KYT(危機予知訓練)とは?実施の目的・効果・進め方を3つの例題付きで解説

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働き方改革
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KYT(危機予知訓練)とは?実施の目的・効果・進め方を3つの例題付きで解説

目次

KYT(危機予知訓練)とは、職場の労働災害や事故を防止するためにおこなうトレーニングのことです。

企業にとっては未然に危険を防止するための工夫であり、従業員の安全を守るための対策につながります。

KYTでは、KYT4ラウンド法と呼ばれる方法を使って、危険の発見と把握から対策の決定、目標設定に取り組みます。

組織内で実行するために、KYTの目的や進め方について例題を踏まえて解説します。

KYT(危機予知訓練)とは?

KYTとは、職場などの作業で起きる危険性について、現場の人同士で作業のイラストや動画を使い、想定される危険について話し合うことです。

KYTは「危機予知訓練」とも呼ばれています。

以下のように、それぞれの頭文字をとってKYTと省略しています。

  • K(Kiken):危険
  • Y(Yochi):予知
  • T(Training):訓練、トレーニング

KYTでは、話し合いで洗い出した危険の対策も検討します。

KYTが広まった背景

KYTは、もとは鉄鋼事業に関わる企業によって考えられたものです。

それを中央労働災害防止協会が、職場のさまざまな問題を解決するための手法である「問題解決4ラウンド法」と組み合わせる形で、現代の「KYT4ラウンド法」に発展しました。

中央労働災害防止協会がKYTを「ゼロ災運動」の一部に含めたことをきっかけに、各業界にKYTが広まったといわれています。

「ゼロ災運動」とは、職場環境における労働災害や疾病をゼロにする運動という内容です。

現場で人々が安全に作業を進めるためにも、KYT4ラウンド法を活用して事前に危険を防ぐ取り組みが求められています。

KYT(危機予知訓練)を実施する目的・効果

KYTの実施には以下のような目的があります。

  • 労働災害・事故を防止する
  • 危険回避の行動目標を習慣化する
  • 職場の5Sを徹底する
  • チームワークを強化する

KYTの実施は、現場で安全に作業を進めるための土台作りになります。

KYTを実施する目的と効果をあわせて見ていきましょう。

労働災害・事故を防止する

KYTの重要な目的として、現場での災害や事故などの防止が挙げられます。

作業現場における危険なポイントを洗い出せるため、未然に危険を防止するための対策を立てられるのです。

KYTを実施して危険を回避できると、労働災害・事故による死亡者や死傷者を減らせるようになります。

危険回避の行動目標を習慣化する

KYTを作業場の人々に広めることで、危険を回避するための行動目標を身につけられるようになります。

実際にイラストや動画などを使って危険を想定するため、どのような作業をしているときに危険があるのかをイメージできるようになります。

特に職場では、ヒューマンエラーや慣れによって事故につながる傾向があります。

危険に対する意識が高まれば、危険に気づくための能力を高められるようになります。

>ヒューマンエラーに関する記事はこちら

職場の5Sを徹底する

KYTを実施することで、作業場の整理整頓における意識を高める効果が期待できます。

そもそも、5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」を表す言葉です。

たとえば、作業場の床に物が落ちていると、事故につながる可能性もゼロではありません。

実際にKYTで危険をイメージできるようになれば、5Sを意識した取り組みが事故の防止につながることを実感できるようになります。

チームワークを強化する

KYTは小さなチームでまとまって話し合いを進めるため、作業場の人同士でコミュニケーションを図れるメリットがあります。

普段は会話をする機会がない場合でも、意見を交換し合う場でお互いを知るきっかけにもできるのです。

作業場の人同士で認識を共有できるようになり、チームとしての一体感が生まれるといった効果も期待できます。

KYT(危機予知訓練)4ラウンド法とは

KYT4ラウンド法では「現状の把握」「本質の追求」「対策の決定」「目標設定」の4段階に分かれています。

  • 第1ラウンド:現状を把握する
  • 第2ラウンド:本質を追究する
  • 第3ラウンド:対策を決める
  • 第4ラウンド:目標設定をおこなう

KYT4ラウンド法の各段階の詳細を見ていきましょう。

第1ラウンド:現状を把握する

まずは「どんな危険が潜んでいるか」という視点で、現状を把握するところから始めます。

作業を再現したイラストや動画を使ってもよいですし、実際に現場で作業を再現しながら、考えられる危険を洗い出しましょう。

過去に起きた内容から考えるのではなく、実際のイメージで起きそうな事例を検討することが重要です。

なお、メンバーから出た意見は、紙にすべて書き出します。

進行役のリーダーと情報をまとめる書記を決めておき、チームで情報共有をおこなうと円滑に進められます。

第2ラウンド:本質を追究する

危険な項目を洗い出したあとは、特に危険なポイントに赤丸で印をつけます。

さらに重要な危険項目については、二重丸とアンダーラインを引く形で対応しましょう。

リーダーや誰かひとりが決める形ではなく、全員で話し合いながら危険項目を決めることが大切です。

最後に、危険に対する認識を共有するために、二重丸とアンダーラインの項目に対して、メンバー全員で「(危険の内容を言う)~ヨシ」と指差し唱和をするようにします。

第3ラウンド:対策を決める

第2ラウンドであげた二重丸とアンダーラインの危険項目について、具体的な対策を検討しましょう。

「あなたならどうするか」という視点を軸にしながら、ひとりずつ意見を出していきます。

意見が出ないときやまとまらないときは、リーダーが中心となって対策を決定できるように調整するとよいでしょう。

第4ラウンド:目標設定をおこなう

第3ラウンドで話し合った内容から、実際に取り組む対策の内容を決めて目標設定をおこないます。

また、重点実施項目の対策には「※」とアンダーラインをつけましょう。

目標設定の内容をメンバー全員で「(重点実施項目の対策を言う)~ヨシ」と指差し唱和をするようにします。

KYT(危機予知訓練)に活用できる3つの例題

各業界におけるKYTの例題をいくつかご紹介します。

  • 例題(1):製造業
  • 例題(2):建設業
  • 例題(3):物流業

KYTのイメージをふくらませるために、詳細を見ていきましょう。

例題(1):製造業

製造業の例題として、以下の状況からどのような危険があるのかを話し合いましょう。

工場内で従業員が清掃作業をおこなっている。
周りの状況
  • 従業員の目の前には棚があるが、無造作にダンボールや脚立などが上に積み重なっている。

従業員が棚の下の隙間を掃除しようとした場合、どのような危険が考えられるでしょうか。

話し合いの解答例として以下のような意見が挙げられます。

  • ダンボールや脚立が上から落ちてきて、怪我をする可能性がある。
  • 落ちてきたときに、近くを通りかかった人も事故に巻き込まれる可能性がある。

このようなリスクに対して、以下のような対策方法が考えられます。

  • 棚を整理整頓してから掃除をする。
  • 棚の荷物はすべて別の場所に移動してから掃除をする。

例題(2):建設業

建設業の例題として、以下の状況からどのような危険があるでしょうか。

建設の作業現場で、トラッククレーンを使い荷物を下ろす作業をしている。
周りの状況
  • トラックレーンを動かす作業員が一人、荷物を見届けるための作業員のもう一人がいる。
  • どちらの作業員も手慣れた様子ではあるが、あまり周りに注意を払っている様子はない。

上記のような状況の場合、どのような危険が潜んでいるのでしょうか。

話し合いでは、以下のような可能性が考えられるでしょう。

  • 注意不足から荷物が落ちてきたときに事故へつながる。
  • クレーン操作を誤って作業員に怪我をさせる可能性がある。

対策方法としては、以下のような内容が挙げられます。

  • 周りに監視役をつける
  • 作業の工程ごとに声をかけるなど、確認をおこなう

例題(3):物流業

物流業の例題として、以下の状況からどのような危険があるのでしょうか。

10kg以上あるダンボールをいくつか台車に載せようとしている。
周りの状況
  • 作業している人の周りには、ほかの作業員もいる。

上記のような状況の場合、どのような危険が考えられるのでしょうか。

  • 複数のダンボールを載せた場合、落ちてきて怪我をする可能性がある。
  • 台車が勝手に動いてしまい、ほかの人の事故につながる危険性がある。

対策方法としては、以下のような内容が考えられます。

  • 台車に荷物を多く載せないようにして分けて運ぶ
  • 台車は必ずストッパーをかけてから使う

KYTを実践して作業場の危険を取り除こう

KYTに取り組むことで、現場の労働災害や事故の防止につながります。

危険回避の行動を従業員に習慣化させる工夫になるというメリットもあるでしょう。

実践する際は、KYT4ラウンド法を使いながら、危険の洗い出しと対策を検討してみてください。

また、出し合った意見や目標設定については、社内全体で周知することも重要です。

KYTの情報共有を円滑に進める方法として、ビジネスチャット「Chatwork」の活用もおすすめです。

社内全体や部署全体のグループチャットを作成することで、話し合いに参加できなかったメンバーにも情報共有を進められます。

>Chatworkのグループチャットに関する記事はこちら

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