、パワハラやセクハラ、モラハラなど、ほかのハラスメントの性質を逆手にとったハラスメントのため、判断に悩むことが多いでしょう。
どのような時にハラハラが起こるのか、ハラハラの具体例をみていきましょう。
パワハラの例
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場での地位や役職などの立場を利用して、嫌がらせをおこなうものです。
パワハラにおけるハラハラの例としては、上司からの適切な指導や注意に過剰反応をして、パワハラを訴えるケースがイメージしやすいでしょう。
たとえば、以下の言動が、ハラハラを引き起こしやすいパワハラの一例です。
- 部下の言葉遣いや勤務態度を注意する
- 難易度の高い業務を部下に与える
- 難易度の低い業務を部下に与える
- 体調不良の部下に様子を尋ねる
パワハラに該当するか否かは、「平均的な物事の感じ方」を基準に、事案ごとに、当事者がどう感じていたのかを、個別具体的に判断すべきです。
しかし、「平均的な物事の感じ方」は、時代によって変わるうえに、当然、個人ごとにも違いがあります。
そのため明確に、「これはパワハラに該当する」「該当しない」を線引きすることはできないでしょう。
当事者が「嫌がらせ」と感じた事案が、パワハラなのか、ハラハラなのかを判断することは、とても難しいことがわかります。
>【社労士監修】パワーハラスメントの定義とは?に関する記事はこちら
セクハラの例
セクシャルハラスメント(セクハラ)は、労働者の意に反する性的な言動がおこなわれ、それに対する労働者の反応で、労働条件や就業環境が害される嫌がらせのことです。[※]
セクハラに関連するハラハラで想定しやすいのは、女性従業員の髪型について、社内規則に反するとして注意する、あるいは褒めるといった言動に対して、ハラスメントだと訴えるケースが、イメージしやすいでしょう。
パワハラと同様、セクハラに該当するか否かは、「当人の感じ方」が、判断基準のひとつとなります。
たとえば、同僚のAとBに同じ言動をした場合、同僚Aは嫌悪感を抱かず、同僚Bのみが嫌悪感を抱いたとします。
この場合、同僚Bが嫌悪感を抱いた時点で、セクハラに該当する可能性が出てくるのです。
セクハラとハラハラの線引きは、パワハラと同様に難しいため、これを利用して、特定の人物を陥れるために、セクハラを訴えるといった事例もあるでしょう。
企業にとっては、非常に危惧すべき事例といえるでしょう。
モラハラの例
モラルハラスメント(モラハラ)とは、倫理・道徳に反する言動や態度などによる嫌がらせのことです。
職場においては、プライベートに干渉する、暴言を吐く、業務妨害をするなどの言動が、モラハラに該当します。
モラハラに関連するハラハラで想定しやすいのは、「いつ結婚するんだ」「いつになったら仕事を覚えるんだ」など、軽いジョークのつもりで発言した内容が、「人格を否定された」と捉えられるケースです。
モラハラも、個人の捉え方ひとつで、重大なハラスメントにつながりかねません。
「昔はこうだった」「自分も言われたことがある」など、個人の価値観のみで発言し、相手を傷つけることは、ハラハラではなく、モラハラです。
自分の発言や行動には責任をもち、注意することが大切です。
>【社労士監修】モラルハラスメントとは?に関する記事はこちら
ハラスメント・ハラスメントの対策に必要なこと
ハラハラは、様々なハラスメントが定義付けされ、ハラスメントに対策する意識が高まった時代の、いわば副産物であるということができるでしょう。
また、「ハラスメントは許されないこと」という共通認識を逆手にとった新手の嫌がらせであると表現することもできます。
当然ハラスメントは容認されるべきではありませんが、なんでもかんでも「ハラスメントだ」と過剰反応してしまうと、指導・注意する立場の人間は委縮してしまい、正常な業務にも支障をきたすことになります。
一方で、「なんでもかんでもハラスメントと訴えるのは正しくない」という考え方や風潮が強くなってしまえば、実際にハラスメントに該当する事案が野放しになってしまいかねません。
そのため、ハラスメントとハラスメント・ハラスメントのバランスを判断するのは、非常に難しく、対処することも困難です。
ハラ・ハラと適切に向き合うためには、まずは、そもそも「ハラスメント」とはなにかを、従業員全員が正しく理解をすることが大切です。
社内でハラスメントが発生することは、企業にとっても非常に大きなリスクです。
ハラスメントに関する正しい知識を従業員がもてるように、社内周知を徹底していきましょう。
>【社労士監修】ハラスメントの定義とは?に関する記事はこちら
ハラスメント・ハラスメントの対処法
多くの人が悩みを抱えるハラスメントを逆手にとって、ハラスメント・ハラスメントをおこなうことは、非常に悪質であり、企業活動を大きく損なうリスクもあるため、慎重に、迅速に対処すべきです。
ハラハラに対処する際は、以下の4つのポイントをおさえることが大切です。
- ハラスメントの理解を深める
- ハラスメントガイドラインを作成する
- 客観的な証拠を残す
- 毅然とした対応を心がける
ハラハラの対処法について、それぞれのポイントをみていきましょう。
ポイント(1):ハラスメントへの理解を深める
ハラハラの対処をする前に、まずは、そもそも「ハラスメントとはなになのか」という正しい知識を、従業員に周知し、ハラスメントに関する共通認識を、社内全体で形成する必要があります。
周知をおこなう方法は、社内で研修やセミナーをおこなう方法と、外部の講師や研修、セミナーを活用する方法などがあります。
社内でおこなう方法は、外部に委託するよりも手軽におこなうことができますが、社内にハラスメント関係で問題のある従業員がいる場合は、外部から専門的な知見をもつ講師を招く方が、当該従業員も素直に耳を傾ける可能性が高まります。
また、ハラスメントに関する共通認識を形成する段階で、ハラハラも含めた各種のハラスメントについての説明をおこない、「ハラスメントは、当然許されるべきではないが、ハラスメントを逆手にとって、上司や同僚を委縮させるおこない、つまりハラハラも、会社としては処分の対象となる」という方針を周知することも大切です。
いきなりハラハラの問題に切り込む前に、どういったことがハラハラに該当しうるのか、そしてハラハラも懲戒対象となるという可能性を示すことで、後々トラブルに至った場合も、共通認識を軸に、会社として対処をしやすくなります。
また、ハラスメントに関する企業の方針を社内周知することは、後述するガイドライン作成においても非常に重要です。
ポイント(2):ハラスメントのガイドラインを作成する
ハラスメントに関する企業の方針をベースに、ガイドラインを作成することも、ハラスメント対策においては重要です。
ガイドラインを作成しておくと、ハラスメントに対する企業の考え方や方針を、いつでも客観的に確認することができるようになります。
研修やセミナーなどの対応は、一時的には効果を発揮しますが、時間の経過とともに、記憶が風化しやすいでしょう。
しかし、いつでも確認できるガイドラインがあれば、経営層・従業員ともに、いつでも確認することが可能です。
また、トラブルに発展し、行政等の介入があった際も、企業としてどのようにハラスメントに対する管理体制をとっていたのかを客観的に示すことができます。
このような客観的な証拠の積み重ねが、トラブル解決の大きな土台となるため、軽視せずに、しっかりと対応することが大切です。
ガイドライン化にあたっては、他社のガイドラインや、外部団体が参考に提供しているフォーマット等を流用しても問題はありません。
他社事例を参考にする場合は、必ず各項目を確認し、自社の実情に応じて加筆訂正を加えて、自社に最適化させたものを作成しましょう。
ポイント(3):客観的な証拠を残す・複数人で対応する
ハラハラに限らず、ハラスメントに関するトラブルにおいて、それがハラスメントに該当するのか、どれほど悪質なのか判断する場合は、以下の項目を基本とした、状況把握が重要になります。
- だれが
- だれに対して
- なにを
- どのような言動をしたのか
近年、労使トラブルの際に、当事者の一方がボイスレコーダーなどを利用して、当時の状況を記録するといった場面が多く見受けられますが、トラブルが表面化し、労使トラブルに発展する兆候が見られる際は、当事者の双方が合意したうえで、当事者の発言を媒体に記録しておくと、後々の「言った言わないの水掛け論」を避けることができます。
くわえて、行政が介入した場合の客観的な証拠としても、大きく役立つでしょう。
ただし、録音する行為は、相手を身構えさせる行為のため、録音をおこなうかどうかは、慎重に判断する必要があります。
また、ハラハラの兆候がある従業員とやりとりする場合は、1対1ではなく、複数人でおこなうことが大切です。
緊張がともなうやり取りでは、雰囲気や相手の圧力に飲まれてしまい、一方的な言い分を押し通されてしまう可能性もあります。
同席者がいれば、精神的にも余裕をもって臨むことができるうえ、やり取りの内容も証言してもらうこともできます。
1対1のやりとりは、どうしても主観的になりやすく、客観的な証拠として不十分になる可能性が高いです。
トラブルに対応する際は、きちんと客観的な事実や証拠を残し、適切に状況を把握するようにしましょう。
ポイント(4):毅然とした対応を心がける
「ハラスメントだ」と訴えられた時点で、すぐに謝罪をしてしまうと、「謝る=非を認めている」と捉えられ、ハラスメントを認めたと認識されてしまいかねません。
正当な指示や適切な指導をしているのであれば、慌てて謝罪するのではなく、「後日、面談の機会を設けさせてもらう」など、余裕をもって対応をするようにしましょう。
ハラハラは、ハラスメントの性質を悪用した嫌がらせです。
ハラスメントに萎縮するあまり、謝罪をしてしまいがちですが、適切な指導の場合は、慌てることなく、適切に対応することを心がけましょう。
社内の情報共有に「Chatwork」
近年、様々なハラスメントが定義化され、意識が高まりつつあることは、非常に歓迎されるべきですが、これを逆手にとって嫌がらせをするハラスメント・ハラスメントに頭を抱える人が増えていることは、何ともやるせない状況といえるでしょう。
この状況を放置してしまうと、問題社員の増長や職場環境の悪化、ひいては従業員の離職や不当請求につながり、会社経営に悪影響を与えかねません。
ハラハラには、厳正かつ毅然とした立ち位置で、対処するようにしましょう。
ハラハラを適切に対処するためにも、「どういったことが許されないハラスメントに該当するのか」という共通認識の形成からはじめ、自社として最適なハラスメントに対する向き合い方を模索することが大切です。
ハラスメントに関する正しい知識の周知や情報共有をおこなう際は、ビジネスチャット「Chatwork」の活用がおすすめです。
「Chatwork」は、チャット形式でやりとりができるコミュニケーションツールで、1対1はもちろん、全社員がひとつのチャットでやりとりすることも可能です。
たとえば、「ハラスメントのガイドラインを周知するグループチャット」を作成して、ガイドラインの情報共有や法改正の最新情報を共有すると、従業員へのインプットが簡単におこなえます。
また、タスク管理機能を活用すれば、「知らなかった」「見ていなかった」という事態を防ぐこともできるでしょう。
「Chatwork」は、無料で簡単に使いはじめることができます。
下部の「今すぐChatworkを始める(無料)」より、ぜひ手軽さを体験してみてください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[※]出典:厚生労働省「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000113
記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートをおこなう。